登録日:2025/03/21 Fri 14:53:24
更新日:2025/03/26 Wed 13:52:29
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概要
SCP-2587-JPとは『エリア-2587-JP』に指定された██県██市に所在する██神社周辺の土地の地中に不定期に死体が出現する現象である。
SCP-2587-JPによって出現する遺体は基本的に行方不明者届が受理されていて、所在・死亡が不明の行方不明者のものであることが確認されている。また発見される行方不明者は全国的に行方不明であることが報道されている傾向にある。
付属物としてSCP-2587-JP-1と呼ばれる安山岩性の墓標も存在する。SCP-2587-JPにより出現する遺体は必ずこの墓標の半径2m以内に埋まっており、遺体が埋まっている状態では遺体の本名が未知の原理でSCP-2587-JP-1に刻印される。
遺体を回収すると無記名に戻るため普段は
「無記名状態→SCP-2587-JP発生により刻印状態→遺体が回収されるとまた無記名状態」
のサイクルを繰り返しているわけだ。
SCP-2587-JP-1はエリア外に持ち出す、地面と接させない、破壊する等の方法で異常性を喪失させることもできるがその場合新たなSCP-2587-JP-1が発生するだけなのであまり意味はない。
まとめると、この異常存在は『(有名な)行方不明者の遺体を所定の位置に出現させる異常現象系オブジェクト』ということだ。遺体の出現場所がエリア内に限られてなかったらKeterオブジェクト判定されてそうな代物だが行方不明者の家族からすればせめて遺体だけでも戻って来るわけだから"ある意味"温情な異常存在かもしれない。
なお2019年4月11日以降、SCP-2587-JP-1に記される名前が遺体の本名とは異なる事例が発生するようになっている。2019年8月24日の事例では行方不明になっていた「山田 英紀」さんの名目で、心疾患による死亡で病院の霊安室に仮置きされていた「山田 秀樹」さんの遺体が消失、後にエリア-2587-JP内に出現するという事例も確認されているようで動作が不安定になってきたようだ。あれ雲行きが怪しくなってきたぞ
特別収容プロトコルは
- 遺体が出現するのを止める方法は現在見つかってないよ
- 財団は墓標を監視し続けることでSCP-2587-JPの発生を確認してね
- SCP-2587-JPが発生したら遺体を回収、調査した後カバースト―リーを流して遺族に遺体を引き渡す等の対応をしてね
- エリア-2587-JP付近はカバーストーリー『本殿の老朽化』を流布して封鎖してね
というもの。現象の止め方が不明なため遺体が出現し次第カバーストーリー重ねて遺族に返すという後手後手の対処に回らざるを得なくなっている。
そのまま行方不明扱いでも良いだろうにカバーストーリーの流布という手間を惜しまず遺族に遺体を返すあたり財団の貴重な人情味を感じられる。
発見経緯
このオブジェクトは2018年7月19日、警察内に潜入していた財団エージェントが品川 英司氏からの「旅行先で行方不明となった息子の死体が地元の██神社で見つかった」という通報を受け調査したところ発見された。
同月の26日に品川 英司氏へ行ったインタビューによると
- 息子は家族でハイキングに行った時失踪した
- 二次遭難の危険性ということも言われたので捜索はプロに任せ泣く泣く帰ってきた
- 近所の爺様から「失せ人探しなら近所のあの神社にお参りすると良い」と助言してもらった
- エリア-2587-JPこと失せ人探しの神社は寂れた神社という印象だったが「せめて遺体だけでも帰ってきてくれ」と毎日お参りしてお供え物もした
- ある日、本殿の横に息子の名が彫られた墓標が現れておりそこを掘ったら失踪したあの日に息子が来ていた服を身につけた遺体が出てきた
- イタズラにしては手が込みすぎてるし調査の結果遺体はハイキングに行ったあの山で死んだと見て間違いないと聞いている
- きっと神社の神様が意思を汲み取ってくれたのだろうということで感謝しこれからも色々奉納するつもりだ
とのこと。親の子を思う心が神に通じたとするならビターではあるが感動的な話である。
ここまではな……
2020年3月13日の事例
同年同月の1日に家族と██県の█████スキー場に出かけ、行方不明となっていた的場 美香氏が2020年3月13日の午前6時頃SCP-2587-JPにより出現した。死因は低体温・低栄養による衰弱死で死亡推定時刻は13日の午前3時頃。
この遺体には不可解な点が多く、薄めのTシャツにブラウスというとても雪山に行ったとは思えない服装で出現している上に凍死体に見られるはずの鮮紅色の死斑や凍傷も無かったという。
財団による調査の結果、的場氏は遭難したのではなく茂手木 丈司氏に誘拐され█████スキー場から約5km離れた██町の山間部の廃屋に監禁されたということも判明した。
茂手木氏へのインタビューや現場検証によると
- 人身売買目的の誘拐だったため的場氏は十分な食料が与えられていた
- 12日の深夜、茂手木氏が酒を飲んでいるところを的場氏が不意を突き逃走、その際に財布も奪取していた
ということも判明したが
十分な栄養を与えられた人間は普通一晩で衰弱死なんてしない。
さらなる調査で13日の午前2時頃、██町の███公園の公衆電話から██県警察本部と氏の母親である美奈子氏の携帯電話に、氏からのものと思われる通報・着信があったことが判明した。
的場氏は錯乱状態で発言も不明瞭であったため警察はそれを「悪質な悪戯」と認定して取り合わず、母親もその時間帯は寝ていたため着信に気づいたのは起きてからだったと答えている。
留守電に残された伝言から
- 美香氏が逃げ出したところ「見つかってよかった」と話しかけてくる謎の存在がいたこと
- 笑いながら近づいてくるが不気味だったので美香氏はその存在からも逃げてきたこと
- 謎の存在が電話中に襲いかかり暴れる美香氏を取り押さえたこと
が判明しており、謎の存在が近づいてくるにつれ伝言の音声にホワイトノイズが見られ始める、音声を聞いた複数の職員から音声解析に浮かばない人間の声のようなものが聞こえるという意見が見られるなど不可解な点も存在している。
財団はこの謎の存在がSCP-2587-JPに関与していると見て捜査を進めているようだ。
真相
SCP-2587-JPはディスカッションにて作者直々にスポイラー(報告書内には載せない、載せられなかった背景情報をまとめたもの)が公開されている。
今回はそれらと考察を合わせてSCP-2587-JPのバックストーリーを昔話風に書かせていただきたい。
昔、ある村に失せ人探しを得意とする神がおりました。
失せ人探しの神は村の神社に宿り村民からの信仰を糧に存在しておりましたが時代が流れるにつれ人が寄り付かなくなり、いつしかすっかり神の力を失ってしまいました。
ある日、神の元に男がやってきました。神は既に権能を失っていましたが男はそんなことはお構い無しに「息子を探してくれ。生存は絶望的だが、ならせめて死体だけでも見つけてくれ」と毎日祈り続けました。
男の祈りは"信仰"として神に吸収され、失せ人探しの神はほんのちょっとだけ権能を取り戻しました。神はその力を用いて男の息子を探しに出かけます。
神が息子を見つけたとき既にその子は帰らぬ人となっていました。神はその遺体を持ち帰り、神社の境内に埋めて男に息子が見つかったことを知らせるため名前を彫りました。
男はたいそう神に感謝し、より一層失せ人探しの神を敬うようになりました。この話を聞いた他の人々もまた微かながら失せ人探しの神へ信仰を持ち始めます。
失せ人探しの神は「行方不明者の遺体探しの神」として復活を遂げました。
失せ人探しの神はより多くの信仰を欲しがりました。
そこで自らを形造る『行方不明で生死も不明。ならせめて死体だけでも見つけてやってほしい』という願いに従い、人々の集合意識を頼りにそう願われる遺体を探しに出かけます。
いつからか人間が遺体を掘り起こしては別の人間へ返すようになりました。「見つかって良かった」「悲しいがコレで弔うことができる」、人々はそう喜びます。
失せ人探しの神はさらに信仰を欲しがりました。
失せ人探しの神は時々見つけてくる死体や墓に刻む名前を間違えました。
神にとって必要なのは信仰であり人間そのものではありません。
『大勢の「せめて死体だけでも見つかってほしい」という願いに従い死体を見つけては境内に埋め名前を刻む、それをすれば信仰が蘇る』
失せ人探しの神が考えられるのはそこまででした。
ある時、失せ人探しの神は「的場 美香氏は雪山で遭難した。おそらく凍死しているだろうがせめて遺体だけは見つかってほしい」という願いに応え遺体を探しに向かいました。
なんとか的場 美香氏の場所は突き止めましたが対象はなんとまだ生きていました。
「死体となった対象を見つけてくれという願い」「目の前で生存している対象」二つの相反する事柄を前に失せ人探しの神は一つの結論を下しました。
望まれているのは"死体"の発見だ。自分が持って帰るべきは"的場 美香の死体"である。と。
「見つかって良かった」「悲しいがコレで弔うことができる」。失せ人探しの神は笑い声を上げながら対象を殺め、神社に埋めました。
今日も失せ人探しの神は死体を探します。
それは
誰にも見つけてもらえない遺体を弔い死者を慰める為
ではなく
生死不明の行方不明者を待ち続ける者へケジメをつける為
でもなく
「一度零落した神モドキ」が自らの力を誇示する為
の道具でしかなかった。
追記・修正は行方不明者の発見を祈ってからお願いします。
- 胸糞… -- 名無しさん (2025-03-21 19:14:02)
- 自己中心的で精神性が理解の枠外にある存在なのは事実だが、例外の事例を除いては誰かのためになっていたのもまた事実。 -- 名無しさん (2025-03-21 20:31:25)
- 死んだエージェントの死体を回収するのに使えそうな気もする -- 名無しさん (2025-03-21 21:59:16)
- 2019年4月から仕事が雑になったのは偶々その時期に質より量に切り替えただけなのだろうか?ひょっとすると改元の時期に神も代替わりしていて先代より雑な神に代わってたりして… -- 名無しさん (2025-03-22 03:26:37)
- まあ神様なんてそんなもんよ -- 名無しさん (2025-03-22 10:39:13)
- 神の遺体探しが杜撰になった理由って財団のカバーストーリーで遺族が自分でなく警察に向けて感謝するようになったから焦ったとかもあるんじゃないかな 遺体間違えるならウッカリで済むだろうけど『平仮名が同名なだけの死体を奪って埋める』とまで行くと分かってやってるとしか思えないし -- 名無しさん (2025-03-22 16:59:40)
- 某縁切り神社でざっくりとした願い事をすると縁は確かに切れるけど、本人も大ダメージという話が複数あったので、神様に依頼するときはそこら辺もきっちり依頼しなきゃ駄目みたいだね。 -- 名無しさん (2025-03-22 18:15:36)
- ↑最初に願った男性は本願達成してるし遺体探しはコイツが勝手に人々の願い読み取ってやってるだけだから願い方云々依然に完全な押し貸しなのよ -- 名無しさん (2025-03-22 21:06:10)
最終更新:2025年03月26日 13:52