ようこそ担当職員様。指定のファイルを展開します。
というわけで、当記事は
SCP-2317や
SCP-1046-JPのように所持しているセキュリティクリアランスによって読める内容が変わるタイプの報告書である。
先ほど後述としたオブジェクトクラスだが、このバージョンには
Euclidと書かれている。
概要
問題のSCP-2555-JPだが、ヨーロッパオオカミに似た形をしている情報生命体と霊体の両方の性質を併せ持った実体である。普段は情報生命体で物理世界には存在していないが、自身の情報を記憶している人が多いほど「実在性」が高まり、霊体として物理世界に現れる。
そんな特異な形態をした生き物ではあるが、振る舞いとしては普通のヨーロッパオオカミとよく似ているらしく、「睡眠」「排泄」といった情報生命体なら普通しない行動をするようだ。
「睡眠」は活動停止時間で、霊体としてのSCP-2555-JPの構成要素である霊素に干渉したりすることで中断させることもできる。ただシンプルに睡眠妨害なのでこれをやると敵対的な態度が見られる。
「排泄」は「実在性」を排出する行動で、これによってSCP-2555-JPは情報生命体形態に戻っていく。しかし「実在性」は「睡眠」していない間は不明な原理で回復しており、どこかで「食事」が行われているのではないかと推測されている。
また、SCP-2555-JPには軽度の反ミーム性があり、反ミーム耐性が一般的な職員だと長期間記憶を保持することができない。何も対策をしない場合以下のように忘却していくようだ。(日数は最後にSCP-2555-JPの情報に触れてからのカウント)
7日まで:問題なく報告書の内容を覚えていられる。
8日:周辺情報から忘れ始める。忘れたことを指摘されればまた記憶できるレベル。
15日:収容作業に支障をきたすレベルまで忘却が進む。
21日:主要情報まで忘れ始める。ここまで来るともう指摘されても思い出せず、報告書を再読しなければならない。
22日:完全に忘却する。
しかし財団には霊体を物理世界に拘束する「メトカーフ非実体反射力場発生装置」と、反ミームに対抗でき副作用も少ない「クラスV記憶補強剤」がある。関連業務に携わる職員はクラスV記憶補強剤を週1で服用し、SCP-2555-JPを霊体として顕現させてこれを拘束することで、現状の収容はうまくいっているようだ。
発見経緯
SCP-2555-JPは財団による古代ローマ国家の文献調査中に発見された。とは言っても文献の中に記述を発見しただけではなく、その記述が発見されたその瞬間にその部屋の霊素が異常変動した……SCP-2555-JPそのものが出現したのが観測されたことで発見された。
どうやら古代ローマではSCP-2555-JPは知られた存在だったらしく、古くは1世紀から記録が残っている。
いくつかの文献から読み取られるSCP-2555-JPの描写
描写1:十数人の農奴が作業をしている様子と、農地の隅で眠っているSCP-2555-JPが描かれている。農奴は様々な方角を向きながら作業をしているが、全員の目線はSCP-2555-JPに集中している。
描写2:壁に対し、老人がSCP-2555-JPと思われる生物の絵を描いている。それを若い人物らが取り囲むようにして眺めており、手に持っている道具や周辺の情報から鉱山で働いている奴隷が描かれていると思われる。
描写3:中心にSCP-2555-JPが眠っており、それを取り囲むように数人の奴隷が描かれている。奴隷らは周辺で眠っているか、もしくは雇い主に指示を受けている。雇い主の顔は不自然に外側に向けられている。
描写4:当時の統治者と思われる華美な服装をした人物がSCP-2555-JPを連れ歩いている。向かい合うようにして跪く多数の奴隷、もしくは市民が描かれている。特筆すべき事項として統治者と思われる人物やその側近には目が描かれていない。対して市民や奴隷には顔が描かれている。当時の他の文献では見られない特徴であり、その詳細は不明。
共通する描写として、SCP-2555-JPと直接関わっている人物が農民・奴隷・一般市民といった被支配階級である点が挙げられる。というより、それ以外の支配階級の目が不自然にSCP-2555-JPから外れている。SCP-2555-JPの記録は識字率が少ない被支配階級によるものが多くを占めていたためか、絵によるものが大部分だったようだ。
なぜこのような偏りが生じたかは分かっていない。