登録日:2025/02/26 Wed 20:02:00
更新日:2025/03/16 Sun 22:48:49
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『ももプロZ』とは、アイドルグループ・ももいろクローバーZを題材にしたマンガである。作者は小城徹也。
講談社の『月刊少年ライバル』で2012年から2014年の休刊まで連載され、その後ももクロの公式ファンクラブである「ANGEL EYES」に移籍し2018年まで連載された。
【概要・あらすじ】
人気アイドル・ももいろクローバーZをマンガ化した作品であり、メンバー5人でアイドル界の頂点を目指してのし上がっていく王道アイドルストーリー
…などではなく、プロレス団体・ももいろプロレスリングZに所属し過激なパフォーマンスに精を出す5人組女子プロレスラーを主人公としたマンガである。
どのくらい過激かと言うと、ギャグ描写とは言え仮にも実在のアイドルをモデルにしているのに連載第1回の2ページ目にはメンバー1人が血塗れになっているほど。ちなみに続く連載第2回のカラーページでも1人血塗れになっていた。
基本的にはももプロメンバーの日常を描いたギャグマンガ、という作風であり、単行本第1巻収録分くらいまではプロレス技の特訓、試合で使う凶器について考える、山籠もり修行などといったプロレスっぽい内容をやっていた。
そして、作品が進むにつれて夏休みの宿題に追われたりOLになったり
マネージャーがきれいになったりするのは序の口で、
幼稚園児になったり
宇宙海賊になったり
忍者になったり
神になったり(マネージャーが)
ディストピアと化した未来にタイムスリップしたりとどんどんプロレスと関係のない内容になっていった。実在のアイドルを題材にしたマンガとして見てもそこそこはっちゃけた内容だと言って差し支えないだろう。
ただ、これらのネタのほとんどはももクロの楽曲やライブの世界観を元にしたものなのである意味元ネタに忠実だと言えなくもない。
同じく講談社の雑誌で連載された実在のアイドルを題材としたマンガである『
AKB49~恋愛禁止条例~』とは作風が大きく異なっているが、こういう作風の方がももクロらしい、ということだろうか。
仮にもプロレスラーが主人公であるにもかかわらず試合シーンはほとんどなく、作品内で度々セルフツッコミが入れられている。
地方に移動するシーンでは「巡業」だと説明される、現実でのももクロのライブに相当する話題は「試合」と言い換えられているなどの描写からも決して作者がプロレスの設定を忘れていた訳ではないことが分かる。
もう1つ、パロディネタの多さも特徴と言えば特徴。特に移籍後の第1話はアイドルのファンクラブの公式サイトという新天地にもかかわらず1話丸ごと使って
最大トーナメントのパロディをしていた。
他に、桃鉄っぽいゲームをみんなでやる回があるのだが、後年発売された『
桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』で実際にももクロとのコラボが行われており、後から現実が追い付いた例もある。
【主な登場人物】
各キャラの基本造形は現実での個性や特徴、キャラ付けを誇張・拡大する形で設定されている。また、ももプロメンバーの名前の下に書かれた一文は公式のあらすじに準拠したものである。
百田夏菜子
ももプロZのリーダー。
かなりのバカキャラとして描かれていることが最大の特徴。どのくらいバカかと言うと、打たれ強さを鍛える特訓として「巨大な鉄球に何度も打たれる」を提案・実践し死にかけるほど。玉井のエイプリルフールの嘘に騙される、やまびこの概念を知らないなど一般常識にも不安が残る。
なお、現実の彼女も「シュプレヒコール」を「アテンションプリーズ」と勘違いする、ニュートンが発見したものを聞かれビタミンBと回答するなどおバカなエピソードは多いが流石にこの漫画ほどではないと思う。
もう1つの特徴として、驚異的な身体能力が挙げられる。現実においてもエビ反りジャンプが彼女の代名詞になるなど身体能力の高さがアピールポイントの1つになっているが、漫画内では更に誇張されており、十数メートルはありそうな空洞を壁キックで向こう岸まで渡り切るほど。この漫画の1ページ目が、彼女が有安杏果にペディグリー→体固めを喰らわせるシーンなのも身体能力の高さがなせる業であると言える。
また、現実でもリーダーらしく決めるべき時にはしっかり決めているからか、ここ一番で活躍を見せるシーンも多い。
総じて、バカでありながら身体能力は高く、要所要所ではリーダーの意地を見せる、と王道少年漫画の主人公的な性格…と言えるかもしれない。
玉井詩織
通称・しおりん。
その場のノリに合わせた後先考えない言動が多く、何かを提案しておきながら自分が真っ先に飽きる自由人。行き過ぎた自由さから他のメンバーの怒りを買うことも多いが、川上マネの怒りを回避するなど良い方向に作用することも稀にある。
黄色というイメージカラーの宿命か、食いしん坊キャラでもあり、単純に何かを食べているシーンが多いほか、食べ物が絡むと異様な身体能力と迫力を見せる。ついでにAE移籍後はなぞなぞ好きの属性まで獲得している。
あと、彼女を語る上で欠かせないのが夏菜子LOVEである。隙あらば夏菜子にイチャつきに行き、ホテル宿泊中は深夜に夏菜子の部屋に押し掛けるなどかなり愛が強い。夏菜子と他のメンバーが仲良くしているとジト目を向けるなど若干ヤンデレじみた属性も持っている。
ちなみに現実の玉井と百田も合同で「ももたまい婚」なる2人の結婚披露宴をテーマとしたコンサートを開くなど仲の良さで知られている。
佐々木彩夏
「ももプロのアイドル」を自称している最年少で、通称・あーりん。「佐々木」と呼ばれるとキレる。
自分磨きや自分アピールに余念がなく自分自身を可愛いと評するシーンも多い、よく言えば自信家、悪く言えばぶりっ子といったキャラ付け。
だが根はしっかり者なので、ツッコミ役を担当するシーンが多い。
可愛いものとスイーツに目がなく、特にシュークリームが大好物。但し、玉井と違ってシュークリームのために驚異的な身体能力を発揮するシーンとかはない。前者についてはいつも一緒にいるぬいぐるみの「レンちゃん」とは会話できると豪語するほど。
母親からは漫画やカラオケを禁じられているほか、常にGPSで居場所を把握されているという筋金入りの箱入り娘。本人はそんな環境に辟易している…なんてことはなく、「ママちゃん」と呼ぶほどには仲良し。
その後、連載が進むにつれて「あーりんロボ」になったり圧力を発揮したりと面白キャラとしての活躍も増えていった。
有安杏果
あらすじ通りマジメではあるのだが、ちゃんと話そうとするあまり話が異常に長くなるなどどこかポンコツが隠し切れないタイプ。
極度のビビリでもあり、肝試しでは始まる前から生まれたての仔馬状態になっている。
また、他メンバーと比べて身長が低いことを気にしている。
そして、ある意味最大の特徴と言えるのが さ行が しゃ行になるほどの滑舌の悪さで、これがオチとなる4コマも多い。
あと凄まじいレベルの
画伯なのだが、意外にも作中でこの設定が拾われるシーンは多くない。
こんな感じで随所にポンコツ具合が見受けられるため、他メンバーにイジられる機会が割と多い。
高城れに
どこかしら不思議な雰囲気のももプロ最年長。
特技が幽体離脱、UMAやオカルトに興味津々、奇声を発するなど平たく言えば不思議ちゃんであり、奇行も数多く見られる。その様は柱コメントで一人だけ生きているレイヤーが違うと評されている。ちなみに、幽体離脱は漫画独自の設定と言う訳ではなく、現実の高城れに本人も特技として挙げている。
良くも悪くもつかみどころのない性格をしているが根底は善人であり、一見奇行に見える行動もメンバーを想う気持ち故のものであることが多い。
たまには普段鳴りを潜めている最年長らしさを発揮することもある。
また、飛び道具として扱われている節もあり、『ももプロZ』が『月刊少年ライバル』の表紙を飾った際の集合絵では一人だけ顔が歌舞伎の隈取状態だったことがある。なお、これも現実準拠である。
川上アキラ
ももプロのマネージャー。大柄で富士額な中年男性。
ももプロメンバーがデフォルメ調で描かれているのに対し、彼だけは劇画タッチのリアル調で描かれており存在感がある。
ももプロたちには自分の趣味を前面に押し出した無茶ぶりを修行・特訓などと称してよく押し付けている憎まれ役。
基本的に出たがりな性分であり、ももプロメンバーを差し置いて雑誌巻頭に載っているグラビアに挑戦したという体の回まで存在する。
ほか、作中時点で7年後の未来に当たる2020年の東京を描いた回では超能力に目覚め、荒廃した世界のほとんどを支配する帝王・AKIRAとして君臨していたことも。
最終回ではももプロを乗っ取るために魔界からやって来たもも
黒に囚われるというまさかの
ピーチ姫ポジションに。
そして、もも黒から過酷な拷問を受け続けた結果
死亡し、
彼の魂が昇天していくシーンでこの作品は幕を閉じる。
なお、移籍後は死亡はなかったことになった。
ちなみに、最終回が掲載される1号前の『月刊少年ライバル』に掲載されたももクロと作者の対談では、ももクロメンバーの総意として川上マネで作品を終わらせるのだけはやめてほしいという意見が出されており、ある種これを踏まえた終わり方をしたと言える。
ももたん
桃に手足が生えた見た目をしたももプロのマスコットキャラクターで、控室の守り神的存在。
…と言うか神通力を使えるガチの守り神で、万物に宿る八百万の神のようなものらしい。
その力を使いメンバーをサポートしたり願いを叶えてあげたりしようとするも、どこかしら上手く行かず騒動の原因となることがほとんど。
デビップル
ももクロメンバーそれぞれにももたんのライバルキャラクターを考えてもらう、という企画で生まれたキャラクター。メンバー5人の案の中から百田夏菜子の案が採用された。
魔界からやって来たイタズラ好きのリンゴという設定で生まれたはずなのだが、元デザインからしてどこか憎めない雰囲気がしたからか、登場早々にただのモノノフに成り下がっていた。
最終回では某松崎しげるみたいな姿となってももプロたちを助けているが、状況的に彼がいなければ詰んでいた可能性が高くファインプレーと言える。
なお、ももたんはももクロの公式キャラクターなのに対し、デビップルはこの作品にしか出て来ないキャラクターである。
【連載状況など】
『月刊少年ライバル』2012年3月号で連載が始まり、初回は12ページだった。その後、徐々にページ数が増えていき、最終的に毎月約36ページにまで増加する。
話数カウントは「ROUND.○○」と「RING OUT-○○」の2種類が存在し、「ROUND」の方が4コマ漫画主体の本編、「RING OUT」の方が4コマ主体ではない形式の番外編としておおよそ使い分けられている。「RING OUT」回でも4コマが主体になっている場合もあるのでそれほど厳密なものではないが。
そして、2014年7月号をもって同誌が休刊の憂き目にあったため、『ももプロZ』も一旦最終回を迎える。ここまでの内容はライバルKCから発売された単行本1~7巻に収録されている。
休刊時点での『月刊少年ライバル』の連載作品は『新雑誌研究所』や『マンガボックス』といった媒体に移籍するパターンも多かったのだが、『ももプロZ』は移籍先が見つからず完全に終了する予定だったらしい。その証拠に最終号の1号前に掲載された分では「次号、最終回!!」という煽り文が書かれている。
しかし、終了直前にももクロの公式ファンクラブである「ANGEL EYES(以下AE)」のホームページに移籍することが決定。最終号でその旨が発表されギリギリで連載継続となった。
「AE」移籍後は4コマ漫画が1日置き、ストーリー漫画形式の本編が第1・第3月曜日の月2回更新と言う形に刷新。単行本はレーベルを『KCDX』に改め、『ももプロZ AEスーパースター列伝』として1~3巻まで刊行された。なお、3巻の巻末には単行本の出版元が講談社からSDPに移る旨が発表される。SDPはももクロの所属事務所であるスターダストプロモーションのグループ会社であり、これまでより更に公式との距離が近づいたことで『ももプロZ』の更なる飛躍が期待されていた。
しかし、講談社から切り離されて以降、「AE」での連載は続くも新刊が出ない状況が続き、気付けば『AEスーパースター列伝』3巻が発売された2015年末から2年が経過。2017年末になってやっとSDPに移って初の単行本『ももクロUNDER~高城れにがももクロになるまで~』が発売される。これはももクロに入る前の高城れにについて描かれた漫画であり、「AE」には『ももプロZ』の外伝として連載されていた。ちなみに、この少し前の時点で『ももプロZ』本編は相当数の未収録話が発生していた模様。
そのまま『ももプロZ』の単行本は発売されないまま2018/3/31の更新分をもって連載が終了してしまう。その後4月中にはサイト内のバナーが削除されたようで「AE」で過去話アーカイブが読めるということにもならず、結局かなりの量がロストメディア化してしまったようである。
連載終了や未単行本化の理由は不明だが、2018年1月に有安杏果がももクロを卒業してしまっており、単行本未収録範囲には彼女も普通に登場していることを考えると残念ながら今後の単行本化もあまり期待できなさそうである。
追記・修正はペディグリー→体固めを決めながらお願いします。
- ももクロ単体よりこっちが先に立つとは -- 名無しさん (2025-02-27 01:12:50)
最終更新:2025年03月16日 22:48