武蔵(戦艦)

登録日:2015/03/19 Thu 23:21:00
更新日:2022/04/30 Sat 15:36:49
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武蔵とは、大和型戦艦の二番艦であり、大日本帝国海軍が建造・完成させた最後の戦艦である。
あのチート国家のチート物量をもってしても「モンスター」と結論づけざるを得なかった、大艦巨砲主義の究極到達点。


性能諸元

排水量(就役時):65,000t(基準)/72,809t(満載)
全長:263.0m
全幅:38.9m
吃水:10.4m
機関:ロ号艦本缶12基/艦本式タービン4基4軸(150,000馬力)
速力:27.46ノット(公試成績)
航続距離:16ノット/7,200浬
乗員:約3,300名
兵装:46cm(45口径)砲3連装3基9門
   15.5cm(60口径)砲3連装4基12門→15.5cm(60口径)砲3連装2基6門
   12.7cm(40口径)連装高角砲6基12門
   25mm3連装機銃12基36門→25mm3連装機銃35基105門、同単装機銃25基25門
   13mm連装機銃2基4門
   12cm28連装噴進砲2基56門(改装時増設)
装甲:舷側410mm、甲板200mm、主砲防盾600mm
搭載機:各種水上偵察機最大7機(カタパルト2基)


概要

大和型としての建造経緯や設計思想はの項目に譲るとして、本項では後発艦であるがゆえの差異について解説したい。

まず艦名の由来である「武蔵国」は、明治以降の国家の中枢たる東京(江戸)を含む旧律令国。
姉たる大和、そして幻の遷都計画予定地だった松代を擁する信濃(信濃国)ともども、まさに「日ノ本の中心」を象徴する名を託された姉妹だった。
彼女の艦内神社も武蔵国一ノ宮である氷川神社からの分祀であり、その祭神は建速須佐之男命(タケハヤスサノオノミコト)。日本最古の荒神である。
ちなみに、武蔵の名を冠する艦としては三代目。

大和よりも遅れて起工したため、彼女の建造中に見つかった不具合解消や、連合艦隊旗艦としての設備拡充などの仕様変更が行われている。
元の起工が遅かったのに加えてこれらの改修を行った結果、ただでさえアホ高いコストにさらに陽炎型1隻分が上乗せされ、さらに竣工予定も遅延。
おまけに建造中に大東亜戦争が始まってしまい、完成予定を半年繰り上げろ、とのお達しまで下されてしまう。
しかし、これはスタッフのデスマーチ&比喩抜きの超人的努力で何とか達成できた。月月火水木金金。24時間戦えますか。
これらの突貫作業は結構艦に影響を及ぼしていたようで、機関定格出力が姉に劣っていたり(端数と言ってしまえばそれまでだが)、配管類の精度が劣っていたようだ。

建造中のエピソードについては吉村昭氏の『戦艦武蔵』か、牧野茂/古賀繁一両氏監修の『戦艦武蔵建造記録』を参照されたい。
エピソード全部書いたら項目が1個作れるレベル。詳細は本を買うか図書館で借りて、どうぞ。


余談だが、大和型不要論者の「こいつら造ってるだけの余裕があったらもっと強力な航空艦隊や水雷戦隊編成できたんじゃ……」という言い分について。
そもそも航空機と軍艦では使う金属材が違う。大和型をあきらめても戦闘機は増えない。
また、大和型が求められたのは老朽化した金剛型戦艦の代艦としてでもあった。
一番艦・金剛が1913年就役であり、開戦の1941年の時点で艦暦28年に達する。
大和型に次ぐ最新鋭戦艦であった陸奥ですら、1921年に就航した、開戦時点で20年モノの「老朽艦」だったのである。
新型の戦艦は必要不可欠であった。

水雷戦隊云々に至っては、陽炎型1隻建造するのに大和建造のだいたい7%くらいかかる。つまり、陽炎型14隻で大和1隻分。武蔵だと15隻分になる。
駆逐艦増産しまくった方が、よっぽど国庫が消し飛ぶ恐れが大きいのだ。漸減邀撃に特化した陽炎型は、何だかんだで結構なお嬢様なのである。
戦時省力型の防空駆逐艦?開戦時編制にンなもんなかったでしょうが。


戦歴

シブヤン海海戦以外ないに等しい。ほとんどトラック泊地でニート食っちゃ寝温存されいてた。
そもそも、就役した頃には最新鋭戦艦をホイホイ戦場に突っ込ませられるような状況になかったし、世は帝国海軍が幕を切って落とした航空戦の時代。
燃費の良い大和型といえど、それはあくまでサイズ比であり、某ボーキサイトの女王なんぞ目じゃない勢いで燃料をどか食いする戦艦は、
そうやすやすと出撃させられるような状況ではなかったのだ。艦隊決戦に固執して温存されたってのもあるようだが。

そんなこんなで姉がホテルと揶揄されればこっちは御殿と呼ばれ、出撃していく友軍を指をくわえて見ているしかなかった武蔵だったが、
そんな彼女の最初で最後の出撃が捷一号作戦である。
フィリピンにアイシャルリターンしてきた米軍を迎撃、輸送船団と上陸部隊を殲滅すべく、武蔵ら主力艦隊がトラック泊地を出撃する。
この時、武蔵は可燃物である塗料を使い切るのも含め、船体を銀鼠色にバーっと塗り替えている。

この再塗装、乗員には「艦長四代副長二代の死に(四二)装束かよ」だの、「武蔵は囮艦ですか、そうですか」だのとえらく不評で、
他艦からも「直前にそりゃ、ちょっと縁起が悪いんじゃないか?」などと言われていたのだとか。
しかし武蔵の艦長だった猪口敏平少将としては、「奴らも全力で殴りかかってくるのだから、最も耐久力に優れる武蔵を囮にすることで、その分友軍が攻勢に出られるはず……」
という目的があったようだ。仮にも連合艦隊旗艦を囮にするのだから、そりゃ効果は抜群だろうけど、凄い決断である。


で、1隻だけ玉のお肌はピッカピカ、しかもそいつが他に類を見ない大戦艦だったりすると……まあ、どうなるかは言うまでもないだろう。
全力で悪目立ちした武蔵は米軍航空部隊の格好の的にされてしまい、1944年10月24日、10時26分から戦闘終了までの約5時間、ちょこっとだけ長門に興味が逸れたの以外、
その猛攻のほとんど全てを総身に受け続けることになってしまう。それで浮いて、しかも航行能力が残っているというから恐ろしい。
猪口艦長以下、クルーの練度の高さあってこそだとは思うが……それにしても大和型の防御力も大概である。

ぶっちゃけてしまうと、彼女に叩き付けられた鉄量は一個艦隊を余裕で鉄屑と化さしめる程度にはぶっ飛んでいる。
まあ、元々迎撃に出てくる帝国海軍をボコるために用意された雷爆撃戦力だし、多少過剰になるのは当然と言える。過小だったら目も当てられんし。
そんなもん全身で受け止めてなお浮いてる武蔵さんマジ戦艦の鑑。まあ、大和型が異常すぎるだけなんですけどね。

とはいえ、米軍航空隊の全力攻撃を5時間にもわたって執拗に浴びせ続けられれば、いくら重装甲だろうと全身はズタズタのボロボロ。
戦闘終了後に全身致命傷の体を引きずり、最寄りのコロン島への回航を開始する。この時に撮影されたのが、艦首を沈下させたあの写真。
この時点では往時の機動力は影さえ失われ、機関を騙し騙し6ノットを出すのがやっとだった。
まあ、あんだけフルボッコされて航行能力が残っているって時点で何かがおかしいんだが。

平行して負傷者の移送や左舷傾斜復旧、排水などの応急処置が行われていたが、生還した乗組員が当時を語って曰く、
「角材がマッチ棒みたいに折れるわ、鋼板がベニヤ板よろしくひん曲がるわ、凄まじい水圧だったよ」とのこと。
そりゃ、あの巨体に開いた破孔から流れ込む水量だもの、水圧もおかしい事になって当然だろう。

しかし必死の復旧作業の甲斐なく総員退艦が発令され、クルーが脱出した後、19時35頃には完全に転覆してしまう。
恐ろしいことに、天地逆転した状態でなおも浮力を保っていたが、二度水中爆発音が聞こえた後、艦首方向からシブヤン海に消えていった。艦齢821日。


猪口少将が残した遺書によると、「武蔵が敵の攻撃を受け止め被害担当艦となることで、友軍艦はほとんどダメージを受けなかった。それが幾分慰めになっている(意訳)」
なお、猪口少将の悲愴な決断に対し、捷一号作戦に参加していた艦隊がどうなったかというと……


余談:武蔵の総被害諸説

  • 生還者の持ち帰った戦闘詳報
魚雷命中最低20発、爆弾命中最低17発、至近弾18発以上。端的に言うと、単艦としては全海戦史上最大にして空前絶後の超絶大損害
なぜ浮いてるし。と言うか海戦終了後もなぜ動けてるし。

  • 戦中の米軍公式発表
爆弾命中44発、ロケット弾命中9発、魚雷命中25本、総投下数161発中命中78発。おい、なんだこれ。なぜ増えたし。
報告の重複とかその辺はあるだろうが、それにしたって何これ。仮に事実だったとしたらオーパーツか超兵器の領域なんですが、それは。

  • 戦後の米軍調査結果
魚雷命中14本(確実10本 不確実4本)、爆弾命中16発、至近弾不明。報告の精査や生存者への慎重かつ丁寧な事情聴取の結果であり、おそらく事実に近い……はず。

ちなみに、設計者の牧野茂氏は「絶対的な不沈艦とかありえないからね?」と前置きした上で、「航空支援などとの連携で、相対的な不沈艦にはできる」
「そういう意味では、大和型はその成果は達成できた」と仰っている。


戦慄の武蔵伝説とその終焉

戦後、報告書や生存者の証言をもとに武蔵の捜索が行われたが、沈んだ地点にその姿はなかった。
あれほどの巨体が跡形もなく爆発四散ということもありえないため、海底に到達するまでどこかに流されたのではと思われたが、周辺海域でも見つからず。
何時頃からかは不明だが、沈没時には未浸水区画がまだだいぶ残っていたことやその巨体から、こんな都市伝説が出回った。

「未浸水区画のおかげで浮力と自重が均衡し、着底せずに海中を彷徨っているのだ!
でなければ、こんな長い間調査されてなお見つからないなどありえない!」

……と思いきや、2015年3月2日。ポール・アレン氏(マイクロソフト共同創業者の有名じゃない方)がシブヤン海の深海1,000mに眠る武蔵の残骸を発見した。
これには全世界がビックリ。なお、彼にとっては8年越しの念願成就だった模様。
フィリピン政府が押っ取り刀で声明を出すなど、調査の進行や去就に世界が注目する状況である。

発見された地点は、記録された沈没位置から南方に15km程ズレていたという。都市伝説ほどではないにせよ、沈没時に潮流に乗って流されたのは事実らしい。

沈没状況から察するに、船体は大まかに分けて、艦首部/艦尾上部/艦尾下部の三分割状態にあるようだ。
各所に漢字の読み取れるパーツが残っているなど、保存状態もかなりのものらしい。
艦橋部もかなり良好な状態で残っているが、船体中央部は原型を留めておらず、沈没時に爆発があったという証言を裏付ける結果となった。
映像が進むにつれ早速今までは存在しなかった(と思われていた)機銃座が見つかり、模型業界などがてんやわんやしているとのこと。
※ と思ったら、設計図面の方がよほどインパクトがでかく、このくらいじゃ金型更新には至らないとの公式見解が出てしまった。
  その一方で改造に使える各種パーツは飛ぶように売れており、あっという間に在庫がなくなってしまったとか。



創作における武蔵

仮想戦記では大和に比べ影が薄い。まあ、あっちのが有名だし、後続の超兵器どもが時勢もわきまえずドカスカ出てくるからね、しかたないね。

……と思ってたら2013年秋イベント満を持して登場。萌え属性(主砲)の過積載に、何かしら直撃してブヒる提督が続出した。
さらっと挙げるだけで銀髪褐色眼鏡巨乳ツインテ姉御肌。何だこの萌えのバーゲンセール。
さらには服を豪快に着崩してサラシを巻いてるだけ(下に伸ばして割れ目を隠すようにしている)という、まさかのぱんつはいてない状態
なお、改に強化すると判明するが、おさわりは凱旋後ならOKの模様。

Tier9のプレミアム艦艇。プレミアム艦ではあるが実質ゲーム内通貨である石炭によって購入可能。ただし2020年現在再販予定なしのため、入手は季節限定コンテナガチャ等かなり限られる。
Tier10ツリーにいる大和が史実の最終改修後を元にしているのに対し、武蔵は就役時の装備を再現している形となる。
後の改修で増設された高角砲が殆どない代わりに、艦橋左右の三連装15.5cm砲2基が撤去されていない。
主砲は貫通力こそ46cm砲のそれだが精度は下がっており、大和と同感覚では扱えない。遠距離戦に特化した姉と異なりある程度距離を詰めて戦う必要がある。
何より対空兵装が貧弱の一言で、個艦防空など無きに等しいものとなっているのが欠点。
一方で防御面に関してはHPが若干下がっている程度で装甲配置は大和とほぼ同一。つまりTier10船体をTier9に持ち込んでいるようなものなので同格では最も硬いと言っても過言ではない。
更に2019年頭に行われたアップデートで空母環境が大幅に刷新されたのだが、ざっくりいうと個艦防空の低さが薄れた。
アップデート以後はどれだけ対空に優れた艦船でも単艦で空母の攻撃に対してノーダメとは行かなくなり、まともに防空したいなら艦隊行動が大前提となった。
その結果武蔵の欠点であった防空の低さが目立たなくなったためか、2020年現在Tier9戦艦で最も勝率の高い艦となっている。


  • ノブナガン(作:久正人)
アニメ版オリジナルエピソードにて、小型の進化侵略体が沈没していた武蔵の船体をベースに組み合わさり、生体兵器化して浮上している。
「ムサシ・ワンダー」というサブタイトルも含め、上述の都市伝説を元にして組み立てたエピソードであるようだ。

ちなみに原作では、敵の進化侵略体は主に海洋に棲み上陸を狙ってくるので、敵をサイズごとに巡洋艦級や戦艦級などと区分している。
その上で他にこのようなタイプは出現していないため、263mの超々弩級戦艦クラスにして群体型というのは非常に例外的な種であったりする。
これは設定無視というよりむしろ「アニオリでデカいの出したいけど原作の戦艦級とも戦うんだよなあ。戦艦級しょぼく見える奴ってのもなあ……せや!あの都市伝説の武蔵と組み合わせたろ!」
とかスタッフの軍オタが抜け穴を考えた結果なのではないかという感じもする。

主人公の小椋しおも「兵器のスペックとかエピソード語りだすとなんか早口になるよなアイツ……」みたいな軍オタなので、
軍艦の資料類や設計図面の情報も知っていたのか、武蔵攻略のため内部構造を案内する。
最後は仲間と共に群体型侵略体の中枢を撃破し、人類攻撃者の手先とされていた武蔵に「おやすみ」と再びの眠りを与えている。

主役陣営の旗艦兼在住都市として、女性型自動人形が操艦する航空都市艦“武蔵”が登場。
造りや武装はリアルの武蔵と異なっており、初期は非武装の移動商業都市艦だったが、航空戦艦としてのスペックをフルに発揮したアクロバティックな機動を得意とし、途中から主砲も追加装備。
また10中にて妹艦にして進化形の“大和”も登場。“大和”の猛攻を受けリアル武蔵もかくやの様な状況で撃沈された(自動人形以外の乗員は全員退避して無事)…かに見えたが、
10下で大改造を受け復活、大バトルを繰り広げている。
ちなみに武蔵・大和共に大人なお姉さんメイド風姿である。




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最終更新:2022年04月30日 15:36