こんなこいるかな

登録日:2025/08/26 Tue 22:56:00
更新日:2025/08/27 Wed 03:26:01NEW!
所要時間:約 11 分で読めます




こんなこいるかなとは、NHK教育テレビの幼児番組『おかあさんといっしょ』の枠内にて、1986年9月から1991年3月まで放送されていた1分間のショートアニメーションシリーズである。

目次

◆概要

ひとクセある個性を持った子どもたちが、毎週一人ずつ主役として登場。
性格に基づく失敗をしても、否定されることなく仲間と過ごす様子が描かれる。
登場する子どもキャラたちは、食いしんぼうわがままいたずらっ子怖がり屋など、いわゆる“困った性格”を象徴している。しかし物語では、誰かが叱ったり否定したりするのではなく、彼ら自身がその個性と向き合う様子が描かれ、
番組の根幹にあるメッセージは「きみがいるからおもしろい」——個性の肯定と共生を柔らかく伝えてくれる。
放送は一回わずか1分間だが、視聴者の注視率は極めて高く、家庭でも熱心に視聴された人気コーナー。
作者は絵本作家の有賀忍(ありがしのぶ)氏。絵本版も好評で現在でも新装版が販売されている。
テレビだけでなく、絵本・雑誌などにも展開されており、メディア・ミックス型の教育コンテンツとして注目された。
「こんなこいるかな」は、2歳児テレビ番組研究会による発達心理学・教育工学・番組制作の連携により誕生した実験的教育アニメの成功例でもある。
声の出演は普段豪傑なキャラクターを演じる事が多かった玄田哲章であり、朗読劇としてナレーションからキャラクターの演技まで1人で行い、氏のイメージとは正反対のほのぼのとした雰囲気を見事に表現している。

◆あらすじ

何の変哲もない日常で、「こわいよー!」と震える子、「やだもん!」と大騒ぎする子、「もぐもぐっ!」と食べ続ける子たち…。
それぞれが“ちょっと困った個性”を持っていて、見ている子どもたちは「まるで私のこと!」と共感の嵐。
でも、みんな失敗したってへっちゃら。仲間と一緒に過ごす中で、誰も排除されない世界がそこにある。
「悪い子」なんていない。「そんなこ」も「こんなこ」も、ぜーんぶ肯定してくれる魔法のアニメ。

◆主な登場キャラクター

放送初期は6体のキャラから始まり、のちに6体が追加され全12体構成に。
それぞれ異なる性格をもつ子どもキャラクターたち(例:いたずらっこ、くいしんぼう、怖がりなど)。
子どもが日常生活で経験する感情や行動を象徴するキャラ設定。
主役キャラは毎週1人ずつ登場し、失敗や学びのある展開を通じて性格に関する理解を促す。
過剰な善悪の判断ではなく、「どんなこもいる」という前提で描かれる。

  • やだもん 「いやだいやだの やだもん」放送初期からいる。 何でも「やだ!」と言うわがままさん
  • ぶるる 「こわがりやの ぶるる」放送初期からいる。 怖がり屋だが好奇心旺盛
  • たずら 「いたずらっこの たずら」放送初期からいる。 いたずら好きのトラブルメーカー
  • ぽっけ 「わすれんぼうの ぽっけ」放送初期からいる。 もの忘れが多い忘れんぼう
  • もぐもぐ 「くいしんぼうの もぐもぐ」放送初期からいる。 食べるのが大好きなくいしんぼう
  • ぽいっと 「ちらかしやの ぽいっと」放送初期からいる。 すぐ物を散らかしてしまうタイプ
  • ぴかっと 「あいでぃあまんの ぴかっと」後期から登場。賢くてひらめき豊富
  • がんがん 「がんばりやの がんがん」後期から登場。努力家でリーダータイプ
  • まねりん 「まねっこの まねりん」後期から登場。まねは好きだがされるのは嫌
  • なあに 「しりたがりやの なあに」後期から登場。好奇心旺盛
  • げらら 「わらいんぼうの げらら」後期から登場。どんな時も笑う
  • はっぴ 「いつも しんせつな はっぴ」後期から登場。 人にも自然にも優しい
  • ペロ 脇役・放送初期からいる。ニュートラルな存在・こいぬ
  • ミャー 脇役・放送初期からいる。ニュートラルな存在・こねこ

◆設定

  • 毎週一人のキャラが主役となり、その性格が原因で失敗するが、誰も責めることなく仲間と共に学ぶ
  • 6日間連続で同じキャラが登場するという方式で、視聴者がキャラの個性にじっくり親しめる構成。
  • 教育目的ではあるものの、説教臭さがなく、「普通じゃなくてもいい」「みんな違って当たり前」という価値観を自然に伝える。
  • 放送時間は『おかあさんといっしょ』内の朝・夕方の枠(25分)に含まれており、6つのコーナーの1つとして登場。
  • アニメは1分枠で展開され、週ごとに主役キャラが交代。各キャラは性格に基づく失敗をし、それを通じて人間関係や感情を描く。
  • 各キャラクターが同じ性格のまま失敗を繰り返す構成で、幼児が共感・模倣しやすい設計。
  • 毎週1体が6日間登場して主役を務め、「ペロ」と「ミャー」は中立ポジションとして登場し、場の調整役・聞き手・共感者として機能。
  • 演出には過剰な教訓や道徳を避け、ユーモアと温かさを中心に構成されている。
  • 作者・有賀忍氏は、「良い子・悪い子という概念はない」「いろんな子がいて当たり前」と語っている。
  • 前期キャラは比較的ネガティブな性格(わがまま、怖がり等)が多く、後期はポジティブ性格(知恵者、努力家等)重視。
  • 作者が強調しているのは“違いがあって当たり前”という考え。
  • テレビと雑誌の両方でキャラクターに触れることで、幼児の理解や関心を広げる構成。
  • 実験室内での個別視聴でも高い注視率を示し、家庭内の視聴でも変わらず高評価だった。
  • 実験室の研究で高い注視率を記録したが、家庭環境には多くの“ディストラクター”(おもちゃ、お菓子など)があるため、家庭でも高い視聴効果があるか検証が必要とされた。
  • 二歳児テレビ番組研究会では、発達心理学・教育工学・番組制作が連携して番組開発を進めた。
  • 開発手法は米国『セサミストリート』に学び、視聴実験を通して注目度・理解度・反応を測定し番組構成に反映。
  • 教育的効果だけでなく、視覚的・音響的な魅力も考慮し、短くシンプルなコンテンツ設計がなされた。

◆舞台

  • 明確な地名や島設定はないが、毎回のアニメの舞台は子どもたちが安全に過ごせる抽象的な空間
  • 親世代が共働きだった昭和後期~平成初期の社会背景を反映し、親が不在でも安心して見ることができる世界観が意識的に設計されている。
  • 一人ひとりの個性が際立つことで、舞台そのものがキャラの心象風景とも言える作りになっている。
  • 放送はNHK『おかあさんといっしょ』の中で、総合テレビ・教育テレビで毎週6日間放送。
  • NHK総合と教育テレビにて、朝9:30~と夕方5:00~の2回。
  • 番組『おかあさんといっしょ』内のコーナーとして、他コーナー(体操・うた・パジャマでおじゃま等)と並んで人気を博す。
  • 放送時代は「にこにこぷん」や坂田おさむさん・神崎ゆう子さんの出演時期。
  • アニメ終了後は「ふたりはなかよし」「でこぼこフレンズ」などにバトンタッチ。
  • 番組改編の背景には、「視聴年齢層の低下」と「テレビの教育的効果再評価」があり、2歳児向け番組開発が本格化。
  • 当時の社会背景として幼児視聴時間の増加、幼稚園・保育所での3歳児在籍率の上昇、家庭での視聴習慣の変化などがあった。
  • 放送のターゲットは、保育現場のニーズに応じて2~3歳に絞られていった。
  • 開発には「2歳児テレビ番組研究会(代表:白井常)」の学際的な研究チームが関与した。
  • 同キャラの登場する絵本や雑誌(月刊講談社『NHKおかあさんといっしょ』)との併用によるメディア・ミックスも教育的効果として検証されている。
  • 絵本版は初期シリーズ(1986年~1988年)全12巻 → 2015年に新装版として再販。

◆余談

  • 1953年のテレビ放送開始直後から幼児向け番組の歴史は始まり、1959年には『おかあさんといっしょ』がスタート。
  • 日本は世界的にも珍しく、テレビ創成期から幼児向け番組に力を入れていた。
  • 1990年代には「幼稚園教育要領」「保育所保育指針」の改訂を受けて番組も大幅に刷新され、0歳から視聴できる『いないいないばあっ!』なども登場。
  • 「こんなこいるかな」は視聴率・好感度共に他のコーナー(うた・体操など)を上回る結果を示した。
  • 実験的に放送された際、家庭内での注視率が非常に高く、「非常に好き」と答えた幼児が急増。
  • 家庭での視聴を前提とした実証研究が行われた。
  • 調査は一次(昭和61年)・二次(昭和62年)の2回に分けて270人の幼児を対象に家庭視聴で実施。
  • 幼児と母親がテレビ番組を一緒に視聴し、その後の反応を調査票に記入する方式。
  • 雑誌併読の有無による比較調査も実施され、雑誌は講談社の月刊誌『NHKおかあさんといっしょ』。
  • 雑誌併読グループとテレビ視聴のみのグループ(非雑誌群)で比較。
  • 雑誌には「こんなこいるかな」キャラクターのストーリーも掲載。定期的に家庭へ郵送。
  • 雑誌併読群では「ストーリーを話す」など能動的な反応が多く、「すっかり好きになった」という回答傾向も見られた。
  • テレビだけでは一過性の接触になりがちなため、印刷メディアの反復性・保存性が教育的効果を広げる可能性が示唆された。
  • 雑誌群との比較で、「こんなこいるかな」のストーリーを話す率グッズを欲しがる率が上昇。
  • 番組の視聴率だけでなく、“記憶・語り・行動”といった能動的反応が多く見られた。
  • 声優は全キャラ+ナレーションを玄田哲章さんが担当。
  • サイドキャラの声は佐久間レイさん・川田妙子さん(当時山田妙子さん)。
  • 動画配信は現在されておらず、視聴は困難(VHSのみ?)。

◆トリビア

  • 日本の幼児向けテレビ番組は、米国の『セサミストリート』より10年早く家庭視聴をターゲットにしていた。
  • 1965年度には教育テレビの幼児番組の完全カラー化を達成しており、映像教育の整備が世界でも先進的。
  • 1990年代以降、教育テレビでは「母と子のテレビタイム」枠にて、英語・日本語・感性・身体など複数領域を横断した番組群が整備された。
  • 実験室では「こんなこいるかな」は6コーナーの中で最も高い注視率を記録。家庭環境でもディストラクター(おもちゃ・お菓子)を超えて注目された。
  • 特に低年齢層(2歳後半)で好感度が大きく上昇。発達の影響も示唆される。
  • 雑誌の併読が視聴率を直接高めたわけではなく、むしろ非雑誌群の方が視聴行動が積極的になる傾向もあった。
  • しかし雑誌群の方が「ストーリーを話す」「関連アイテムを欲しがる」など記憶的・情緒的発達に寄与する効果が強かった。
  • 雑誌の併読は直接的注視率の向上に影響しなかったが、ストーリー理解や話題性といった“総合的関心”には効果が見られた。
  • 一方、雑誌を使っていないグループ(非雑誌群)の方が「非常に好き」と回答した比率が高かったケースもあり、必ずしもマルチメディアが有利ではないことを示している。
  • 雑誌無しでも注視率や視聴頻度が伸びる子も多く、放送との相互作用が奥深い。
  • こうしたメディア・ミックスの効果は単なる視聴率を超えて、幼児の発達・感情・思考への影響として有効であることが明らかにされた。
  • 放送教育においても、テレビと印刷メディアの連携による発展的学習の可能性が再評価されている。
  • 後世の番組『いないいないばあっ!』にも2歳児研究の成果が活かされ、放送教育の可能性が拡張された。

「こんなこいるかな」は時代を超えて“そのままの君が面白い”というメッセージを放ち続けている。
子どもの心に寄り添い、大人にも「そのままのあなたを認めていいよ」と教えてくれる宝石のような作品だよ。

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最終更新:2025年08月27日 03:26