大和(戦艦)

登録日:2009/10/11 Sun 13:44:34
更新日:2024/03/18 Mon 20:37:55
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戦艦大和(やまと)は、旧日本帝国海軍が建造した「大和型戦艦」の一番艦。
「大和」は旧国名の大和国に由来するが、転じて日本の別名でもあり、この艦への期待の大きさがうかがえる*1
姉妹艦として武蔵信濃(空母へ)、111号艦(計画中止)、797号艦(計画中止)がある。
ちなみに大和の名を持つ軍艦としては葛城型スループ二番艦「大和」に次ぐ二代目。


太平洋戦争当時から現代に至るまで、主砲口径及び排水量で大和型を超える戦艦は存在しない。
今後、これを上回る戦艦が建造される可能性は極めて低い為、事実上史上最大最強の戦艦であると言えるだろう。


概要

【歴史】
 着工 1937年11月4日
 竣工 1941年12月16日
 戦没 1945年4月7日
 除籍 1945年8月31日


【諸元】
 全長:263m
 水線長:256m
 最大幅:38.9m
 基準排水量:64,000トン
 (重量超過で実際は65,000トン)
 満載排水量:72,809トン
 最大速力:27.46ノット
 航続距離:7200海里(16ノット)
 ※実際は11,000浬以上
 燃料搭載量:6400トン

【兵装】
 主砲:
 ・45口径46㎝砲(秘匿名称94式40cm砲(大嘘))3連装3基計9門
 砲弾:
 ・徹甲弾(91式、1式)
   砲弾重量1460kg(異説1520kg) 炸薬量33kg 初速780m/s
 ・通常弾(零式、3式)
   砲弾重量1360kg 炸薬量61.7kg 初速805m/s

 副砲:
 ・60口径15.5㎝砲3連装4基計12門(後に対空兵装増強の代償重量として半減)

 高角砲:
 ・12.7㎝連装高角砲6基12門

 機銃:
 ・25㎜三連装機銃多数(時期により著しく異なる)

【装甲】対45口径46cm砲防御
(安全距離20000~30000m、実際は設計ミスでこれよりも広い!
 ・舷側装甲410㎜(20度傾斜)→500㎜相当
 ・水平装甲200㎜
 ・主砲前楯650㎜
 ・主砲天蓋270㎜



【建造に至るまで】
 仮想敵国のアメリカは、両洋に艦隊を展開しなければならない関係上、パナマ運河を通せる幅に制限される。
 その条件で建造した場合、40.6cm砲を積んだフネが関の山だと見積もられた。
 じゃあアメリカがもてない口径の砲を持ったフネを造ろうぜ!軍縮条約も脱退したし!と建造が決定される。
 対外的には40.6cm砲戦艦とされ、議会すら騙して予算が組まれた。
 ちなみに、第四次海軍軍備充実計画の一一〇号艦型でも同様の工作で誤魔化していた。
 その機密保持は徹底しており、戦後までアメリカはおろか、自国の兵や将にすら漏れなかった。
 ただ、漠然と「新型戦艦があるらしい」程度には知られていた模様。
 そりゃドックを目張りして「見るなよ!見るなよ!絶対見るなよ!」なんて言っていれば、多少はね?


【設計思想】
 石橋を叩いて渡るように、信頼性の高い従来技術が各所に用いられる。
 機関は信頼性確保の為、わざわざリミッターをつけた状態で搭載された。  
 また、軍縮条約からは開放されるも、予算は有限かつ、既存の港湾施設で運用できるサイズには限度がある事から、
 装備の割には非常に小さい。これは被弾率の軽減にも効果があった。

【主砲】
 大和の特徴は、世界最強の主砲を搭載したことに集約される。
 およそ9-16発で如何なる敵戦艦を廃艦状態に叩き落す超絶火力。
 その破壊力は、当時の第一線級戦艦の備えた40.6cm砲に対して、最大で5割増しにもなる。
 ただし、初期不良で砲塔には故障が絶えず、これが完全に解決されたのは戦争も後半になってから。
 発射の際、近くの乗員は口を開けて耳を塞ぐ必要があった。こうしないと発射の際の轟音と衝撃で、目が飛び出したり肺が破裂して死に至るため。

【防御】
 防御方式は、当時のトレンドである集中防御方式で、艦の防御を全体の53%に留めることで、大幅な重量軽減に成功した。
 安全距離の設定は自艦主砲20000~30000mで設計されたが、見積もりが甘く実際にはこれより広い範囲で耐えられる。
 舷側装甲には、新開発のVH装甲が用いられた。
 これは、表面浸炭加工を省略する事で、防御力向上とコストダウンに成功した逸品である。

【速力】 
 要求性能では30ノットだったが、そんなもんを実現した日には満載8万トンにもなることで早々に却下。
 どうせアメリカの戦艦なんて低速だろうから、それより優速な27ノットにしておこうとこの数字に。
 実際には、アイオワ級を除くアメリカ条約型戦艦も同じくらいの速力だったというオチがつく。
 実のところ、27ノットはプレ・ジェットランド戦艦より高速で、機動部隊にも追従し得る速力である。
 更にリミッターを解除して機関本来の定格出力を出した場合の速力は28.3ノット以上で、幅広の艦体やバルパスバウによる航行安定性を併せると世界的に見ても実用速度は十分に高速である。

【航続性能】
 要求性能では16ノットで7200海里だった。
 艦本式11号機械を搭載した潜水母艦の大鯨(後に航空母艦の龍鳳へ改装)における芳しくない運用実績を受けて、
 熱効率の高いディーゼルとの混載からオール・スチームタービンへ機関が変更された影響で排水量も増加したため、
 万一性能を満たせなかったら困ると慎重を喫したところ、燃費を低く見積もりすぎ、燃料タンクが過剰に大きい事が判明。
 燃料搭載量を減らすことで、そのほかの部位の重量超過を吸収することとした。

【理想と現実】
 当初のシナリオ通りに戦争は進まず、そもそも真珠湾で米戦艦部隊は大打撃を受けたので、緒戦において出番を失った。
 米戦艦部隊が再編成される時期には、そもそも戦力に差が開き過ぎていた。
 最前線へ出撃する機会はなく、冷暖房完備、食料分配も優先的と高待遇であったため、「大和ホテル」とも呼ばれていた。
 南満州鉄道がチェーン展開していた「ヤマトホテル」にもひっかけた揶揄である。
 ただし、大和内部ではかなり徹底的に乗員教育が行われていて「大和大学校」という言葉もあった。 


戦歴

ここでは、大和側も攻撃を行った回のみを記載するものとする。

《1944年6月15日》
 マリアナ沖海戦に、戦果拡大の為の前衛艦隊として出撃。
 米軍攻撃隊に向けて実戦初の主砲発射となる、三式弾を27発放つ。
 しかし僚機を米軍機と誤認し、数機を撃墜する失態も犯す。
 航空決戦に敗れた為、その自慢の主砲を敵戦艦に振るう機会はなかった。

《同年10月22日》
 レイテ沖海戦に参加。
 23日第二艦隊旗艦愛宕撃沈により旗艦となる。
 25日サマール島沖で米護衛艦隊と交戦し、主砲弾を104発発射。
 この時の栗田健男提督の判断で『謎の反転』を行い、46cm砲を戦艦に使う機会を失う。
 (この時の反転を囮部隊の司令官である小沢治三郎中将は『まじめにこの戦をしたのは西村くんだけだった…』と批判し、生涯嘆いたという)


《1945年3月19日》
 呉に帰港していた大和は、呉軍港が空襲を受けた際、敵機と交戦。
 目立った被害はなし。

《同年4月5日》
 連合艦隊より沖縄海上特攻の命令を受領。

《同年4月6日》
 夕刻、大和率いる第二艦隊は、天一号作戦(菊水作戦)により、山口県徳山湾沖から沖縄へ向けて出撃。






そして大和は、運命の坊ノ岬沖へ…






《坊ノ岬沖海戦》
 1945年4月7日12時32分、鹿児島県坊ノ岬沖90海里の地点で米海軍艦上機を確認。
 攻撃を開始し、大和最後の戦いとなる米海軍との死闘が開始。

 14時23分、魚雷7本、中型爆弾5発が命中し、米軍航空隊386機による波状攻撃を受け続ける。
 最後のとどめに、空母ヨークタウン艦載機による右舷後部への魚雷攻撃で徐々に左舷側へ傾き、横転または転覆。
 約2時間、幾度にも渡る爆撃と雷撃を受け、尚も沈まなかった大和はようやく大爆発を起こし、
 艦体は2つに分断されて海底に沈む。



 現在、北緯30度43分、東経128度04分、長崎県男女群島女島南方176km、水深345mの地点の海底にて、
 2740柱の英霊たちと共に眠りに就いている。


総評

「大艦巨砲主義の権化」「無駄な公共事業」「時代遅れ」…等々、軍隊憎しのリベラル派から散々な評価を受ける大和だが、
それらは間違っているとまではいかないにせよ、正確とも言い難い。

大和が考想された時代は、まだまだ海戦における航空機の運用が手探りだった頃である。
「これからは航空機が主役になる」という説はあったものの、
「航空機が積める爆弾はたかが知れている。そんなもので戦艦を沈められるのか。あくまで補助的な役割に留まるのではないか」という
至極もっともな理屈が主流だった。
航空機戦力の強化を主張する人間にも「先制の航空機攻撃で艦隊から脱落した艦を戦闘機と観測機の援護を受けた戦艦と駆逐艦の連携で止めを刺す」と言う戦法を重視していた者も多かった。
実際、戦艦ビスマルクや重巡洋艦ポーラは航空機の攻撃で逃走を封じられたところを複数隻の戦艦の集中攻撃で倒されており、実戦でも非常に有効な戦法であることは実証されている。

しかし、日本軍の機動部隊は真珠湾攻撃で4隻の戦艦を撃沈せしめた。これらの戦艦は停泊中のところを不意打ちした結果であったが、
続くマレー沖海戦では、最新鋭の戦艦プリンス・オブ・ウェールズと巡洋艦レパルスを撃沈。完全に戦闘状態の戦艦も航空機で沈められると証明されたのである。
このことは当の日本軍にすら予想外であり、かの山本五十六も、交戦前は「レパルスは撃沈できるかもしれないが、プリンス・オブ・ウェールズは無理だろう」と考えていたほどであった。

その後も空母機動部隊は快進撃を続け、航空機の有用性を証明し続けた。大和は、彼女を生み出した日本海軍の手で時代遅れにされてしまったのである。
それが敵の手によるものでなかったのは、大和にとって救いであったのか、皮肉であったのか。

また、大和が着工した時点での戦艦は、最新の長門型戦艦でも艦齢17年であり、
それ以前のものは伊勢型戦艦で19年~20年、扶桑型戦艦で20年~22年、
最旧式の金剛型戦艦に至っては22年~26年と、一般に艦船の寿命といわれる30年の折り返し地点を過ぎた老朽艦ばかりだった。
繰り返すが、当時はまだ空母の有用性が未知数であり、戦艦こそが最強兵器だった時代である。
「戦艦なんてやめにして、スパッと全部空母に切り替えましょう」というのはあまりに不確実すぎる賭けであり、老朽化した艦の代替はどうしても必要だった。
前述の批判の中には「専用運搬艦が必要になる46cm砲なんて一点ものを作らないで、量産性を考えた艦にすればよかったんだ」というものもあるが、
それは欧州や米軍艦が46cm砲を積むことが無かった故の結果論であり、質を重視した日本軍が長門型以上の質を追求するに当たっては当然の結論であり、
旧型艦に劣る新造艦など持つ意味がないので、長門型を大幅に上回る設計にしたのも当然である。
圧倒的な国力差のあるアメリカ相手に物量合戦など仕掛けたら、ただでさえほとんどなかった日本の勝機は完全に消滅しただろう。


就役直後に軍事的イノベーションが起こり、戦艦が主役の座から奈落に転落するなど、誰が予想しよう。
超強力なレシプロ機を作ったと思ったら、いきなり超音速ジェット機が普及してしまったようなものである。
それでも戦艦の強力な主砲は、対地攻撃のメインとしてなお有用ではあったが、無為に喪われるのを恐れ、秘密兵器として切り札を出し惜しんだ海軍上層部により、
無為に温存されるうちについに使いどころがなくなってしまったのである。

設計も参戦も、何もかも間が悪すぎた。それが戦艦大和の悲劇といえる。



余談


■信濃を沈めたアーチャーフィッシュは28,000トンの空母を撃沈したと認定され、アーチャーフィッシュはこの功績により殊勲部隊章を受章された。
アメリカ軍は信濃の撃沈自体は無電傍受で察知していたが、信濃川に由来する名前の巡洋艦改造空母と思い込んでいた。
アメリカ軍が信濃の正体を知ったのは1946年になってからのことで、信濃を沈めた当時、アーチャーフィッシュの3代目艦長だったジョゼフ・F・エンライトはジェームズ・フォレスタル海軍長官から海軍十字章を、ハリー・S・トルーマン大統領から部隊感状を授与された。

■航行中にアメリカの潜水艦より魚雷攻撃を受け、主砲3番砲塔右舷に魚雷1本を被雷した。
4度の傾斜を生じたが約770トンの注水で復元、速度を落とさず速力20ノット前後でトラック泊地へ向かった。魚雷命中の衝撃を感じた者はおらず、わずかに傾斜したため異常に気づいたという。
この時の米潜水艦の艦長は「未確認の日本の新型艦を目撃、全長250m以上で魚雷命中後も航行を継続していた」と正確な報告を上げたが
上層部は「そんな巨大な戦艦を日本が作れるはずがないしあったとしても魚雷が命中して平気なはずはない」と
艦長を 虚偽の報告を上げた精神異常者 とみなして翌年に大和が確認されるまで左遷させていた。

■艦首にバルバス・バウ形状を採用しているがその中に零式水中聴音機というソナーを積んでいた。
また一部資料に拠れば大和・武蔵共に対潜爆雷を積んでおり「一応」レベルではあるが対潜能力が有った。

■日本海軍はマル三計画以降に、モンタナ級戦艦の情報を掴み、恐れおののいた。その為に、対抗上、必要と思われた合計11隻(当初は8隻)の大和型の派生型を建造しようと目論んでいた。
マル四計画艦の一一〇号艦こと信濃は実は大和の改良型で、「改大和型」一番艦である。
マル五計画では更に改良した七九七号艦、二〇インチ砲戦艦とした七九八号艦及び七九九号艦の「超大和型」が盛り込まれ、実際に砲は組み立て寸前の試作段階まで進んだ。
マル六計画では米両用艦隊法への対抗上四隻が検討されたが、実際のところ成立の見込みは無かったという。

■姉妹艦の「武蔵」はレイテ沖で沈没したが、受けた損害は魚雷20本、爆弾17発以上命中(諸説あり)という空前絶後のものであり、しかも沈没するまで微速ながらも航行を続けていたという。後世で被害担当艦と誤解された程であり、いかに大和型の耐久力が桁外れだったかがうかがえる。

■この戦訓をみた米軍攻撃隊は「大和」を攻撃するに当たり、「まず急降下爆撃で対空兵装をつぶし、しかる後に魚雷攻撃を片舷に集中し横転させる」という戦術を取ったという(これもまた諸説あり)。大和の被雷本数が約10本と武蔵に比べ少ないのはこの戦術の為と言われているが、当時の米軍攻撃隊クルーの証言では「魚雷30本以上、爆弾30発以上命中を確認」というものもあったといわれている。最も戦場では誤認は常に起こりうるものの為、真相は不明であるが、海底の大和を調査した結果、残存している部分だけでも戦闘詳報に記録されていない魚雷命中痕跡が4箇所確認されているとの話である・・・

■よく大和の比較対象にされるのが、同じくアメリカ最新の戦艦「アイオワ級戦艦」。
「どっちが強いの?」といった疑問に対しては諸説ある。

攻撃力に関して、
精度や破壊力の面で大口径な大和型が優位だが、口径の割に重いSHSを使用するアイオワ級も近い貫徹力を示すため、距離によっては大和型の装甲を破壊可能ではある。
装填時間が長いため、手数ではアイオワに一歩譲るという説があるが、弾着観測を挟む為実用上は大差ない。
基本的に同じ重さの砲弾ならより大口径の砲の方が命中精度が高く、また砲台としての安定性で大和型の巨体は群を抜いて優秀の為、測距性能以外は精度面でも大和型が優位。
物凄く乱暴にざっくりと解説するのなら、「目が良いけどノーコン気味なのがアイオワで、目はあまり良くないけどコントロールは良いのが大和」と言った具合。

測距性能に関して
光学式測距においては、世界最大の測距儀を装備する大和型が優位で、視界良好なときには問題なく測距できる。
しかし、電探の性能に大きな差があり、基本的に大和型に搭載された電探には射撃用としては精度が不足している為、視界不良時においては精度の優劣が逆転する公算が高い。
なお、電探はアメリカ戦艦であってもシステムに後付けされたにすぎず、
「 レ ー ダ ー と 主 砲 は 連 動 し て い な い 」事は知っておくべきである。
どうやって情報を伝達してたかって?伝声管だよ伝声管。射撃盤には手動で入力する。

射撃管制の部分に関しては、
双方歯車式の射撃盤を使用しておりこの部分では精度の優劣は特にない。
アイオワ級は電動油圧式の砲塔の自動操縦機構や垂直安定儀の装備で射撃管制の自動化という観点で何歩も先を行っていたが、海面の荒れ具合によっては従来通り人間による手動制御で発砲する。
※第二次大戦時点ではサーボ機構は完成しておらず、最後の歯車が装備されたのは戦後になってから。
大和型にはそのような先進的な機構は搭載されていないが、第二次大戦時点では訓練された人間による砲塔操作・発砲タイミングの調整も性能の面で遜色は無い。

搭載機に関して
アイオワ級は3機の水上機を搭載可能だが、大和型は水上機7機搭載可能となっており、非常にナンセンスな条件ではあるが、「自艦の搭載機のみによる索敵力」を比較すると双方の搭載する機の種類にもよるが、大和型に倍の能力があることになる。
砲撃戦に際しても、もしも「自艦搭載機のみによる射弾観測が可能」ならば、搭載機数の多い大和型が制空権争いでも有利になる。
そんな状況はあり得ないけどね…

防御力に関して、
大和型は世界最強の艦砲である自艦主砲に対してさえ過剰防御であり、対アイオワ安全距離はおおよそ「17-32㎞」
他方、アイオワ級は排水量制限により防御力基準を通常型16インチ砲で妥協しており、対大和安全距離は「23-25㎞」程度で実質皆無。どちらも対敵姿勢が加われば防御可能な範囲が増すが、その場合大和型は10㎞台前半でも易々と砲弾を弾くという恐るべき防御力となる。
このことから距離「30-15km」程度は大和型がほぼ支配する距離で、それより内側は双方のバイタルパートを貫くノーガードでのインファイトの殴り合いとなる公算が高い。

まあ、アイオワ級は条約型戦艦(エスカレータ条項により基準排水量の上限が1万トン増の4,5000トンに緩和)なので、個艦の攻防力が劣るのは致し方ない…

速力に関して、
アイオワ級は戦時の満載重量で30ノット超発揮可能の為、双方の過負荷全力状態での速度差は3~5ktほどあり、戦うか退くか、近づくか離すかの交戦権はアイオワ級側が握っている。戦略レベルでは大きな差と言えるが、いざ砲撃戦が始まった後の戦術レベルの優位を確保するには不足している。
(日本海軍は敵より戦術上優位に立つために5割増しの速力優位が必要と考えていた。そもそも主砲の管制装置は40ノット程度までは対応しているんだけども。)
ただし、アイオワはその速力を発揮する為に巨大な機関部を有しているにも拘らず、機関部を守る装甲甲板は薄めなので、主砲弾一発の直撃で逃げ足を失いかねないというアキレス腱が有る。

総合すると、視界良好な昼戦なら大和型が攻防力で優位。海が大時化の時も安定性で大和型が優位。夜間や濃霧で視界不良時にはアイオワ級が電探の差で優位だが、基本的な防御力・耐久力の差で相当距離を詰めねば砲撃が通じない。ただし通じない(=バイタルパート"は"抜かれない)とは言っても艦橋や煙突に当たったらお互いタダでは済まない。視界ゼロでない限りは大和がやや有利だが、身も蓋も無い話ではあるが、「運が良い方が勝つ」くらいのハナシである。

■副砲弱点説
主砲弾火薬庫に隣接する副砲弾火薬庫は設計時からの弱点となっており(軽巡の主砲をそのまま流用した為、相応の防御力しか持たない)、万が一ではあるが垂直に近い角度で副砲に戦艦主砲弾を食らえば、そのまま副砲弾薬庫から主砲弾薬庫に誘爆して、一撃で轟沈する危険性があると言われている。(まあ、連合艦隊の想定決戦距離でそんな急角度の艦砲射撃があるかどうかは別として。ただし武蔵竣工間近に、山本五十六の『爆弾食らったらどうするんだ!』という提言と『爆弾食らったら轟沈!?こわーい』という用兵側の切実な要望で、慌てて副砲防御力の強化がなされたという記録も残されている。そのため副砲防御増強が後付の本艦よりも、最初から防御力強化がなされた武蔵のほうが頑丈だったという説もある)

また、主務設計士の平賀譲氏は良くも悪くも『保守的』な造船技師であった。大和造船の前に起こった友鶴事件や第四艦隊事件で新技術への信頼を失っていたため、先進的な技術の使用に消極的だった。そのために当初の軍令部の計画を権力で捻じ曲げてまで、堅実な(悪く言えば旧式)保守的設計でまとめようとした。しかし実は彼自身も新技術の熟成のためには溶接技術育成が必要であるという境地に達していたために、工廠の若手技師らがこっそりと今後の技術熟成のために、彼に内緒で溶接箇所を増大させたのを『黙認』した。(最も従来のリベット留めも、水圧による接合面破断を起こしやすいという欠点があったが)しかし弊害は残り、実は防水隔壁や注水可能区間の数が長門型と大差ないなど、日本艦としては最高レベルではあるが、米海軍に比べるとダメージコントロール技術に難がある。さらに当時の戦艦設計の流行であった、重要区画を中央に集め重点的に強化し、軽量化を図る「集中防御」形式を徹底した弊害で、艦首艦尾も若干脆い。

■大和だけでも巨大だが、大和建造以後に発展形の巨艦の超大和型戦艦が、それ以前の大正時代には五十万トン戦艦たるものが計画されていた。しかし、いずれも構想で終わっているものの、五十万トン戦艦が大和の建造に影響を与えており、如何に日本海軍の大艦巨砲への信仰が深かったのが分かる。

■大和の主兵装である46㎝砲、これを旋回させる特殊車輪は戦後、とある場所で長く活躍した。その場所とはホテルニューオータニ。東京オリンピック開催時、日本を訪れる外国人観光客に富士山を堪能してもらうという意図で回転ラウンジを設けることになったのだが、ラウンジの建設が決定したのはホテル完成まであと1年もない時期。設計者達は超短期間で直径45mのラウンジを安全かつ滑らかに回転させる方法を見つける必要性に迫られた。設計主任者が日本中を奔走して探し求めたのが、尼崎製鉄呉作業所が有する特殊車輪であった。この特殊車輪は120個が回転ラウンジの回転部に使用され、2018年に安全上の理由で回転を取りやめるまで現役で活躍したという。オーパーツにも程がある

フィクションにおける大和

単純に「世界最大の有名戦艦」と言うのもあるが当時にしてはかなりのハイテクの塊であった事、また改修や換装が劇的に映える事などもあり
創作では大抵何らかの形で手を加えられた姿で登場する事が多い。
ただし、そのような人気が出たのは戦後の戦記ブーム以降。戦時中その存在は徹底的に秘匿されていたこともあり、所謂「ビッグ7」である長門、陸奥が日本の戦艦の象徴とされていた。

宇宙戦艦ヤマト
西暦2199年。ガミラス帝国の遊星爆弾による攻撃で海が干上がったため地上に露出。
九州沖で夕日を浴びる残骸となっていたが、恒星間航行用の宇宙戦艦として改造され250年の眠りから目覚める。

ガミラス帝国白色彗星帝国、暗黒星団帝国、ディンギル帝国からの侵略、惑星アクエリアスの暴走から地球を守り抜いた。

その戦力は架空の大和の中ではおそらく最強。ある意味一般人が大和に持つ「単艦無双の象徴」イメージの権化でもある。
軍事や戦争をほとんど知らなくとも大和だけは知ってる一般人が多いのは間違いなくこの作品が原因だろう。
ちなみにヤマトの船体はスマートで、どちらかと言うとアイオワに近い。

また大和の弱点であったダメージコントロールもしっかりしている。
しっかりし過ぎてもはや不沈艦と化しているが。

なお、前述の通り、現実の大和の船体は真っ二つに折れており、作中のような原型は留めていない。
これは制作当時、大和の状況が不明だったためであり、後にこれを知った松本零士を始めとする関係者は大変悔しがったとか。

■架空戦記
大人気な艦であり、改装されて51cm砲を積んでしまったり航空戦艦になったり核爆弾を搭載したりアーセナルシップになってたりする。
架空戦記界では零戦や山本五十六と並ぶ三種の神器。
大和型よりも巨大な戦艦が登場する作品でも、大した活躍もせずリタイアするケースは稀。
大抵は数斉射以内に敵戦艦を撃沈する(旧式戦艦でも廃艦所要弾数上9~12発は必要で、フッドのような例はレア)。
時にはアウトレンジかつ初弾命中で敵戦艦は一発も放たない内に轟沈させられる事も。
しばしばライバル視されるモンタナ級と対決させられる事も多い。

ストライクウィッチーズ
何故か医務室が爆発したり、46サンチ砲もネウロイに対しては決定打を与えられなかったりといまいちパッとしなかったが、最終回と劇場版で獅子奮迅の活躍を見せる。
というか飛ぶ。旗艦は姉妹艦の武蔵に譲っているようで、やたらと欧州へ赴く(連合艦隊旗艦だと説明されるが、本来は旗艦である大和をライン川を送るはずはないので、実質は武蔵に譲っていると思われる)。
外伝では大和建造の前段階として、八八艦隊計画の残滓である紀伊型戦艦が登場しているが、実際は大和型と紀伊型の間に関連性は無い。
むしろ紀伊型の後続である一三号型巡洋戦艦が大和の『プロトタイプ』である。(46cm砲搭載艦であるため」)
詳細は戦艦大和(ストライクウィッチーズ)の項目を参照。

提督の決断
シリーズ通して初期で建造できる戦艦の中では別格扱いの性能だがそもそも航空機と潜水艦が強い事が多いゲームなので通常プレイではロマン枠になる事が多い。
Ⅲ以降は大和型以上の新型戦艦を設計も出来るので戦艦だけに絞ってもあまり新規建造する必要もないやや不遇な存在。
ただ日本が航空戦力で劣勢に陥った後半シナリオの序盤を乗り切る時には獅子奮迅と言ってもいい働きを見せられる…一歩間違えればあっさり沈む事もあるが。

鋼鉄の咆哮シリーズ
実現しなかった超大和が超兵器として登場している。
一応史実通りの大和型戦艦も作れるが、弱い…というか、超兵器が強過ぎる(シリーズによっては史実計画の超大和型すらパンチ不足に陥る)。

■ウルトラシリーズ
ウルトラセブン』には海底に沈んだ戦艦大和の残骸から作り出した戦闘兵器「アイアンロックス」が登場。
また一峰大二の漫画版『ウルトラマン』では同じく大和の残骸に生命体が融合した怪獣「ヤマトン」が登場する。
アイアンロックスは兎も角、ヤマトンについては実在の大和とウルトラマンとの縮尺がどう見ても合わない気がするが、特撮あるあるである。

■夢幻の軍艦大和
現代の少年がタイムスリップして大東亜戦争時代の大和と出会い、歴史の改変を目論む。
史実を覆し到着した沖縄にて、アメリカの新型爆弾(原爆)を受けそのまま歴史をリセットされる。
打ち切りの影響か伏線もろもろ回収されずに終わってしまった。残念。

■天空の覇者Z
舞台は1930年代という設定だがナチス驚異の科学力の技術供与により飛行戦艦として登場。
作中での名称は「暗号名イプシロン-Y- 超弩級飛行戦艦 大和」。
何故か船体が上下逆さまの状態で飛行、こんな登場しているのはこの漫画だけではなかろうか。
太平洋を横断可能な航続距離を持ち、46センチ砲9門も搭載した超戦艦という設定だったが、
「重力砲が標準装備」というこの漫画の中ではかなり常識的な装備と性能の艦。
その常識的な設計故にナチス脅威の科学力に終始翻弄され、あっという間に分解されてしまうという短い登場だった。

艦隊これくしょん -艦これ-
大戦中の様々な艦が登場する本作にも勿論登場。CVは竹達彩奈
実は公式ツイッターのアイコンにほんの一部だけ写っており、相当な巨乳であることが予想されていたが……巨乳の上に更に徹甲弾の飛帽を追加していた。
最高の火力と最強の大飯食らいとして一航戦に次ぐ新たなるネタキ…ライバルとなりうるのか?提督的にはマジ勘弁して貰いたいが。
公式4コマでは「大飯食らい」なところで赤城にライバル視されている。また、自作のアイスやラムネで駆逐艦娘の人気を得た為、子供好きな長門から嫉妬の視線を向けられている。艤装の中は「夏はひんやり、冬はぽかぽか」とのことである。
総合戦闘力は全艦娘中最強(姉妹艦の武蔵をもわずかに上回る)だが、燃費の悪さに加え、速度や装備の適性など、運用上の制約がけっこう多く、無敵無双というわけにはいかない。ゲームバランス上の問題ではあろうが、こんなところまで史実を再現せんでも…
ゲームや大体のメディアミックスでは概ね大らかなお姉さんといった感じの人物像だが、小説『鶴翼の絆』では上述した戦艦大和の史実における暗い話題を引きずった影のあるキャラ付けがされている。
詳細は「大和型戦艦(艦これ)」の項も参照。

■World of Warships
日本戦艦ツリーの集大成としてTier10にて参戦。各国の戦艦ツリーの中でのTier10実在艦は2023年12月現在大和だけである。(IowaですらTier9なので恐らく今後とも)
ゲームサービスの長期化に伴い他国に架空T10戦艦や18インチ砲艦が出揃った2023年において、大和の46cm砲は射程と精度に優れる上に32mm以下の装甲(同格戦艦の艦首艦尾装甲厚として採用率が高い)を貫通できるのが特徴。
これにより相手が防御姿勢を取っていても纏まったダメージが出しやすく、他の18インチ砲艦(=45.7cm砲)とも差別化された明確な優遇ポイント。
一方で実在艦を再現されたばかりにゲームでの交戦距離にマッチしない装甲配置と相対的に低くなってしまった機動性、その貫通力と引き換えに旋回も装填も遅い主砲は大きな弱点で、中近距離戦闘や多方向から同時に狙われる状況は不得手。
その特性からやたら狙われやすく前に出過ぎると瞬く間に集中砲火を受けてしまうので、乗り手にはそれを避けつつ大和ホテルにならないような距離管理・ヘイト管理に加え、遠距離からでも当てられるエイム力と戦況の先読み力が要求される。
特に前述の装甲貫通優遇を活かすには相応にゲームシステムと他艦の装甲配置を理解する必要があるのに、知名度によって初心者のうちから手を出しがちなツリーと言う事で大半のプレイヤーが本艦の強みを発揮できているとは言い難い。
加えてこれも史実再現要素として航空攻撃に対して弱いと言う欠点もあり、2023年現在全サーバー共通で一番勝率が低いTier10戦艦となってしまっている。*2
メタ的に言えば最初に実装されたT10戦艦*3で、他のT10戦艦が追加されるたびに個性化と言う名の元徐々にインフレした結果なので必然ではあるのだが…折角、史実でなし得なかった艦隊戦と言う土俵に上がったのにこれではあんまりである。
ちなみにハイスクール・フリートとのコラボで作中に出て来る大和と同じ迷彩にすることも可能なのと、蒼き鋼のアルペジオとのコラボで、霧の艦隊総旗艦ヤマトこと「ARP Yamato」もいる。勿論重力砲は撃てない。
またゲーム初のユニーク艦長、山本五十六はスキルの砲旋回が強化されており、砲旋回速度に難のある本艦を操作するにあたっては非常に頼りになる。砲弾がカラー曳光弾で目立つため余計にヘイトが高まる欠点も無視できないが


■アルキメデスの大戦
物語序盤は戦艦大和の建造計画阻止を主軸としている。
図面のデザインや諸元は皆がよく知る大和とは大きく異なり、物語の進行と共に少しずつ変化して史実通りの大和に近づいていく。
主人公からは「予算を大幅に誤魔化している上に実際に作っても日本海軍では運用不可能」と断じられている。
中盤からは国内外の情勢が大きく変化したため主人公が「アメリカ海軍の海戦準備を遅らせる時間稼ぎとして使える」として建造推進側に回り、独自設計のもう一つの大和を建造しようとする。
主人公側の大和はガスタービンやらロケット砲やら先進的にも程がある技術を山程盛り込んでおり、デザインは更に元からかけ離れている。
元々の大和建造派は別個に残っておりこちらも「我らの艦こそが真の大和」であると着工計画を進めている。
そちらは最近の図面で漸くご存知のデザインの大和になった。


コメント

私ごときの編集では、この高名な艦についての説明は不十分かと思います。軍事知識に詳しい方からの追記・修正をお待ちしております。

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最終更新:2024年03月18日 20:37

*1 同様の例に、日本海軍初の国産超弩級戦艦に日本の雅称を冠した「扶桑」がある

*2 逆に姉妹艦の武蔵は勝率が一番高いTier9戦艦であり、余りに強すぎるためか販売中止されてしまった。現在でも入手可能ではあるが非常に機会が限られる。

*3 オフラインイベントでの発表によるとモデリングの完成も全艦艇中最初だったとのこと。ゲーム開発のきっかけになった扶桑よりも完成は早かったことになる。…扶桑は艦橋だけ作って満足しちゃったんだろうか?