羽咲有千夏(はねバド!)

登録日:2024/05/25(土) 16:35:06
更新日:2024/11/24 Sun 21:57:31
所要時間:約 15 分で読めます




概要


はねバド!」の登場人物。
アニメ版の担当声優は大原さやか
原作とアニメ版とで設定が大幅に異なる人物である。

本作の主人公・羽咲綾乃の母親で、バドミントンの元プロ選手。旧姓は「神藤」。
中学時代の綾乃は「神藤綾乃」という登録名で大会に出場していた*1
日本人としては極めて珍しい身長175cm以上の長身の女性*2で、巨乳

幼少時からバドミントンにのめりこみ、23歳の頃に全日本選手権女子シングルス部門で初優勝を果たすと、そこから10年連続優勝という前代未聞の大記録を打ち立てる。
そして25歳の頃に幼馴染の羽咲心太朗(アニメ未登場)と結婚し、一人娘の綾乃を儲ける。
その際に友人から綾乃を自分と同じプロのバドミントン選手として育てるのかと問われるものの、この時の有千夏は

「私は愛の無い育児はしたくない」

などと、否定的な考えを示していた。
それは綾乃を真剣にプロのバドミントン選手として育てようとするならば、時には母親としてではなく指導者として、綾乃を物凄い剣幕で怒鳴り散らしながら、厳しく突き放すような指導をしなければならなくなる時が、いずれ必ずやってくるだろうから。
また仮にバドミントンでプロになれたとしても、それだけで食べて行ける者など一握りでしかない。それどころか勤続年数が一般企業よりも遥かに短く、突然の怪我や病気によって引退を余儀なくされてしまうリスクだって付きまとう。
そんな事になる位ならば、綾乃にはバドミントンとは無縁の、ごくごく普通の平凡な日々を過ごしてほしいと、その時の有千夏はそう考えていたのだ。

だがある日、幼少時の綾乃に遊びのつもりでバドミントンを教えていた際…有千夏は綾乃がその身に秘めた、バドミントンの凄まじいまでの天賦の才に気付いてしまう。











そう…。
「気付いてしまった」のだ…。











この時から有千夏は「天才は作れる」という持論の下、まるで何かに取り憑かれてしまったかのように、一転して綾乃をプロのバドミントン選手にする為に育てようとしてしまう。
そして有千夏からの英才教育を受けた綾乃は、あっという間にバドミントンの腕をめきめきと上達させ、凄まじいまでの天賦の才を存分に発揮し、中学2年生になるまで無敗という前代未聞の凄まじい記録を成し遂げてしまう。













そう…。
「勝ち続けてしまった」のだ…。













だが綾乃が中学2年生になった頃、事件は起こってしまう。
大会で綾乃と対戦予定だった芹ヶ谷薫子が、試合前日に自身の体調管理のミスが原因で風邪を引いてしまったのだが、あろう事か

「貴女には私と対等の条件で戦って欲しいから」

などという無茶苦茶な理由で、何と綾乃を拘束、監禁して故意に風邪をうつしてしまったのである。言っておくが傷害と監禁の刑事罰に問われる立派な犯罪行為である。
そして風邪を引いてしまった綾乃は本来の実力を発揮出来ないまま、格下の選手だった薫子に惜敗。
こうして綾乃は人生初となる敗北を喫してしまったのだが、ここまでなら特に問題にはならなかった。
人生初の敗北を喫したと言っても、たかが一度負けただけだ。綾乃ならばそこから奮起してさらなる大活躍を見せてくれるだろうと、この時の周囲の大人たちは誰もがそう思っていた。










そう…。
有千夏以外は。










結局風邪が悪化して自宅で寝込んでしまった綾乃だったのだが、綾乃が人生初の敗北を喫したというのに悔しがる素振りを全く見せないどころか、自分に甘えるのを止めようとしない事に危機感を抱いてしまった有千夏は…最悪の行動を起こしてしまったのである。
このままでは綾乃は強くなれないのではないか、プロのバドミントン選手として大成出来ないまま、三流の選手として終わってしまうのではないか。
そう考えた有千夏は

「自分のように何時でも何処でも甘えられる存在は、綾乃が強くなる為には不要」
「綾乃のメンタルを鍛えなければ」

という間違った考えの下、あろう事か綾乃の祖父母に綾乃の事を託した上で、綾乃を残して失踪してしまったのである。














その軽率な行動が自身と綾乃にとって、最悪の事態を招いてしまうとも知らずに…。












こうして育児放棄のような形で綾乃の下を去ってしまった有千夏は、デンマークで孤児だったコニー・クリステンセンを養子として引き取り、一流のバドミントン選手として鍛え上げる一方、中国でも後の世界ランク1位となる王麗暁(アニメ未登場)も育て上げ、綾乃のライバルとなる選手を作り上げようとする。
その一方でヴィム(アニメ未登場)が運営するバドミントンの強化施設に嫌気が差して、交換留学制度を利用して日本へと逃げ出したコニーを追って日本に帰国した有千夏は、コニーが在籍する聖フレゼリシア女学院のコーチに就任。
自由奔放なコニーに振り回されながらも充実した日々を過ごしていたのだが、同時にこの頃から

「綾乃の下を去ってしまったのは間違いだったのではないか」

と思い悩むようになり、やがて綾乃が高校1年生になった時に、意を決して綾乃に再び会いに行こうとする。
だが、その事を伝えようと、およそ2年ぶりに綾乃のスマホに電話を掛けた結果…。








「ハッキリ言うね。」
「もう目的が違う。」


「今更お母さんと会って何かを得られるとは、私は全く思ってない!!」


「あ、綾乃、ちょっと待って!!」











有千夏のスマホに届いたのは、怒りと憎しみに満ちた声色で自分を拒絶し、はっきりと絶縁宣言を言い渡した、完全に闇堕ちしてしまった綾乃の冷たい声だった…。

自分が母親として、何もかも間違っていたという事。
自分が綾乃に対して、取り返しのつかない事をしてしまったのだという事。
綾乃のメンタルを鍛えるつもりが、逆に綾乃のメンタルを壊す結果になってしまったのだという事。
自分が犯してしまった罪の深さ。

綾乃に激しく拒絶されて、ようやくその事を思い知らされてしまった有千夏は精神的にショックを受けてしまい、その場で泣き崩れてしまったのだった…。
それでも紆余屈折の末に有千夏は綾乃と再会し、周囲の助けもあってどうにか和解する事に成功したのだが…もう何もかもが手遅れだった。
実はこの時の有千夏は癌に冒されてしまっており、しかも末期症状で最早治療の施しようが無く、医師から余命僅かである事を宣告されてしまっていたのである。
コニーから「ママは私ではなく綾乃を選んであげて」と説得された事もあり、有千夏は残り僅かとなった自分の人生の全てを綾乃の為に捧げる事を決意する。
だがようやく掴んだ娘との時間も長くは続かず、綾乃が高校2年生に進学した頃に有千夏の病状が悪化。
病院で多くの人々に看取られながら、静かに眠るように息を引き取った。享年42歳。

それから時は流れ、晴れてバドミントンのプロ選手へと成長した綾乃は、圧倒的な強さで全日本選手権8連覇を達成し、周囲から有千夏以来となる9連覇への期待を寄せられるようになる。
今もどこかで有千夏が、自分の事を見守ってくれているのではないか…その希望を胸に試合に臨む綾乃。
そんな綾乃の試合を客席から有千夏の亡霊が、穏やかな笑顔で見守る光景を最後に、「はねバド!」の物語は幕を閉じる…。


そもそもの話、どうしてこんな事になった。

綾乃の闇堕ちについて


物語序盤に綾乃の祖父母が語るシーンがあるのだが、元々有千夏が綾乃の下を去ったのは、綾乃の祖父母と相談した上で、

「綾乃の事を想っての苦渋の決断」

だった事が明かされている。
だがここで問題になるのが、そこに

「肝心の綾乃本人の意志が全く考慮されていない」

という点である。
つまり有千夏は

「綾乃の為」
「綾乃を想って」

などと偉そうに口にしながらも、その実態は単なる

「綾乃を立派なプロのバドミントンの選手にしたい」

という

「己の承認欲求を満たす為の行為」

でしかなく、その事に対して綾乃本人がどう思っているのかを全く考えないまま綾乃の下を去った結果、有千夏への怒りと憎しみに心を支配された綾乃が闇堕ちするという、最悪の結末を招いてしまったのである。

そもそも綾乃は、実はバドミントンをやる事に対しては最初から乗り気ではなく、有千夏との繋がりを断ち切りたくなかったから渋々やっていただけだった、むしろ苦痛さえ感じていたという事が、後に綾乃本人の口から明かされている*3
つまり肝心の綾乃は元々バドミントンに対して、その程度の考えしか持ち合わせていなかったのだ。実際に綾乃は有千夏が失踪してから1年後に有千夏を見限り、一時期バドミントンを辞めていた時期があったのだから。
それなのに有千夏は自分の理想を一方的に綾乃に押し付けた挙句、たった一度の敗戦だけで1人で勝手に危機感を抱いてしまい、一方的に綾乃の下を去ってしまったのである。
そもそも友人に対して「私は愛の無い育児はしたくない」と語っていたのは、他でも無い有千夏本人ではなかったのか。
母親としても指導者としても、あまりにも愚かだとしか言いようがない。

とはいえこの件に関しては、綾乃にも責任はある。
元々バドミントンをやる気が無かったのであれば、何故その事を有千夏に相談した上で、しっかりと話し合いの場を設けなかったのか。
そうすれば有千夏も綾乃に対して、無理にバドミントンをやらせようとは思わなかったのかもしれないのだから。
綾乃が有千夏との繋がりを断たれたくないからという理由で、なあなあの態度でバドミントンを続けた結果、こんな事になってしまったのである。

またデンマークでコニーの事を養子として引き取ってしまったのも、コニーにとっては確かに救いにはなったのだろうが、有千夏にとっては結果的に最悪の悪手となってしまった。
何故ならその事に関して特集が組まれた雑誌を、たまたま偶然綾乃は目にしてしまったのだが、そこに載っていたのは有千夏と仲睦ましく腕を組み、有千夏のほっぺにキスをしているコニーの姿だったからである。
有千夏にとっては綾乃にとっての新しいライバルを作ったつもりだったのだろうが、綾乃にとっては余計なお世話でしかなく、そもそも綾乃は有千夏に対してそんな事は一言も頼んでいない。
それどころか

「お母さんが私を捨ててコニーちゃんを選んだ。」
「え?じゃあお母さんにとって私って何なの?お母さんの承認欲求を満たす為の道具な訳?」

などと、かえって有千夏への怒りと憎しみを募らせるだけの結果になってしまっただけなのである。
恐らく有千夏は自分が何をしようが、綾乃がいつまでも自分の事を大好きでいてくれるなどという自惚れのような気持ちでいたのだろう。
だがこんな事をしでかしてしまえば、綾乃が怒るのは当たり前である。
綾乃に絶縁宣言されて、ようやくその事を思い知ったようだが、そんな簡単な事を有千夏は何故理解出来ないのだろうか…。

また綾乃が一度試合に負けた位で取り乱し、綾乃の将来を心配してしまうというのも、母親としては完全に失格、指導者としても器量が小さいと言わざるを得ない。
そもそも綾乃が敗れたのは、薫子に故意に風邪をうつされて本調子では無かったからだし、それを抜きにしても綾乃だって人間なんだから、調子が悪い時くらいあっても別に不思議でも何でもないだろう。
実際に有千夏だって23歳の頃に全日本選手権を初制覇するまでは、むしろ負けが込んでいた程の選手だったのだから。
そんな有千夏が、たかが一度負けただけの綾乃に対して、偉そうな事を言える資格など持ち合わせていないだろう。

プロ野球でも年間20勝するエース投手が同時に10敗はするし、一流と呼ばれている打者でさえも打率3割。つまり投手と10回戦って7回負けるような世界だ。
大相撲でも横綱や大関が負ける事なんて別に日常茶飯事だし、サッカーでも絶対に点を取られないGKなんて存在しないのだ。
つまりはどんなスポーツでも「負ける」というのは、どんな一流のアスリートであろうとも常に付きまとう代物であり、そんな物をいちいち気にしていたら、きりが無いだろう。

だからこそ、綾乃がたかが一度負けた位で何だというのか。
そこから綾乃を立ち直らせ、再起させ、奮起させる事こそが、母親として、指導者として、有千夏に与えられた仕事だったのではないのか。

とはいえ今回の件に関しては有千夏が全面的に悪いという訳でも無く、有千夏にも一定の同情の余地があったりする。
有千夏は幼少時からバドミントンにのめりこみ、まさにバドミントンに人生の全てを捧げ続けた結果、全日本選手権10連覇という偉業を成し遂げる程の選手に成長する事が出来たのだが、同時にバドミントン以外の事に関しては不器用な女性に成り果ててしまったのだ。
バドミントンしか知らない。バドミントン以外の生き方が分からない。
そんな女性が自分の娘に、バドミントンの凄まじい天賦の才を見出してしまったら、一体全体どうなってしまうのか。

作中で綾乃がエレナに対し「私はバドミントンのせいで人生を狂わされた」と泣きながら語る場面があるのだが、そういう意味では有千夏もまたバドミントンによって自身と娘の人生を狂わされてしまった、ある意味では被害者だと言えるのかもしれない。
それでも前述の通り、彼女の死の間際に多くの教え子たちが病院に駆けつけてきた事から、何だかんだで教え子たちからは慕われていたようで、コーチとして優秀な人物である事は間違いは無かったようである。
だが問題なのは、何故そのコーチとしての優れた手腕を、自分の娘に振るってやらなかったのかという事なのだが…。

癌について


実はこれに関しても、有千夏に問題があったりする。
有千夏が癌を発症した理由について、綾乃は

「バドミントンと教え子たちにかまけてばかりで、自分自身の体調管理がおざなりになってしまったのではないか」

などと示唆しているが、もし綾乃の指摘が正しければ、有千夏は健康診断や人間ドッグを社会人になってから一度も受ける事も無く、発症した癌が自覚症状が無いまま急速に進行してしまい、気が付いた時には既に手遅れになっていた事になる。
社会人諸君にとっては充分に思い知っている事だと思うが、自分の体調管理もまともに出来ないというのは、最早アスリート以前に社会人として完全に失格だろう。
年に一度の健康診断や人間ドッグをしっかりと受けていれば、癌の早期発見、早期治療、延命に繋がり、有千夏も42歳という若さで病死する事も無かったはずである。

有千夏「だったら教えてよ!!私は綾乃と、どう接すれば良かったのよ!?」


まず何よりも大事なのは、有千夏が綾乃をバドミントンの選手として育てたいと思ったのであれば、最初に「綾乃の意志」を明確にさせなければならなかった。

1.真剣にプロを、世界を目指して、有千夏のように己の人生の全てを賭けてまで取り組むのか。
2.学校の部活動で活躍する事を、レギュラーになる事を目指して取り組むのか。
3.あくまでも趣味の一環として、遊びや気分転換のつもりで取り組むのか。
4.は?そもそも私、バドミントンになんか全然興味無いんだけど?

作中での綾乃のセリフから察するに、綾乃にとってのバドミントンは、少なくとも有千夏が失踪する中学2年生の頃までは、間違いなく「3」から「4」の中間あたりだったはずだ。
それなのに有千夏が自分のエゴを無理矢理綾乃に押し付けて「1」を強要してしまった結果、こんな事になってしまったのだという事を忘れてはならない。

ここで重要なのは、

「綾乃としっかりと話し合いの場を設けて」
「綾乃の意志を明確にさせた上で」
「綾乃の意志を何よりも尊重し」
「絶対に有千夏の方から『アンタは才能があるんだからバドミントンをやりなさい』などと押し付けてはいけない」
「そして結論を絶対に急がせず、絶対に綾乃本人の口から意志を明確にさせる」

という点である。
その上で仮に綾乃が、例えば「バドミントンではなくバスケットボールをやりたい」と言い出したのであれば、仮に綾乃にバスケットボールの才能が全然無かったとしても綾乃の意志を最大限に尊重し、バスケットボールをやらせてあげなければならないのである。
何故ならこれは綾乃の人生であって、綾乃の意志を最大限に尊重してやるべきであって、有千夏からアドバイスを送る事は別に構わないが、強要だけは絶対に許されないからだ。

さらに綾乃のメンタルを鍛える為に、どうしても綾乃の傍を離れたかったというのであれば、

「綾乃に黙って家を出ていくのではなく」
「綾乃に自分の考えをしっかりと伝えた上で」
「必ず綾乃の同意をしっかりと得た上で」
「必ず定期的に綾乃の下に帰ってくる事を約束する」

という事を徹底しなければならなかった。
そうすれば綾乃も

「よ~し、だったらお母さんが戻って来る〇月までに、今よりもずっと強くなって、絶対にお母さんをぎゃふんと言わせてあげるんだから!!」

などと、やる気を出していた事だろう。
コニーの件にしても綾乃の事を想うのであれば、コニーには申し訳ないが本来なら有千夏はコニーを引き取るべきではなかった。
それでもどうしてもコニーを引き取りたいというのであれば、

「綾乃にしっかりと事情を説明した上で」
「有千夏にとっての一番はコニーではなく綾乃である」

という事を綾乃に分からせなければならなかった。
この件に関しては、有千夏に救われた張本人であるコニーからさえも苦言を呈されてしまう始末である。
有千夏はそれらを怠ったからこそ、綾乃を闇堕ちさせてしまった。それだけは絶対に忘れてはならない。

有千夏「でもでもぉ!!綾乃は凄いのぉ!!アンタたちには分からないでしょうけどね!!綾乃は世界を目指すべきなのぉ!!」


勿論それは上記の通り、綾乃本人の心からの同意を得る事が前提条件になるのだが、何よりも重要なのが

「公私はしっかりと区別し、プライベートの時間ではバドミントンの話題は極力出さず、綾乃をしっかりと愛してあげる事」
「辛い事があった時に綾乃の心が壊れてしまわないように、心の逃げ道となる存在(綾乃にとっては有千夏)を必ず用意してあげる事」

という事である。
真剣にプロを、世界を目指して練習するとなると、時には有千夏も母親としてではなく指導者として、綾乃の事を物凄い剣幕で怒鳴り散らし、突き放すような指導をしなければならなくなる時が、いずれ必ずやってくるだろう。
それは真剣に「勝つ」事を目指す以上は止むを得ない事なのだが、それでもバドミントンから離れたプライベートの時間では、それ以上の愛でもって綾乃を包み込んであげる事が大事なのである。

この件に関して参考にすべきなのが、実在のレスリングの世界女王の浜口京子と、その父親のアニマル浜口の親子の実例だろう。
アニマル浜口は練習においては、周囲から「貴方は実の娘を殺すつもりなのか」と言われる程の過酷なメニューを浜口京子に課したのだが、ひとたびレスリングから離れたプライベートの時間では、娘の事を周囲が引いてしまうほど溺愛したというのは非常に有名な話である。
だからこそ浜口京子も父を心から信頼し、父が課した過酷な練習にも決して音を上げず、見事に世界女王の座をつかみ取る事が出来たのだ。
綾乃も有千夏の事を心から信頼していたのだから、有千夏だってそれ位は出来たはずである。
なのに有千夏は綾乃の下から失踪してしまった事で、綾乃との信頼関係を築く機会すら自ら奪ってしまったのである。

また有千夏は「綾乃が本当の意味で強くなるためには、甘えられる存在は不要」だと語っていたが、それでも綾乃が社会人になったのならまだしも、当時の綾乃はまだ中学2年生である。
年頃の女の子が辛い事、悲しい事があった時に、大好きな母親の胸の中で甘えたい、泣きじゃくりたいと願う事の、一体何がいけないというのだろうか…?

考察

もし綾乃にバドミントンの才能が無かったら、この2人は普通の親子として幸せになれていたのか

残念ながら「NO」だと思われる。
本項目のコメント欄でも議論されているが、有千夏がバドミントン以外の生き方が分からなくなってしまった女性で、しかも「天才は作れる」が持論だからである。
そんな彼女が綾乃を普通の女の子として育てようとした所で、何かの拍子にバドミントン狂に戻ってしまい、綾乃を無理矢理英才教育してしまう可能性が非常に高いだろう。
それは有千夏が綾乃に対して「普通の人生を送って欲しい」とか考えていた癖に、結局は綾乃の才能に心を奪われてしまった事で有言実行しなかった事からも伺える。

もういっその事、綾乃が事故に巻き込まれて全身複雑骨折で一生寝たきりにでもならない限りは、そんな事は無理なのではないだろうか…。

有千夏が育児放棄をやらかしたのは、保護者責任遺棄の刑事罰に問われる犯罪なのではないか?

これに関しては限りなくグレーゾーンである。作中の描写を見た限りでは「NO」だが、警察や検察官の裁量次第では「YES」と成り得る可能性も充分に有り得る。

有千夏は「綾乃の祖父母に綾乃の事を託した上で」綾乃の前から失踪しており、別に綾乃の事をほったらかしにした訳ではない。
そういう意味では母親としての責務を「完全に」放棄した訳ではないので、「グレーゾーンだが法的にはギリギリ問題無い」と言えなくもない。
だがそれでも綾乃が理不尽に味合わされた2年間もの苦しみや絶望の重大さから、警察や検察官が有千夏に対して刑事責任を追及する可能性は充分に有り得る。
そもそも綾乃の前から失踪した理由が「綾乃のメンタルを鍛える為」などという極めて身勝手な代物であり、情状酌量の余地など微塵も無いと判断されてもおかしくないと言える。

また仮に法的に問題が無かったとしても、有千夏がやらかした事は間違いなく綾乃に対しての育児放棄、虐待であり、綾乃の2年間もの苦しみを考えれば絶対に許される事では無い。
一部では「癌で死んだのは自業自得」「天罰が下ったんだ」などと過激な意見すら出ているが、そう言われても仕方が無い事を有千夏はやらかしてしまったのである。
まあ仮に不起訴処分となって釈放されたとしても、お巡りさんから

「あのね羽咲さん。せめて娘さんに連絡の1つくらい寄越したらどうなの?」

などと突っ込まれる事になるだろうが…。

アニメ版では…。


原作とは大幅に設定が異なっており、綾乃の下から失踪後はデンマークでバドミントンスクールを経営しており、そこでコニーを見出して養子にしたという事になっている。
コニーが日本に行ったのもヴィムに嫌気が差したからではなく「綾乃に会いたいから」であり、有千夏も聖フレゼリシア女学院とは関わらずに直接綾乃に会いに行っている。
またエレナとは幼少時から面識がある事になっており、ヴィムや王麗暁とは一切関わっていない*4

綾乃との和解シーンも原作から完全に別物になっており、その時の綾乃のセリフから察するに、公式からの明言は無いものの、癌を発症して余命僅かだという設定も無かった事にされた模様。
というか綾乃は

「お母さんの事をゴミクズのように捨ててやる。」

とかエレナに言っておきながら、最終話で有千夏に対して何の脈絡も無く

「憎んでたけど、もういいよ。」

などと、あっさりと許してしまっている。
この件に関してテレビの前の視聴者の誰もが、口をポカーン( ゚д゚)と開けて唖然とした事だろう。少しは有千夏に対して怒れよと…。

ただし原作では綾乃に対しての罪悪感から絶望までしたというのに、アニメ版では綾乃に謝罪しようともしない*5どころか全く反省しておらず、綾乃に対して終始ヘラヘラ笑いながらフランクな態度を取ってしまっている。
また綾乃となぎさの試合中にエレナと再会した際にも、有千夏が母親としての責任を放棄し綾乃を2年間も苦しめ続けた事に苦言を呈するエレナに対して

「私は自分がやった事を少しも後悔なんてしていないわ。」

などとエレナに言い切ってしまっており、

「一体何なんですか貴女は!?たかがスポーツですよね!?そこまでする必要があるんですか!?」

とエレナをマジギレさせてしまった。
それどころか有千夏はエレナとの会話において、綾乃の為に本気で怒ってくれているエレナに対して自分の理想論を一方的に押し付けてばかりで、エレナとの会話が全く成立していない。
ここまで来ると母親失格だとか、最早そういうレベルの話では無い。完全に自分の世界に閉じこもってしまっているだけだとさえ言えるだろう。
担当声優の大原さやかは、一体どんな気持ちで演じていたのだろうか・・・。

綾乃がなぎさに敗北後、綾乃をデンマークに誘うものの、綾乃からは

「この北小町が私にとっての始まりの場所だから。」

と断られてしまったが、それでも

「いつか私と一緒に打とうよ。」

と有千夏に持ち掛けるなど、死別してしまった原作と違い2人の将来に希望が見える終わり方になっている。
高校卒業後にコニーと2人で、有千夏と一緒に暮らす為にデンマークに行ったとか、そういう話であって欲しいが…。




綾乃は凄いの!!追記、修正の才能があるの!!だから綾乃はwiki籠りを目指すべきなのよ!!




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最終更新:2024年11月24日 21:57

*1 アニメ版では「羽咲綾乃」。

*2 ちなみにデンマークでは特に珍しくなかったりする。

*3 綾乃曰く「どんな対戦相手と戦ったのかすら全く覚えてない」との事。

*4 というかこの2人は尺の都合により、アニメ版では出番自体を削られてしまった。

*5 最終話で謝罪しようとする描写はあるが、直後に綾乃に「憎んでたけど、もういいよ」と遮られている。