登録日:2025/05/03 Sat 22:28:52
更新日:2025/05/14 Wed 13:24:03
所要時間:約 8 分で読めます
『ハッピーシュガーライフ』は2015年から2020年まで月刊ガンガンJOKERにて連載された鍵空とみやき原作の漫画作品である。略称は『ハピシュガ』。
単行本は全11巻と公式ファンブック「恋色ライフログ」が刊行されている。
概要
本作は女子高生・松坂さとうと少女・神戸しおの甘くて幸せな日常とその奮闘を描いた物語である。
本作のタイトルや可愛いタッチの絵柄から、一見甘々でゆるふわな作風と思われがちだが、さとうとしおの生活は監禁生活そのものであることや、大半の登場人物が抱える狂気など、残酷かつハードな要素が所々に描かれた戦慄の純愛サイコホラーである。
その一方で「真実の愛とは何か?」をテーマに、さとうとしおの関係の他にもしおの兄・あさひの家族への思い、さとうの親友・飛騨しょうことの友情など、それぞれが考える愛の価値観を描いている。
あらすじ
「愛」の感情を知らず、虚しい日々を感じていた女子高生・松坂さとう。
ある日、少女・神戸しおと出会ったことで「本当の愛」を知り、幸せに満ちた生活を送る。
しかし、そんな二人の生活が脅かす者たちが次々と潜んでいた。
「愛のためなら何をしてもいい」と考えたさとうは、あらゆる手を尽くして彼らを排除していく。
全てはしおとの「ハッピーシュガーライフ」を守るために―――。
登場人物
※ネタバレ注意
本作の女性キャラの苗字はブランド牛、名前は調味料からとられている。
松坂さとう
CV:
花澤香菜
主人公。牧巣原高校の1年。
頭が良くて容姿端麗かつ人当たりが良いことから、クラスメートやバイト仲間からは慕われている。
幼い頃に両親が他界し、愛がどんな感情なのかが分からずに育っており、そんな空っぽな心を満たすために男遊びを続けていたが、しおと出会いを通じて本当の愛を実感し、お互いのことを想い合うようになる。
そして自宅であるマンションの一室を
甘いお城に見立てて2人暮らしを始める。
また、しおとの生活を長続きさせるべくバイトを掛け持ちしたり、自炊などにも勤しんでいる。
しおとは半ば強引に誘拐する形で出会い、「外には危険がいっぱいある」と吹き込んで軟禁している。
母親に捨てられたしおと出会い、そのまま家に連れて行ったので未成年略取にも見えるが、家族の記憶がないことをいいことに嘘を吹き込んだ形なので誘拐に該当する。
自身の人間関係はしお一筋であり、それ以外の人間はその他大勢としか思っていない。
そのため2人との生活を脅かす存在や、しおに危害を加えるものに対しては手段を選ばず、脅迫や殺人さえも平然と行っており、住んでいる部屋も元の住民を殺して乗っ取った。
感情を味で表現しており、しおとの幸せなひとときには「甘い」、逆に自分にとって都合が悪い事、不愉快な事には「苦い」と感じている。
また、自分のせいでしおとの関係が壊れてしまう事に恐怖を抱いており、彼女に突き放された時は深い絶望に陥っている。
神戸しお
CV:
久野美咲
さとうと一緒に暮らしている8歳の少女。さとうのことが好きで、「さとちゃん」と呼んでいる。
天使のように純粋無垢で、さとうの言いつけで外に出してはもらえないものの、何の疑問もなく受け入れている。
また、さとうの為を想って、留守の合間に一人で料理や掃除に挑もうとする一面を持っている。
かつては父親、母親のゆうなと兄のあさひの4人暮らしだったが、元の家族の事は覚えていない。
実際はさとうに誘拐された被害者であり、彼女を探しているというチラシが町中に貼られている。
不安を感じると少しずつゆうなのことがフラッシュバックで蘇る時があり、徐々にゆうなと一緒にいた頃の記憶を取り戻していく。
そして全てを思い出したことを期に、ただ守ってくれているだけで秘密を話してくれないさとうを一度は突き放す。
それでも、さとうと一緒に居たいという意思は変わりなく、お互い守り合う関係へと発展していく。
また、人の心を瓶に見立てており、さとうは空っぽで無傷、ゆうなはヒビが入って壊れかかっている状態と捉えている。
神戸あさひ
CV:
花守ゆみり
しおの兄でフードを被った少年。
彼女を探しているというチラシを街中で配っており、公園で路上生活をしている。
心優しく家族思いであり、幼い頃から自分の事よりも何かと苦労が多いゆうなのことを気遣っていた。
父親の暴力からゆうなとしおを守るために2人を自宅から逃がした後、5年も父親への虐待に耐え続けて過ごしてきた。
そして父の死を期に、また3人で一緒に暮らすために大人や警察に頼らずに自ら1人でしおを探すべく奔走する。
あさひにとっての幸せは母子3人で一緒に暮らすことしか価値観を見いだせず、それ以外の幸せには理解も想像もできない。
世間から相手にされず、過酷な人生を送ってきたことから、大人を「醜い」、「穢れた臭いがする」と憎悪を抱いており。誰一人信用していない。
ただし、しょうこに関しては行き倒れていた所を助けてもらった事から少しずつ心を開くようになる。
そんな大人しくて控えめな彼だったが、しょうこからメールでしおがさとうと同居していると確信してからは、しおを取り戻すべく金属バットを片手に牙を剥くようになる。
三星太陽
CV:
花江夏樹
さとうのバイト先である喫茶「プリンセスインペリアル」でバイト仲間である男子高校生。イケメンかつ社交的な好青年であり、同僚や客からも評判がよい。
さとうに好意を持っており一度は告白するが、あっさりと振られてしまう。
しかしこの直後、女店長にこの事がバレてしまい、彼女に襲われて監禁されたものの、さとうによって助けられた。
後に次のバイト先である「キュア・ア・キュート」でさとうと再会し、一緒に働くこととなる。
「プリンセスインペリアル」での事件が原因で年上の女性にトラウマを抱き、しばらくは自宅に引きこもっていた。
ある日、しおのチラシを手に入れた際に自分をピュアにしてくれる天使と彼女に魅了される。
同い年や他の年下の子には抵抗がなく、「キュア・ア・キュート」で働き始めたのもまともな人間に戻りたいという思いからである。
しかし、しおの事に関しては自分を彼女を守る騎士と思い込み、持って帰ったチラシを部屋の壁一面に貼り付けたり、街中でしおに出会った際に頭を撫でられると涎を垂らすほど興奮したりするなど、異常なまでに心酔するようになる。
また、さとうがしおを連れて帰るところを目撃しており、しおがさとうに誘拐されている事を知っているが、逆にしおへの執着心も既にさとうに知られており、あさひから遠ざけるための手駒として利用されてしまう。
後半では、流石にまずいと自覚し、手駒になることをやめようとするものの、しおのくつ下を渡され、秒で手駒に戻った。
原作漫画とアニメで結末が大きく変わる人物。
飛騨しょうこ
CV:
洲崎綾
さとうの親友かつバイト仲間。
良家の娘であり、家庭での厳しい生活に窮屈さを感じ、「自分だけの王子様」を求めて男遊びをやっていた。
さとうにとってしお以外に心を許せる唯一の存在であり、彼女が恋人と生活していることはしおが同居相手である事以外は知っている。
太陽のしおに対する異常ぶりにドン引きしたり、さとうの叔母の奇行に怖気づいたりするなど、常識人としての一面を持っている。
だが、さとうの叔母の異常性を知らされた直後にさとうから問いかけられた「自分とあの人は血が繋がっている、それでもしょうこちゃんは友達でいてくれる?」という問いかけから目を逸らしてしまったことが後の決定打に繋がってしまうことに。
後のある日、太陽から「さとうがしおを誘拐したのでは?」と聞かされたことで、「さとうの素性に疑問を抱くと共に何かトラブルに巻き込まれているのでは?」と心配を抱くようになる。
そしてあさひとの交流を経て、勇気を持ってさとうに向き合い真実を確かめようとした先でしおと一緒にいた所を目撃。
自分はさとうの友達だからと正面から説得を試みるも、上述の一件で目を逸らした時点でさとうにとってしょうこは既に「心を許せる友達」ではなく「その他大勢の1人」でしかなかったために、情報隠蔽のために包丁で殺害されてしまった。
さとうの叔母
CV:
井上喜久子
さとうの保護者。
さとうと同じ部屋に住んでいると思われるが、さとうとしおの生活には一切姿を現さない。
さとうは「あなたの部屋結構住みやすいよ」などと誰もいないところで発言しており……
同じマンションの別の階の部屋に住んでいる。本名は不明。
さとうが彼女を殺害したと思わせるミスリードとなっている。
一見優しくてぽわっとした雰囲気だが、目を見開いて髪や服が乱れており、体中に包帯、頬にガーゼを身に着ける程全身が傷だらけ。
常に部屋にこもっていて直接外に出ることは全くなく、電話にも出ないため学校の関係者でも彼女の存在を知らない。
そのため部屋に入る際にはドアポストに手錠を入れて大きな音を立てなければならない。
他人を部屋に招いて挑発的な言動で心を見透かしては暴力を振るわせるなど、客人が抱える欲望や感情を拒まずに自分への愛として受け入れている。
よく読むと心を見透かしている様で、コールドリーディングに近い話術にも見えるが。
「愛のためなら何をしたっていい」という考えや、人の心を見抜く洞察力はさとうの人生に影響を受けているものの、歪んだ愛の価値観には理解できず嫌悪感を抱かれている。
また彼女が暮らしている部屋は所々にゴミが散乱し、湿気と異臭が漂っている。
生活費などの稼ぎは不明だが、おそらくは招いた他人から貰っていると思われる。
この様にかなり異常な人物なのだが、「暴力をも愛と解釈する」異常な程の愛や幸せへのハードルの低さゆえに、結果的に作中では一番幸福度が高い人となっている。
幼少期のさとうを引き取って育て「愛している」が、上述の様な生活をさとうが来ても変えておらず、
直接的に見せてはいないが行為や暴力の音が聞こえているなど、およそ子どもには相応しい環境とは言えない場所で育ててしまっており、歪んだ性格にする原因にもなっている。
神戸ゆうな
CV:
後藤邑子
しおとあさひの母親。
しおの前に度々幻影として現れる。
しおを「いらない」と捨てたかの様に描かれているが……。
アニメでは過去は描かれていないが、漫画で詳細に描かれている。
元々は普通の女子高生であったが、ガラの悪い男にぶつかったことで性的暴力を受けてしまう。
その後、性暴力により妊娠が発覚したもののあろうことか相手の男の父親が社会的立場を気にして
合意の上での性交だったことにされ、そのまま相手と結婚することになる。
とはいえ流石に相手の男の父親らのサポートでしばらくは平穏に暮らしていた様だが、相手の両親とゆうなの両親は事故で共に他界。
後に残ったのは愛すらない結婚を強いられた男だけであり、その男も相続した遺産を食い潰し続け、すぐに生活は困窮。
ゆうなやあさひにも暴力を振るう様になる。
しおが生まれた後は娘だけでも守らねばと思い、あさひの協力の元、あさひを家に残し、しおと共に家を出て別居。
しかし、元々要領が良くないためパートなどで稼ぐのも続かず、あさひを身代わりにしておいてきたことやしおの育児などで疲れ切ってしまっている。
北埋川大地
CV:
石川界人
牧巣原高校の男性教師。数学を担当。
教育熱心な指導ぶりや生徒にひたむきに向き合おうとするなど、女子生徒から人気があるほど慕われている。
1年の学年主任を務めており、何か秘密を抱えてるさとうを案じようとするが…
ちなみにアニメ版の声優は当初、梅原裕一郎が起用されていたが、病気療養中だったため石川に変更された。
妻子持ちであるにもかかわらず、欲求不満から沢山の女性に愛されたいという願望から独身と偽っている。
さとうの素性を探るべく常にストーキングを行っていたものの、逆に手玉に取られてしまい脅迫を受ける。
破滅への恐怖にスリルと興奮を感じるドマゾの変態である事をさとうに看破され、彼女から罵倒を受けた際には恍惚とした表情を見せた。
その後もさとうとは自宅から持ち出した遺体の入った袋の処分を頼まれたり、彼女の叔母の消息を突き止めようとしたりするなど、奇妙な関わりを持つことになる。
宮崎すみれ
CV:
武田羅梨沙多胡
喫茶「プリンセスインペリアル」でバイトしている女子高生でさとうの後輩。
バイト仲間からは「すーちゃん」と呼ばれている。
外見と自身の要領の悪さに対してコンプレックスを抱いている。
そんな自分を優しくフォローしてくれるさとうに対して憧れている。
「憧れている」と先述したが、その度合いは粘着質なストーカーそのもの。バッグのアクセサリーはさとうと同じもので、なかった場合は自作している。
さらにはメイクの仕方、化粧品、果ては靴下や下着まですべてさとうと同じものを使用している。そしてさとうと同じになるために、さとうのロッカーの中や履歴書まで盗み見ている。
当然さとうの怒りを買い、「ありのままでいい」という甘やかしの暴力と、怒りを込めた一言を受け、嫌われたくない一心でさとうに尽くす。
アニメ版
2018年7月から9月までMBS・TBS『アニメイズム』枠にて全12話放送された。
総監督に草川啓造、シリーズ構成に待田堂子、アニメーション制作はEzo'laが担当。
なお、後時間帯は内容が真逆の『
ぐらんぶる』である。
温度差が激しすぎる。
主題歌
オープニングテーマ.『ワンルームシュガーライフ』
歌.ナナヲアカリ
エンディングテーマ.『SWEET HURT』
『カナリア』(9th lifeのみ)
歌.ReoNa
放送が開始された時点では単行本が8巻までしか刊行されておらず、
終盤の展開は作者がアニメスタッフに渡したプロットを基に製作されている。そのため原作より一足先にラストが描かれている。
余談
連載開始の前年に本作の原型となる読切作品『ホワイトシュガーガーデン、ブラックソルトケージ。』が掲載されている。
さとうが求めていた「愛」については「恋愛」ではなく「家族愛」に該当する可能性が高い。
幼少期から親がおらず、育成に関わった人物と一緒にいても安心できない関係性、しおとの間の関係性から推察される。
オキシトシン主体の愛情と言えるだろう。
一般的にいう男女の仲の恋愛感情「ドキドキするような胸の高鳴り」「求める様な愛」はドーパミン主体の愛情と言われており、また別物である。
- まさか無かったとは... -- 名無しさん (2025-05-03 23:13:47)
- ちょっと修正した方が良い部分がある。さとうの叔母さんは「女性もアリ」である -- 名無しさん (2025-05-03 23:27:54)
- さとうの求める「愛」って、両親がいて普通に愛して育ててくれたら満たされたものなんだろうな。 -- 名無しさん (2025-05-04 00:22:31)
- 個人的に「ハッピーエンドIF」を見たい作品の筆頭。登場人物全員の歪みが悪い方向に噛み合っていった先の結末があまりにも…もう少し、ボタンの掛け違いが起こらなければと悲しい気持ちになるのよ。 -- 名無しさん (2025-05-04 00:54:43)
- このアニメの次の番組がよりにもよってぐらんぶる -- 名無しさん (2025-05-04 12:26:43)
- ガンガンのシュガーライフ、百合姫のきたかわ ダークネスガールズラブの二大巨頭やんね -- 名無しさん (2025-05-04 14:38:09)
- しょうこちゃんの末路はリアルにショック受けて、作者のことが嫌いになった記憶がある -- 名無しさん (2025-05-04 14:53:11)
- 読んで背筋が凍った漫画 -- 名無しさん (2025-05-04 15:23:04)
- ついに記事ができたか。読み切りで衝撃を受けて単行本全巻揃えるほど好きだったな。 -- 名無しさん (2025-05-04 17:51:12)
- 人気投票あったけどしおちゃんよりもあさひくんの方が順位高かったんだよな まぁ超接戦だけど -- 名無しさん (2025-05-04 18:33:33)
- 作者デビュー前から同人誌読んでたけど、その頃から暗い設定が多かったがここまでサイコなやつはなかったと思うし、商業デビュー後の「カミヨメ。」も甘い話だったんだよ。ハピシュガで「どうしてこうなった…」ってなった -- 名無しさん (2025-05-05 16:11:26)
- あさひ君があまりにも可哀想過ぎる -- 名無しさん (2025-05-05 18:00:36)
- この作品知ったの当時最新巻だった7巻取ったけど、ゆうなの過去というか全ての始まり的なエピソードだったが、一言で言うと読み終えて呆然とした… -- 名無しさん (2025-05-05 21:40:04)
- ↑2 しおを諦めてしまえばまだ…かも知れないけど、その後が謎だしなあ…。結果的にしおが「古い幸せ」と「今の幸せ」を選択する最後の一押しになっちゃったし。 -- 名無しさん (2025-05-07 10:39:27)
最終更新:2025年05月14日 13:24