UpperDeck遊戯王OCG偽造事件

登録日:2011/10/09(日) 14:01:46
更新日:2024/01/01 Mon 19:30:21
所要時間:約 6 分で読めます




概要


今現在、世界50ヵ国以上で親しまれている遊戯王TCG*1であるが、10年以上もの歴史には輝かしいエピソードだけでなく、後ろ暗いエピソードも当然ある。

その中でも、恐らく最もプレイヤー、そして遊戯王TCGファンを激怒させた事件がこのUpperDeck社による『カード偽造事件』であろう。

『UpperDeck(アッパーデック。以下アッパー)社』とは、2008年末(5D's初期)まで北米並びに欧州各国、
と言うよりアジア圏以外での遊戯王TCGの販売をコナミから委託されていたゲーム会社である。
最初の頃は真っ当な業務を淡々とこなしていたが、あまりにも売れ行きがよかったため、だんだん調子に乗り始めていく。
そして、とうとう以下のような暴挙に乗り出した。


・日本と海外で裁定を変える

ゲームをする上で重要な裁定を日本と海外で変えてしまう。
裁定とは、カードテキストから読み取りづらい処理を定めた物であり、いわばテキストの補足説明のような物。
日本(OCG)でできたことが海外(TCG)ではできないといった自体が起こる。逆もしかり*2


・極端なレアリティの格上げ&封入率操作

環境に大きな影響を与えたダーク・アームド・ドラゴンを、日本ではレア(字レア)であり入手しやすかったのだが、数箱に1枚しか存在しない「シークレットレア」に格上げ。
更にシークレットレアの中でも封入率を低くされていた。いわゆる封入操作
この為、米版は1枚2万円前後で取引された時期もあった。

ただしこのレアリティ変更は決してUpper Deck発祥という訳ではなく、ダーク・アームド・ドラゴンが登場する以前の4期まで発売されていたアジア版でもレアリティの変更がなされる事があった。


・販売方法のゲリラ的変更

日本以外の言語のカードには、同一のパックの同じカードでも、

初回生産版を意味する「1st Edition」(通称1st)
それ以降の生産を意味する「Unlimited」(通称アンリミ)

この二種類が存在する。

当然の事だが、1stは一度しか生産されないがアンリミはその後もしばらく恒久的に生産されるため、1stの方が希少価値が高い。
そのため、例えば同じモリンフェンでも1stとアンリミとで価値に差が出るわけだ。
物にもよるが、大体アンリミは1stよりも価値が劣る場合が多い。ただしパックや発売形式によっては初めからアンリミしかないこともある。

これ自体も、元を辿ればこれも前述のアジア版でも同じ仕様であり、
アッパーは、GX時代(『Light of Destruction』まで)まではまず1stのパックを問屋に卸し、その後アンリミの生産に取りかかるという方法をとっていた。


5D's初のパックとなる『The Duelist Genesis』では、小売に何の通達もなしにいきなりTin缶と呼ばれるセット缶限定でそれ以外はすべてアンリミへ変更
プレイヤーはもちろん、小売業者も巻き込む阿鼻叫喚の大騒動となった。
次弾の『Crossroads of Chaos』も同じ仕様だったためこの2つの1st版ホロは高値で取引されている。


・海外新規で強力過ぎるカードを出す

「光の援軍」「闇の誘惑」といった、当時の環境を激変させたカードのオリジナル製造。
新規カード自体は問題ないのだが、あまりにも環境に干渉しすぎる強力カードの乱発が目立ったため、しばらくそのカードを使えないOCGのプレイヤーからの不満の声が多々挙がっていた*3


・UpperDeckの大会ではコナミ(日本語、韓国語)のカードは使用不可

つまり、アメリカの大会で日本版のカードは使用できない。
「いいよな、日本はライトロードが簡単に組めて」と嘆いていた外国人も多いとか*4
ただしOCGでも長い間外国語版を使うことが出来たが、現在は日本語表記のアジア版を除き大会での使用は出来なくなっている。


もちろんこういった悪い部分ばかりでなく、当時の日本と違って大規模な公認大会を度々開催したり、その大会の景品を豪華にしたりする*5など、
プレイヤーのモチベーションを高める方策は少なからずプレイヤーから賞賛されていたのは確かである
だがそれ以上に上記の販売方法には批判が寄せられており、OCG・TCG問わず世界各国のプレイヤーの不満は徐々に高まっていった。


Upper Deckの終焉


そんな中、アメリカに日本のコナミの社員が出張した際、ロサンゼルスのカードショップで遊戯王カードのよくできた偽物を発見。
当然コナミはその販売会社を相手に訴訟を起こすが、その際に販売会社が衝撃的な事実を述べた。


「いや、これアッパーから供給されたものなんですけど」


\プッチーン/

ついに激怒したコナミはアッパーとの契約を打ち切ろうとするが、アッパー側は「その打ち切りは契約違反である」とし、コナミ相手に訴訟を起こす。

コナミ側には「アッパーが偽造をしている」という物証が乏しかったため、裁判所もアッパーを支持し、アッパー勝訴。
裁判後、コナミはアッパーから権利を引き上げようとしたが、アッパーは無視して独自路線での遊戯王を販売しようとした。




某所でコナミ社員が偽造カードが大量に入れられたダンボールを発見。
調べを進めていく内に確実にアッパーから納入されたものだと判明、再び訴訟沙汰となる。
今度は裁判所も物証があったため、そしてアッパーの何人かの重役が偽造を認める証言をしたためコナミ側を全面的に支持。
これによりアッパー敗訴と思われたが判決が出る直前で和解、アッパーは遊戯王から完全に撤退する事となった。


余談だがこの際にアッパーの弁護士が

「現時点でアッパーのライフポイントはほとんど残っていない」

と語り、デュエリストではないのかと一部で話題になった。

ついでに、イード社のニュースサイト「アニメ!アニメ!」でこの騒動が記事になった際のタイトルが

【コナミ米国「遊戯王」TCG裁判で和解に満 足と発表】

であり、サティスファクションタウンの住人ではないのかと一部で話題になった。


当然の事だが、遊戯王TCG(OCG)では偽造カードの使用は認められていない。
だが、このアッパー社製の偽物に関しては「騙されても仕方がない」という事で特例で使用が認められている。

簡単な見分け方としては、

  • 六期の比較的前半までのカード
  • アルティメットレア
  • 1st
  • カード右下のホログラムが銀色(本来1stは金色)

以上の条件を全て満たしていればほぼ偽物である。大会で使用しても特に問題はないのだが。


これらの経緯を簡単にまとめると、こうなる。

●コナミが偽造カード発見。「イラッとくるぜ……」販売会社を訴える

●販売会社「だーってこれアッパーのだしー」

●コナミがアッパーとの契約を打ち切ろうとするがアッパーが逆ギレし訴訟、そしてアッパー勝訴
「オレの勝ちだァッ」

「なに勘違いしてやがる。まだオレのバトルフェイズは終了してないぜ!」
●コナミがアッパーが偽造をしている物証を発見

●アッパーの重役何人かが「私がやりました」と証言

●アッパー敗訴寸前でコナミと和解、遊戯王から撤退


その後のTCG


アッパー撤退以降、北米の遊戯王事情は劇的に……変わらなかった。

相変わらず大会では英語版以外使用できないし*6、封入率操作こそなくなったものの日本で活躍したカードのレアリティ格上げによる入手困難さは相変わらず*7
日本と海外での裁定の違いも当初放置、それどころかエクシーズ召喚については根本的な部分で食い違いが発生した*8

《闇の護封剣》とかは
●そもそもOCGとTCGで裁定が違う(OCGは慣習的に正しい処理、TCGではカードテキストが何故か違う)

●環境の変化でこのカードの需要が急増

●2016年の夏頃にOCGがTCGに追従する形でで裁定が変更(するも告知されておらず知名度が低い)

世界大会で裁定違い・誤解釈が発生、判明する(直前までOCG事務局や質問チャットでは旧裁定が帰ってきていた。またOCGの裁定変更が広く知られたのはなんとここが初)

●半年後の2017年2月にエラッタでOCGのみ旧裁定に変更再びOCGとTCGで裁定が食い違った
と右往左往二転三転していた。


鳴りを潜めたと思われていた海外新規のぶっ壊れカードも最近復活……と、封入率操作以外は何も変わっていないのではないか?とさえ思われる。
ただしOCGとTCGはパック販売が全く同じではなく、逆にOCGで先行して登場し2年以上経ってからTCGで登場するカードもあるので決してTCG優遇とは言えない。まあぶっ壊れだから投入時期を掴めなかったのかもしれないけど。
その後OCGとは異なるカードがホロに選ばれたり、レギュラーパックでホロ・レリーフが廃止される*9など大きく変化したが、同時にシークレットの封入率は上がっている。

2019年に発売されたRising RampageからはOCGの20thシークレットレアと同じような光り方をするプリズマティックシークレットというレアリティが追加された。
これらは20thシークレットの様にスーレア以上全てに存在するわけではなく、TCG版のシークレット・ウルレア・スーレア・字レア枠それぞれから1枚が選ばれ全4種しかないが
1st版のみの封入に加えて封入率も25箱に1枚というとんでもない低確率での封入となっている。
ただし20thシークレットは4箱に1枚の封入率にそこから16種のうち1種という確率も絡むので、決してTCGの封入率が特別酷いとは言い難い。

なによりどちらもそのレアリティだけにしかそのカードが存在しないという訳ではないため、拘るのも最高レアリティで纏めたいプレイヤーやコレクターだけである。
逆に記念とはいえOCGで10000枚に1枚、箱で換算すると約67箱に1枚しか封入されない万物創世龍は専用に設けられた10000シークレットのみで収録されてるし…。

あと大会運営という点では「リミットレギュレーションのOCG・TCGの分離」もよく槍玉に挙がる。
カードの発売時期が違う上に、プロモ・付録系は上記のハリファイバーのように使用可能になる時期が大きく変わることになるので、そもそも同じ禁止制限リストでやるのが無理があるという意見も多い。
しかし近年世界大会で使用される禁止制限リストは、「OCGとTCGのリストで一番厳しいものを適用。片方で発売されてないカードは使用禁止」という調整を放り投げた感がある物。
おかげで世界大会ではOCGともTCGとも違うメタゲームが展開されたりする。



追記・修正はアッパーのライフポイントにダメージを与えてからお願いします。
カードの偽造についてはダメ、ゼッタイ!

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最終更新:2024年01月01日 19:30

*1 海外(一部の国を除く)では、遊戯王OCGではなく遊戯王TCGと呼ぶ。本記事ではそれに倣う。

*2 ただし、これは悪いことばかりではなかった。《E・HERO ランパートガンナー》のような「まともにカードテキストを読めばそうとしか読解できない」裁定や、ポールポジション(遊戯王OCG)のような「特殊裁定や調整中出したくなければそうするしかない」裁定もあった。

*3 そもそも初代EXTRA PACKが発売されるまでは海外新規カードが日本で使えるようになるのかすら不明だった。3枚のカードだけ先行発売されたがジャンフェスプロモだったため入手困難だった。

*4 逆に「海外は高レアリティでライロ組めて良いな」といった日本人がいたらしい。隣の芝生は青く見えるということか……。

*5 プレイマットや汎用ノーマル・レアの高レアリティカードなどを賞品にしていた。

*6 こちらは前述した通り、日本でも「開催国の言語のバージョンのみ使用可能」という形でほぼ統一された

*7 ただし日本と比べるとレアリティ変更での再録機会は多い。

*8 その後も壊獣での裁定違いなどが発生している。

*9 レリーフは公認大会配布パックで存続している