ポールポジション(遊戯王OCG)

登録日:2016/03/01 (火) 09:50:00
更新日:2025/03/19 Wed 20:12:08
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●目次

【概要】

遊戯王OCG第4期パック・第3弾「FLAMING ETERNITY」…

パッケージを飾る《ネフティスの鳳凰神》《魔のデッキ破壊ウイルス》のほか、
レスキューキャット》《ライトニング・ボルテックス》など禁止・制限の経験もあるカードや《螺旋槍殺》《デス・メテオ》《罰ゲーム!》といった原作再現カードが収録されている。

アニメがDMからGXに移行する時期に発売され、パッケージから闇遊戯が姿を消したのもこのパックから。
次弾のTHE LOST MILLENNIUM以降はHERO古代の機械など、GX出身カードがメインに据えられるようになっていく。


そんな大きな転換期に生まれたこのパックに、とあるカードがひっそりと収録されていた。


《ポールポジション/Pole Position》

永続罠
フィールド上に表側表示で存在する、攻撃力が一番高いモンスターは魔法の効果を受けない。
「ポールポジション」がフィールド上に存在しなくなった時、フィールド上に表側表示で存在する攻撃力が一番高いモンスターを破壊する。

レアリティはノーマル。当時からのプレイヤーならストレージを漁れば2,3枚くらいは出てくるんじゃないだろうか。
肝心の効果はいたって単純に見える

『なになに……攻撃力が一番高いモンスターに魔法耐性が付くのか、悪くないじゃん。』

攻撃力の高いモンスターに魔法耐性を付けることによって、
ブラック・ホール》《月の書》などを無視して暴れまわらせることができ、対戦相手からすれば非常に厄介な存在になる。
しかし……

『ん、もしかしてこれ相手モンスターにも効くのか……?』

「自分フィールド上の」という記載がないため、相手モンスターに最高攻撃力を更新されるとそちらに耐性が移ってしまうというデメリットがある。
相手の大型モンスターに魔法耐性を取られたら今度はこっちがピンチだ。
だが……?

『速攻魔法《サイクロン》発動! 伏せカードを破壊させてもらうぜ!』

『かかったな、リバースカード《ポールポジション》発動! 今の対象はお前のモンスターだ!』

『なっ、俺の切り札が道連れに!?』

そのモンスターには魔法耐性と一緒に自壊デメリットも移っているため、このカードを破壊することで擬似的な除去として扱うこともできるのだ。

総じて「やや癖はあるものの、状況に応じて二つの使い方ができるカード」といったところか。
開発のコナミもおそらくはそういう使い方を想定して作ったのだろう。

















……だがこのカード、とんでもない欠陥が存在する。


次のような状況を考えてみよう。

自分フィールド上に《ブラック・マジシャン》(攻撃力2500)と《ポールポジション》、
相手フィールド上には《青眼の白龍》(攻撃力3000)が存在している。

この時ポールポジションの効果を受けているのは青眼。
ここで、攻撃力を1000ポイント上げる装備魔法《デーモンの斧》をブラック・マジシャンに装備したとしよう。

するとどうなるか。


① 《デーモンの斧》の効果で《ブラック・マジシャン》の攻撃力が3500となり、《青眼の白龍》の攻撃力を上回る。
② ポールポジションの効果で一番攻撃力の高い《ブラック・マジシャン》へ魔法耐性が移る。
③ 魔法耐性によって《デーモンの斧》の効果も効かなくなり、攻撃力が2500に戻る。
④ ポールポジションの効果で一番攻撃力の高い《青眼の白龍》へ魔法耐性が移る(=《ブラック・マジシャン》の耐性が失われる)。
⑤ ①に戻る。


無限ループが発生するのである。

上記のように「攻撃力2位のモンスターが、装備魔法などで攻撃力1位のモンスターを追い越す」場合、魔法耐性が行ったり来たりして永遠に処理が終わらない。
無限ループを発生させるコンボはいくつかある(《便乗》2枚のドローループとか)がここまで簡単に、しかも無意味で終わりのないループを生み出すカードは他にない。
上記のパターンは決して珍しい現象ではなく、汎用性の高いカードのみでデュエルしていても普通に起こり得るケースである。なのになぜそのまま出してしまったのか。おい、テストプレイしろよ。
この無限ループのせいで、発売時点までのカードをほぼ網羅しているタッグフォースシリーズにも未収録。


コナミのOCG事務局も処理に手こずったようで一時期大量の調整中項目があったが、
現在では「ループが発生する状況下ではそのトリガーとなるカード及び効果は強制効果であっても発動できない」という特殊裁定が下っている。
上の例だとループを発生させる《デーモンの斧》は発動できない、というわけだ。そもそもループの原因はポールポジションだろとか思っても言っちゃダメ。


これで一応ループ問題はあらかた解決された。
とはいえこんな扱いに困るカードをわざわざ使おうという決闘者もおらず、結局はストレージの肥やしとして忘れ去られる数多のカードの1枚となった。
逆に言えば「だからこそ笑って済ませられるレベルのネタカード」で終わっているところはある。*1



なお、参照先を元々の攻撃力になるようエラッタすればループが起きないのではないかという意見があるが、装備魔法では《進化する人類》、原作で城之内が使用し通常魔法《右手に盾を左手に剣を》、汎用性の高い戦闘補助系速攻魔法《収縮》といった元々の攻撃力を変化させる魔法カードも数もあるので、発生頻度が下がるだけで根本的な解決にはならない。*2



追記・修正はポールポジションをストレージから引っ張り出してから。











蟹頭の決闘者「…どんなカードにも、存在する以上、必要とされる力がある!」







実はこのカードを主軸としたデッキが存在する。
その名もずばり【ポールポジションロック】。上記の「無限ループを発生させる行動はできない」という裁定を利用したロックデッキである。

【ロックの作り方(一例)】

※2021年4月12日の裁定変更(できない→要相談)に伴い現在は不可能になりました。


  1. 何らかの方法でフィールド上の表側表示モンスターを一掃。
  2. 《スケープ・ゴート》を発動し、攻撃力0のトークンを4体特殊召喚する。
  3. 《ポールポジション》発動。トークン4体に魔法耐性を付与。
  4. うち1体に装備魔法《団結の力》(自分フィールドのモンスターの数×800ポイント攻撃力アップ)を装備する。本来なら攻撃力3200になるところが、魔法耐性によって0のまま。

この状態で攻撃力1~3200のモンスターがフィールドに出ると無限ループになってしまうので、裁定によりそれらのモンスターはフィールドに出すことができない。
こうしてモンスターの展開を封じている間に《終焉のカウントダウン》などで勝負を決めてしまおう、というデッキなのである。
ついでに《N・フレア・スカラベ》と上手く組み合わせれば魔法・罠を封じることもできる。

また、高攻撃力のモンスターの召喚によってロックを破られた場合は、
《マジック・プランター》や《非常食》など、《ポールポジション》をコストとしてフィールドから取り除くことができるカードと組み合わせることで、
相手の高攻撃力のモンスターに対して強力な除去効果を発揮できる。



そのほか「《邪神イレイザー》を使ってフィールドに一切のカードを出せなくする」「《無限の手札》無しで手札の枚数制限を無視する」「コアキメイルの維持コストを踏み倒す」
といろいろおかしな現象を引き起こせるため、普通のデッキに飽きてきたならぜひ組んでみてはいかがだろうか?



◆弱点

まず頑張ってロックを完成させたとしても、それほど強度は高くないという点。

サイクロン》を始めとする魔法・罠除去1枚で瓦解するほか、
無限ループを発生させないモンスターは普通に出せる(場合によっては魔法耐性を奪われてこちらがピンチになる可能性も)。
また、無限ループを発生させるような攻撃力のモンスターも裏側守備表示でなら出すことが可能。

また、自身もモンスターが出せなくなるため、ロック系のデッキと相性の良いモンスターも出しにくくなる。

またモンスターに頼らない【バーン】【パーミッション】相手も分が悪い。ロックを維持するだけで勝てるほど甘くはないのだ。

そしてなにより特殊な裁定を利用したデッキなので、あらかじめ相手に説明しておかないと揉めること必至。
いくつかの効果によりループが発生するとき、どの効果が発動できなくなるかを把握しておかないといけない。
大会ならジャッジの判断を仰いでもいいが、いまだ調整中項目も多くかなりジャッジ泣かせなデッキである。



発生の可能性が高いと思われる調整中のケースとしては、裏側守備表示モンスターへの攻撃が挙げられる。
例えば

自分フィールド上に《デーモンの斧》を装備した《ブラック・マジシャン》(攻撃力2500)と《ポールポジション》でロックを作成。
相手のフィールドに裏側守備表示モンスターが一体。
このときに《ブラック・マジシャン》で裏側守備表示モンスターを攻撃する。

さて、このとき相手の裏側守備表示モンスターが《バスター・ブレイダー》(攻撃力2600・守備力2300)であった場合は
ロック発生中に裏側守備表示モンスターへ攻撃する場合にはバトルが終了するまで《ポールポジション》の効果対象は更新されない』という裁定が存在するため
無限ループは発生せずに、《バスター・ブレイダー》が破壊されてバトルは終了する。

では裏側守備表示モンスターが《青眼の白龍》(攻撃力3000・守備力2500)であった場合はどうなるか。
裁定により戦闘中に無限ループは発生しない。
しかし、青眼の白龍の守備力とブラック・マジシャンの攻撃力が等しいため、戦闘終了後も《青眼の白龍》は場に残る。
そのため、この項目の最初に例示した無限ループが発生してしまう。
このような場合には対処法は決められておらず、ジャッジの判断に委ねられている。

つまり、無限ループを発生させるような攻撃力と戦闘破壊されないだけの守備力を裏側守備表示のモンスターを攻撃したときの処理は調整中である。

もし、【ポールポジションロック】を用いる場合には裏側守備表示モンスターに注意しよう。

追記・修正はポールポジションロックを決めてから。











KONAMI「もうやめて!とっくに裁定のライフはゼロよ!」




【現在の裁定】

めんどくさい裁定とそれを悪用利用したデッキが話のネタにされていた《ポールポジション》だったが、2021/04に裁定の変更が下された。

Q:装備魔法で強化されたモンスターが、フィールドで一番攻撃力が高い状態になりました。
  この場合、魔法カードの効果を受けないモンスターが効果を受けている事になり、矛盾が発生しませんか?
A:ご質問の状況がデュエル中に発生した際には、対戦相手の方と話し合って進めていただいたり、大会中であれば審判の判断で進めていただけましたら幸いでございます。(21/04/12)
遊戯王カードWikiより引用

……事実上の裁定放棄宣言である。まぁ仕方ないと言えば仕方ないのだろう。
公式サイトのカードリストにおいてもこのカードに関して書かれているのは「破壊効果がチェーンブロックを作らない」ことだけで、Q&Aは一切記載されていない。
これにより「無限ループを起こす行動は出来ない」という裁定も消滅したため、これに依存していた上記の【ポールポジションロック】も実質終焉を迎えることとなった。
もし使いたいのであれば裁定通りしっかりと相手(および審判)と話し合い、了承を得たうえでプレイすべきだろう。


【余談】

  • 日本と海外では裁定が異なっていた。
かつて、アメリカでは
ループにつながる任意の行動は禁止、ルール上の処理や強制効果によるループが発生するときは、
モンスターの破壊を伴わずに《ポールポジション》を破壊してループを強制終了させる。
という裁定が存在していた。
こんなデッキで世界を目指す決闘者がいるかどうかは別として…

  • ゲーム作品において
遊戯王ゲーム作品は処理がきちんとしていることで有名だが、流石にこの複雑怪奇極まり最終的に放棄された裁定はプログラム的に実装困難だったらしく全てのゲーム作品で未収録
似たような存在としては《霊魂消滅》などがある。


追記・修正は本カードの裁定を常に把握できる方にお願いします。

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最終更新:2025年03月19日 20:12

*1 同じくルールで揉めに揉めた《光と闇の龍》《王宮の弾圧》は、ポールポジションよりこんがらがってはいなかったものの「遭遇頻度が高すぎる」ことでいくつもの問題が生じた

*2 余談ながらルールが超厳格なことで遊戯王プレイヤーにも有名なMtGでは、「種類別」と「依存」という2つのルールでこの手の疑問を解決できるようになっている。ただし理解するのがめちゃくちゃ難しい