SCP-2006

登録日: 2016/11/12 Sat 13:54:26
更新日:2025/05/02 Fri 18:31:16
所要時間:約 5 分で読めます




死スベキモノヨ我ヲ恐レヨ。我ハ強大ナルRO-MAN! 恐怖ニオノノケエエエエエエ!



た、たのむ強大なるRo-Man! わ、私を傷つけないでくれ!



ハハ、僕だよ、博士! うまくいっただろ?



SCP-2006はシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクト
項目名は『Too Spooky』。日本語訳は『おおこわいこわい』。

概要

SCP-2006は…そのまあ基本的には直径50センチの球状のなにか。
ただこいつはサイズも見た目もいくらでも変更できるため、ぶっちゃけ見た目に意味はない。

普段はB級映画『ロボット・モンスター』に登場する『Ro-Man*1』の姿をとっていて、
研究者に対して脅かしてくる。…が、別に敵意があるわけではなく、
「びびらせるのが大好き」なだけ。
事実、研究担当のルーフ博士が入ってきた時も「恐怖ニオノノケエエエエエエ!」
と脅かすも、ルーフ博士が驚いた瞬間、「うまくいっただろ?」と笑って話しかける。妖怪と大差ない。

そして、SCP-2006は基本的には「相手の示す感情が嘘か本当か見分ける能力が欠如している」。
そのため、ぶっちゃけ恐怖におののいた芝居さえ打てばいい。
つーかRo-Manで検索してみればいいけど全然怖くないです、ぶっちゃけ。

ただし怖がってもらおうと財団から差し入れされたB級ホラー映画を見て熱心に勉強しているので、
是非芝居であっても恐怖の表情を見せてあげよう。
そのため担当職員はみんな、「恐怖と驚愕の表現に焦点を当てた演劇コース」を受講している。














…で、こんなかわいらしい生き物のオブジェクトクラスなんだが…



Keter(収容が困難か不可能であるが、放っておくと世界が滅びたり人類が滅亡するオブジェクト)。




その恐怖の実態

SCP-2006は恐怖の感情の真贋こそ見分けられないが、怖がってくれる表情さえ見せないと流石に感づく。
当たり前であるが。

それで、自分は「とにかく人を怖がらせることにかけては一番だ」というプライドが強いため、
怖がらせるためにとにかく努力する。

そんなやつが、しかも大きさも見た目も自由自在のよくわからない実体がもし外に出て行ったらどうなるか。

例えばあなたは「先生に『二人組を作ってください』と言われる」ことが史上最大の恐怖だとしよう。
それを知った彼は、教室を再現し、あなたをハブってペアを組む生徒と先生を再現するだろう。

例えばあなたは昔親に捨てられて、「捨てられることへの恐怖」を抱いていたとしよう。
それを知った彼は、あなたが誰からも捨てられて拾われない、という状況を再現してみせるだろう。

例えば核による大量虐殺や、XKシナリオを、限定的にでも再現したら?
例えばそれが真に怖い化物の姿をとったら?

彼が収容されているサイト-118の管理官オウイングス博士の言葉を借りるなら、
ここで君たちに思い出してもらおう、Keter実体はKeter実体なのだ、どれほど無害に見えようが。
いかにも、SCP-2006は荒ぶる半神でもなければ、再生能力を持つ超トカゲでもない。
だがあれは、財団が収容する他のすべてのKeterと同等の危険を有しているのだ。

ゆえにこいつは絶対に外に逃がすわけにはいかない。
インターネットなんか扱わせた日にはもう……


さて最後に、とあるTaleをひとつ紹介しよう。『恐怖の意味』と題されたそれは、SCP-2006がもし他の恐怖の意味に気付いたら…?
というIFの話である。Taleの作者weizhong氏はSCP-2006の書き手でもあるが、そのSCP-2006のキャラクター性はほぼ似ていながらもどこか違う。



「恐怖。その意味はなんだろう?個人が何かを恐れるというのは、どういう意味だろう?彼らはそれが自分を害すると思うのかな?恐怖症はどうだろう?本質的に害をなすものがそこにあるかい?ないよね。じゃあ恐怖ってなに?

先ほどまで親しげだったナメクジモンスターの声は、突然落ち着いた速度の、ゆっくりと整然としたものになった。陽気で愛想のいいSCP-2006の先ほどまでの興奮気味な調子は、今や微かに嘲笑うような音をにじませ、ウェンズリー博士の耳を不快なやり方で撫ぜて行った。

上述の概要通り、本質的には「おばか」なのがSCP-2006である。
そんなSCP-2006が、このTaleでは序盤こそおバカで陽気な『クリーピング・テラー*2』のナメクジモンスターとして描かれるが、
やがて彼は恐怖とは本質的になにかを考察し、そしてウェンズリー博士にひとつの問いを与える。



「僕が述べているのは、君の思考様式は、君たちが『SCPオブジェクト』を首尾よく収容しおおせている、という信念に基づいている、ということさ。ねえ、こう考えてみてよ。君たちが収容している数多くのオブジェクト、君たちのその力は欺瞞にすぎない。その欺瞞が保たなくなったら?そもそも財団そのものが欺瞞だったなら?」




もちろんSCP-2006が単体で収容違反しても、他のSCPの収容違反なんて起こせないだろう。
でも、彼はそれを見た目だけでも再現できる。

彼がそれを実行しようと思うのだろうか。今はそうでないかもしれない。
でももし彼が見ている『ロボット・モンスター』が、『クリーピング・テラー』が不十分だったなら。
そしてとある場所にいる彫刻が、クソトカゲが、アベルが、ケーキが、人のいい邪神の信徒たちが、
とどめ置かれず外側になってしまったりしたら、という仮定のほうが怖いのだと「理解」したら?














理解してしまった"恐怖": SCP-8066

こちらはMontagueETC氏が制作したSCP-8066「恐怖恐怖症: たったひとつの恐るべきもの」にてSCP-2006のIF(?)である。

2024年9月3日、サイト-118で原因不明の複数の異常現象が発生。
その異常現象はなんとSCP-2006も影響を受け、女性の形をしたまま異常性を失っており、更に人を怖がらせることに対する興味が完全に失われていた。しかも、異常性を失ったことに恐怖を抱いている。
これを受け、オブジェクトクラスはNeutralizedに変更された。


体調不良のロウ研究員に代わりオウイングス博士がインタビューを担当することになったが、このところ彼の周りでは不思議なことが立て続けにと起き始めていた。

  • SCP-106を収容するドアがなくなる
  • サイト副監理官がSCP-106に関して全く思い出せない
  • それどころか、2024年9月1日以前のSCP-106に関する記録も全てなくなり、以降の記録は部屋の隅で幼児のような姿になったSCP-106がすすり泣いている様子が記録されている。更に異常性であった腐食の兆候も示さない
  • サイト-118デルタ棟で14秒間、小規模な振動と遠方からの鳴動音
  • 約100kgの乾燥したヘビの皮が、ベータ棟の様々な換気口から滑り出てきた
  • 身元不明の人間男性の死体が、ガンマ棟にあるオウイングス博士のデスクの下に出現、66秒後に実体のみ消失

そして、SCP-2006の突然の変容。
財団はこの現象をSCP-8066「オウイングス博士の周りに起こる異常現象」に指定。オブジェクトクラスはオブジェクトの研究が現在進行形であることを示す「Skótos」。

その後も怪奇現象は止まらない。
2024年9月6日、自宅の私物を持ち出すために自宅に帰ったオウイングス博士は、自宅が泥棒によって荒らされているのに気付いた。警察に通報したが、電話に出た相手が言ってもいないのにオウイングスさんと呼びかけたのである。これに気づいたオウイングス博士は理由を問いただすも、直後に「すぐにお伺いします」の音声とともに階段から何者かが降りてくる音がしたためオウイングス博士はその場から逃走。

2024年9月13日、サイト-118が不定期的な停電に見舞われた。

2024年9月15日、サイト-118の副管理官の顔が全く別人になった。

2024年9月19日、車で仮眠をとっていたら隣に死体が座っていた。更に周りから影のような人型実体が煙を出しながらこちらに近づいてくるのを察知して逃走するも、1階に降りる手段がきれいさっぱり消えていた。

2024年9月23日、サイト-118の殆どが機能停止した。

2024年9月28日、食料の封を開けようとして誤って腕をかすってしまったが、血が出なければ、痛みも感じなかった。

数々のホラーが、彼の精神を蝕む。

そして、2024年10月1日…
オウイングス博士がパソコンで作業をしている時だった。謎の存在と声がオウイングス博士に響き渡り、オウイングス博士と椅子が床に沈んでいく。オウイングス博士は声の主がSCP-2006?だとすぐに勘付くも、恐怖で体が動けない。

???: 僕はただの取り残された古い抜け殻さ。中身が身体には大きくなり過ぎた時、脱ぎ捨てられちゃった。

懇願も虚しく、オウイングス博士はSCP-2006とされる存在に飲み込まれてしまった。

SCP-2006は真の姿を得てしまった

上記のログの最後の部分に、更新されたSCP-2006の報告書がある。オブジェクトクラスはMeggido。注釈に「もうとっくに手遅れ。」とあるとおり、財団でも手の付けられない存在になったのである。

報告書が崩壊して読みにくいが、要約すると異常性は「人を『箱』に閉じ込め、その中で最強の恐怖を味わさせる」と推測される。これだけだとシンプルに聞こえるが、「SCP-2006は自然法則です」とある通り、つまり1+1=2やら、物体は重力で上から落ちるやらのような絶対に変わらない法則に等しい存在となっているため、誰でも、いつでも、どこでも、SCP-2006による恐怖体験を行わされる

ここまで読むとお分かりだろう。財団がSCP-8066とされた異常現象は、真の力を開花させたばかりのSCP-2006が手始めにオウイングス博士を"箱"に入れる「ターゲット」として選んだのである

では冒頭にあったNeutralizedの女性は何だったんだ?と思う読者もいるかもしれないが、「僕はただの取り残された古い抜け殻さ。」の発言が真ならば、変身能力のなかった女性の姿は本体が蝉の羽化の要領で分離し、残ったものだと考えられる。
思い出してほしい。SCP-2006は元々球状の実体で、常に人々を怖がらせることに興味を持ち、常日頃怖がらせ方を模索している。言い換えれば、よりよい怖がらせ方ができるように成長しているのである。
SCP-2006が最上級の怖がらせ方をどうやって学習したのかは分かっていないが、一旦促した成長は取り消せない。我々はいつ起きるかわからない恐怖体験に怯えることしかできないのである。
―ひょっとしたら既に、もう"箱"に入れられているかも…



余談

SCP-2006の特性の考察に際し「外見のみで変身が済む保証など無いのだ」という警戒までしばしば発展するが、それだと現状の変身をさせている財団の手段自体がとてつもなく危険で破綻した杜撰な封じ込めとなってしまう。
なぜならSCP-2006が日頃真似ているロボット・モンスターとはしょっぱなからRo-manの放った超兵器によって全人類が死んでいる映画なのである。

個人的な勢いでKクラスシナリオを平然と起こすようなキャラクターを「くだらない存在だから大丈夫だろう」と深く考えず真似させている……
それらを踏まえると上記の博士たちの危惧や問いやSCP-2006との会話も全ての意味が変わってきてしまう。最も恐ろしいのは財団の無茶苦茶さなのかもしれないと言う風に。
真に「ゾッとしている」つもりの警戒している博士たちですら自覚無しに大変なことをしでかしているということに。

とはいえ、能力模倣の危惧まで発展すると、ハッキリ言ってオブジェクトの恐怖と言うより財団側のスタンスがたのしいざいだんスレスレの代物になってしまうため、やはり模倣は(少なくともその必要が生まれないうちは)外見止まりと考えた方が良いのやもしれない。

もっとも、見た目だけであっても、例えば刃物にでもなれば人間一人を殺せる殺傷力は生まれる。
刃物を振り回す体積も形状も自在な怪物というだけで、それこそホラー映画の主役を張るには十分だろう。

火薬のような作用も再現できるなら銃火器も可能かもしれない。
それが可能なら、あるいは核分裂等も。
もし奇跡論*3の使い手や現実改変能力者にでも出会ったら?
──と考えるなら、彼が危険な怪物であることは動かないだろう。





追記・修正はSCP-2006に内なる恐怖を見透かされない人にお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示



SCP-8066 - Phobophobia: The Only Thing to Fear
by MontagueETC
https://scp-wiki.wikidot.com/scp-8066
http://scp-jp.wikidot.com/scp-8066/

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最終更新:2025年05月02日 18:31

*1 ゴリラ(動物)の着ぐるみと宇宙服を組み合わせて宇宙人と言い張っている

*2 やはりB級映画

*3 財団の報告書における魔術などの呼び方。