SCP-3823-JP

登録日:2025/04/09 Wed 05:37:00
更新日:2025/04/10 Thu 06:29:46
所要時間:約 3 分で読めます



SCP-3823-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つである。
メタタイトルは「蝸牛角上の素敵な親孝行」。
オブジェクトクラスSafe
様々な真桑友梨佳氏の死体を扱う連作ハブ「コウプス・コウパス」所属作品の一つであり、シリーズ最初の作品でもある。

特別収容プロトコル

密閉容器に入れ、ロッカーに保管とSafe相応に簡素。後述する異常性から出現した書類はこっちも取り出してロッカーに保管される。

概要

SCP-3823-JPは20██/██/██に自殺した真桑友梨佳氏の死体である。
死因は練炭の燃焼による一酸化炭素中毒、つまり練炭自殺。死体に腐敗の兆候は確認されていない。いつもの劣化耐性。

異常性は、死体の周りに実在の保険会社の死亡保険金請求書、またはそれに類するお金を請求するのに必要な書類(記入済み)が不定期に出現することである。
さらにこの書類、なんと実際に保険会社に請求すると必ず保険金が支払われる自殺なのでどう考えても支払いの条件を満たしていないのにも関わらず、だ。
選ばれる保険会社も一定ではないようで、中には真桑氏の死後設立された会社もある。そして、この場合でももちろん保険金が支払われる。
財団は認識災害か官僚災害*1が原因としているらしい。

とはいえ、出現場所も限定的で、異常な書類も保険会社に請求しなければ異常性を発揮しない。
見つけたらしまい込む、という通常の収容プロトコルで十分なのだろう。

またほとんどの場合、これらに両親に宛てたと思われる便箋が付属している。
管理番号 内容 メッセージ
3823-JP-A-2 ██生命の死亡保険金請求書 「お父さん、お母さん、先に死んじゃって、本当にごめん」
3823-JP-A-3 葬祭費支給申請書兼決定書 「これは私の最後の親孝行、これじゃ足りないかもだけど…」
3823-JP-A-4 ██ライフの死亡保険金請求書 「学費とかたくさん払ってくれたのに、無駄にしちゃってごめん。これは頑張って用意したお返し」
3823-JP-A-5 ████生命の死亡保険金請求書 「退職後はヨーロッパ旅行に行きたいって言ってたでしょ。これ、使って」
ちなみに、真桑氏の両親は最初に出現した保険金請求書*2で800万受け取っていたが、全て死亡時に発生した火事に対するアパート会社への損害賠償及び隣室の住人への損害賠償に充てていた。

このほか、2例だけ、付箋以外に追加で物品が添付されていたケースがあり、1つは真桑氏の家族写真、もう1つは真桑氏の所属していたサークルの集合写真であった。なお、集合写真の方は酷く損傷した状態であった。おそらく自殺の原因はサークルにあるのだろう。
異常性から考えても真桑氏の両親については最期まで愛情を抱いていたと考えると切ない話である。

ところで、メタタイトルに含まれる「蝸牛角上」という単語。聞きなれない方も多いと思うが、蝸牛角とは「カタツムリの角」である。転じて、「取るに足らない小さなこと」という意味を持つ。
……真桑氏の両親が異常性で受け取ったお金を全て損害賠償に充てた事を考えると、必ず金が手に入る請求書という魔法のアイテムも、真桑氏の両親にとっては「蝸牛角上の親孝行」でしかなかったのだろう。


余談

本作はシリーズにとっては大きな意味を持つ作品である。
これは、コウプス・コウパスシリーズ最初の作品であるからという理由だけでなく、作風としても、著者が得意とする「短くシンプル」「不気味」「後味が悪い」という要素の揃った作品であり、後続の作品のお手本であると同時に、コウプス・コウパスシリーズ入門としての意味も持っているのである。

コウプス・コウパスシリーズ

同じく真桑友梨佳氏の死体である。こちらは自宅内で首を吊ってなくなっていた。
自殺の原因は恋人との付き合いを周囲に妨害されたためだという。
なお、他の人間と音声による会話が可能という異常性があり、この音声は音波として発せられるため録音できる。
SCP-3823-JPとは比べ物にならないぐらいの狂気が含まれているため是非項目にて確認していただきたい。



追記・修正は、「生きて」親孝行をしてからお願いします。


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最終更新:2025年04月10日 06:29

*1 一定の手続きを処理する組織に対して、異常な処理を正常と思い込ませて実行させる情報災害の一種

*2 財団が発見した時点で使用されており、真桑氏の両親の証言で存在が発覚した