登録日:2023/08/17 Thu 01:54:54
更新日:2025/05/01 Thu 23:11:25
所要時間:約 7 分で読めます
CV:松坂桃李、塙真奈美(幼少期)、丹羽正人(モンスター非理谷)
※ネタバレを多分に含みます。
●目次
【概要】
現代社会および自らの人生に対して鬱屈した想いを抱える内気な男性。
年齢は30歳であり、職業は派遣社員。
趣味はアイドルの応援。
幼い頃から度重なる不幸に見舞われており、親身になってくれるような家族や友人もおらず、並々ならぬ絶望とやり場の無い鬱憤を抱えながら日々を生きていた。
そんなある日、近所で起きた強盗事件を追う警察から犯人と誤解されて逃げている最中、宇宙から飛来した暗黒の光を浴びたことで彼は
超能力に目覚める。
超人的な力を手に入れた非理谷は、自分を虐げてきた世界に復讐することを誓ったのだった。
そうした復讐の一環として
幼稚園に立て籠っている時、自分と同じく超能力を操る
野原しんのすけとの出会いを果たす。
超能力の万能性に取り憑かれてからは、卑劣な悪事に手を染めるようになり残忍な発言も目立ったものの、元は善良な青年だった様子。
本作パンフレットに収録されているインタビューにて担当声優の松坂氏も「たまたま超能力を得たことで道を踏み外してしまうけど、根は寂しがり屋で純粋ですごく優しい男」と語っている他、
プロデューサーの吉田有希氏も「悪役だけど芯から悪い奴ではないので、観ている人に嫌われて欲しくなかった。影がありながらどこかピュアな感じがする役者として松坂氏がピッタリだと思ってお願いした」と答えている。
作中においても国際エスパー調整委員会の池袋教授が「彼も(野原一家のような)温かい家庭に育っていれば、ここまで歪まなかったかもしれない」とその苦悩に思いを馳せる一幕が見られた。
また、非理谷は自身の現状を社会の諸問題にも原因があるものとして語っているが、その主張自体も作中で最後まで否定されていなかったりする。
物語中では、間違った方向にプライドを高く拗らせてしまっているせいで他人からの厚意を「見下してきた」と解釈し、仇で返すような振る舞いをしたりと彼本人の屈折した思考や行動にも少なからず問題があることは一応描かれていた。
極度の空腹に陥っていたといえど、倒れ込む自分を気遣う相手を押しのけて衝動的に料理(
焼き鳥の盛り合わせ)を盗み食いしてしまうような場面もある。
とはいえそうした人格が形成されてしまった背景も含め、紛れも無く非理谷の人生を取り巻く様々な環境もまた彼を狂わせた元凶であると言えよう。
このような重いバックボーンを背負った人物ではあるのだが、『
クレヨンしんちゃん』のキャラらしくコミカルでお茶目な一面も皆無ではない。
主人公サイドが流した深田恭子の曲に合わせて「深キョンカモン!」とノリ良く踊る姿は、動きがやたらキレッキレなのも相まってちょっぴり微笑ましい絵面である。
スマホの
ゲームで攻略に行き詰まった時「これに課金なんかしねえぞ。魂胆は分かってるんだ!」と愚痴っている姿を見て、「ああ、その気持ちわかるわ~」と不覚にも共感してしまった視聴者もいるかもしれない……。
また幼少期から
カンタム・ロボが好きなようで、終盤に巨大カンタムと相対した際には「
見せてもらおうか。連邦軍の力とやらを!」と
露骨なパロディ台詞で応じている。
【能力】
元来はごく普通の人間であるが、超能力を身に付けてからは念動力を扱えるようになった。
念動力とは物体を浮かせて操る力であり、彼の場合は自分自身が高空まで浮遊して移動することも出来る。
機器を爆発させたり、衝撃波で壁を陥没させたりといった攻撃も可能。
そして「令和てんぷく団」なるテロ組織のアジトにて、ボスのヌスットラダマス2世が用意したエネルギーマシンの力により、その能力を飛躍的に向上させた。
外見としてはコードを身体に巻き付けた
道化師のような姿の巨人へと変貌しており、全高数十メートルはあるであろうアジトの建物を容易く消し飛ばしていた。
この巨人の状態で追い詰められると、更に形態が変わる。
その姿は一言で表すならば、脈打つ巨大な卵から頭と足が生えたような異形の怪物といった所。クレしんシリーズでは珍しい中々
グロテスクなデザインとなっている。
完全に人間離れした姿形であるのみならず、もはや人語を発することも無く、獣のように唸り声や咆哮を上げることしか出来ない。
口からは火球を放って攻撃する他、吸引して人や物を体内に取り込むこともある。
なお本作のクレジットによれば、この形態の公式での呼称は「モンスター非理谷」と設定されている模様。
【台詞集】
「どいつもこいつも俺を見下しやがって……!!なんで俺だけ……」
「見ていろよ…今まで俺を馬鹿にしていた奴らに仕返ししてやる…」
「どいつもこいつもインスタだフェイスブックだと、そんなに幸せ自慢したいのか…俺には人に見せられる幸せなんかひとつもないのに……」
「誰だ……誰が俺をこんな風にした?」
「目的なんかねえよ。俺は保育士の女に恨みがあるだけなんだ」
「Jリーガー、お花屋さん、ユーチューバー…どいつもこいつもくだらねえ!!
いいか?お前らにまともな未来なんてねえからな!!
この国はもうお先真っ暗なんだ!!」
「そうなんだよ!夢なんか持たねえ方がいいんだよ!!こいつわかってんな 野原しんのすけ」
「あんたの望むようにこの世界を破滅させてやるよ」
「フフフ…まさかカンタムと戦える日が来るとはな。見せてもらおうか。連邦軍の力とやらを!」
「焼き鳥屋にいたリーマンじゃねえか。あの時はよくも俺を見下してくれたな!!」
「そんなに
手巻き寿司が好きならたくさん食わしてやる!」
【人間関係】
非理谷が熱狂的に推していたアイドル。保育士アイドルグループの一員だったとのこと。
彼にとって唯一の心の拠り所だったため、彼女が結婚&引退を表明したという情報をネットニュースで見て呆然自失となる。
冤罪に対して非理谷が一言も弁明せずに逃げ出してしまったのも、直前に彼女に関する衝撃的な事実を知って冷静な判断能力を失っていたからなのかもしれない。
非理谷は萌美について「この世で自分のことを認めてくれていた唯一の存在だったはずなのに」と語るほど度を超えた執着を抱いている。
彼が力を得て一番最初にやったのも、裏切った(と一方的に見なしている)彼女とその婚約者の目の前で、婚約者の自家用車を爆破して恐怖を味わせるという嫌がらせだった。
その後、偶然通りかかったふたば幼稚園に立て籠ったのも
よしなが先生に萌美の面影を重ねたことが発端であり、偏執的な依存ぶりがうかがえる。
非理谷に兄弟はいなかったらしく家族はこの二人だけだったようだが、共働きであり彼が幼い頃から毎晩遅くまで仕事をしていた。そのため非理谷は幼稚園児の時点で、毎晩一人コンビニ弁当やお菓子などで食事をしていた様子。
忙しかったためか幼稚園の運動会などの行事にも二人共来ることは無かったという。それにより彼は「どうせ自分が頑張った所で誰も応援してはくれない」と塞ぎ込むように。
非理谷が思春期に入った時、離婚してそれぞれ別の相手と再婚することが決まってしまったらしい。奇しくも最後の家族団欒として開かれたのは手巻き寿司パーティーであった。
この出来事をきっかけに彼は「どうせ皆裏切るから、もう一人で生きていく」という思いを強くする。
小学生の頃から何年も非理谷をいじめていた同級生の三人組。
彼の家に金銭的な余裕があることに目を付けて、度々金品を要求していた(また、非理谷が小学生の時の要求品が「
ポケモン」の赤・緑であったことから本作の世界にはポットモンスターシリーズが存在する模様)。
本作冒頭においてティッシュ配りの仕事をしていた非理谷に暴力を振るって嘲笑を浴びせていたサラリーマン三人組は彼らだった可能性がある。
【顛末】
終盤、怪物と化した非理谷によってしんのすけは体内に取り込まれてしまう。
そこには非理谷の精神世界が広がっており、一人寂しく過ごす幼い彼と出会う。
そんなみつるにしんのすけは寄り添いつつ二人で数々の苦難を乗り越えていく。
「ボクが頑張ったって誰も応援してくれない」と嘆いていた彼は、身体の成長と共に少しずつ変わっていった。
超能力を得てさえも八つ当たりばかり繰り返していた非理谷は、精神世界にてみつるとして、己の
トラウマと初めて正面から戦い始めたのであった。
温かい家庭に恵まれなかったみつるにもしんのすけという“仲間”が出来た。
そして現実世界で怪物として暴れていた非理谷は、元の人間の姿へと戻っていくのであった。
みつるくん!?大変なヘンタイのお兄さんはみつるくんだったのか!!
しんのすけとの再会に感涙する非理谷。
彼には自分が超能力で暴れていた間の記憶はほとんど無いらしい。
記憶が無くても一応やったことはやったことなので、ひろしは非理谷に「君が壊したウチの車の修理費の話がしたい」と持ちかけつつも、相変わらず腹を空かせている彼のために自宅で手巻き寿司を一緒に食べようと誘う。
更に「君はまだ若いからこれから何でも出来る」「(君達の言う通り)確かにこの国の未来は暗いかもしれないが、それでも生きていくしかない」「頑張り方が分からないなら、自分を幸せにするより誰かを幸せにしようと思え」などと激励。
確かに非理谷にとっては依然として厳しい世の中のままかもしれないが、彼はもう決して一人ではない。
今までの人生で他人からほとんど応援を受けたことが無かった非理谷は、自分が迷惑をかけてしまったのに怒らずエールを送ってくれるしんのすけ達の思いやりに感激しつつ、彼の家で手巻き寿司をご馳走になることに。
エンディングではその様子が描かれており、彼が野原一家に馴染みながら、エスパー調整委員会の深谷ネギコとも親しくなっている光景が見られたのであった。
強盗の冤罪および本人が超能力で犯した罪により指名手配された非理谷ではあるが、エンディングを見る限りでは春日部で気楽に過ごせているようなので、おそらくその辺はどうにかなったものと思われる。
これからは野原一家やエスパー調整委員会と交流を持ちながら社会復帰を目指すのかもしれない。ただ、もし野原一家に今後も世話になるのであれば、彼の被害者であるよしなが先生や
かすかべ防衛隊のメンバー達との関係が気になる所。
彼のその後の身の振り方も含め、詳細が分からない点は多く、これまでの一部の劇場版キャラクター達のように再登場が期待される所である。
【余談】
- 本作は原作26巻に収録されていた『しんちゃんのお話バトル!しんのすけ★ひまわりのエスパー兄妹』を基に作られた物語であり、そこに登場した超能力者サラリーマン(名前不明。こちらのCVはうえだゆうじ)が非理谷の元のキャラとなっている。
このサラリーマンは、リストラという形で自分を社会から拒絶した日本企業に復讐するべく幾つものビルを破壊して回るというある意味では非理谷よりよっぽどヤバい悪事を連日働いていたものの、超能力を失うと共に無事正気に戻る。
最終的に彼はひろしからのエールを受けつつ、不景気に負けずに職探しに力を入れるようになった。
- 「非理谷充」という名前は、スラングの「非リア充」をもじった物である。
一見単なるネガティブなネーミングのように思えるが、下の名前の「充」だけなら明るいニュアンスの名前とも言える。
そう考えると、しんのすけが彼のことを最後に「みつるくん」と呼ぶようになったのはどこか感慨深いものがある……という見方も出来るかもしれない。
追記・修正は大切な人と一緒に手巻き寿司を食べながらお願いします。
最終更新:2025年05月01日 23:11