SCP-5417

登録日:2025/01/16 Thu 15:56:10
更新日:2025/02/16 Sun 08:18:45
所要時間:約 3 分で読めます




SCP-5417とは、海外の怪奇創作サイト『SCP Foundation』にて創作されたSCPオブジェクトの一つである。
オブジェクトクラスSafe Keter



概要

SCP-5417は、ハワイ州カイルアに存在する物理的な力に対して異常に堅牢なヴィラ様式の住宅である。いつもの破壊耐性。
この住宅に確認されている「破壊耐性」以外の顕著な異常性はたったひとつ。

全人類が2024/09/13にここに転送されたことである。

もちろん住宅は86億人もの人間が入るにはあまりにも狭く、大部分が即死。
生き残ったのはたったの22人で、そのうち財団職員はわずか3名である。
破砕した大量の人間の死体は、利用可能な全ての開口部から噴出。内臓は半径30kmに散乱し、そのうち一部は地球低軌道上に乗った。
結果として必然的にBK-クラス "捲られたヴェール" 機密性喪失シナリオが発生。現在、人口を増やす方法が研究されている。


特別収容プロトコルには
SCP-5417を起点とする今後の異常活動は、いかなる代償を払ってでも阻止しなければなりません。
と書かれている。
しかし、たった3名の職員で如何様にしてSCP-5417の異常活動を防げるというのだろうか。そもそも「次」があるのかすらも分かっていないというのに。
これを示す様に、次の様なDクラスによる音声ログがある。



音声ログ

よし、記録開始。

(ぬかるみを踏むような足音、虫の羽音がする。人間が唾を飲み込む音が鳴る。)

うえっ、フェイスマスクを付けてても臭うな。こりゃ吐かないほうがいいな、臭いがひどくなる……

(深呼吸。)

よし。これでよし。俺はキャメロン・パーク。正式にはD-307だ。俺はこれから — あの家を見にここへ来た。自分の目で確かめに。他の奴らは家に近付かないでいる。臭いが嫌だとか、外観が嫌だとか、当時を思い出させるものが嫌だとかさ。

でもそれは…… あいつらはただ逃げてるだけだ。それだけでしかない。人類の99%がいなくなったってのに、あいつらはオフィスに逃げ隠れて、取るに足らない文書を書いて、そんで。そんでこんなくだらないことを書き連ねてんだ。「いかなる代償を払ってでも阻止しなければなりません」、まるで今でもできるかのような口ぶりで —

(何かが踏み潰されたような小さな音がする。足音が止む。)

(8秒間の静寂。)

ただの歯だったわ。

(足音が再びし始める。)
あいつらは誰が誰なのか判別しようとした、あー、埋葬するためにな。でもうまくいかなかった。見分けなんてつきようがない、みんなが…… まあ、ああなってたらな。チェン研究員は歯科記録を駆使しようとしたが、その頃にはもうインターネット全体がダウンしかけていた。財団サーバーでさえもだ、永遠に稼働し続けるはずだって聞いたんだがな。
主な推測だが、サイトの多くが取り消しの効かないタイプのフェイルセーフを作動させたと見てる。より重要なサイトの中には粉々に吹っ飛んだのもあるかもしれんが、確かなことは誰にも分からない。本土に浮かぶ灰の雲を見て以来、誰も出て行きたがらなくなったんだ。

(静寂。足音が11分間続く。虫の羽音が背後から聞こえる。)

……みんな……

みんなここにいる。正確には幸運な22人を除いてだが、80億人に比べればちっぽけなもんだ。俺は今、野球界のあらゆるスーパースター選手の上を歩いている。あらゆる博士の上を。あらゆる建設作業員や、あらゆる看守の上を歩いている。誰かは知らんが、財団を管理してる奴も — 管理してた奴もここにいる。そして、他のDクラスの奴らもみんな、そういう奴らと混ざり合っている。もう…… そんなに違いもないけどな。

(笑い声。)

時々さ。俺たちが、その、本当に幸運なのかって疑問に思うことがあるんだ。というのもな、俺たちがあの山から引っ張り出した可哀想な奴らの中には、間違いなく死んだほうがマシなのもいるんだ。それに、それに俺を含めた他の奴らだって。もしかしたら、俺たちもあそこに残るべきだったのかもしれない。みんなと一緒に。

馬鹿げた話なのは分かってる。それでも、時々考えちまうんだ。

(静寂。足音が18分間続く。)

[…]

(足音が止む。ゆっくりとした深い呼吸音がする。)

[…]

(木材を軽く叩く音。)

これは、ただの…… 家だ。老朽化した家。まあ、そんなのは分かってた。あの日 — あれが起こった時に、もう見たんだからな。それでもふと考えたんだ、もしかしたらって……

(27秒間の静寂。風が吹く。)

(人間が座る際の、布地が擦れる音がする。虫の羽音が目立たないながらも続いている。)

……ここに誰が住んでいたのか、あいつらには解き明かせなかった。どうしてあれが起こったのかも解き明かせなかった。あいつらがかき集めた派手な技術を以ってしても、得られた答えは何もないってことだけだった。理由もない。意味もない。もしかしたら、初めから何でもなかったのかもしれない。

(31秒間の静寂。風が吹く。)

もしかしたらあの日、何かが決めたのかもしれない。みんな、家に帰るべきだって。



SCP-5417


Welcome Back(おかえり)



追記、編集は家に帰ってからお願いします。

+ 余談
生き残った22人のうち財団職員は3人であったが、ここから単純計算すると世界の7人に1人が財団職員ということになる。
世界の人口が約86億人であるから、そこから計算すると軽く見積もっても11.7億人が財団職員ということになってしまう。
これでは、ヴェールを破らないで活動するにはあまりにも規模が大きすぎるとは思わないだろうか。
財団職員が3人も生き残ったのは、単に偶然そうなったと考えるのが自然だろう。

また、わざわざ「人口を増やす方法が研究されている」と書かれているあたり、生き残りの財団職員はSCP-2000の存在を知らないのだろう*1
クリアランスを持つO5やサイト管理官は全員死亡してしまったわけである。

だが、もしも3人がSCP-2000を知っていたとしても、ハワイからイエローストーンはあまりにも遠い。
しかも音声ログによると、おそらく財団の各サイトは自動的に核爆弾か何かで徹底的に破壊されてしまっているようである。
北米本土の巨大なキノコ雲が、遠く離れたハワイからでも見えるくらいに。
となればKeter級オブジェクトの収容違反もポンポン起こっていると見るべきだろう。クソトカゲが核程度で死ぬとも思えないし

つまり彼らはイエローストーンに近づけないどころか、そもそも機械仕掛けの神がまだ形を保っているかも微妙なところである。

オブジェクトクラスに関しても、完全に回避不能なK-クラスシナリオが発動していることからApollyonの方が妥当に思われる。
しかし上述の状態から推察するに、生き残った3人が重要機密であるApollyonを知らないとしても無理はないだろう。

記事内では2024/09/13以前の本オブジェクトの扱いに関する情報は無い。
だが初期のオブジェクトクラスがSafeであることや転送イベントが発生する前の綺麗な写真が残っている。
このことから、恐らく元々存在自体は財団に把握されてはいたのだろう。
それこそ「ただ壊せないだけの屋敷」というような、毒にも薬にもならぬオブジェクトとして登録されていたものと思われる。

CC BY-SA 3.0及び4.0に基づく表示

SCP-5417 - Welcome Back
by swordlover87
http://www.scp-wiki.net/scp-5417
http://ja.scp-wiki.net/scp-5417

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最終更新:2025年02月16日 08:18

*1 もしくはSCP-2000が存在しないカノンの世界での話か。