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学名がつけられた日本産の恐竜

登録日:2026/01/19 Mon 22:51:10
更新日:2026/08/22 Sat 21:31:00
所要時間:約 11 分で読めます




本項では日本で化石が発見され、学名がつけられた恐竜について解説する。

概要

日本国内において恐竜化石は、1934年に樺太で発見され、1936年に命名されたニッポノサウルスを除いて発見されていなかった。
第二次世界大戦後に樺太はソ連(現ロシア)の実効支配下に置かれ、「日本」の領域から発見された恐竜化石はゼロとなる。
恐竜の生息していた中生代の日本は大部分が海であったと考えられており、そのため「日本では恐竜の化石は発見されない」と考える研究者もいたという。
中にはエゾミカサリュウのように当初は恐竜の化石とされたものの、その後の研究で恐竜ではない別の生物であることが判明するものもあった。

そういった流れが変わったのが1978年。
岩手県岩泉町の茂師(もし)というところで発見された化石が、竜脚類の上腕骨であることがわかったのである。
この化石は「モシリュウ」と名付けられ、これ以降日本各地で恐竜化石の発見が相次ぐことになる。

とりわけ多くの化石が発見されたのが福井県を中心に分布する「手取層群」と呼ばれる地層からで、2000年のフクイラプトルを皮切りに続々と新種が発表されるようになった。
これ故に福井は「恐竜王国」と呼ばれるようになり、福井駅前には恐竜の像が置かれ、県立大学には「恐竜学部」が設置されるなど県を挙げて恐竜研究が推されている。

とはいえ恐竜発見は福井県に限ったことではなく、北海道から鹿児島県までの各地で恐竜化石は続々と見つかっている。
特に福井県の対抗馬として注目されるのが「篠山層群」という地層を有する兵庫県で、2014年のタンバティタニスを皮切りに3種の恐竜(+卵化石)が発表されている。
今後も日本各地で新たな恐竜化石が発見され発表されていくことが期待されている。

こうした恐竜研究において重要となってくるものの1つが「学名」である。
これは生物を「属名+種小名」の形でラテン語の文法に従って表したものであり、生物の「正式名称」として世界中で通じる名となっている。
この学名が名付けられるには、過去に命名された他のどの種とも異なる種であることを証明する必要がある。
このため化石が発見されても学名がつけられるには高いハードルを乗り越える必要がある。
例えば前述の「モシリュウ」はあくまで日本語の愛称であり、化石が断片的で保存状態も悪いことから種の同定が困難であり、そのため学名はつけられていない。

これから紹介するのは、そのようなハードルを乗り越え、新種として学名がつけられた日本産の恐竜である。
なお、ここではあくまで「非鳥類型恐竜」のみを扱い、鳥類やフタバサウルス(フタバスズキリュウ)のような恐竜以外の大型爬虫類などは扱わないものとする。


一覧

・フクイラプトル

学名:Fukuiraptor kitadaniensis
カナ転写:フクイラプトル・キタダニエンシス
愛称:キタダニリュウ
発表年:2000年

1982年に発見。福井県で最初に学名がつけられた恐竜で、その後の日本の恐竜研究の嚆矢となった恐竜。
日本産の肉食恐竜で初めて全身骨格が復元された種であり、福井県立恐竜博物館に実物大の動く模型があることでも知られる。
最初は前脚の大きな鉤爪が後ろ脚のものと思われ、同じ特徴を持つドロマエオサウルスの仲間と考えられた。
属名もそれに由来し、ドロマエオサウルス科によくつけられる「raptor(泥棒)」の名がつけられた。
種小名と愛称は手取層群の内の北谷層という地層で発見されたことにちなむ。
現在ではメガラプトル類という、カルノサウルス類ともティラノサウルス上科ともされるグループに属するとされている。


・フクイサウルス

学名:Fukuisaurus tetoriensis
カナ転写:フクイサウルス・テトリエンシス
愛称:フクイリュウ
発表年:2003年

1989年発見。「フクイ」その2。鳥盤類ではニッポノサウルスを除き初の発表となった。
保存状態の良い頭蓋骨が発見されており、そのうち頑丈な上顎骨の構造はフクイサウルスに特有のものである。
種小名は手取層群に由来する。
鳥脚類のうち、イグアノドンなどが含まれるアンキロポレクシアに分類され、想像図でもイグアノドンっぽく描かれることが多い。


・アルバロフォサウルス

学名:Albalophosaurus yamaguchiorum
カナ転写:アルバロフォサウルス・ヤマグチオロウム
発表年:2009年

1998年発見。石川県では初の学名のついた恐竜。こちらも手取層群産出。
属名は「albus(白い)」+「lophos(山稜)」+「saurus(トカゲ)」で、「白い山のトカゲ」を意味する。
これは発見地にある白山の雪を被った白い頂に由来する。
種小名はこの地での多数の化石発掘に携わった山口一男・山口ミキ子両氏に対して献名されたものである。
分類は原始的な角竜類とされることが多いが、堅頭竜類(パキケファロサウルスの仲間)とする説や、これら周飾頭類が鳥脚類と分岐する前の原始的な種であるとする説もある。


・フクイティタン

学名:Fukuititan nipponensis
カナ転写:フクイティタン・ニッポネンシス
発表年:2010年

2007年発見。「フクイ」その3。竜脚形類では初の発表。
ティタノサウルス形類に分類されるとされ、それらの種によくつけられる「titan(巨人)」が属名につけられた。
種小名はそのまま「日本産の」を表す。
ブラキオサウルス等に比べると小型で、全長10m以下だったとされる。


・タンバティタニス

学名:Tambatitanis amicitiae
カナ転写:タンバティタニス・アミキティアエ
愛称:丹波竜
発表年:2014年

2006年発見。兵庫県、篠山層群では初の恐竜発表である。
2007年から2009年にかけて3度に渡り大規模な発掘事業が行われた結果、全身の大部分の化石が発掘された。
属名と愛称は丹波地域で見つかったこととティタノサウルス形類であることから。
種小名は「友情」を意味し、最初に化石を発見した2人の友情を称えたものとなっている。
手取層群の種よりも後の時代に生息していたとみられ、系統的にもフクイティタンよりやや派生的な種のようである。


・コシサウルス

学名:Koshisaurus katsuyama
カナ転写:コシサウルス・カツヤマ
発表年:2015年

2008年発見。ネタ切れ防止のためか「フクイ」ではなく、福井県を含む北陸地方の古い呼び名である「(こし)の国」にちなんだ属名となっている。
種小名は発見地である勝山市から。何気に市名がついたのはこれが初めて。
フクイサウルスと同じく鳥脚類に属するが、上顎骨の内側の骨が出っ張るなど、フクイサウルスよりも進化した特徴を持っている。


・フクイベナートル

学名:Fukuivenator paradoxus
カナ転写:フクイベナートル・パラドクサス
発表年:2016年

2007年発見。「フクイ」その4。獣脚類ではフクイラプトルに次ぐ発表となった。
「venator」は「狩人」を意味し、獣脚類ではよくつけられる名前である。
フクイベナートルには原始的な特徴と進化した特徴とか混ざり合って存在しており、種小名もその分類学上の混乱を表す「paradoxus(逆説の)」と名付けられた。
当初は原始的なマニラプトル類、またはその逆に進化的なドロマエオサウルス科の一員、と様々な説が出ていた。
現在では長い首や大きな前脚の鉤爪などの特異な特徴で知られるテリジノサウルス類の起源に近い種なのではないかという説が有力となっている。
歯の特徴から雑食性だった可能性があり、また嗅覚が発達していた。


・カムイサウルス

学名:Kamuysaurus japonicus
カナ転写:カムイサウルス・ジャポニクス
愛称:むかわ竜
発表年:2019年

北海道産恐竜では初の発表。
最初は2003年に発見されたが、発見された地層が海底由来であったこともあり、発見者はワニの化石と、連絡を受けた博物館の館長は首長竜の化石と誤認。
首長竜の化石は大量に収蔵されていたこともあり、それらの1つとして収蔵されてしまった。
その後2010年に首長竜の専門家が化石をクリーニングしたところ恐竜の化石であることが判明、なんやかんやで2013年と2014年に大規模な発掘事業が行われ、全身のかなりの部分の化石が発見された。
属名はアイヌ語で「神」を表す「カムイ」から。種小名は「日本の」という意味。
愛称はむかわ町で発見されたことにちなむが、厳密には合併前の旧穂別町で発見されたためちょっと揉めた。
鳥脚類の中でも進化したグループであるハドロサウルス科に属し、その中でもエドモントサウルスなどに近縁とされている。


・ヤマトサウルス

学名:Yamatosaurus izanagii
カナ転写:ヤマトサウルス・イザナギイ
発表年:2021年

2004年発見。兵庫県では2種目の恐竜発表。篠山層群ではなく淡路島から発見された。
カムイサウルスと同じくハドロサウルス科に属するが、その中でも原始的な特徴を持っている。
この「ハドロサウルス科の"起源"」といえる特徴と、淡路島が日本神話の『島産み』で最初に生まれた島、つまり日本の"起源"といえる島であるということから、
属名には日本の古名である「大和」がとられ、種小名には『島産み』を執り行ったイザナギノミコトの名がとられた。
カムイサウルスとほぼ同じ時代に生息していたが、生息地域は重複していなかったようである。


・パラリテリジノサウルス

学名:Paralitherizinosaurus japonicus
カナ転写:パラリテリジノサウルス・ジャポニクス
発表年:2022年

2000年発見。北海道では2種目の恐竜発表。
2008年に未同定の獣脚類として発表された後、より詳細な比較研究を経て2022年に命名された。
名前の通りテリジノサウルスに近縁であり、海底由来の地層で発見されたことから「海の近くの」を意味する「paralos」を頭にくっつけた名前がつけられた。
カムイサウルスより少し昔の時代、少し北の地域で暮らしていたとみられる。
化石の発掘場所から海岸付近に生息していたとされ、熊手のような手で海藻を集め食べていたと推測されている。


・ティラノミムス

学名:Tyrannomimus fukuiensis
カナ転写:ティラノミムス・フクイエンシス
発表年:2023年

1998年に最初の化石が発見。その後2018年から2019年にかけて多くの化石が発見された。
骨の一部にティラノサウルス上科に似た特徴を持つことから「ティラノもどき」を意味する属名がつけられた。
福井県では6種目の恐竜発表であり、種小名も「福井産の」という意味。
「mimus(もどき)」の名を持つ種が多数属する「ダチョウ恐竜」ことオルニトミモサウルス類に属し、その中でもデイノケイルスなどに近縁とされている。


・ヒプノヴェナトル

学名:Hypnovenator matsubaraetoheorum
カナ転写:ヒプノヴェナトル・マツバラエトオオエオルム
発表年:2024年

2010年発見。兵庫県では3種目、篠山層群産では2種目の恐竜発表。
属名は「眠る狩人」という意味で、これは化石となった個体が休眠姿勢をとっていた、つまりは眠った姿勢のまま化石となっていたことに由来する。
種小名は発見者である松原薫・大江孝治両氏への献名である。
分類ではトロオドン科に属するとされている。同じトロオドン科には休眠姿勢をとったまま化石になったことで有名なメイも属する。


・ササヤマグノームス

学名:Sasayamagnomus saegusai
カナ転写:ササヤマグノームス・サエグサイ
発表年:2024年

2007年発見。兵庫県では4種目、篠山層群産では3種目の恐竜発表。
属名は産地である篠山と、四大精霊の一つであるノームを意味する「gnomus」からとられ、「篠山の地下に隠された財宝を守る小人」という意味。
種小名はタンバティタニスを命名するなど丹波地域の古生物学に多大な貢献をし、2022年に亡くなった三枝春生博士を称えたものである。
原始的な角竜類であり、特にアウロラケラトプスやアクイロプスなどに近縁である。


・ニッポノペルタ

学名:Nipponopelta yezoensis
カナ転写:ニッポノペルタ・エゾエンシス
発表年:2026年

1995年発見。北海道夕張市で頭骨の一部などが発見された。
北海道では3種目の恐竜発表であり、日本初の鎧竜類の命名となった。
2005年に化石が発表されて以来図鑑や博物館で紹介されることも多く、命名前から化石を見たことがあるという人も多いかもしれない。
属名は「日本の盾」を意味し、「pelta」(盾)は鎧竜類によくつけられる名前である。
種小名は北海道の古名である蝦夷に由来し、「蝦夷産の」の意味。
鎧竜類の中ではノドサウルス科に属し、その中でも他のアジア産の種よりも北米産の種に近縁とされている。


番外

・ニッポノサウルス

学名:Nipponosaurus sachalinensis
カナ転写:ニッポノサウルス・サハリネンシス
発表年:1936年

1934年発見。記事冒頭でも書いた通り、当時日本領だった樺太で発見された日本「最初の」恐竜化石。
それ故に属名は「日本のトカゲ」を意味する名が与えられた。種小名は樺太の別名であるサハリンに由来する。
しかし第二次世界大戦後、樺太はソ連、その崩壊後はロシア連邦の実効支配下に置かれることとなる。
このため、「日本のトカゲ」という名を持ちながら「日本の」ではなくなってしまうという状況を迎えた。
ハドロサウルス科のうちトサカが特徴的なランベオサウルス亜科に属する。化石は幼体のためトサカは発達していないが、成体になれば大きなトサカを持ったであろうことが推察される。


・ワキノサウルス

学名:Wakinosaurus satoi
カナ転写:ワキノサウルス・サトーイ
愛称:ワキノサトウリュウ
発表年:1992年

1990年発見。福岡県で発見された獣脚類の化石であり、学名の命名はフクイラプトルよりも早く、ニッポノサウルスを除いて日本で最初に学名がつけられた恐竜である。
属名は化石が見つかった地層である脇野亜層群に、種小名は発見者の佐藤政弘氏にちなんで名付けられ、愛称はその2つを組み合わせたものとなっている。

そんなワキノサウルスが何故一覧の方ではなくニッポノサウルスと並べてここに記載しているのか。
それはこの種の化石が一本の歯のみから名付けられており、独立した種である要件を満たさない可能性があるから。
前述の通り、学名が名付けられるには過去に命名された他のどの種とも異なる種であることを証明する必要がある。
そのためには他種と異なる特徴を示すことが重要となる。
これが一本の歯のみを新種とみなした場合、歯以外の部位の特徴で他種との比較を行うことができず、本当に独立した種であるかどうかがわからなくなってしまうのである。
このような学名を「疑問名」と呼び、同じように一本の歯のみから名付けられたことで疑問名となった種にはトロオドンがいる。
抹消された恐竜の名前」も参照のこと。

現在はワキノサウルスは基盤的なカルカロドントサウルス科である可能性が指摘されている。

・フクイプテリクス

学名:Fukuipteryx prima
カナ転写:フクイプテリクス・プリマ
発表年:2019年

2013年発見。ある意味「フクイ」その5となる、原始的な鳥類。
「pteryx(翼)」と「prima(原初の)」から「原初の福井の翼」を意味し、鳥類としては始祖鳥に次いで原始的とされる。
化石は1歳に満たない若鳥のもので鳩くらいのサイズだったが、まだある程度の長さの尻尾と、前足の名残である指が翼にあった。


・ヒメウーリサス

学名:Himeoolithus murakamii
カナ転写:ヒメウーリサス・ムラカミィ
発表年:2020年

2019年発見。篠山層群産ではヒプノヴェナトルやササヤマグノームスより先に記載された。
属名は「小さく可愛い卵の石」という意味で、その通り卵化石のみしか見つかっていない。
種小名はタンバティタニスの発見者である村上茂氏への献名である。
大きさ4.5×2cmと、現時点では非鳥類型恐竜として最小の卵化石とされる。
親の種類は、ヒプノヴェナトルのような小型獣脚類と考えられている。




追記・修正は恐竜化石を発見し学名に自分の名前がついてからお願いします。


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最終更新:2026年08月22日 21:31