萬軍破

登録日:2025/01/28 Tue 18:10:21
更新日:2025/05/16 Fri 09:07:27
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天下を照らして然るべき帝の御意向を見限った以上、深き闇の力に救いを求める以外に道はない。
それが故郷を救える唯一の術であるならば、俺は怯まぬ。
怯むどころか、喜んで外法に身を捧げよう!





萬軍破(バングンハ)とは、特撮人形劇『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』シリーズの登場人物の一人。


CV:大塚明夫
キャラクターデザイン:源覚
二つ名:百撃成義(ヒャクゲキセイギ)



概要


初登場は第3期の1話。刑亥と組んだ新たな神蝗盟の法師として登場した。

西幽の犯罪組織・神蝗盟の幹部で「百足」の紋章を持ち、口をマスクで覆った屈強な大男。

実は西幽の皇軍の将軍であり、本来は西を守護する総督として前線で戦っていた名将。
かつて、殤不患が啖劍太歳として西幽で活動していた際は彼の手助けをしており、互いに尊敬し合う仲間と認めている。

故国西幽を心から愛しており、国の平和を誰よりも望み、また部下の兵士の命も自分より大切に思っている。
だが、皇女・嘲風は前線での兵士の戦いぶりやそれに伴う犠牲にまるで関心を示さないどころか、自分のお気に入りである天籟吟者・浪巫謠の奪還と殤不患の討伐のために軍を総動員し、兵力をみるみるうちに削っていく。
挙句には前線の要である自分も都に呼び戻し、宮廷直属に配置換えしてしまう。
それどころか、嘲風は殤不患討伐にしくじった部下の兵士を、上官である自分の手で殺せという理不尽な命令をする始末だった。

しかも、本来政治を行う皇帝の幽皇は、娘の嘲風に一切を任せて隠居を決め込み、自分では何も行動しないため、萬軍破は完全に「暗君」と見做している。

西幽の皇族に絶望した彼は、遂に「法の外にある力」、神蝗盟とその猊下である禍世螟蝗に縋り、彼に新たな忠誠を誓うことになる。
ゆくゆくは、幽皇の政権を打倒した後、禍世螟蝗に西幽を託すつもりだった。

それ以降も皇軍には正体を隠し、西幽中枢の密偵として情報提供を禍世螟蝗に行っていた。

それを知った殤不患からは驚愕と失望の目で見られるも、彼からすれば、「魔剣目録という強大な力があったにもかかわらず西幽から逃げ出した」殤不患を少なからず恨んでおり、逆に彼を責め立てた。
しかし、自分もまた「正真正銘の英雄である殤不患を裏切った外道」であると認めており、内心罪悪感で満ち満ちている。



戦闘面


ノコギリ状の二本の青龍刀を操る。
魔術も駆使し、遠距離での攻撃も得意とする。

虎嘯山河


萬軍破愛用の青龍刀。刀身にもう一振り刃が仕込んであり、二刀流で戦うこともできる。

必殺技


  • 百烈激刀
多勢を一斉に薙ぎ払う衝撃波を放つ。高い頸力により威力は倍増している。


灼晶劍


3期最終回にて使用した神誨魔械。
魔神をも圧倒する高熱を放つが、使用者をも焼き尽くすほどの威力であり、萬軍破に致命傷を与えてしまう。



活躍


第3期


異飄渺と共に刑亥と協力し、殤不患達を討伐して魔剣目録を強奪する計画に参加する。
だが、魔族である刑亥を信用しておらず、逢魔漏を使って魔界の軍勢を送り込むのではないかと危惧していた。
無界閣では最初は前線には出ず、潜伏に徹していた。

その後、西幽の鳳曦宮に戻った後、逢魔漏を使って転移してしまった殤不患達を助けるフリをして、神蝗盟の拠点へと誘い込み、自身の身の内を明かした。
そして、禍世螟蝗の意向もあり、殤不患と激しい戦いを繰り広げる。
だが、直後に逢魔漏により転移した婁震戒に乱入され、混乱に乗じて彼らに逃げられてしまった。

そこで、彼は殤不患の一味だったはずの凜雪鴉(鬼鳥と名乗っている)から、仲間に加えて欲しいと懇願される。
凜雪鴉は、「萬将軍の御心に感動しました。貴方こそ西幽の未来を担うに相応しい」と彼を煽て、萬軍破はそれを素直に受け取り、彼を神蝗盟に迎え入れることにした。
ちなみに凜雪鴉のことは完全に信用しているわけではなく、「あの殤不患を裏切ったのだから俺と同じ外道に決まっている」と推察し、彼を注意深く見張ることにしている。
とはいえ、凜雪鴉に深い恨みを持つ刑亥はこの人事に大変不満を抱き、「こいつは正義で動いていない。ただ悪党を悔しがらせたいだけだ」と非難するも、凜雪鴉の口八丁により誤魔化され、逆に刑亥の評価が下がることになった。

そんな折、鳳曦宮に戻った際に婁震戒が連行され、「殤不患の居場所を知っているから軍を貸してくれ」と嘲風に依頼。
嘲風は、萬軍破に婁震戒のサポート役を任命し、正体を知られている以上は口出しできないため、彼を連れて行くことにした。

そして、殤不患討伐のため、彼は皇軍の一団を無界閣へと派兵し、神蝗盟の兵士達と共同で作戦を実行するよう命令。
当然、反目し合った両軍からは不満が出たが、萬軍破の人柄と凜雪鴉のアシストで何とか纏まる。
だが、そこで凜雪鴉から、「刑亥が七殺天凌を拾って照君臨復活の計画を立てている」と聞いてしまう。

この一大事に、萬軍破は禍世螟蝗に早速報告するが、禍世螟蝗からは「照君臨の復活など些事だ。寧ろ殤不患を倒す絶好の機会だから捨て置け」と命令される。
敬愛している猊下から世界の危機を放置せよという信じられない命令を受け、あまつさえ盟友だった殤不患を背後から襲えと言われて愕然とする萬軍破は、ここに来て禍世螟蝗への忠義が揺らぎ、軍人としての立場との板挟みに苦悩する。

そんな中、刑亥の策略によって殤不患から魔剣目録が奪われるも、異飄渺が交渉して再奪取し、萬軍破に手渡される。
それは、照君臨に対抗し得る唯一の力であり、何なら西幽の支配すら可能となるものだった。

だが、萬軍破は決意する。「自らの正道に立ち返り、人間の力で魔族に対抗する」と。
彼は、皇軍、神蝗盟の全員の部下達に自分の素性を明かし、照君臨打倒のために力を合わせて欲しいと懇願する。
彼の熱意によって、部下らは一致団結することに成功した。
更に、彼は捕らわれた殤不患に、魔剣目録を使って照君臨を倒すと誓う。




かつてお前は言った。天下を正すために魔剣目録を使うのは、外道の所業だと。何故だ?

剣に頼って玉座に就けば、人は王ではなく、剣に傅くことになる。それが正しい治世なわけないだろう?

然り。ならば、正しき治世までの道のりは、どれほど遠いというのか?

どんなに遠かったとしても、近道を探せば踏み誤る。俺達は、一歩ずつ進むしかないんだ、軍破!



殤不患の言葉に心を打たれた彼は、戦いの後、目録を相応しき者=殤不患に返すと決意。
照君臨と相対した彼は、神誨魔械「灼晶劍」を使って戦いを挑むも、外法魔術の使い手である彼は神誨魔械を扱うことすらままならず、剣のあまりの高熱にその身を焼かれてしまう。
自分の武器すらまともに扱えない彼を見て嘲笑う照君臨。




魔剣目録さえ手にすれば、啖劍太歳に成り代われるとでも思ったか?
哀れよのう。身の程知らず、愚の骨頂。桂馬の高飛びとも言ったかな?もっと相応しい言葉はあるか?

あるぜ!「英雄」って言うのがな!!


そこへ、拘束を解かれた殤不患が応援に駆けつけた。
蒼黎劍による殤不患の攻撃に怯むも、魅了をかける照君臨だが、萬軍破は灼晶劍の熱をものともせずに斬りかかる。
照君臨は体力が限界の萬軍破を集中的に攻撃するも、彼は怯むことはない。
そして、凜雪鴉の策略で婁震戒により彼女は七殺天凌に戻され、宇宙の彼方に追放されていった。



凜雪鴉の計画について


凜雪鴉が萬軍破に近づいたのは、「萬軍破に野心から魔剣目録を独占するよう仕向け、その驕慢を奪い取る」ためと思われる。
凜雪鴉は、しきりに萬軍破の義侠心を煽て、更には「魔剣目録は神蝗盟が管理するのが相応しい」と正当性を主張した。
更に、彼は七殺天凌の件も漏らし、彼に不安感を与える。
そして今度は、異飄渺に成り済まして「禍世螟蝗が信用できないなら自分で魔剣目録を使えばいい」と唆し、一方で目録を萬軍破に渡すや否や、禍世螟蝗に彼の謀反を密告し、神蝗盟での彼の立場を危うくした。

これらは全て、萬軍破を「目録を使わざるを得ない状況」に追い込むことで、彼に「力」に酔わせ、やがては西幽征服の野心さえ抱かせようとしていたため。
そして、恐らく計画が順調に進めば、魔剣目録を寸前で奪い取り、彼が悔しがる様を見て悦に浸れただろう。

だが、予想に反して萬軍破は自身の正義に忠実であり、目録は自分の手に余ると自覚し、殤不患に返そうとした。
このあまりの謙虚さに、凜雪鴉は「凡骨」と失望するが、異飄渺の顔と、禍世螟蝗との謁見の権利を得たことで一応の満足感は得たようで、彼の最後の願いを叶えることにしたようだ。




二つの忠義に生きた者の無情な結末


戦いは終わり、殤不患に魔剣目録を返却した萬軍破。
だが、神誨魔械の副作用で、最早体はまともに動かなかった。
一致団結した部下達に感謝の意と、次なる魔族との戦いに備えて東離に行くよう伝え、彼は「最後の務め」を果たす決意をする。




さらばだ。

ああ……。



殤不患に別れを告げた後、凜雪鴉の手により、逢魔漏で彼は鳳曦宮へと転移。
幽皇に対して、嘲風の暴挙を直訴し、答えによっては殺そうとしたのだ。
だが……姿を晒した幽皇を見て、彼は衝撃を受ける。




国を憂いるそなたの嘆き、もう聞き飽きるまで聞かされておるわ。
哀れなり。あと一歩真理に迫っていれば、この御簾の内を見透かすことも叶っていただろうにな。

そんな、まさか……。



その姿は、彼が忠義を誓った禍世螟蝗その人だったのだ。

彼は気づく。自分が信じた忠義は最初から存在せず、自分は禍世螟蝗の掌の上で踊る道化に過ぎなかったのだと。
禍世螟蝗の放った一撃がトドメとなり、彼はそのまま崩れ落ちる。
失意と絶望の中で、彼は「謀反を働いた不義の男」として死んでいくのだった。




その後


父が禍世螟蝗だと知らなかった嘲風は、父の言葉を真に受け、萬軍破に怒りの足蹴を与えていた。
恐らく、その後の西幽では嘲風が、「萬軍破は裏切り者である」と吹聴し、彼の名誉を汚したことは想像に難くない。

しかし、照君臨との戦いを生き延び、萬軍破の意志を受け継いだ部下達は確かに彼の生き様を知っていた。
彼らは、丹翡の下で、護印師の見習いとして働くことになる。
正義のために戦う彼らは、萬軍破の教えを継いで、魔族との戦いに備えようとしていた。

また、第4期最終回では、殤不患が萬軍破の必殺技を借りており、イメージ映像ではあるが背中合わせの戦いが実現した。




余談


  • 『サンファン』屈指の人徳者であることから、シリーズ通してもファンが多く、脚本の虚淵玄氏も「お気に入り」キャラとのこと。それ故に、救いこそあれど無念のうちに退場したことを残念がる声も多い。


  • 灼晶劍を使うシーンでは実際に人形を燃やしている。メイキングではこのシーンの気合いの入り方が凄いと評判である。


  • 前述の過酷な撮影もあって萬軍破の木偶は修復不可能なほどに損傷しており、東離劍遊紀における初の殉職者となった。








貴様に荒らされようと、この身を追記・修正する熱さで目が覚める!

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最終更新:2025年05月16日 09:07