登録日:2023/08/09 (水) 01:02:20
更新日:2024/10/19 Sat 16:32:40
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■概要
京都府の
心霊スポット『F公園』のサイレン塔周辺を根城にしている老婆の霊。
痩せ細った馬のような顔と白く長い髪の毛をしている
三つ目の相貌であり、下駄ともんぺを身に着け、提灯を片手に持ちベビーカーを押している。
このベビーカーには赤ん坊の人形が乗っており、これを見た人は
魂が人形に吸い取られる。
そしてこの人形を燃やすことで死神をおびき寄せる事を目的としている。
死神というのは
寶月夜宵が暫定的に名付けた正体不明の黒い霊。
こいつらは死期が近い人、あるいは死んだ直後の人の元へ訪れその魂を回収している。
死神が殺しているのか、あるいは死期を知っているのかは不明。
そしてF公園は
応仁の乱で戦場になった場所。自然成仏が難しい魂がたくさんいたので死神はF公園上空に出入り口を作っている。
……それでF公園の霊は、そんな正体不明の死神を屠るべく、この地に留まり続けているのだ。
では死神以外の人に危害を加えないのかというと否。
死神を召喚するには魂が必要なので、このF公園に訪れる若い女性の魂を奪い消滅させているため、十分すぎるほどに危険な悪霊である。
しかもあまりにも強すぎるため、何十年も霊能力者が匙を投げているという超危険霊。
現京都には貞観和尚を始めとする一流の坊さんがいるが、それでもなお解決できなかった事から、この老婆の霊の恐ろしさが分かるというもの。
■来歴
本名『曽根崎依子』(旧姓:宮本)
昭和最初期に生まれた、霊が見えるだけの普通の一般人だった。霊能力者として経験もなければ知識もない。
事のはじまりは昭和3年6月6日水曜日。母・宮本文子が亡くなったこと。
父と共に悲しみに暮れていると前述の死神が現れ母の魂を吸収。すると死神の顔が死ぬ直前の母の顔になった。
あまりの怖さに幼かった依子は泣いた。
それから12年後の昭和15年5月17日金曜日。
立派に成長した依子は外で働く父に代わり家事を仕切っており、ご近所さんからも「立派」と言われるまでに。
だったが、ある日またしても家の前にいる死神を見てしまい、直後自宅に火災が起き父親が焼死してしまった。
さらに苦し泣きする父親の顔を しながら死神が魂を回収した――
死神への知識がなかった依子は、この一件で死神が生者を殺しに来る存在と確信する。
昭和19年1月9日
日曜日。
唯一の肉親を失った依子は恋人の曽根崎正英の元へ身を寄せ、結婚した。
息子・明が産まれていたが、第二次世界大戦のために正英が招集される。それも
死神の見送り付きで、という最悪の旅立ちだった。
夫が無事に帰れないと確信した依子は大泣きした。
そして翌年死亡報告書が届いた……。
その後は女手一つで明を立派に育て上げ、明も杏という女性と結婚し子宝にも恵まれた……だが……。
昭和51年5月20日日曜日。
明夫婦は改めて結婚と子供の出産を依子に伝えるべく訪れていた。
そして翌日、家族の記念写真を撮るためにF公園に訪れた所、
上空にあった出入り口から死神が出現。明夫婦に憑りついた!
絶望しきった依子はそれから時間さえあれば正英の仏壇に明夫婦の無事を祈っていたが、祈りも届かず昭和51年7月10日
土曜日……明夫婦は交通事故に会って帰らぬ人に――
事故報告を聞いた依子は老い先短い命を全部使って孫――春樹を守る事を決意する!
……が、そんな決意した瞬間、自分の隣には春樹を見つめる死神がいた。
昭和54年9月14日火曜日――
結局春樹も依子が目を離した隙に連続
殺人鬼に誘拐され殺されてしまった……。
そしてその春樹の変わり果てた遺体の横には、苦痛に顔を歪ませた春樹の顔をした死神がいた……。
お母ちゃん、お父ちゃん、正英さん……明……杏ちゃん、春樹……っ。
絶対に許すものか……っ! 祟ってやる……! 私から全てを奪ったように――――
滅ぼしてやる。
死神が実際に依子の家族を殺したのかは分からない。
しかし、依子にとっては家族を……自分の人生全てを奪ったのは他ならない死神であり、死神に凄まじい憎悪を抱く。
そして死神の出入り口があるF公園を訪れ、サイレン塔の焼却炉の中で化成肥料を食べて自殺。
その最期はまさに鬼神の如き形相であった。
こうして怒り狂った彼女の怨念と憎悪は悪霊へと昇華されることになる。
■能力
生前死神に抱いた怨念と公園内の浮遊霊を根こそぎ貪り食ったことによるエネルギーの増加によって、
死神を喰う事に特化した能力を有している。
しかし、この死神特化能力は死神を召喚する能力なので、実は他人に攻撃する霊現象の類は有していない。
じゃあ
ポケモンバトル直接戦闘に弱いのか……と思いきや、
超強い。
この世界の悪霊の強さはどれだけの霊を喰ったかに決まる。格上の死神を何十年と食べ続けた事で、
異常なほどの基本スペックに到達したのだ。
具体的には老婆の癖に
Sトンネルの霊の顔面をワンパンで殴り潰して一瞬で戦闘不能に変えてしまう格闘能力の持ち主であり、神主からもらった式神・後鬼を肥料弾の狙撃で倒しかけたほど。
無限修復人形がなければ、
まず老婆の方が勝っていた。
当然ながら例え深手を負ったとしても死神を新たに食えばダメージの回復までこなしてしまう。
魂を閉じ込める呪い
F公園の霊の霊現象。
生者にも見えるし触れる不気味な赤ん坊の人形を体内で作り出し口から吐き出すことができる。
この人形の目を見たら最後生者でも死者でも魂を強制的に人形に吸い込まれ、魂を奪われた犠牲者は魂を取り戻すまでの間廃人化してしまう。
このため卒業生クラスすら為す術なく取り込まれて戦闘不能になってしまう恐るべき一撃必殺技である。
またこの魂入り人形を焼却炉で燃やすことで、燃やされた犠牲者魂が叫ぶ断末魔の絶叫をさながらサイレンに見立てて死神を呼び寄せる手段としている。
呼び寄せられた死神を後は老婆が食べるだけ。この手法で死神を一方的に貪り食らっていた。
魂強制吸収という都合上、なり代わり特攻ではないかと推測されている。
ただし「一つの人形に入れられる魂は一つまで」という制約もあり、魂入りの人形であれば見ても大丈夫。
またこの人形を瞬時に作り出すのは無理なようで、常備していた人形全部魂入りだった際にバトルを開始したら、人形を作ることなくバトルした。
赤ん坊の造形であるため老婆自らも人形への強い執着があり、人形を奪われ失った際は「人形なくしやがって糞餓鬼がああぁあ…」とブチ切れていた。
後に「視覚を持たない相手には効かない」という新たな制約も発覚。そもそも目が無い相手には通じない弱点も明確化となった。
肥料弾(仮称)
自殺の際に使用した化成肥料の粒をデコピンで飛ばす。それだけ。
しかし、力があまりに強すぎるせいでマッハ2以上の超音速で連射されるため、小規模なソニックブームを伴う砲弾のように射出されて燃え尽きながらも敵を撃ち抜く。
このせいで式神・後鬼すら当初は一方的に攻撃され続けてあえなく敗北しかけてしまった。
なので厳密には霊現象とは全くの別物。尋常でないフィジカルによる純粋な力技の賜物である。
■活躍
『弑逆桔梗作戦』のためにF公園を訪れた夜宵達だったが、サイレン塔にて姿を現し、人形を見てしまった詠子の魂を閉じ込める。
詠子の入った人形を焼却される前に倒そうと
Sトンネルの霊を解放するも、それもまた人形に閉じ込めてしまう。
こうして不用意な戦力の投入を封じられた夜宵達は、目視せずに狙撃するという犠牲覚悟の作戦を取る事となる。
その中で
千魂華厳自刃童子の降霊までの時間を稼ぐべく囮になった螢多朗の魂も閉じ込め、焼却まであと一歩……という状況で式神・後鬼が召喚される。
即座に肥料弾を撃ち出すも無限修復人形のフィードバックにより無効化され、月齢に合わせて進行する呪いを立て続けに受けることとなる。
その第三段階『月面温度の呪い』で凍り付き、そのまま粉砕された。
それでも生前の憎悪を回想すると、影の腕を人形に向けて伸ばし、死神を呼び寄せて回復しようと目論む。
……が、自刃童子に全て斬り裂かれて阻止され、ついに敗北となった。
敗れた後は精神が衰弱したのか、最後の心の拠り所であった孫・春樹を守れなかったことへの後悔と懺悔を吐露。
彼女の過去を垣間見た夜宵に「復讐は心に決着をつける必要な儀式」と、
同じく復讐を心に誓う者同士共感を抱かれながらも、一般人に危害を加えてきた危険性から放置されることはなくそのまま回収。
だが「対象を限定するならある程度気が済むところまで付き合ってもいい」と慈悲をかけられ、鳥の人形に封印された。
…………。
春樹……。
おばあちゃんが……守ったげるから……。
なお、この戦闘による消耗が激しかったため、Aダムの霊共々
太歳星君との決戦に投入されることはなかった。
しかし、赤ん坊の人形は彼女の預かり知らぬ所で利用されていく事となる。
■余談
- F公園の元ネタは船岡山公園。
かつて合戦の舞台となったのも作中で解説されている通り。
- 若い女性だけを狙うのは、春樹を殺害した連続殺人鬼が若い女性だったから。
単行本の解説によると、その連続殺人鬼は寶月詠子と瓜二つだという。
- 過去話回だった44話はその時点で1、2を争うくらいアンケートが好調だった。
単行本での裏話によると、話のテンポのために雑に済ませるか、テンポを犠牲にしてでも丁寧に描くかで後者を選び、アンケートが落ちる事を覚悟していたという。
追記・修正は死神を全滅させてからお願いします。
- 自作コラに定評のある作者ですら茶化せなかった激重エピソード。出征する旦那の横にすっと死神が憑いたり、整えられた孫の遺体の横にこの上ない苦悶の死に顔を浮かべた死神がたたずんでいたりするシーンはこの漫画でも指折りの恐怖だと思う。 -- 名無しさん (2023-08-09 04:39:02)
- 黒阿修羅くんもそうだけど、他の霊を食えば強くなるシステムだからたまたま攻撃手段が捕食になった悪霊は成長性がめちゃくちゃ高いんだろうな。まあポテンシャルが低いとすぐ頭打ちになりそうな気もするけど。 -- 名無しさん (2023-08-09 04:42:18)
- 人形見せただけで勝ち確定の新最強候補。しかし殺人鬼、まさか詠子の親戚なんてことは -- 名無しさん (2023-08-09 06:40:32)
- 人形の外見の元ネタはマレーシアのトヨールかな? -- 名無しさん (2023-08-09 19:34:16)
- こんなんが徘徊してる京都怖すぎて草 -- 名無しさん (2023-08-10 11:27:50)
- ↑ シシムラ様抜いても、ダムやら首塚やらトンネルやらがあの始末だしね。 -- 名無しさん (2023-08-10 16:17:36)
- この老婆霊はスペックこそ凄まじいけど目的が死神狩りで、言い方は悪いけど餌にする女性ぐらいしか犠牲者が出ないから戦った場合の損害を考えると放置が一番なんだよな。まあ死神が霊的なスカベンジャーだった場合は狩りすぎると何か大きな影響が出るのかもしれないけど。 -- 名無しさん (2023-08-10 18:55:41)
- 詠子自首しろ -- 名無しさん (2023-08-10 21:29:31)
- レベルキャップつけ忘れたあの世サイドにも問題はある -- 名無しさん (2023-08-10 22:40:09)
- 一般人のお婆さんでも恨みによって超高レベル霊になるこの世界怖すぎる -- 名無しさん (2023-08-11 21:55:24)
- ただの虐待児童が超強くなるしな -- 名無しさん (2023-08-11 22:57:27)
- 花魁が安置されてたラブホテルの女性霊たちやら天使様がいる事故物件とか、一般人でも当たり前のように憎悪で歪んでトンデモ悪霊化する世界だからなぁ。ただ、この霊に関してはどうやって人形の呪いにたどり着いたのかが割と疑問。目を合わせるだけで事実上の即死という、呪いとしても相当に高位の代物だからなぁ。 -- 名無しさん (2023-08-11 23:28:35)
- 一般人とは言うが、このおばあさんの場合は生前から死神を視認できる程度には霊感高いからけっこう素質はあったんじゃないか。 -- 名無しさん (2023-08-12 06:42:35)
- 肥料弾だけで後鬼を倒しかけたみたいに書いてあるけど、二発目以降は反応して最小限の動きで躱してるから違和感ある。むしろマッハ超えの肥料に反応できてた後鬼が躱せない速度で間合い詰めてKOした方に焦点を当ててほしい -- 名無しさん (2023-12-12 15:31:02)
- F山ってそんなやばいのか?って思って調べたら室町と戦国に大きな争いが周辺で起きてるのな。この2つだけでもやばいのに他にもなんかあったらそりゃ死神(?)の穴が開くわ -- 名無しさん (2024-05-04 23:05:37)
最終更新:2024年10月19日 16:32