除夜の鐘

登録日:2024/12/31 Tue 23:00:00
更新日:2025/01/05 Sun 22:05:16
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除夜の鐘とは、日本仏教の行事に用いられる鐘である。


【概要】

国内の特定の寺院に吊り下げられており、毎年大晦日から元日にかけて深夜0時を挟んで撞かれる。

【鐘の詳細】

鐘というのは大きさによって名称が異なり、この行事に使われる大きなものは梵鐘(ぼんしょう)と呼ばれる。
国宝に指定されているものもあり、その中でも京都府の知恩院*1・方広寺*2奈良県の東大寺*3は日本三大梵鐘と呼ばれる。
記録されている中で最古の梵鐘はこれも京都府の妙心寺*4のもの。「黄金調(おうじきちょう)」と呼ばれ音色と形状が優れていることが有名で、徒然草の中でも絶賛された。
ただし現在は引退しており、その音色を再現した二代目が使われている。

全国で400以上の寺院に存在しており、一般的には23時から1時にかけて約2時間行われる。
撞かれる回数は合計108回で、大晦日の内に107回、元旦を迎えてから最後の一回を撞くのが正式な作法とされる。

現在では一般の参拝客が鐘を撞ける寺院も多いが、当然ながら有名所は参拝客が多く競争率が高い。

【起源と変遷】

中国・時代末期の禅宗寺院において払いの儀式に使われたのが起源とされる。
かつては月の最後を「晦日」と呼び毎月月末に鐘を撞く習慣があったが、この時には一年の締め括りである大晦日にのみ撞くようになっていた。

鎌倉時代に我が国の禅宗寺院にも伝わり、室町時代には大晦日に鐘を撞く風習が徐々に広がり始め、江戸時代には多くの寺院で撞かれるようになった。
明治時代になると一旦忘れ去られてしまうが、昭和に入るとNHKラジオ放送を通じて再度普及した。
なお江戸時代には俳句に読まれることもあったが、季語として定着したのは昭和からであった。

【108回の由来】

鐘を撞く回数が108回に決まった背景については諸説ある。

最も有名なのが一人の人間につき108あるとされる煩悩を払うために必要な回数である、という説。
「煩悩」とは我々が日常的に使っている言葉だが、そもそもは仏教由来の言葉である。
欲望や怒りをはじめ人間の苦痛や迷いの根元とされる要素があり、その内訳である六根(6)×好・悪・平(3)×浄・染(2)×過去・現在・未来(3)をかけて108になるということ。

他に「四苦八苦」という言葉に由来しているという説もある(4×9+8×9=108)

気候や季節の変わり目を示す暦に由来しているという説もある。
12の月の数以外にも、春夏秋冬をそれぞれ6つずつに分けた24の「四節気」、それをさらに細かく分けた「七十二侯」という概念があり、全て足すと12+24+72=108となる。
今日我々が使う夏至や秋分、冬至といった言葉も二十四節気の一部である。

【除夜の鐘の問題点】

年末の風物詩といえどそれなりの範囲に響くほど大きな音なので近隣住民からは騒音と感じられることもある。
そのため東京や札幌をはじめ中止に踏み切った例も多い。
いささか寂しい話かもしれないが、物理的な距離による影響度や個人の感じ方も異なるので仕方ない面もあるかもしれない。
リアルで聴けないならテレビやラジオ、ネット中継を活用するのも手である。


追記・修正は煩悩を払ってからお願いします。

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最終更新:2025年01月05日 22:05

*1 浄土宗総本山。承安5年=西暦1175年に建立。

*2 天台宗。文禄年=西暦1595年に建立。

*3 華厳宗。東大寺の始まりは神亀5年=西暦728年で、現在の東大寺は天平勝宝4年=西暦752年に完成。

*4 臨済宗。暦応5年=康永元年=西暦1342年建立。