王様達のヴァイキング

登録日:2024/05/17 Fri 16:58:00
更新日:2024/05/26 Sun 02:00:35
所要時間:約 10 分で読めます




僕は是枝一希 19歳!!
高校は中退しました!

今は特別捜査官をやってるけど、最終目的は…

世界征服です!!


『王様達のヴァイキング』はハッカーを題材とした漫画作品。
作者はさだやすで、本作が初の連載作品となる。名字で察した人も多いだろうが、かの名作相撲漫画『ああ播磨灘』で知られるさだやす圭の娘さんでもある。
2013~2019年にビッグコミックスピリッツで連載されていた。単行本は全19巻。


+ 目次

概要


天才的なハッキング能力を持つが生活力・社交性その他諸々が壊滅的な少年・是枝一希が、酔狂な投資家・坂井大輔と出会い、様々なサイバー犯罪と戦っていく…というストーリー。

ストーリー協力として、SFアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズの脚本などで知られる深見真を迎え、主に作中で発生するサイバー犯罪やそれと戦う警察組織の描写を補強している。
また、漫画内に登場するプログラムのソースコードやハッキング・クラッキング技術などIT全般の描写に関して、現役のエンジニアによる監修を受けているのも本作の特徴。
IT業界の技術的な『リアルさ』と、漫画らしいエンタメ性のある事件を扱う『派手さ』の両立を目指した作品となっている。

作者のさだやす自身はIT業界にあまり明るくなく、
  • 元々、変人やアウトローな人物が好きだった
  • 担当編集から「さだやすさんの描くブッ飛んだ天才が見たい」とのオーダーがあった
  • NHKのドキュメンタリー番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』でGoogleのエンジニアを見て、天才的な頭脳を持ちながら変人が多いIT業界に興味をもった
…といった流れで天才ハッカーを題材とした漫画を描くに至ったとのこと。

当初、作者はITエンジニアについて「縁の下の力持ち」程度の認識であったが、作品を執筆するうちに「エンジニアこそが世界を動かしている」と認識を改めたとのこと。
物語が進むにつれ、そういった作者の考え方の変化、エンジニアへのリスペクトが作品内でも随所に見られる。


あらすじ


ある夜、出資していた会社の上場記念パーティーを満喫していたエンジェル投資家の坂井大輔は、とあるニュースを聞いてパーティーを早々に抜ける。
相次いで発生する、消費者金融へのサイバー攻撃。
それを仕掛けた凄腕ハッカー(クラッカー)たちに興味をもった坂井は、出資先の一つである株式会社ヘッジホッグのエンジニアに調査を依頼。
ヘッジホッグメンバーの尽力により、犯人たちがあえて残したと思われるメッセージを受け取った坂井は、その潜伏場所と思われる建物へ単身で赴く。

坂井がたどり着いた場所───そこは、寂れたレンタルビデオ店だった。
坂井はその店で一人の少年と出会う。
少年は是枝一希といい、消費者金融へのクラッキングは彼による単独の犯行だという。
是枝の高いスキルに俄然興味を抱いた坂井は、彼をビジネスの世界に誘う。

「IT業界じゃ、下手したら一人の力で10億人、20億人の相手を動かす! そんな世界は他にないだろ!!」
「だから、つまらん遊びで満足するな! 楽しいと(ラク)するは違うんだ!」

頭の中を実現できる“手”を持ちながら、それをもて余している是枝に道を示そうとする坂井だが、是枝は「僕はこのままでいい」とそれを拒む。
両親もおらず、養父も亡くなり、コンビニでバイトしては3回もクビになり、半ば自暴自棄になっていた是枝に、坂井が示す道はまぶしすぎた。

PC(これ)で失敗したら?」
「これを仕事にして、もし嫌いになったら?」
「これが…」

「PCが、僕の全てなんです。」

そんな是枝の声を「バカか、お前は」と一蹴する坂井。

「それしかないなら…それしかないんだろ。」
「選べ。ラップトップ持って俺と来るか、次のコンビニに電話するか。」
「さぁ、お前のその手は 本当は何がしたいんだ?」

これは、後に王冠を抱くことになる二人の、宝探しの航海記。




登場人物


主人公

  • 是枝 一希(これえだ かずき)
「攻撃してきてる奴らを潰してもいいなら…僕を…」
「僕を、使ってください。」

高校を中退した18歳(物語開始時点)。
寂れたレンタルビデオ店で愛犬256(ニゴロ)と暮らしている。
両親はおらず、養父も他界したため一人暮らし
Web上でのハンドルネームは『zer0(ゼロ)』。

数学が得意で、PCスキルも高く天才的なハッキング技術を持つ。
しかし数字とPC以外のことは軒並み苦手で、何のバイトをやってもすぐクビになるほど要領が悪い。
特に人の気持ちを察すること・自分の考えを伝えることを不得手としている典型的なコミュ障。

集中力が凄まじく、好きな作業に没頭しているときや深く考えこんでいるときは周囲の雑音が一切聞こえなくなり、凄まじいパフォーマンスを発揮する。
が、それもあって人の話をちゃんと聞いていないことも多い。
普段はおどおどした態度が多く挙動不審だが、PCを相手にすると本来の攻撃的な性格が顔を出す。

その才能を投資家の坂井に見出だされ、後にサイバー犯罪の専門家として警察に技術協力することとなる。
元が破壊者(クラッカー)気質なだけに『攻撃的なセキュリティ』を持ち味としており、単に敵の攻撃を防ぐのではなく、二度と攻撃できないように攻撃者を叩きのめすような“攻めて守る”手法を得意とする。

好んで用いる言語はC++。後にValkyrjaの影響でRustも使用している。
使用PCは2005年・IBM製のThinkPadで、OSにLinuxを積んでいる。


  • 坂井 大輔(さかい だいすけ)
「俺は世界征服がしたい、お前の手を使って。」

スタートアップ企業・ベンチャー企業を中心に投資を行うエンジェル投資家。40歳。
非常に頭が切れる上に弁が立つため、交渉事を得意とする。
またその職業柄、交遊関係がかなり広く、多種多様な業界に知り合いがいる。
その人脈を駆使して是枝の類希な才能をいち早く見つけ出し、自身の投資先の一つとして抱え込んだ。

豊富な人生経験もあってかコミュニケーション能力は傑出しており、是枝の支離滅裂な発言にも動じずに会話を成立させることができる。
そのため、是枝の発言に面食らっていることが多い周囲の人々からは「すげぇな」としばしば感心されている。

趣味は映画鑑賞で、自宅兼オフィスの坂井ビルにはシアタールームがあり、内装には映画マニアとしてのこだわりが詰まっている。
かつてはDVDの並行輸入サービスを立ち上げた起業家であり、一時は借金に追われ極貧生活を送っていたが、最終的に会社を20億で売却することに成功した。
その後、「新しいことをやろうとする人間に自分の金と経験を活かしてもらいたい」との思いで、その金を元手にエンジェル投資家に転身する。

私生活はかなりだらしなく、脱いだ服はその場に放置しまくる上、家では下着姿で過ごしていることも多い。
実家は旅館を経営しており、仲の良い兄が一人いる。
普段は裸眼だが、文字を読む際など時おり眼鏡をかける。
バツイチ子なし。元嫁は数少ない苦手な相手。


是枝・坂井の関係者

  • 加藤 剛(かとう つよし)
「お前といると退屈しねーんだもん。」

電機メーカーに勤める営業職。26歳。
是枝の唯一の友人で、ガタイが良いため是枝からは「ゴリラ君」と呼ばれている。
PCマニアで、加藤が高校生の頃に当時小学生だった是枝と出会い、彼のプログラミングセンスに魅了される。
それ以来10年の付き合いがあり、PC関連以外何もかも不器用な是枝のことをいつも気にかけている。
あの是枝が自然体で会話できる貴重な相手。


  • 唐沢・南雲・西・渡部(株式会社ヘッジホッグ)
「コレエダスパコン欲しいッ!リスク負ってでも今欲しい!!」

坂井の投資先のひとつ。
たった四人の会社で、社員はいずれも20代前半と若く、会社というより大学のサークルのような雰囲気。
だが、優れたエンジニア集団であり、SNS関連のサービスを立ち上げて順調に会社を経営している。
オフィスは坂井の自宅であるビル内に構えており、坂井が脱ぎ散らかした服の片付けなど身の回りの世話もしぶしぶ行っている。

坂井の指示で、多発する消費者金融のシステムエラーについて分析し、クラッキングをしていた是枝の存在を突き止めたのも彼ら。
是枝のずば抜けたスキルの高さについてはよく理解しており、彼の変人ぶりにやや振り回されつつもフレンドリーに接する。


  • 玉山(株式会社ゲームビット)
「こんな奴らにも、俺らのゲームで遊んでほしかったんだけどなぁ…」

坂井の投資先のひとつである、社員数たった14人の小規模なゲーム開発会社の社長。
出資者である坂井に「成金ジジイ」と吐き捨てるほど口が悪いが、坂井本人は「玉山が吠えるほど良いゲームができる」として気にしていない。


警察関係者

  • 神崎 翔太(かんざき しょうた)
「俺ら狂犬同士、がんばろうぜ!!」

警視庁刑事部捜査二課に所属する若手刑事。
熱血漢で、正義感のままに突っ走る性格。
一方、頭は切れるほうで、取り調べでは言葉巧みに相手から情報を引き出す。

警察関係者としては初めて是枝の技術力に目をつけた人物。
現代の知能犯を相手するには是枝のような存在が必要不可欠と考え、彼を民間の協力者として捜査員に加える。
共に仕事をする内に是枝のことを「相棒」と呼ぶようになるなど、全面的に信頼を寄せるようになる。
趣味はゲームで、FPSなどを好む。


  • 藤井寺 絵美(ふじいでら えみ)
「くそおっ!! あンのクズ刑事ぃぃ!!」

神崎と同じく捜査二課所属の若手女性刑事。
レスリング部所属でケンカにも強く、並みの男なら即座にねじ伏せてしまう。声がデカい。
先輩の神崎からはパシリに使われたりと扱いが雑。


  • 衣笠 真琴(きぬがさ まこと)
「コメンテーターはあなた達を“デジタル音痴の能なし集団”と呼んでいたわよ。
実際、そのとおりだったと私も思います。」

捜査二課を纏めあげる管理官。神崎や藤井寺の上司。35歳。
警察組織では異例の女性キャリアで、父親は警察庁OB。
常に冷静で腹の底が見えないため、神崎は彼女をやや苦手にしている。


  • 丹羽 久嗣(にわ ひさつぐ)
「残り38分…あとは思い切り楽しめ!!」

警視庁生活安全部サイバー犯罪対策課に所属する刑事。
神崎とは警察学校の同期で、優秀な頭脳と身体能力を持つ。
サイバー課は刑事部(主に捜査二課)に仕事を取られがちなため、丹羽は実力を発揮する場を与えられずにくすぶっている。

当初は是枝を危険因子とみなし排除しようとするが、後に和解。
是枝・神崎・丹羽のトリオで様々なサイバー犯罪に立ち向かっていく。


ハッカー・他

  • laughingcat(笑い猫)
「大好きだよ『zer0』!!」

ダークWeb上で“武器商人”と呼ばれるクラッカー。
飄々とした態度の青年で、笑顔を絶やさない。
ハッキング・クラッキングに関しては是枝に匹敵する実力を持つ。
様々なウイルスやマルウェア、違法ツールなどを開発し、それを売りさばくことを生業としている。
真に恐ろしきは卓越した演技力にあり、相手の心理的な隙につけこんで情報を盗みとる“ソーシャルエンジニアリング”に関しては天才的な腕前。

是枝の実力に惚れ込み、彼を仲間に引き入れようと画策する。
是枝曰く、laughingcatのコードは非常にクセが強いらしく、意図的に無意味な処理を挟んでいたりと明らかに“わざと遊んでいる”コードであるが“ちゃんと動く”とのこと。
彼の作成したウイルスのソースコードを読んだ是枝は、その処理の気持ち悪さから思わず吐いてしまった。
一方、laughingcatも自身の歪なコードをきちんと読めた是枝に対し「相当な変態」と評価した。


  • Valkyrja(ヴァルキュリヤ)
「私のロンダリングのシステムは、果てなき計算の先の産物なの。
誰にも汚すことはできないのよ。」

laughingcatとは顔見知りで、彼と同等の実力を持つ女性クラッカー。
ネットゲームを悪用したマネーロンダリングシステムを開発し、様々な“汚い金”の資金洗浄を行っている。
表向きの職業はソムリエで、坂井のお気に入り。

主な使用言語はScala、Rustなど。
また関数型プログラミングにこだわりがある。

是枝曰く、Valkyrjaのコードは細部に至るまで綿密に計算された美しい数式のようなもので、とにかく綺麗で隙がないとのこと。
是枝は彼女のコードにかなり惚れ込んでおり、「音楽みたいで、雑音がなく計算音だけが静かに頭に流れてくる」と最上の賛辞を贈っている。


  • 蘇芳 正哉(すおう まさちか)
「私は“王様”になりたいんだよ。」

次期総理と目される、経済産業大臣。
陸・海・空・宇宙に続く“第5の戦場”であるサイバー空間で日本が優位に立つために、日本の電子大国化を目指している。



「こんのォ…アイツまた白紙化(荒らし)してやがった!!」
「おい是枝!次やったらクビだからな!!」
「どうして追記・修正できないんだ!?お前ほどの腕がありながら!!」


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