登録日:2025/03/19 Wed 23:11:45
更新日:2025/04/01 Tue 16:25:57
所要時間:約 3 分で読めます
今まで虚構を描いてきた。
初めて本当に思っていることを書きました───
猫狩り族の長とは、2021年に講談社より発売された小説である。
作者は
麻枝准。
●目次
概要
麻枝氏が手掛ける初小説作品。
もともと小説は書けないと公言してきた作者であるが、2019年末に様々な出来事に巻き込まれ、負のエネルギーが蓄積。
ビジュアルアーツの馬場社長の勧めもあり、これを発散するために執筆し始めたとのこと。
初稿は1ヵ月半程度で書き上げた。
最初にまとめあげた段階では、呪いの書のようなものが出来上がったとのこと。
ライトノベルとして出版するつもりでいたが、内容に目を通した馬場社長から文芸作品として世に送り出したいという意向により、一般小説として発刊した経緯がある。
本書の帯には項目冒頭の文言が書かれており、従来のファンから見ると刺激的、挑戦的なキャッチコピー。
しかし、物語の構成としてはこれまでの作品から解離したものではなく、過去作を貶めるような意図もないため、気負わずに読める内容になっている。
むしろいつものだーまえ。作者も刺さる人に刺さればいいと割り切っている。
作品のテーマは「(作者が考える)人生」。
これまで書けなかった作者が抱える人生観について、主要キャラクター2人を通じて語られる。
あらすじ
海辺で出会った彼女は、美しく饒舌で世界で誰よりも—— 死にたかった。
猫が戯れるのを眺めていた時椿は、断崖絶壁に立つ女性に声をかける。
飛び降りようとする黒髪の美女・十郎丸は、多くのヒット曲をてがける作曲家だった。
彼女は予想に反して、雄弁で自信に満ちた口調で死にたい理由を語ってのける。
人生で初めて出会った才能豊かな人間が堂々と死のうとしている事実に混乱する時椿。
なんとかその日は翻意させ、下宿に連れて帰ることとなる。
なぜか猫に嫌われる死にたい天才作曲家と、何も持たない大学生。
分かりあえない二人の、分かりあえない6日間が、始まった。
登場人物
・時椿
本作の女性主人公。心理学部を専攻している大学1年生で
メガネっ娘。
Key作品の主人公よろしく、ツッコミ体質。
本作の地の文は彼女の視点で語られる。
断崖絶壁の
自殺の名所で飛び降りようとする十郎丸に出会い、これを止めるために奮闘する。
本作品は十郎丸の苦悩がクローズアップされるのとは対照的に、普通の学生といった立ち位置。
十郎丸と過ごす中で様々な心境の変化を自覚する。
作者が本作品の唯一の虚構と位置づけたキャラクター。
・十郎丸
フリーで活動する作曲家で、本作のもう1人の女性主人公。
十郎丸は仕事用の芸名で、本名は不明。
話題のアイドルグループに楽曲を提供するなど、その実力は本物。
本人としては、作曲自体は基本の和音をおさえているだけで、曲の完成度を高めているのは編曲者によるものだと感じている。
そのため、自身を天才ではなく一介の社会人で便利屋と評している。
仕事でJ-POPの曲を書き下ろしているものの、音楽の趣味はデスコア(デスメタルとメタルコアを取り入れた音楽)。
ネガティブ思考で希死念慮に駆られやすく、飛び降りを図ろうとしていたところ時椿と出会う。
作者が自身の分身として位置づけたキャラクター。
彼女の人生観や幸福論は、作者が日々感じていることを投影させたもの。
・遠坂
時椿と同じく心理学部専攻の男の子。
時椿は彼のことが気になっているが、距離を縮められずにいた。
十郎丸の機転により、接点を持つようになる。
好きな音楽はジャズ。
・じっちゃん
時椿の祖父。
自殺志願者を止める役割をしていたが、これを時椿に任せ、老後を過ごしている。
余談
個人名義で執筆することもあり、泣かせなければいけないという束縛から解放され、純粋に書きたいものを書いたという作者。
自身の内面を投影した作品でもあるため、多くの人には受け入れられないだろうとコメントしていた。
意見が分かれる描写はあるものの、読者からは概ね好意的な反応をもらえ、ほっとしたとのこと。
小説という体裁ではあるものの、Key作品の文体と言ってよい文章であるため、馴染みある読者からはスラスラ読めるという声が挙がる。
AmazonではAudibleとしても販売されている。
ナレーターは前川凉子氏。
活字に苦手意識がある場合はこちらを聴いてみるのも一考。
自分が出ている項目の追記・修正を願うなど地獄だな。
でもそれを飼っている子猫がしてくれてると思うと?
可愛い!めっちゃ応援したくなる!
最終更新:2025年04月01日 16:25