五頭応尽

登録日:2023/03/22 (水曜日) 21:00:00
更新日:2023/11/13 Mon 12:35:23
所要時間:約 14 分で読めます





京の 京の 大仏さんはァ

天火で焼ァけてなァ 三十三間堂が

焼けのォこった

ありゃどんどんどん こりゃどんどんどん


うっしっろの正面どーなーた


五頭(いず) 応尽(おうじん)とは『双亡亭壊すべし』に登場するキャラクターである。


概要

式神を使って治病・結縁・悪霊鎮撫を実行する加幻満流(かげみつりゅう)道術(どうじゅつ)の開祖にして、呪術界の生ける伝説。
外見は陰陽師の服装をした50歳前後の壮年の男性だが、大正時代生まれの実年齢103歳。
額には渦巻きのような小さな痣がある。

坂巻泥努とは幼い頃からの昔馴染みで、幼少期は修験者らしき父親に酷く虐げられながら無理矢理修行させられる過酷で貧しい生活を送っていた。
だがある時双亡亭に侵入した際、しのと泥努を見てしまい、双亡亭の外に出られないことを不便に感じたしのに雇われ、88年間泥努に仕えている双亡亭陣営の新戦力。…であるが、〈侵略者〉に取り憑かれてはいない。
泥努曰く「屋敷の近所の薄汚い子供がいつの間にか働いていただけ」「外の用をさせるための小使い」

主に双亡亭の外に泥努の絵を届けたり双亡亭に電話を引くなどの雑用や、侵入者の排除が役目。
だが泥努に盲目的にただ服従している訳でもなく、平然と泥努に刀を振るい攻撃を仕掛けたり、更に泥努にも秘密裏に裏で〈侵略者〉に協力している。

その正体は鬼離田三姉妹の実父
鬼離田三姉妹の母親を双亡亭内に拐い、強姦した上で孕まさせ放り出した鬼離田三姉妹にとっての仇敵である。
また俗世とは無縁そうな見かけ、粗暴な振る舞いに反して学歴は大卒と割と高学歴。
その関係からか海外旅行できる位には外国語もマスターしており、初見の車であっても難なく乗りこなす中々の知識人。


人物

一人称は己等(おいら)
性格はざっくりまとめれば傲慢な下衆。飄々とした態度を取りながらも嬉々として戦いと殺し合いを好む残虐非道の戦闘狂で、古いわらべ唄を好んで口ずさむ。
鬼離田三姉妹とは親子関係にあるが親としての情は皆無。
娘でありながら終始格下の術師として見下し、「クソ娘ども」「コムスメども」と蔑みながらひたすら甚振って虐げて楽しむ残酷さしか見せず、殺す事にも何ら躊躇う事もなかった。
おまけに鬼離田三姉妹の母親を強姦して孕ませてから放逐したようにかなり好色家な面もあり、柘植紅に性欲込みでの興味も示していた。


その本性は「世界の崩壊とこの世の終わりが見たい」という欲望に取りつかれた終末論にかぶれた破滅主義者。
幼少期泥努が描いたモンス・デジデリオの廃墟絵の模写を見て心を惹かれ、関東大震災にて東京中が崩壊した体験から破滅思想に傾倒。
「人々が懸命に足掻いて生きて作り上げてきたものが一気に崩れる様」を見ることに強烈な快感を覚えるようになった。
その趣向から「Memento mori(メメント・モリ)」という諺や、アヴィニョン修道院の墓に刻まれた言葉*1を気に入っている。
過去には世界各地の崩壊する建築物を見物するため世界旅行に行った経験があり、1984年7月に北イングランドで起きた大聖堂の火災も生で見物したらしい。

泥努に協力しているのも「泥努が描く最後の作品が完成し、〈侵略者〉の手によって地球が滅びるのを見たい」という純然たる欲望から。
過去の数多の偉人を引き合いに出してから「どんな偉い奴らだって、世界の終わりは見たことねえだろう!!」と語っている。
おまけに不死になった影響で現在の生に飽きを感じ始めており、新しい刺激を求めて〈侵略者〉に取り込まれて生きる事に好意的に評価。
なので〈侵略者〉が世界を滅ぼすことには諸手を挙げて賞賛するかなりの狂人である。

しかし泥努が作品への拘りからいつまで経っても世界を滅ぼす最後の作品を完成させない事に不満を覚えており、その不満が泥努に反逆する切っ掛けになった。
なおそんな動機のせいで一部では「skeb依頼90年待ちおじさん」という変なあだ名も付いた。


能力


面白えコト言うなァ 異人。
己等が人間じゃねえように見えるかよ。

人間だよう馬ー鹿!


〈侵略者〉の力を何も借りていない人間でありながら、特殊な呼吸法と丹薬、山籠りによる修行の果てに不老不死の仙人となったと伝えられる現役の呪禁師。
「90年掛けてこの世の有りと有らゆる修行を極めた」と豪語しており、呪術界では降神送鬼(こうしんそうき)と謳われる式神使いの達人。
人間と瓜二つの外見の式神「是光」を使役し、他者に憑依させて同士討ちさせる搦手に活用する。
更に式神や搦手を使わずとも
  • ジョセフィーンの火球や「転換器」の雷撃、銃火器による掃射すら容易くいなして無傷に抑える防御能力
  • 素手で残花と互角以上に渡り合う卓越した体術と超人的な身体能力
  • 拳銃の連射を口と歯だけで全弾受け止めて簡単に無力化する
  • 生身に戻っても、青一のドリルの一撃を受けて即風穴を開けられることなく持ちこたえる
など圧倒的戦闘力で敵を正面から叩き潰せる超人でもある。彼によれば体術に関しては最初の10年で極めたとのこと。

物事を用意周到に進めて己が有利になる状況を作る事には余念がない一方で、享楽的な性格が災いして勝利を確信している状況だとかなり慢心気味になるのが欠点。
慢心しやすいため余裕をこき過ぎて窮地に陥る場面がなんどかあった。


五頭(いず)是光(これみつ)


ごほうてんじん ひほう ただいまぎゃうし たてまつる
げひぎゃう いんをもちて みかたくあらはれ きしんを しょうじゃう する

(最大のパワーで実体化させてやらァ!)
だから ヤツらを今直ぐ殺してきな!!五頭是光!!

応尽の使役する式神。
外見は陰陽師や修験者のような服を着た緑色に発光する人間の青年そのものだが、能面のように無表情で一切喋らない。
一応性格のようなものはあるらしいが、基本的に手加減も遊びも無く淡々と敵を抹殺するため殺し合いを楽しみたい応尽は時折苦言を呈している。
その正体は普通の式神ではなく、応尽の実父の魂を呪いで縛って奴隷化させたもの。
元々自分を酷く虐げてくる実父に対して強い恨みを抱いていた応尽は、関東大震災に巻き込まれて深い重傷を負い寝たきり状態になっていた父に呪いをかけて殺害。魂を式神のように仕立て上げた。
以後は奴隷同然に扱われ、最大顕現させる以外では「是光」としか呼ばれず、ひたすらこき使われている。


戦闘時には空中を自由に浮遊して巨大な扇子を武器として振るうが、
  • 身体をグニャグニャと自在に変形させる
  • 無数に細分化・分裂させて個々に操る
  • 分裂させた自身を他者に憑依させ、相手を意のままに操り同士討ちを強いる
  • 周囲の霊体を捕食して自身の身体の一部として吸収する
  • 霊能力物理攻撃問わず、あらゆる攻撃がすり抜けてしまう為対処自体が極めて困難
  • 他者の体内に腕を潜り込ませて心臓を鷲掴みにしてダメージを与える
といった具合に非常に多彩な搦手向きの能力を持つトンデモ式神。何より式神なので、仮に倒したとしても術者である応尽が念じれば普通に復活してくる。

その力は鬼離田三姉妹が操る童子を凌駕しており、応尽も「是光に歯向かうのァ70年から80年は早い」と豪語する程。
憑依の対策としては紅や鬼離田三姉妹のような除霊能力が必須で、彼女らの術を用いれば是光の憑依を阻む事ができる。また異星人の力を受けている泥努や青一にも憑依はできない。

圧倒的性能を誇るが欠点が無いわけではなく、それは索敵がやや不得手なこと。
今作における霊体は生者死体問わず人間の体の中に潜り込んで潜むことができるのだが、是光は霊体が潜んでいるであろう者の近くで匂いを嗅がないと識別できない。逆を言えばこれくらいしか欠点が無い。

おまけにこれでもまだ力をセーブしており、上記の詠唱を唱えて全力を出した際は身体を甲冑で覆い頭巾を被った古代の鎧武者のような姿に変化する。
この形態だとフワフワ浮くことなくしっかり実体を得て大地に立ち、腕力などのパワーも増大。
2本の剣を武器に剣術の達人である残花少尉と正面から互角以上に剣術で渡り合うことが可能となり、斬撃を繰り出せば衝撃で地面が砕けるほどに一撃の威力も強い。
体を覆う甲冑や頭巾の強度も高く、残花の軍刀による斬撃を受けても無傷でいられる高い防御力を得る。


  • 爆砕念(ばくさいねん)
応尽の得意技。
片手で印を組み、「喝」と強く唱えることで強烈な気の衝撃波を放ち、敵を吹き飛ばすシンプルかつ豪快な術。
その威力は双亡亭の壁を爆散させ、超重量級の四足歩行ロボットすら容易く吹き飛ばしてしまうほどで、人体に向けて放てば内臓に常人なら即死するほどの大ダメージを与えられる。当然霊体にも有効。
そのシンプルさから体術と併用し易く、体術で翻弄しつつ一気に距離を詰め超至近距離からの爆砕念の一撃を叩き込む戦法を得意とする。

  • 結界
己の強大な精神力で双亡亭を構成する<侵略者>に干渉。双亡亭の家屋を霊体のような精神体を閉じ込める壁に変える術技。
これにより通常壁や床をすり抜けられる霊体に、壁や床の透過をできなくさせることができる。
範囲も広く、双亡亭本館全域を結界の対象にしてしまう。
ただしあくまで家屋の壁を媒体としているため、空いた窓や穴があった場合は結界の効果対象外になってしまうのが欠点。

  • 式神
是光とは異なる式神を用いて、人型の紙を依代に非常に精巧な自らや是光の分身を作り出す術。
分身とはいえ本物と遜色ない質量・身体能力・術の精度を有するため、見分けは非常に難しい。
雪代・琴代も後に行ったが、術の難易度の高さから発動後は疲労困憊状態になっていた。

  • 敵意のいなし(仮称)
式神対決での要訣。
「自分の『念』は自分の身体に戻りたがる」という式神が持つ性質を利用。敵の式神の攻撃に込められた相手の殺意・怒り・憎しみといった負の念を「気」でいなして反射させることでダメージを与える技術。
反面負の感情が乗っていない式神に対しては効き目が悪くカウンターが成立しないのが弱点。

  • 陰身筒(かげみつ)
加幻満流道術伝説の法術。
己の心臓を抜き取ることで肉体を不死にする秘術であり、応尽が不老不死の仙人となった秘密。
これにより致命傷に至るような攻撃であろうと殆どダメージを受けず復活できる。
弱点は双亡亭内に隠された「応尽の心臓」が他人に見つかる事。
見つかった場合は再び心臓を己に戻して再度術を掛け直さなくてはならないが、あくまで不死性が消えて生身に戻るだけなので応尽が鍛え上げた身体能力や霊力、体術、術の威力は衰えない。

  • 縛魂(ばくこん)の呪詛
人の魂を縛って霊体の奴隷(=式神)に仕立て上げる呪詛。
行うためには祭壇を作ってから短刀で対象の心臓を抉り取る必要があり、応尽は実際に父親である五頭是光を殺害して実行した。
抉り取られた心臓はミイラのように乾いて器物のようになっており、「解魂の儀」を行うことで解除可能。
解除されると式神の制御が不能になるため、式神が著しく不満を持っていた場合は呪詛を掛けた術者に襲い掛かり、これまで自分を酷使してきた術者を殺害する。


末路

しのと結託して泥努を殺すことで〈侵略者〉の本星と繋がる「門」の開放を目論んで活動し、圧倒的な強さで双亡亭母屋に乗り込んだ攻略メンバーである残花・紅を蹂躙していた応尽。
だが、是光の対処で残花が離れてしまい、不死の身体を利用して紅に圧勝し倒した直後、因縁深い雪代・琴代が遂に参戦する。
雪代・琴代との戦いの中で緑郎と泥努のサポートを受けた凧葉に己の不死性を維持する「陰身筒」のカラクリを見破られ一時的に動揺。凧葉に心臓を見つけられてしまい術を解除せざるを得なくなってしまう。
それでもなお己の強さに陰りが無いことに余裕綽々で雪代・琴代を圧倒する。


応尽…キサマは母を汚し、
この世に私らを獣の子のように放り出した…
そして今は〈侵略者〉の手先のおまえを許せるわけは無い!!

うるっせえよ、ムスメども。喝

ほら おめーらのアザが、
しょせんムスメはオヤジにゃ勝てねえってコトを教えてくれるぜ。
血筋を恨むんだなァ。
おやおや

そのとおり!これは私達の戦いじゃ!!
琴世 最後の念を凝らせ!応尽を一秒でも長く止めておくのじゃ!
心得た!雪世姉!


が、緑郎が是光の心臓を見つけて雪代・琴代に手渡してしまったことで今度こそ本気で動揺。
死に物狂いで心臓を奪おうとするも、青一に阻まれ失敗。結果「解魂の儀」によって式神の縛りが解除されてしまい、これまで奴隷としてこき使っていた是光に全身を喰らい尽くされて致命傷を負う。
散々こき使われた憎悪により悪鬼の形相で怒り狂って己を襲う是光の姿を見ながら、過去の父との苦痛に満ちた生活を回想。
自分の無惨な死にざまを見て歓喜する娘の姿を眺め、泥努の絵がもたらしたであろう世界の終わりへの憧れを抱きながら、頭から食われて死亡。
自分が興した加幻満流道術に記した「害意、発する者に必ず返る」という式神の習性を自ら味わう因果応報の最後であった。
そして是光も応尽の死に連動して解放され、砕け散るように消滅した。


くそ…ムスメどもめ。笑え笑え、
ま…己等だって親父がつぶれた時ゃ嬉しかったから…な
あの時だ…だぁれも助けてくれねえ己等を…「世界の終わり」だけが…

泥努サマ……あんたの「絵」から「奴ら」が飛び出て、

「世界が終わる」ってヤツを、

見たかったなァ……


ば く ん


余談

実は第9回の時点でチラッと顔を見せているのだがその時は名無しのモブキャラ程度の存在感しかなく、本格的に動き出したのは第135回から。




壊すべきは何ぞ 壊すべきは何ぞ
木で枠作って 亜麻布張った カンパス其れがあなたの世界
狭ひだらうが小さひだろか

画面を覗けば其の奥に 遠く地獄が現れる
夢見た地獄が壊すのは 童を鞭うつ此の世の右手

ではではしからばわたくしは
向かふで終はりを待ってゐる

坂巻泥努 (一九〇四〜没年不明)




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最終更新:2023年11月13日 12:35

*1 「あわれなる者。汝、何を以て思い上がりしや。ほど無くして汝も腐臭漂う屍となりぬ。」