宇宙戦艦ヤマトⅢ

登録日:2024/08/19 Mon 22:45:00
更新日:2024/12/31 Tue 18:26:13
所要時間:約 4 分で読めます




「宇宙戦艦ヤマトⅢ」は宇宙戦艦ヤマトシリーズのTVシリーズ第3作目の作品。

【ストーリー】

西暦2205年。
銀河系核恒星系ではガルマン帝国とボラー連邦の二大星間国家の戦争が繰り広げられていた。
そんな中、ガルマン帝国の放った惑星破壊ミサイルの一発が軌道を外れ、太陽へと命中してしまった。
太陽は核融合の異常増進を始め、このままではあと一年で地球には人類は住めなくなってしまう。
人類が生き残るためには、一年以内に人類の移住できる第二の地球を見つけ出す他にない。
宇宙戦艦ヤマトは第二の地球を見つけ出す使命を帯びて発進した。
だがそれは、銀河系大戦の真っ只中へ地球が自ら飛び込んでいくことに他ならなかった。

【概要】

「ヤマトよ永遠に」の続編になり、さらにスケールアップした銀河規模の宇宙戦争と、ヤマトの第二の地球探しの旅を描く。
しかしこの当時には大ブームを巻き起こしたヤマトの人気にも陰りが差しており、競合する人気アニメも多数存在したため視聴率は苦戦。
それでも現在の視点から見たら十分高い視聴率を持っていたが、残念ながら放送短縮の憂き目を見てしまった。
なお放送短縮にならなければ、ゼニー合衆国という新たな敵が登場したらしい。
作風はシリーズの総決算ともいえるもので、前作までに登場したメカが多数再登場したり、改良型が登場したりとファンには嬉しいサービスがされている。
新メカも個性的で、特に戦艦アリゾナは非常に人気が高い。
だが一方で戦闘描写は勢い重視でスーパーロボットばりなアクションになっており、宇宙空間なのにヤマトが上昇して急降下しながらきりもみ回転しながら敵艦隊をなぎはらうというあり得ない展開は今なお話題になる。
ヤマトの不死身ぶりとヤマト無双もパワーアップしており、TVシリーズなので何度も敵艦隊をヤマト単独で撃滅することになって不自然さが目立つようになってしまったのも否めない。
これらのことで、ヤマト一隻で宇宙戦争を描くことの限界にぶつかってしまったヤマトシリーズは次作の完結編を持っていったん幕を下ろして長い眠りにつくことになる。

【主な登場人物】


地球連邦


主人公。本作で正式に艦長代理から艦長に就任。
新乗組員を厳しく鍛え上げ、第二の地球探しに邁進する。
地球人でなかろうと手をさしのべようとする愛の戦士の心は健在で、ヤマトを襲撃してきたシャルバート教の信者を救おうとしたり、力による平和を標榜するデスラーに真っ向から否定はせずに苦言を残すなど大人に成長している。
ただし艦長なのに事あるごとに真っ先に飛び出していく癖もそのままで、艦橋に不在の時は真田さんや島が副長として指揮を取る。
寸暇があればひたすらに訓練で自分をいじめ抜くストイックな面も描写されたが、後の復活篇の有り様を見れば、ヤマトに乗る以外には何も趣味関心を持つことのできない危うさはこの頃から表れていたとも考えられるだろう。

  • 土門竜介
新人乗組員の一人。
両親の乗った太陽観光船が惑星破壊ミサイルとの衝突で全滅してしまい、ガルマン帝国を恨んでいる。
戦闘班志望であったが炊事係に任命されて腐っていたが、古代に「船底から這い上がってこい」と激励されて意識を改める*1
努力が認められて白兵戦への参加、コスモハウンドへの登場もして活躍する。

  • 揚羽武
新乗組員の一人。
コスモタイガー隊の新エース。揚羽財閥の御曹司であったが、敷かれたレールの上を歩く人生を拒んで宇宙戦士の道を選んだ。
当初は単独行動で危険な目に会うこともあったが、戦いの中で腕を上げていく。
土門とは親友同士。

  • 相原義一
ヤマトの通信班長。
これまでは長年ヤマトに乗り続けながらいまいちパッとしなかった彼だが、今作でまさかの春を迎える。
出張していた南十字島で出会った少女、晶子と恋に落ち、恋煩いでヤマトに乗ることも拒絶しかけた彼だったが、なんと晶子は藤堂長官の孫娘だったというとんでもないオチがついた。
晶子のほうもまんざらではなく、宇宙をまたいで愛を深める姿が描かれた。
ほかのブリッジクルーからはもちろん冷やかされる。

  • 藤堂平九郎
地球防衛軍長官。第一作からずっと登場していた彼だったが、フルネームが設定されたのは今作から。
宇宙での異変を感じ取り、移民星探索のための任務に歴戦のヤマトを出動させる。
孫娘の交際は快く認めるよいおじいちゃんとしての顔も描かれた。

  • 藤堂晶子
藤堂長官の孫娘。栗色の髪の美少女で、南十字島で死んだ小鳥を見つけ、出会った相原と共に葬る。
その際に相原に一目惚れされるも、相原はうっかり名前や連絡先などを聞くのを忘れていたため、彼女を忘れられずにヤマト発進の際に地球に残ろうとした。
しかし出発前のヤマト乗員を激励するために長官とともにヤマトへ来訪したことで相原と再会。
そのまま長官公認で交際を始める。
ヤマト発進後は長官の秘書としてヤマトとの定時連絡の際に、相原と南十字島で詰んだ野菊の押し花を見せ合うロマンチックな交際をしていた。
前作までで古代と雪のロマンスにほとんど決着がついてしまったために、代わりの恋愛劇として設定されたキャラだが、はるかに真っ当に恋愛している。


ガルマン・ガミラス帝国


ヤマトの永遠の好敵手。
「新たなる戦い」でヤマトと別れて以降、銀河系核恒星系で新たな母星を発見する。
帝国を再建し総統に就任。全宇宙を征服せんとボラー連邦と銀河系大戦を繰り広げている。
安住の星を得て、滅び行く民族の指導者という重責から解放されたからか以前までのシリーズと比べたら余裕ある振る舞いが目立つ。

  • キーリング
デスラーの軍政面での副官と呼べる人物。
総統の命令に従い、的確な人材を即座に算定して実行に移すあたり文官として有能な様子が見て取れる。

その他の登場人物は単独項目参照。


ボラー連邦


  • ベムラーゼ首相
おしおきだべー
連邦の独裁者で、ヤマトシリーズ屈指の冷酷非道な人物。
しかし無能な愚か者ではなく、古代と初めて相対した際は格下に見ていたとはいえ紳士的に応対し、ある程度の文明レベルを持っていれば属国扱いとはいえ保護国としている。
しかし利用価値のない民族は奴隷化しており、ガルマン人はデスラーの解放まで過酷な生活を強いられていた。
それでも征服した惑星はすべて皆殺しか奴隷化だけの白色彗星帝国よりはまだマシと言える。

  • ラム艦長
ボラー連邦に属国化されてしまったバース星の艦隊司令。
それでも誇りは失っておらず、戦力に勝るガルマン帝国を相手に果敢な戦いを繰り広げる。
ついに戦力は乗艦ラジェンドラ号一隻のみとなり、ヤマトに助けられる。
最後は戦闘に巻き込んでしまったヤマトを残して逃げることをよしとせず、感謝の言葉を送って武人として散った。

その他の登場人物は単独項目参照。

【メカニック】

  • 宇宙戦艦ヤマト
本作から主砲に三本のラインが描かれるようになった。
移民星探査のために改造が施されており、舷側にコスモハウンドが格納されるようになった。
それ以外にも探査のために多数の探索艇や小型メカを搭載している。
次元潜航艇との戦いでは亜空間ソナーを開発して艦首に装備した。
また、最終回では艦首上部甲板にハイドロコスモジェン砲を搭載している。

  • コスモハウンド
惑星探査のために新たに配備された大型艦載機。
コスモタイガーの倍ほどの大きさがあり、何十人もの人数や多数の装備品を乗せることができる。
戦闘の際にはその探索力を偵察機として使用することもできる。
ただし旋回機銃座などを装備してはいるが戦闘用ではないため戦闘機に追われると不利になる。

【シャルバート星】

本作の中盤からの根幹となる惑星で、かつて銀河系を支配していたほどの強大な力を持っていたという。
現在でもその文明の栄華は伝説となって宇宙に残っており、シャルバート星の女王マザー・シャルバートを崇める宗教は宇宙全体に散らばっている。
だが単なる宗教の程度に留まらず、信徒の多くがガルマン帝国やボラー連邦の支配をよしとせず、伝説を妄信して破壊活動を行うテロリストに成り果てている。
そのため両国ともにシャルバート信者は摘発対象で、逮捕されれば処刑か流刑地での強制労働となる。
また、シャルバート星を探して何世代にも渡って宇宙を放浪している巡礼者も存在している。
しばらくは実在すら定かではなかったが、終盤で現存が判明。
異次元空間に惑星ごと避難して、外界との接触を一切絶つことで残っていたのだった。
シャルバート星の様子は、古代ギリシャに似た自然豊かな生活スタイルで、高度な文明の様子はまるでない平和な光景が広がっている。
この有り様は、かつてシャルバート星は高度な文明と軍事力で銀河系を支配していたが、あるとき「武力や戦争では本当の平和は訪れない」と考え、文明を放棄したからだった。
ボラー連邦に襲撃された際もこの考え方は徹底され、住民は抵抗せずに撃ち殺されるままになる完全平和主義を貫いている。

ただし、紛れもなく平和の星ではあるが、視聴者からの評判は芳しくない。

そもそもシャルバート星が平和でいられるのも、同一の思想を持つ人間だけが外界からの干渉を完全に排除できる異次元空間に隠れられたからで、惑星規模の引きこもりでしかない。
外界に対してはまったくの無関心不干渉であり、宇宙全体に散らばっているシャルバート信者に救いの手を差しのべることもしなければ、破壊活動を止めるよう諭すこともしていない。
そのためシャルバート信者たちは無意味な祈りを捧げ、無意味な破壊活動をし、無意味な巡礼の旅をしているのだが、肝心のシャルバート星人たちはノータッチで平和と繁栄を謳歌しているだけである。
しかも外界のことを知らないのや干渉できないならまだしも、シャルバート星人たちはボラーとガルマンの戦争を知っていて、さらに異次元空間からでも外界にメッセージを送れることも判明している。
さらに元をただせば銀河系を統治していたシャルバート星が統治を辞めてしまったために現在の宇宙の混乱があると言うこともできる。
そのためファンからの見解はおおむね『偽善者』で一致している。


【余談】

ヤマトシリーズの中でも特に粗が目立ち、思想的にも偏った表現がある本作であるが、アルファケンタウリや白鳥座などへ行き、宇宙気流やブラックホールといった宇宙の自然とも戦う冒険の旅の要素はしっかり初代から継承している。
数多い新乗組員たちも、ベテラン不在時のミサイル迎撃戦や主砲故障時のパルスレーザー砲の手動砲手としての活躍など見せ場がちゃんとあり、個性的で捨てキャラになってはいない。
また、物語のあちこちで前作までの映像が回想として流され、これまでのシリーズから続く物語だということを強調するなど、製作者がヤマトへの愛と無限のロマンを胸に作り上げた作品だということは間違いない。

そして、2024年から展開が始まった『ヤマトよ永遠に REVEL3199』においては本作の要素も取り込まれ、『永遠に』と併せてリメイクされることになる。ボラー連邦や宇宙戦艦アリゾナ、コスモハウンドの参戦が告知されている。



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最終更新:2024年12月31日 18:26

*1 現代では間違いなく職業差別に当たる。それを置いても軍艦で数少ない楽しみである食事を担当する部署はおこぼれを預かろうと他部署がこぞって媚を売る存在であり、格下に見る発言自体がおかしい