SCP-3064-JP

登録日:2025/01/08 Wed 12:40:25
更新日:2025/02/17 Mon 22:28:57
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SCP-3064-JPとは、怪異創作コミュニティサイト『SCP Foundation』に登場するオブジェクトの一つである。
項目名は『A.異常ではありません』。
オブジェクトクラスEuclid


目次



概要

SCP-3064-JPは一般的な外見の富士通製ノートパソコンである。
元は財団職員の高山博士がオフィスで使っていた仕事用PCだったのだが、2016年5月1日に突如異常存在と化した。
高山博士とこの現象の関連は不明とのこと。財団内部に突然出現するアノマリー多くない?

外見こそ何の変哲もないが、電源を繋いでないのに常時稼働しているし、それどころか電源を切ることが不可能となっている。

通常時は画面に
と表示し続けている。
どことなく「〇〇博士の質問コーナー」のような雰囲気を漂わせているこの状態のSCP-3064-JPは一切の操作を受け付けない。
データを覗いたりこちら側から何か手を加えることは一切できない。

これだけならばただの動かないつきっぱなしのパソコンだが、SCP-3064-JPは毎月1日の午前0時になると活性化する。
活性化すると画面の内容が
「上部に青い吹き出し、下部に赤い吹き出し、そして右下に月末までの時間が記載されているタイマー」
という形式の表示に変わる。
青い吹き出しは
『Q.異常存在を目撃した旨と状況説明。これって異常ですか?』
赤い吹き出しは
書き込み可能な空白部分。異常ではありません。』
というテンプレに従って表示される。

ここで青い吹き出しの質問に対して「異常ではありません。」という言葉に繋がるような説明を書くと……
例えば「それについてはウンタラカンタラという理由で起こった一般現象です。」というような文章を書き加えると、SCP-3064-JPは概ね2種類の反応を返す。
  • 「誤答」: 入力を確定した瞬間、ブザー音と共に入力内容が初期化される。おそらく質問者が納得してくれなかった時の反応。
  • 「正答」: 入力を確定した瞬間、SCP-3064-JPは通常時の画面に戻る。おそらく質問者が納得してくれた時の反応。
実験の結果、
  • 幻覚や勘違いなど、質問者の認識を否定する内容の書き込みは誤答判定されやすい。
  • 論文の引用や数値などのデータ、断定形を用いるなどして、信憑性を高めた内容は正答判定されやすい。
ということが分かっている。

もし制限時間までに正答を入力できなかった場合、質問に登場した異常存在がSCP-3064-JPの半径10m以内に実際に出現する。
その後SCP-3064-JPはまた通常時の画面になる。

要するにコイツは
存在しない異常存在の目撃情報を毎月初日に公開し、納得できる理屈を一ヶ月以内に得られなければそれを実体化させる迷惑パソコン
なのである。
とんだオブジェクト生産マシンがあったものだ。

特別収容プロトコルは
  • 通常時は特に何も起こさないから低危険物品保管庫に入れといてね。
  • 毎月午前0時になったら担当チームが『質問』を確認して解答作成に取り掛かるよ。
  • 作成した解答はレベル3職員*1の承認を経て入力するよ。
  • 当たり前だけど解答作成はSCP-3064-JPが正答判定を出すまで続けてね。
  • 締切2日前までにSCP-3064-JPを納得させるような解答が考えられなかった時は出現する異常存在に合わせた実験場の手配や機動部隊の配置をするよ。
  • 確保したSCP-3064-JP由来の異常存在はその危険性に応じた収容法を取る感じでよろしく。
という内容になっている。
ちなみに当初は解答作成を担当研究チームが行っていたが、現在は専属のチームである「研究対策チーム"デマゴーグ"*2」が担っている。



教えて!財団博士

というわけでSCP-3064-JPからの質問がどんなものなのか実際に見ていこう。

質問番号: 001

質問内容:空を飛び回る人を目撃しました。上空を確認したところヘリコプターや飛行機などで吊るされている様子もありませんでした。雲一つない晴天でしたので間違いないです。これって異常ですか?

回答:無し
2016年5月1日に出現した財団記録上初の事例。
放っておくと実際に異常存在が出現するなんて話を財団側が知ってるわけもないため回答は無し。

結果としてSCP-3064-JPの解析のため運び込まれたサイトにて時速100kmで飛行する人間男性が出現し、通路を高速で飛行。2名が負傷する事態となった。
高速飛行人間自体は1時間程で確保され収容された。調査曰くこの男性は飛行以外の行動を取らないらしい。

質問番号: 002

質問内容:██動物園のふれあい広場でウサギを見ていたら、だんだん大きくなって、キリンの大きさを越えてしまいました。しばらくしたらまた小さくなりました。これって異常ですか?

回答1: 熱中症による幻覚症状と思われます。異常ではありません。
正否: 誤答

回答2: 動物園のパフォーマンスに使用されたウサギ型バルーンです。異常ではありません。
正否: 誤答
異常性が確認できたので今回は回答を入力してみた。
しかし熱中症の幻覚やウサギ型バルーンの勘違いでは納得してくれなかったようだ。
まあ生きたウサギをこの目で見たのに幻覚だのビニール製の勘違いなんて言われても信用できないよね。

結局今回も質問者の納得のいく答えは提供できずタイムリミット。SCP-3064-JPを収容しているサイトに10mを越える大ウサギが出現した。
大ウサギは発見者のエージェントが応援を呼ぶ間に一般的な大きさまで縮んでおり、調査の結果30分ごとに大きさを変容させるということが判明した。

質問番号: 003

██公園で遊んでいたら、友達がジャングルジムに閉じ込められました。ジャングルジムから突然手が伸びてきて、友達を捕まえたんです。これって異常ですか?

回答1: ██公園が位置する███県は夏場の気温が29℃を記録していました。よって熱中症による幻覚症状と思われます。異常ではありません。
正否: 誤答

回答2: 有害金属が使用されていたジャングルジムです。それによって幻覚症状が現れたと思われます。異常ではありません。
正否: 誤答
例によって例のごとく幻覚という説明は聞き入れてもらえない。
というわけで財団も趣向を変えてみた。

回答4: ロシアで製造された子供を対象とした捕獲兵器です。異常ではありません。
正否: 誤答
財団<つまりお前の目撃した物はロシア軍の秘密兵器だったんだよ!
ΩΩΩ<な、なんだってー!!
…………なんでコレでイケると思ったんだよ研究チームは。当然のように誤答判定。

回答6: ██公園が位置する███県は夏場の気温が29℃を記録していました。現実に常温で流体となる水銀が存在しており、水銀のようにジャングルジムに使用されていた金属の融点が29℃以下であった可能性があります。よって日差しによって金属が融けて内部に閉じ込められたのではないでしょうか。異常ではありません。
正否: 誤答
高い気温、水銀という類似例の紹介、融点が29度以下の金属の示唆……ほうほう今回は随分と科学的な説明だn
財団「日差しでジャングルジムが溶けたんじゃねーの。」
絶対途中で面倒になっただろ回答作成者。それじゃ手が伸びてきた云々は何なんだよ。当たり前であるが誤答判定である。

そんなこんなで今回もタイムリミット。
今回出てきた異常存在はジャングルジムであったが、なんと他のSCPオブジェクトの上空に出現。
結果としてそのオブジェクトは落下してきたジャングルジムに押しつぶされて大破してしまった。
また、このジャングルジムはこれまでと違い収容までに異常性を発揮することが無かった。これは近辺に子供がいなかったためと推測されている。

今回の事故を受けて特別収容プロトコルにもある通り「異常存在出現の2日前に実験場へ移動させること」が定められた。
近場とはいえ出現位置が不特定であるため、SCP-3064-JPによって出現する異常存在が他のオブジェクトに影響を与えないようにという措置である。

質問番号: 006

質問文:██のビーチで遊んでいたら海から頭がサメの人と、複数の人魚が上がって来ました。彼らが突然歌い出すと、ビーチにいた一部の人たちが海に飛び込み始めました。これって異常ですか?

回答2:人魚はそもそも生物学的に存在しえない生物です。よって見間違いや幻覚の類いです。異常ではありません。
正否: 誤答
生物学的に存在しえないって……お前それ日本生類創研の前でも同じこと言えんの?結局幻覚を理由としているため誤答判定だった。

回答4:██で行われた仮装イベントです。異常ではありません。
正否: なし
仮装イベントとこじつけてみることにした。「正答」でも「誤答」でもない判定を出すのは記録上初。
もう一押しだろうか。

回答5:██で行われた海をテーマにした仮装イベントです。参加者名簿によると48名が参加しており、その内14名が人魚の仮装をしていました。サメ頭に関しては申請内容から推測するとビクトール・クラム*3の仮装でしょう。仮装イベントの内容にはサプライズイベントとして歌と躍りも含まれており、飛び込みをした人物も参加者です。異常ではありません。
正否: 正答
ここで初めての正答判定。どうやら納得してくれたようだ。
まあ「歌を聞いた数人が突然海に飛び込んでいく」なんて状況明らかに異常事態だが「そういうイベントの参加者」と考えれば合点が行く。
ちなみに仮装イベントがあったというのは真っ赤な嘘。事の真偽は絶対的重要事項では無さそうだ。

質問番号: 013

質問文:「友だちが手から火の玉を出して、離れたところにある空き缶に当てました。空き缶は溶けてしまいました。これって異常ですか?」

回答12:イベル・シュタイン著『静電気と発火現象の関連性及びその威力について』には「静電気によって人体の脂が引火し、空気中の塵が燃料となって火事が起こる事例」が紹介されています。その友人は静電気で手の脂に着火し、空気中の塵を利用することで火の玉を作り出しています。また、静電気によって着火した火は金属に引き寄せられる性質があるため、空き缶に向かって火の玉が飛んで行ったのでしょう。異常ではありません。
正否: 正答
先に言っておくとイベル・シュタイン著『静電気と発火現象の関連性及びその威力について』なんて本は存在しない。
この質問者、それなりに納得できそうなデタラメなら簡単に信じてしまうのだ。
つまり
静電気により発生するエネルギーを用いて人体の油に着火し空気中の塵で維持する今は失伝したとされる中国拳法の奥義。この原理はシルクロードを通じてヨーロッパにも伝えられ錬金術全盛の時代には大きな関心が寄せられた。静電気を用いて発火する炎は磁力を持ち、金属に吸い寄せられるためこの技法の使い手は野営部隊の火起こしはもちろん敵の索敵にも重用され、その有用性からの危険視が失伝の理由とされている。
民明書房刊 イベル・シュタイン著『静電気と発火現象の関連性及びその威力について』より
なんて回答でも質問者は信じるだろう。



必要なのは納得すること

財団はこれまでの回答記録から虚偽の情報や論理的に成立していない内容を根拠とした回答の正答率が高くなる傾向を発見した。
しかしただ嘘をつけば良いわけではなく「店のイベント」や「有毒ガスによる幻覚」などその場限りでしか起こり得ない理由による正答率は低い模様。
これはSCP-3064-JPが科学的な整合性を判断できず、真偽度外視で数値や論文の引用など権威的な表現を重視していることが理由だと推測されている。

要はSCP-3064-JPの質問者は安心したいのだ。
言われたことの真偽なんてどうでもよく「それは〇〇だ」と断言されて納得できればそれでいい。
理解不能な物をこじつけでもいいから理解しようとするのは妖怪の発生過程と同じである。

というわけで特別収容プロトコルで述べた通り、財団は情報の真偽を問わない適切な回答を作成する「研究対策チーム"デマゴーグ"」を発足。
良い感じの回答を作らせて対応に当たらせている。
デマゴーグの発足以後正答率は上がり続けており、2024年1月には90%を超えると推測されているようだ。



Q.異常存在の解説記事を読んでいたら突然追記・修正を頼まれました。これって異常ですか?
A.冥殿元管理官の提言に基づき、より良い操作環境にするため実装された追記・修正要求プロトコルです。異常ではありません。
正否: 正答

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最終更新:2025年02月17日 22:28

*1 サイト上層部の職に就くそれなりに偉い職員。

*2 人を上手く煽てて煽情する政治家のこと。

*3 ハリー・ポッターの登場人物。作中にて頭部をサメ化させるシーンがある。