登録日:2024/08/17 (土) 14:21:36
更新日:2025/03/23 Sun 19:43:38
所要時間:約 ? 分で読めます
『笑う
大天使』とは、1987年に白泉社の少女漫画誌・月刊花とゆめに連載されていた
川原泉の漫画。
単行本2巻分の本編が連載された後、後日譚である
読み切り、短期連載漫画が掲載され、全3巻で完結した。
概要
名門お嬢様学校・聖ミカエル学園に通う3人の「庶民」の少女達の青春を描いた学園コメディ。
様々な事情で「庶民」メンタルを持つ3人が、巷を賑わす「お嬢様誘拐事件」をひょんなことから身に着けた怪力能力で解決することになる。
シュールな雰囲気や独特の擬音、そして素っ頓狂な台詞回しなど、
川原泉作品の「お馴染み」の要素がこれでもかと詰め込まれている氏の代表作である。
後日譚は、3人の家庭事情の掘り下げとなっており、本編でやり残したことの清算を兼ねている。
『空色の革命』:斎木和音が主役。和音の家族の和解を描く。
『オペラ座の怪人』:更科柚子とロレンス先生が主役。ロレンス先生の帰郷と旧友との触れ合いを描く。
『夢だっていいじゃない』:司城史緒と一臣が主役。史緒の聖ミカエル卒業までの日常を描く。
ストーリー
司城史緒は庶民生まれかつ庶民育ちの女子高校生。
だが、母の葬儀で、彼女は参列した紳士・一臣から、「自分はあなたの生き別れの兄だ」と聞かされ、大富豪の司城家に引き取られることになる。
そのまま彼女は、名門お嬢様学校の聖ミカエル学園へと編入。当然、周囲の生徒は生粋のお嬢様だらけだ。
家でも学校でも猫を被ったまま脱ぐこともできず苦痛を感じていた史緒は、ある日自習時間に教室を抜け出し、庶民の代名詞「アジのひらき」を裏庭で焼いて食べることにする。
だが、その現場をクラスメイトの斎木和音と更科柚子に見られてしまった。
ところが、和音と柚子もまた、家庭こそ大金持ちではあるものの、精神性は完全な「庶民」寄りであり、3人はすっかり意気投合。
気ままな猫被り学園生活を送っていた3人だったが、周囲に迫る、「お嬢様連続誘拐事件」の影。
ふとした実験の結果怪力を身に着けた3人は、誘拐事件の犯人と対決することになる。
登場人物
主人公3人組
旧華族の大富豪・司城家の令嬢。
司城家の跡取り息子だった父と庶民出身の母の間の子供で、父が事故死したことを機に自分を身ごもっていた時期に祖母によって母が司城家を追い出され、母に女手一つで育てられた。
過労で死んだ母の葬儀に現れた「兄」一臣と出会い、身寄りがなかったため本来の生まれである司城家に引き取られるが、庶民暮らしの彼女には上流家庭の生活には馴染めない日々を送る。
だが、和音と柚子という気の合う友達と知り合い、徐々に素を出し始め、一臣とも気がつけば打ち解けていった。
大蔵省(財務省の旧名)の事務次官になることが夢で、そのために東大文Ⅰへの進級を狙っている。
クラスメイトからは「自分達とは何かが違う」ことを察知されたためか「ケンシロウ様」と呼ばれている。
大企業「新日本産業グループ」の会長令嬢。
生まれつき、不仲な両親の下で暮らしたため両親からの愛情に乏しく、代わりに使用人の俊介の教育を受けて育ったため庶民的な性格に成長した。
スポーツ万能で下級生からの人気も高く、「オスカル様」の異名を持つ。(なお、本人は「あらいぐまラスカル」と勘違いしている。)
当初、両親は「いてもいないも同然」とみなし半ば見限っていた一方、俊介には強い信頼を寄せて依存気味になっていた。
しかし、後日譚において両親の和解を経て、ようやく普通の家族となった。
大ファミレスチェーン「パンプキン・チェーン」の社長令嬢。
史緒のクラスのクラス委員であり、成績優秀な才女。
大衆食堂「かぼちゃ亭」が成長した結果ファミレスチェーンになったため、家族揃って庶民気質が抜けず、聖ミカエルにも馴染めずにいた。
小さくて可愛らしい見た目から、上級生からは「コロボックルちゃん」と気に入られている。
外国人恐怖症であり、当初はロレンス先生にも苦手意識を持っていたが、史緒と和音の出会いを通じて、徐々に個人的にも親しくなり、やがて恋仲となる。
主人公達の家族
史緒の兄で、司城家の跡取り息子。
幼い頃に母親を祖母に追い出され、以来祖母からの厳しい教育を受けていたが、祖母が死ぬ間際に母の妊娠を告白し、必死に行方を捜し、結果史緒を見つけ出した。
高貴な雰囲気を全面的に押し出した根っからの「殿下」気質だが、本職は小説家で上流階級としての感覚はそう持ち合わせていない。
ずっと寂しい思いをさせていた史緒を誰よりも大切に思っており、彼女の幸せを最優先に行動している。
和音の教育係で、斎木総一郎の第一秘書。
子供の頃、総一郎の車に当たり屋を試みたことをきっかけに知り合い、性根を気に入られて斎木家の使用人となった。
以来、両親の愛情に飢えていた和音のために尽くし、互いを信頼する主従関係となる。
時々、和音の男勝りな性格を嘆くこともあるが、何だかんだで放っておけない様子。
和音の父で新日本産業グループの会長。
若くして事業を成功させ、貴族の娘も娶って順風満帆な日々を送るが、ちょっとした行き違いから夫婦仲は最悪となり、愛人を多数作って家にも帰らなくなっていた。
だが、和音が3年生になった時、彼女のお見合いの事件を機に本心を妻にぶちまけ和解する。
和音の母。
名家の出身で、総一郎は自分の家系だけが目当てと思い込み、心を許さず、家族を顧みない日々を送っていた。
そんな中で、総一郎の本心を聞き、ようやく自身の行いを反省した。
柚子の兄。大学生。
妹同様、庶民気質が抜けず、兄妹揃っておやつを楽しむほど仲がいい。
本編後、誘拐事件を機に知り合った白薔薇の君と交際をすることになる。
聖ミカエル学園の関係者
史緒達のクラスの2年B組の担任教師。
イギリス人だが流暢な
日本語を話し、担当教科は英語ではなく古文。
本名は「ザ・ライト・オノラブル・ヘンリー・エセルバート・ロード・ロレンス・オブ・ノーザンプール」で、
イギリス貴族の出身。
実は聖ミカエルの理事長も兼任しており、普段は生徒には大っぴらにしていない。
柚子に個人的な興味を抱いており、次第に深い関係となっていった。
史緒達のクラスメイト。
皇族の血も流れていると噂で、ニックネームは「静姫」。
誰に対しても優しい生粋のお嬢様だが、史緒に憧れを抱いており彼女と友達になる。
1年生。
本名は不明だが、沈丁花の下で和音を見つめている場面から、史緒達が勝手に「沈丁花娘」と名付けた。
和音のファンの一人で、彼女によくお菓子を作っている。
3年生のお姉さま方。
柚子のファンで、時々お茶会を開いて彼女をもてなしている。
聖ミカエルに新しく赴任してきた神父……に成り済ました誘拐犯グループの一員。
神父として学園に潜入し、ターゲットとなるお嬢様を選び出して誘拐の手引きを裏で行った。
しかし、史緒達3人娘に疑惑を抱かれ、その野望を打ち砕かれることとなる。
聖ミカエルの校門前にうろつく黒い野良犬。
映画『オーメン』に出てくる黒い犬に似ているからその名が付けられた。
聖ミカエルの学生のお弁当の残りを眼力で奪っていたが、3人娘には全く効かず、彼女らを一方的に敵視する。
3人娘が誘拐された際は落ちていたムギチョコを拾い食いしたことで犯人追跡に貢献した。
後日譚の登場人物
和音のお見合い相手。財界の名門グループの跡取り息子。
マラソンをしている和音の元気さに惚れ込み、彼女に交際を申し込む。
だが、お見合いの度に俊介の話をされて勝てないことを悟ってしまった。
ロレンス先生の親友。ドイツ出身のオペラ歌手。通称「おハルさん」。
歌うことが大好きで、常に朗らかで人当たりのいい人物。
お守りのぬいぐるみ・ルドルフと別れて以来夢遊病になっていたが、ロレンス先生の家で再会し、歓喜する。
だが、彼にはある言えない秘密があって……。
おハルさんが幼い頃、お守りとして父にプレゼントされたクマのぬいぐるみ。
おハルさんの深い祈りの結果、魂を宿し、彼を陰ながらサポートしていた。
一度は見つかって気まずくなり別れたが、ロレンス先生の家に助言を求めに行った時に偶然おハルさんと再会。その後は親友と共に過ごすが、彼の異変を知ってしまい……。
一臣のお見合い相手。
最初は上手く行きそうだったものの、新婚生活で邪魔になる史緒を排斥しようとしたため、一臣から交際を打ち切られる。
川原泉作品では
スターシステムとして頻出するキャラクター。
作中の小ネタ
平安時代の文学作品。
ロレンス先生が授業をサボった3人娘のレポートを課題のテーマにした。
3人娘は主人公の光源氏を現代的感覚で見た結果、レポートにおいて「性衝動人」「増殖ワラジムシ」「歩く煩悩様」とボロクソに貶した。
化学の授業の後片づけを行った3人娘が勝手に行った実験。
色を混ぜ合わせるとどうなるか、という興味本位で行ったため科学的根拠は全くなく、結果完成した「ムナサワギの悪魔色」の液体が気化して発生したガスを吸い込んだ結果、3人娘は怪力を身に着けた。
巷で話題のムギチョコ。一袋ごとに手作業で詰めているのか正確に666粒入っているらしい。
実写映画化
実写映画版が2006年7月15日に公開された。監督は小田一生。
長崎県のテーマパーク「ハウステンボス」でロケを行ったことが話題となったが、原作の再現度は低く、また低クオリティなCGが悪い意味で評判となり、原作ファンからの評価は低い。
キャスト
司城史緒:上野樹里
斎木和音:関めぐみ
更科柚子:平愛梨
司城一臣:伊勢谷友介
若月俊介:松尾敏伸
桜井敦子:菊地凛子
追記・修正はムギチョコをもぎゅもぎゅ食べてからお願いします。
- 実写化されてたんか... -- 名無しさん (2024-08-17 14:47:02)
- お嬢様学校を舞台にした少女漫画をメタったような展開が多くて面白かったな。無駄に高い教養に基づいた豊富なボキャブラリーを駆使した妙に庶民的な視点からのツッコミがまさに川原節。 -- 名無しさん (2024-08-17 15:43:38)
- イヌにチョコを食わせてはいけない。まあ、あいつは勝手に食ったんだけど -- 名無しさん (2024-08-17 21:39:30)
- 実写版はなぜか史緒が関西弁にされてたり、一臣が原作では多彩なジャンルの小説を書いてるのに何故か「王子様とお姫様の兄妹が両親を探して旅する話」一本槍の児童文学作家になってたりとかなり迷走してたが、観る前の期待値がもっと低かったせいかそれなりに面白かった。原作の地の文に相当するはずの実写版ナレーターの正体が最後の最後で判明したりとか。 -- 名無しさん (2024-08-18 17:44:44)
- ミリしらであらすじ読んでると>実験の結果怪力を身に着けた のトコで「はぁ? ってなる」 -- 名無しさん (2025-03-23 19:43:38)
最終更新:2025年03月23日 19:43