メタゲーム

 登録日:2011/06/27(月) 15:42:27
更新日:2024/01/29 Mon 10:16:40
所要時間:約 3 分で読めます




メタゲームとは、主にカードゲーム等でよく見られる、流行の変動による駆け引きの事。
複数のカード等の中からプレイヤーが自由に選択でき、それぞれに相性が存在する場合にメタゲームが成立する。
「メタ」とは「高次の」という意味の接頭語で、メタゲームとはつまり「ゲームの1つ上の、外側の世界の」ゲームということである。
ゲームを始める前の、ゲームの外側で駆け引きを繰り広げていることからこう呼ばれる。



概要

具体的には、
  • 「最近強力な性能のAが流行ってるから対策としてAに強いBの構築にしておこう」
  • 「AがBに駆逐されてほとんど見なくなったからBに強い構成に変えよう」
といった感じに、その時の流行り廃りに合わせて構成を変えていく思考である。

初出はMagic The Gathering(MTG)
からであり、後に他のカードゲームでも使われるようになった用語である。
また最近ではカードゲームだけでなくポケットモンスター等の環境の概念を持つ他ジャンルの対戦ゲームでも使われる事が多い。

あらゆるデッキ構築には相性というものが存在し、「遅いデッキには不利だが速いデッキには有利」といったように得手不得手がある。
当然環境に有利な相手が多ければ勝率は上がるし、不利な相手が多ければ勝率は下がる。
つまり、対戦環境を的確に分析して数が多いデッキへの対策として効果的なカードやデッキを使用することが勝利への近道となる。
それだけでなく、予め採用され得る対策カードを読み、更にそれを対策したカードを採用するということも時には要求される。
このような盤外での駆け引きを、世に「メタゲーム」と呼ぶ。


略して「メタ」、動詞として使う場合は「メタる」とも言う。
そしてメタゲーム内でその時に特に注目されているカードやアーキタイプ等の事を「トップメタ」と呼ぶ。

また時にはメタゲームの流れに関係なく「○○に強い構成」という意味で「○○メタ」という使われ方をする場合もある。

流行とは常に変化していく物であるため、当然メタゲームの内容も時期によってコロコロ変貌する。
時にはその変貌の末メタゲーム初期の状況に戻る事もある。このような状況を「メタ(環境)が一巡した」という。

※例
  1. 強力なAが流行し猛威を振るう
  2. Aに対するメタとしてBが登場
  3. AがBに駆逐された結果Bが環境の主役になる
  4. 今度はBに対するメタとしてCが登場
  5. Cの増加によってBが駆逐される
  6. このCはAに対するマークが薄いので、再びAが流行→1に戻る(一巡した)


このようなメタゲーム的な考えは特に全国大会等の大規模な環境において非常に重要で、実際大会優勝者はメタゲームを意識したような構成をしている場合が多い。
メタゲームを征した者こそが大会を征するといっても過言ではない。

ただしメタに特化しすぎるとメタ外の普通の構成に当たった場合にあっさり落とされる可能性もあるため注意が必要。メタ具合はほどほどに。
また、メタを意識しすぎるあまりその構成の本来のパワーを発揮できなくなり、有利マッチであるはずの試合を落とすようになってしまうということも考えられる。
なので、「特定のデッキには強烈に刺さるがそれ以外には役に立たないカード」よりも「時間稼ぎ程度にしかならないが自分の動きを阻害せず概ねどのデッキにも刺さるカード」の方が採用されやすく、場合によってはメタカードに割く枠が余りないので割り切って採用せずに本来の動きを優先するという事もあり得る。
闇雲に対策を積めば良いというわけではなく、いかにその構成のパワーを落とさずに環境に立ち向かうかが重要であるため、実際にはかなりの構築力と環境予想能力を要求されることになる。

時にはそのような状況を逆手に取りあえて、主流派でも対主流派でもない完全にメタゲームから外れた構成をする者もいる。
いわゆる「メタる事」よりも「メタられない事」を優先した「わからん殺し」が目的の構成であり、これも一種のメタゲームである。通称『地雷』。
こちらも生半可な構成では流行りの構成たちのパワーに蹂躙されるだけであり、それらを翻弄できるようなギミックと対策を練られるだけの相当の腕前が必要となる。
  • 「ライブラリー破壊を狙うデッキで出場したらバベル(MtG)に当たった」「クリーチャーデッキ全盛の大会に出場したらエンチャントレスのコンボデッキに3ターンで吹き飛ばされた」などは典型的な地雷の被害例である。なおどちらも実話

また前述の通りメタゲームは流行によって常に変化するため見極めが非常に難しい。
「○○をメタろう!」と思った直後にメタ環境が変化し「メタる」つもりが逆に「メタられた」という事も時にはあり得る。
「トップメタのミッドレンジデッキ同士でお互いにメタりあった結果デッキが重くなりすぎ、次点にいたアグロデッキに轢き殺されるプレイヤーが続出」なんて実話も。
基本的には「今のメインデッキより1手遅いか2手速いデッキは強い、1手速いか2手遅いデッキは弱い」とされている。
上の例で見ると「アグロより1手遅いミッドレンジは強い→ミッドレンジより1手遅いコントロールは強い→コントロールより2手速いアグロは強い」と回っているのである。

こうなると、今の環境を把握するだけでなく、今後の環境の変化を読むことも求められてくる。
とはいえ「メタゲームの先に行き過ぎる」ということも注意。上記の例で言えば「メタゲームを予想したのは良いが、メタゲームが初期段階の大会にAに強いBに勝てるCを持ち込んだら、まだAがたくさんいてボロ負けする」ということがある。
メタゲームには高度な情報収集能力や先見の明が必要と言えるだろう。

ちなみにメタゲームは主に大会等の大規模な環境前提で語られる事がほとんどだが、当然ながら特定の地域*1や仲間内等のコミュニティ内でも大小の程度はあれメタゲームは発生する。
なので、大型大会で勝つ事を想定したデッキをショップ大会や仲間内の勝負に持ち込んだは良いがメタゲームが違い過ぎてボロ負けするなんて事も普通に起こる。
大型大会で優勝したデッキも"大型大会という特定の環境で勝つ事に特化している"と言えるので結局の所別途調整は必要になる。
まぁ環境トップデッキってメタ張らなくても同じTierのデッキ以外には大体勝てるから環境トップな事が殆どなのだが。
ただし特定の個人に対する徹底的なメタ(対人メタ、顔メタ)はマジで嫌われるので仲が良くてもほどほどに。デッキ変えられてボロ負けすることもあるぞ。

近年主流になっているオンラインでのランクマッチでは、強力な構成の流行が顕著になった分ますますメタの推移を読むことが重要になっている。
統計サイトなどでメタゲームの可視化が進んだ結果、「現時点でのメタゲーム」は誰でも見れるようになったので、その先を読む力が求められるようになった。



メタゲームの具体例


●12Knights(MtG)

MtG史上でも有名な大会、世界選手権96(通称ネクロの夏)。
手札破壊と軽量クリーチャーで速攻をかけ、手札は《ネクロポーテンス》で補充。
相手が応戦してきたら《ネビニラルの円盤》で場をリセットし優位を固める【ネクロディスク】が席巻。
大会上位のほとんどが【ネクロディスク】という惨状となったが、その大会を制したのは【ネクロディスク】ではなく、
《ネクロポーテンス》を確実に破壊することと同じコストでクリーチャー同士の質で上回ることを重視した対ネクロデッキ【12Knights】だった。

【12Khights】自体ははっきり言ってしまえば普通の【白ウィニー】であるが、
当時大流行して環境を支配していた「黒の呪文やクリーチャー」からほぼ無敵となるプロテクション(黒)持ちを大量採用し、
【ネクロ】が設置した《ネクロポーテンス》や《ネビニラルの円盤》、ライフを供給する《象牙の塔》や《Zuran Orb》を残さず破壊するために置物除去をメインサイド合わせて9枚も採用。
徹底的に【ネクロディスク】に対して優位になるように構築されていた。当然他にもいた【青白コントロール(ステイシス)】や【アーニーゲドン】への対策もバッチリ。

対して【ネクロディスク】のなかでも決勝まで残った最強の【ネクロディスク】もまたプロテクション(黒)持ちの白ウィニーの到来を予測し、プロテクション(白)持ちのメタのメタカードを用意する高度なメタゲームでもあった。
それでもネクロだらけという異常環境とそれを読み切ったメタゲーム、そして奇跡のトップデッキがこのデッキを世界一へと押し上げたのである。

メタゲームの極地といわれた伝説のプロツアー東京01(MtG)

時は2001年。何百万円もの高額賞金のかかったプロツアーが日本で開催されることとなった。
フォーマットはインベイジョンブロック構築(インベイジョン+プレーンシフト)。

とりあえず赤いデッキで出場しろ。
万人がわかりきった暗黙の了解だった。

火炎舌のカヴー/Flametongue Kavu (3)(赤)
クリーチャー:カヴー(Kavu)
火炎舌のカヴーが戦場に出たとき、クリーチャー1体を対象とする。
火炎舌のカヴーは、それに4点のダメージを与える。
4/2

Void / 虚空 (3)(黒)(赤)
ソーサリー
数字を1つ選ぶ。点数で見たマナ・コストが選ばれた数字に等しい、すべてのアーティファクトとすべてのクリーチャーを破壊する。その後プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは、自分の手札を公開し、土地でないカードのうち、点数で見たマナ・コストが選ばれた数字に等しいカードを、すべて捨てる。

当時を代表する程のパワーカードが存在していたからだ。

トップメタの【赤緑ステロイド】に搭載された《火炎舌のカヴー》はタフネス4以下のクリーチャーを環境から駆逐した。
【赤黒void】系デッキに搭載された《虚空》は場のみならず手札さえも蹂躙する。

赤ちゃんでもわかるほど強かった。強すぎてどうしようもなかった。

だが、逆転の発想が生まれた。

赤が異常に強いならそれをメタれば優勝できる。

何百匹もの《火炎舌のカヴー》をなぎ倒してプロツアー東京01の決勝にたどり着いたのは、赤を殺すための2つのメタデッキだった。

①優勝者ズヴィ・モーショヴィッツの【ソリューション】


Crimson Acolyte / 真紅の見習い僧 (1)(白)
クリーチャー — 人間(Human) クレリック(Cleric)
プロテクション(赤)
(白):クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時までプロテクション(赤)を得る。
1/1

Galina's Knight / ガリーナの騎士 (白)(青)
クリーチャー — マーフォーク(Merfolk) 騎士(Knight)
プロテクション(赤)
2/2

優勝者ズヴィ曰く「ソリューションとは"解答"を意味するデッキ名さ。自軍全体をプロテクション(赤)に染めることが、赤すぎるプロツアー東京の解答だよ」
まさにメタゲームの極地に達したデッキである。
決して一線級のカードとは言えない《真紅の見習い僧》をフル投入することはデッキビルダーとしての勇気と技量が問われる。
このほかにも《万物の声》《翻弄する魔導士》と各種カウンター呪文でエゲツない封殺を敢行する。理論上、赤いデッキは何もできなくなる。

②準優勝者 藤田剛史の【The Rats】(【カウンターシャンブラー】とも)


Ravenous Rats / 貪欲なるネズミ (1)(黒)
クリーチャー — ネズミ(Rat)
貪欲なるネズミが戦場に出たとき、対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーはカードを1枚捨てる。
1/1

はっきり言おう。
弱そう!!
一見ハンデスは相手が選べるため効果も薄く、戦力としても《火炎舌のカヴー》の格好の的にしかならなそうなクリーチャー。
しかし実態は必要なマナが少ない分だけ先に出られるのでハンデスにより微妙に重い《火炎舌のカヴー》を牽制。出た後も《怒り狂うカヴー/Raging Kavu》(3/1瞬速速攻)、《疾風のマングース/Blurred Mongoose》(2/1被覆)等と勇敢に相打ちと、いぶし銀の活躍を果たした。


Urborg Shambler / アーボーグのシャンブラー (2)(黒)(黒)
クリーチャー — ホラー(Horror)
他の黒のクリーチャーは、-1/-1の修整を受ける。
4/3

自分にも影響を与えるため、一旦出してしまうと上に挙げたネズミも殺してしまうディスシナジーがある。
だが【黒赤Void】にはネズミでは対処しきれないタフネス1の黒クリーチャーも多数入っていたためにディスシナジーの悪影響を越えて劇的に刺さった。

再生がやっかいなこいつとか。
Nightscape Familiar / 夜景学院の使い魔 (1)(黒)
クリーチャー — ゾンビ(Zombie)
あなたが唱える青の呪文と赤の呪文は、それを唱えるためのコストが(1)少なくなる。
(1)(黒):夜景学院の使い魔を再生する。
1/1

墓地から回収されるのでカウンターが役に立ちにくいこいつとか。
Pyre Zombie / 火葬のゾンビ (1)(黒)(赤)
クリーチャー — ゾンビ(Zombie)
あなたのアップキープの開始時に、火葬のゾンビがあなたの墓地にある場合、あなたは(1)(黒)(黒)を支払ってもよい。そうした場合、火葬のゾンビをあなたの手札に戻す。
(1)(赤)(赤),火葬のゾンビを生け贄に捧げる:クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。火葬のゾンビはそれに2点のダメージを与える。
2/1


自分側の小さな損失より相手側の大きな損失を優先した判断である。すべてはメタゲームのために。
さらに、サイドボードの調整のために1日100戦もこなすなど死ぬほどのやり込みの結晶である。
製作者本人のコメントでは「メタゲームを体で理解する・・・というのを身をもって体験したわけだったが、これは効果覿面だった」とある。

環境最強デッキを試行するためあらゆるデッキを試し始めたのがプロツアー開催日の40日前。
毎日毎日打ち込んで、メインボードが完成したのが10日前。
そこから限られた時間をフル活用してサイドボードを完成させプロツアー開催日を迎えた。


●機動要塞 トリケライナー(遊戯王OCG)

2013年夏場の遊戯王は征竜で埋め尽くされていた。当然ながらこの年の世界大会も当然のごとく征竜だらけ。

世界大会の3位決定戦ももちろん【征竜】のミラーマッチ。
この試合において、このカードをプレイしたプレイヤー以外の全員が困惑するカードが登場する

機動要塞 トリケライナー
効果モンスター
星6/闇属性/機械族/攻1600/守2800
(1):相手が3体以上のモンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚に成功したターンに発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したこのカードは、他のカードの効果を受けず、
お互いのスタンバイフェイズ毎に守備力が500ダウンする。
この効果は相手ターンでも発動できる。


カードショップの100円ストレージで眠っているようなマイナーカードであり、このカードが出た瞬間ジャッジがスマホで効果を確認、相手も同様に効果を確認するといった光景が見られた。

しかし、このカード、実際のところ驚くほど【征竜】に刺さった
特殊召喚を何度も行うデッキなので簡単に手札から特殊召喚でき、この方法で出すと他の効果を受けない完全耐性を獲得するのでビッグアイによるコントロール奪取、ドラゴサックやブラスターの破壊などはすべて受け付けない。
さらに2800という守備力は当時の主力モンスターが突破できない絶妙な数値。つまりこのカードで確実に1ターンを凌ぎきることができたのである。

1ターン凌ぎきれば【征竜】の展開力で巻き返すことは容易。3ゲーム中2ゲームで登場したトリケライナーだが、そのいずれの試合も劣勢をトリケライナー1枚で凌いで盤面をひっくり返している。
更にそのうち1試合はこれまたEXデッキに刺していた《カラクリ将軍 無零》の効果で守備表示モンスターをひたすら攻撃表示にして対戦相手を殴り倒している。
無零のS素材には機械族が要求されているが、トリケライナーは機械族。つまり確実に場に残るトリケライナーと適当なレベル1チューナーがいれば出せる。

ストレージの隅にあったカードが環境トップを止める盾になった、メタの局地とも言うべきストーリーである。

しかし実はこのカード、当時の日本では割とメジャーなメタカードであった。
ただし世界大会ではあまり見られなかったあたり、世界ではあまり認識されていなかったようだ。



●【チューザビート】(デュエル・マスターズ)

猫も杓子も《ボルメテウス・サファイア・ドラゴン》、という環境だった日本一決定戦に不意に現れて優勝を掻っ攫っていった全くメタ外のビートダウン地雷デッキ。
《お騒がせチューザ》の呪文メタ能力に加え、《結界するブロークン・ホーン》・《巡霊者キャバルト》という闇文明の呪文(主にサファイアを登場させるための《インフェルノ・ゲート》)に対するメタを徹底したデッキ。
メタ対象外にはただのバリューの低いカードの束にすらなってしまいかねない割り切った構築だが、その分サファイアデッキへの殺意は満点で、【サファイア】側からすれば回答がろくにないということすらあり得たほどだった。



伝説となったプロツアー東京01の教訓がある。
一番大切なのは、環境最強デッキを使うことではなく、環境最強デッキをメタることである。




対戦環境を分析しながら追記・修正お願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • メタゲーム
  • 対戦環境
  • 流行
  • 対策
  • 対応
  • 駆け引き
  • カードゲーム
  • TCG
  • DCG
  • MtG
  • メタカード
  • トップメタ
  • ガチメタデッキ
  • ガチムチデッキ
  • メタ
  • メメタァ
  • 対人メタ ←ダメ絶対
  • アンチデッキ
  • 地雷デッキ
  • ポケモン
  • ネクロの夏
  • プロツアー東京01
  • 絶対殺すマン
  • 流行り廃り

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年01月29日 10:16

*1 というか大会規模のメタゲームでも余程極端な環境でなければプレイヤーの嗜好等様々な要因で地域差が発生する事は多い。