登録日:2025/09/23 Tue 15:45:59
更新日:2025/09/23 Tue 17:53:43NEW!
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我々は終末まで彼らと共に存在するのだぞ。彼らは何も変えることができんのだ。
特別収容プロトコル
前哨基地-618はSCP-1295を隠密に収容するために設立されました。
エージェントと研究員はスタッフや客、地方警察に扮し、一般市民がSCP-1295と接触するのを防ぎます。各SCP-1295は封じ込められていることを知らされてはなりません。SCP-1295の日常生活はどんな状況下でも中断されてはなりません。
たったこれだけ。
要は「収容のために専用の前哨基地と役割を作って一般市民との接触を防ぐよ。SCP-1295に収容されていることがバレてはいけないし、SCP-1295の生活の邪魔をしてはいけないよ」という単純明快な収容手順である。
説明
SCP-1295は、某所に存在する高速道路にある「メグの素敵な家庭料理」なるレストランに屯する4人の常連のジイさんである。
朝9時から夜の18時まで4人で食事をしながらくっちゃべっているが、記録によれば、約60年ほどこの毎日を繰り返しているらしい。
しかしこのジイさん方の食事を邪魔したり、店から無理やり退去させようとすると、個々人によって異なる現象が発生する。
- SCP-1295-1
- 「ウォーレン」と呼ばれる。上記の行動を起こしてから5分から10分後、-1からおよそ100m以内にいる人物は極度の無気力感と自己生存本能の完全な欠如を引き起こし、些細な事故も致命傷となりうるようになる。この影響は、食堂から遠ざけられてから1時間ごとにおよそ100mずつ増加する
- SCP-1295-2
- 「フレデリック」と呼ばれる。上記の行動を起こしてから2時間から3時間後、-2からおよそ500mにいる人物は食べられるものとそうでないものを区別する能力を喪失。金属や毒性廃棄物、生肉といったものまで食べるようになり、自身だけでなく周りにまで危害を及ぼすようになる。この影響は、食堂から遠ざけられてから1時間ごとにおよそ1kmずつ増加する
- SCP-1295-3
- 「パット」と呼ばれる。上記の行動を起こした直後、-3からおよそ50m以内にいる人物は体内の全ての微生物生態系を喪失。腸内細菌の消失による消化機能の著しい低下が顕著な症例だが、それ以外にも症状は起きる。この影響は、食堂から遠ざけられてから1時間ごとにおよそ200mずつ増加する
- SCP-1295-4
- 「ドワイト」と呼ばれる。上記の行動を起こしてから30分から40分後、-4からおよそ150mにいる人物はパラノイアや急性心気症に近いレベルの自己生存本能の増加を引き起こす。どんな些細な行動に対しても自分が危険に晒されると思い込むようになるためあらゆる行動を拒否し、いずれは衰弱していってしまう。この影響は、食堂から遠ざけられてから1時間ごとにおよそ200mずつ増加する
SCP-1295-1とSCP-1295-4の影響を同時に受けた場合、相反する強迫観念の板挟みで昏睡状態に陥るというコンボまである。
要は「邪魔したり無理に連れ出すとヤバい」ということである。これは納得のKeter分類であろう。
補遺
とある日、ウェイトレスに偽装したエージェントが彼らの会話の記録に成功している。
SCP-1295-2: それ全部食べ切れるのかのう?
SCP-1295-1: ああ、そうじゃよ。今まで注文したものは全部食べ切ったじゃろう。あんたはここ60年毎日毎日"それ全部食べ切れるのかのう?"と言うがの、いつも同じ答え返しとるじゃろ。何で毎回聞くんじゃ?
SCP-1295-2: 儂が不治の楽観主義者だからかのう。
SCP-1295-3: 治す事が出来ないものなぞ何もないぞ、フレデリック。わしを信じよ。
SCP-1295-2: パット、儂にはさっぱり分からんよ。お前さんの大きな行動は最近かなり人気が陰ってきた様じゃが。
SCP-1295-4: ああ、またこの話か。
SCP-1295-3: どの口が言うか!人間どもが纏まっとったら、あんたのだって存在してなかろうが!
ここで黒文字と白文字の訳注。
SCP-1295-3の特性から大規模な流行り病の事と思われます。
SCP-1295-2の特性から世界的な食糧危機とその解決策の事と思われます。
……続けよう。
SCP-1295-2: おい、今それを-
SCP-1295-4: 黙らんか!二人とも!このつまらん60年間ずっと下らん言い合いを聞かされとるんじゃぞ。クソ忌々しい日々にな。お主らはわしがここのコーヒーを好きなことを運よく思え。さもなくば遥か昔に互いを殺し合うがままに放っておいたぞ。
SCP-1295-1: そうじゃのう。ドワイト、わしらはあんたがここに来るのを楽しみにしとるのを知っとるし…
SCP-1295-4: わしが今までお主のことを忘れたとはひと時たりとも思わぬことだなウォーレン!そもそもはお主がこの混乱した状況を我々にもたらしたのではないか!
SCP-1295-1: 確かにわしの失敗じゃったよ!わしが来た所じゃ、あのバカデカい炎のキノコは世界の終りを象徴しとるはずじゃった!まさかただの大きな爆弾だとどうやって知ることが出来ようか?
SCP-1295-4: それがお主の血なまぐさい担当分野じゃろうが!
SCP-1295-1: もうそれは昔のようではないんじゃよ。正直言うとな、今の流行りがわしにはさっぱり分からんのじゃ。今じゃ遠隔操作に無人偵察それに…電子何とかばっかりじゃ。こんな下らん日々よりも素晴らしい象のほうがわしには欲しい。
SCP-1295-3: 言いたいことはよく分かるぞ。
SCP-1295-2: 儂も。
「バカデカい炎のキノコ」「大きな爆弾」が意味するのはたった1つ、原子爆弾。
さらに、赤色の文字の訳注。
そのものずばり戦争の事だと思われます。
技術の進歩が急速に進む中で、ジイさん方も時代の流れについていくのは難しいらしい。
SCP-1295-4: おいおい、同胞たちよ、そう悲観するでない。我々は終末まで彼らと共に存在するのだぞ。彼らは何も変えることができんのだ。
SCP-1295-1: そう簡単に言えるのは、あんたのは失敗する恐れがないからじゃろ。
さらに青文字の訳注。
SCP-1295-4の特性から人の死の事と思われます。
失敗することがないというのも他の3つと違い死が避けられないことを指していると思われます。
「流行り病」「飢餓」「戦争」「死」に関する4人の老人。
SCP-1295-4: 力抜けよ。長いことここに居たせいで主らがストレス溜めとるのをわしは良く知っとる。しかし我々が乗っていくまでそう時間は残ってなかろう。その上に、これはわしには認めがたいことじゃが、わしはここが非常に気に入ったんじゃ。
SCP-1295-2: 飯は旨いし。
SCP-1295-3: 雰囲気もわるくない。
SCP-1295-1: ウェイトレスもな。あの金髪の子わしにウインクしたと思うんじゃがどうじゃろ。(エージェント█████に)ちょいとそこのパイを一切れくれんかの?有難う。
SCP-1295-4: そう我々はただじっと座って待っとればよい。それはいつでも起きるのだ。わしは知っとる。
SCP-1295-1: じゃな。
SCP-1295-3: うむ。
SCP-1295-2: ああ。なあウォーレン、それ全部食べ切れるのかのう?
<ログ終了>
つまり?
詳細は当該項目に譲るが、出てくる順番に『白い馬に乗った「支配/疾病」を齎す騎士』『赤い馬に乗った「戦争」を齎す騎士』『黒い馬に乗った「飢餓」を齎す騎士』『青白い馬に乗った「死」を齎す騎士』。
それぞれの名前の頭文字も、訳注で
- SCP-1295-1:Warren→War(戦争)
- SCP-1295-2:Fredrick→Famine(飢餓/飢饉)
- SCP-1295-3:Pat→Pestilence(疫病)
- SCP-1295-4:Dwight→Death(死)
と、頭文字が同じであることが明かされている。
ログでもあった通り、SCP-1295-1が広島・長崎に投下された原子爆弾を見て終末の到来と早合点し、四騎士総出で地上に降臨されたのである。
当時の広島・長崎は確かに地獄の如き光景ではあったが、それでもこの世の全てを焼き尽くすほどではない。
本当の終末が来るのはまだまだ先なので、気に入ったレストランで駄弁りながら終末の時を待っている、というのがこのオブジェクトなのである。
そしてこのオブジェクトの名前は……
投稿されたのは2012年。
広島・長崎に原爆が投下された1945年から67年後であり、当時はこの7年後世界的に大流行した新型コロナウイルスなど全く見られず、燻る火こそあれどウクライナ侵攻もガザ地区侵攻もまだ起きていなかった頃である。
今の世界は、終末を告げる騎士たちにはどう見えているのだろうか?
追記・修正はSCP-1295の邪魔をしないようにお願いします。
最終更新:2025年09月23日 17:53