SCP-3021-JP

登録日:2025/03/15 Sat 01:08:03
更新日:2025/03/19 Wed 17:42:34
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SCP-3021-JPとは、怪異創作コミュニティサイト『SCP Foundation』に登場するオブジェクトの一つである。
項目名は「あっぶねぇ~…」。

オブジェクトクラスは「Pending」。
これは「財団は対象にオブジェクトクラスを与える程の情報をまだ持っていない」という状況で一時的に割り振られる特殊オブジェクトクラスである。
オブジェクトクラスからも分かる通りこのオブジェクトはかなり特異なモノであるため、説明のために前日譚的な前置きを挟ませていただきたい。

前日譚

「ノストラダムスの恐怖の予言」騒動も落ち着いた西暦2000年初期頃、財団の保有している未来予知オブジェクト達が次々に『2009年9月3日に発生するK-クラスシナリオ』を予知し始めた。

2005年8月21日時点での予知例


SCP-990の予知

SCP-990、通称『Dream Man(ドリームマン)』。
ざっくり解説するなら『財団職員の夢の中に現れ、近々起こる脅威についての情報を与えてくれるオブジェクト』である。
報告書によるとエージェント・██████が夢の中でSCP-990と共に街中で人が倒れている様子を目撃したようだ。人々のいずれにも外傷等は見られなかったが、死亡していることは確認できたと証言している。

SCP-GM8Sの予知

見慣れない表記だがコチラはSCP-3021-JPの中にだけ出てくる非正規のオリジナルオブジェクト。
報告書の概要曰く
『TVドラマ「フルハウス」第2シーズン7話が録画されたVHSで、再生するたびに映像内の気象やその他環境が変化する。映像内の気象関係はアメリカ合衆国[編集済]の過去のモノと一致しており1998年6月6日に実施された試験において、映像内の周辺環境は1988年12月13日のものと一致していた。次に再生した際は1998年12月14日の周辺環境が反映されており、再生するたびに映像内の周辺環境も1日進んだものの再現になると推測されている。
1999年10月9日の実験でとうとう現実の年月日を追い越してしまったためそれ以降は限定的な未来予知オブジェクトとしても扱われている。』
とのこと。
未来予知と言っても天気予報するだけのオブジェクトがどうK-クラスシナリオを予知するのかと首をひねるが、報告書によると2009年9月3日以降登場人物が一人として映像に映らなくなったらしい。なるほど
『SCP-GM8Sはアメリカ合衆国[編集済]の特定年月日の周辺状況を反映している』

『2009年9月3日以降登場人物が誰も姿を見せない』

『つまり地球全体、最低でもアメリカ合衆国[編集済]から人間が一人もいなくなるような事態が発生した』
と推測したわけだ。

SCP-711の予知

SCP-711、通称『Paradoxical Insurance Policy(逆説的な保険証書)』。
ざっくり解説するなら『財団お手製のオブジェクトであり過去に向けて文書を送れる装置』である。
『ある時、[編集済]という人物により未来から『文字列17』と呼ばれるメチャクチャ重大な事態を知らせる暗号文が届いた。財団は『このメッセージが送られることを先延ばしにすれば先延ばしにするほど、このメッセージを送らざるを得なくなる重大な事態は先送りにされるじゃないか?』といった逆説的な発想でこの装置が起動されないよう厳重に取り扱っている』という付属ストーリーも持っている。
なぜコレが「2009年9月3日に発生するK-クラスシナリオ」を予知するオブジェクトとしてここに名を連ねているかというと、2004年11月3日にプロフィールが文字列17を送信する[編集済]と確認できる限り一致する職員が財団に加入したのだ。つまり文字列17が過去に向けて送信される布石が打たれ始めているということであるため、他の予知系オブジェクトと合わせて考察された結果「文字列17が送信されるような重大事態というのは2009年9月3日のK-クラスシナリオである」という暫定的な結論を財団が出したわけである



これらの他にもK-クラスシナリオを予知するオブジェクト達はいたのだが、肝心なことにどいつもこいつもK-クラスシナリオの内容までは断定できず副次的な事象を予知するだけに留まっていた。なんとも頼りないというかフワフワとした話だが、財団以外の異常存在を扱う組織が保持していたアノマリーにおいても同様の未来予知が行われていたため、結局K-クラスシナリオの発生は確定的なものであると判断されることになった。

さて、K-クラスシナリオ発生が確定的なモノであると判断された状態で財団がやるべき事と言えば「全力を注いでK-クラスシナリオの回避を図る」しかないのだが財団にはもう一つ仕事がある。それは「どうしてもK-クラスシナリオの発生を止められず、全てがグチャグチャになるならその一歩手前で全人類を安楽死させ、せめて安らかに逝けるよう手を下す」というものだ。2009年9月2日23:00 UTC*1までにK-クラスシナリオの回避が確認できなかった場合、安楽死措置の実行が予定されることとなり仮に財団が真っ先に被害を受け機能停止したとしても翌日9月3日00:00 UTCまでに安楽死措置が実行されなかった場合、フェールセイフとして自動で実行されるようにと設定が行われた。
流石というか矢張り財団、人類総安楽死計画という今までの自分達の行い全てが無に帰すような作戦であっても入念である。






SCP-001の予知

2009年9月2日 20:45 UTC頃から、なんとイギリス[編集済]を起点としてSCP-001イベントの発生が確認された。ここで言うSCP-001イベントとは『リリーの提言 うつくしい世界へ』のこと。
ざっくり解説すると『地球上の全ての命が終わる24時間前に発生する現象』である。
地球表面90%が自発的に生育した花に包まれ、空は晴れ渡り世界中が快適な気候になり大気汚染は急速に改善されるというまさしく『終焉の前の平和な一時』を体現するオブジェクトなのだがそれがイギリスで始まってしまった。つまりこの世はもうすぐ終わりを迎えるということを直に叩きつけられたのである。







これを受けO5評議会へK-クラスシナリオ発生の伝令が送られ、安楽死措置実行の決定が求められた。

財団世界の2009年9月3日はどっちだ。



















































概要

というわけでかなり長い前置きを挟んでしまったがようやくSCP-SCP-3021-JPについての解説を行う。
SCP-3021-JPとは「2009年9月3日に発生しなかったK-クラスシナリオ」に関わるパラドックスである。
もう一度言おう、K-クラスシナリオは発生しなかったのだ。

確かにドリームマンと共に見た未来では死体が転がっていた。未来を映すドラマの中に人は現れなくなった。文字列17を打ってもおかしくない人物が財団に加入した。しかしどの未来予知でも「どのようにK-クラスシナリオが起こるか」は最後まで判明しなかったのだ。
SCP-001イベントまで発生する中それでもO5評議会は予知内容への懐疑的意見に耳を傾け緊急会議を開催し、議論の末に安楽死措置の実行を急遽中止することを宣言。結果としてK-クラスシナリオは発生せず世界は無事に2009年9月3日を終え、SCP-001イベントの停止も確認された。



つまりそれって……

結果から言ってしまえばSCP-3021-JPは財団の壮絶な勘違いによる集団自殺未遂事案である。
未来予知オブジェクト達がこぞって終末世界を予知した理由に関しては「財団による人類の安楽死措置自体がGH-0"デッド・グリーンハウス"シナリオであるとみなされていた」という仮説が最も有力視されている。
しかし
「安楽死措置は何らかのK-クラスシナリオが差し迫った場合にのみ行われるものだが、本来発生するはずであったK-クラスシナリオは何なのか」
「なぜ複数のオブジェクトが一致した未来を予知したにも関わらず財団はそれを切り抜けられたのか」
「そもそもなぜ未来予知オブジェクトは安楽死後の世界しか予知できずそれまでの過程を予知できなかったのか」
と謎も多く残されており、依然調査が進められている。SCP-3021-JPに正式なオブジェクトクラスが割り振られるのはもう少し先のようだが何はともあれ財団世界の明日はちゃんとあったわけである。

ということで皆さんご一緒に…









SCP-3021-JP

あっぶねぇ~…








類似しているオブジェクト

SCP-3519

通称『静かなる日々』。名作SCPの一つでありアニヲタにも記事があるため是非リンク先から読んでもらいたいが、ざっくり解説すると『2019年3月5日に世界の終わりが来る。だからその前に自殺したほうが良い』という内容の超強力ミームである。
ギリギリでなんとかなったコチラと違いSCP-3519の世界ではこのオブジェクトの影響により人類がほとんど死んでしまったため文明も滅んでしまっている。ある意味O5評議会が選択を誤ったSCP-3021-JPのif時空と言えるかもしれない。


追記・修正は2009年9月3日のK-クラスシナリオを予知してからお願いします。


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最終更新:2025年03月19日 17:42

*1 UTCとは『協定世界時』のこと。