人名由来の言葉

登録日:2020/01/14 (火) 23:53:17
更新日:2020/01/25 Sat 20:53:23NEW!
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あなたは「 たくあん 」という漬物を知っているだろう。これは江戸時代初期の高僧、沢庵の名に由来する。
サンクトペテルブルク 」という街を知っているだろう。和訳すると「聖ペテロの街」だ。
W(ワット) 」という単位を知っているだろう。蒸気機関を実用化した発明家、ジェームズ・ワットに由来する。

このように、世界には「人名を語源とする言葉」が沢山あり、専門用語ではエポニム(eponym)と言う*1
この記事ではエポニムを太字で表し、【】で名前の由来となった人物を示す。
実在の人物の他、神話等の創作物に由来する名前も取り扱う。


《エポニムと由来となる人の関係》

〔本人が名付ける〕

発明者・発案者本人がつけるパターン。
どうしても自己顕示的になるので自然科学の分野ではまずないが、発明家には自己顕示的な人物が多いのかよく見られる。
また、小さなコミュニティでエポニムが作られる場合も大体このパターン。傲慢かもしれないが自分の名前を用いずにはいられなかった
前者の例:ドクター中松エンジン【中松義郎:発明家】
後者の例:ラヨ数【アグスティン・ラヨ:数学者】

〔本人の功績によって名付けられる〕

こっちは自然科学法則の発見者に多い。
ただ、主流の学問機関に発表して認められる必要がある自然科学の都合上、第一発見者の名前がつかない場合は多い。
例:フィボナッチ数は【レオナルド・フィボナッチ:数学者】に由来するが、フィボナッチ以前にもインド人が書き記している

〔関連する人が名付ける〕

親族・友人・恩人などにプレゼントとして与える場合が多いが、
雑草に嫌いな学者の名前を付ける嫌がらせは結構多いらしい。

〔逸話から名付けられる〕

アキレス腱【アキレウス:ギリシャ神話の英雄】など、神話からのパターンはほとんどこれ。
コロンブスの卵【クリストファー・コロンブス:冒険家 1451?~1506】のように、実在の人物にも逸話によるエポニムがある。
これは「コロンブスが人々に『タマゴを立てられるか』と訊き、人々はできないと言う。コロンブスはタマゴの尻をつぶして立て、『方法さえ分かれば容易なことも、最初に行うのは難しい』と説いた」という話に由来する。
有名な話だが作り話である。エポニムの成立には事実性は必要とされないことが分かるだろう。

〔無関係〕

発見・作成人物及び団体が贔屓にしている偉人を冠するもの。
天体につく名前はほとんどこれ。



《エポニムになりがちなもの》

〔単位〕

関連する物理法則を発見した人の名前をそのまま使うほか、"数""度"をつけて使われる場合もある。
例:アンペア【アンドレ=マリ・アンペール:物理学者 1775~1836】
マッハ数【エルンスト・マッハ:物理学者 1838~1916】
ファーレンハイト度【ガブリエル・ファーレンハイト:物理学者 1686~1736】

ちなみに、国際単位系では「人名に由来する単位しか頭文字を大文字にできない」とされている。
ただし超有名な「ある単位」が1つだけ例外とされており、人名由来でないのに大文字で書いて良いことになっている。
みなさんも生活の中で当然のように使用している単位だが…一体どれが例外なのか考えてみよう。

〔地名・国名〕

欧米では偉人や時の権力者を顕彰して地名を命名・改称する例が多い。
特に大航海時代にヨーロッパによって「発見」された地域に顕著である。

例:エベレスト【ジョージ・エベレスト:インド測量局長官 1790~1866】
アメリカ【アメリゴ・ベスプッチ:探検家 1454~1512】アメリカを新大陸と証明した人物。
コロンビア【クリストファー・コロンブス】
フィリピン【フェリペ二世:スペイン王 1527~1598】発見者がスペイン人だったため。

キリスト教圏には聖人の名前を持つ街も多い。
これも新大陸に多いが、先述のサンクトペテルブルクなどヨーロッパ圏にも珍しくない。

サンフランシスコ【聖フランシスコ:修道士 1182~1226】
セントルイス【聖ルイ(ルイ9世):フランス王 1214~1270】

この「地名に偉人や時の権力者の名前をつける」風習が悪い意味で大爆発したのが共産圏である。
ソビエトでは毎年のように街・山・街路・産業施設などの名前が指導者を讃えたそれに改称され、西側では「ソビエトの地名ゲーム」と呼ばれていた。
特に元の地名が聖人や王族のエポニムだった場合は率先して改名の対象となった。
なお名前の由来となった人物が粛清されると再改名を余儀なくされる事も改名合戦に拍車をかけた模様。
ソビエト崩壊後はそのかなりのものが旧称に復すか、全く別の名前となっている。

サンクトペテルブルクペトログラードレニングラード【ウラジーミル・レーニン:ソ連初代最高指導者 1870~1924】→サンクトペテルブルク
ツァリーツィン→スターリングラード【ヨシフ・スターリン:ソ連第2代最高指導者 1878~1953】→ヴォルゴグラード

日本では人名を由来とする地名は比較的少ない。
むしろ武士たちは自分の支配地域を明らかにすべく地名を自分の名字として名乗る事を好んだので、地元出身者と同名の地名があった場合「【地名】→名字」のパターンが多い。

  • 【地名】→名字の例
【下野国足利荘】(栃木県足利氏)→足利氏
【遠江国井伊谷】(静岡県浜松市北区引佐町)→井伊氏

  • 【人名】→地名の例
半蔵門【服部半蔵:武将・忍者の頭目 1542~1597】

〔惑星・小惑星とその地形〕

惑星のヨーロッパでの名前はローマ神話からきている(ギリシャ語のみギリシャ神話)。

初期は小惑星にはローマ神話の登場人物が名づけられていたが(ケレスなど)、20世紀初頭に名前の枯渇を防ぐため命名基準が改定され、小惑星は発見されると一旦仮符号がつけられ今までになかったことが確認されると命名権が与えられる。
命名規則にさえ合致していればジャンルは自由で、神話や科学者はもちろんのこと、Sutoku【崇徳天皇】などの為政者、奈須きのこなどの小説家、アンパンマンなどの創作物までもが小惑星の名前として登録されている。
命名規則は以下の通り。

+...
  • 他の天体に類似しないこと
  • 16文字以内の単語
  • 公序良俗に反しない単語
  • ペット禁止(1971年より)
  • 軍事・政事関連は100年以上経過したもののみ
  • 商業的な命名禁止
  • 10年以内に決めること

なお、木星のラグランジュ点にある小惑星の分類として「トロヤ群」が存在する。
トロヤは「トロイの木馬」のエピソードで知られる通りギリシアと戦争して滅んだ国家だが、いくつかの小惑星は分類前に名付けられていた。
この結果、ギリシア群にトロイアの英雄ヘクトール、トロヤ群にギリシアの英雄パトロクロスが所属する羽目になってしまった。

惑星の地形も人名・地名由来が大半を占める。
命名法則は以下の通り。
+...
水星 アルベド地形 ギリシア神話、ローマ神話
クレーター 各国の芸術家
金星 クレーター 女性
月や森の女神
モザイク状の地形 運命の女神
断崖 炉の女神
円錐丘、溶岩流、尾根 女神
地域 女巨人
高原、大陸 愛の女神
平原、溶岩流 女神、女精霊
線紋、地溝帯 戦争の女神
火口 女性偉人
山脈 地母神
海の女神
クレーター、岬 科学者
人名
尾根 地理学者
イオ 火山 火や鍛冶の神
火口 雷神、太陽神
溶岩流 雷神、火神
円錐丘 イーオー関連人物
卓状台地 火神
エウロパ クレーター、線紋 ケルト神話
ガニメデ クレーター エジプト神話、中東神話
カリスト クレーター 北欧神話
ミマス クレーター アーサー王伝説
テティス クレーター イーリアス、オデュッセイア
ディオネ クレーター ギリシア神話、ローマ神話
タイタン クレーター 知恵の神
黒斑 幸福の神
溶融物質が流れている地域 美人
指輪物語
砂丘 ギリシア神話の風の神
海峡 ファウンデーションシリーズ
平原 デューンシリーズ
地域 喜びの神
色線 雨の神
イアペトゥス クレーター ローランの歌
レア クレーター 欧州以外の神
エンケラドゥス クレーター 千夜一夜物語
アリエル クレーター、谷 妖精
ミランダ クレーター テンペスト
トリトン 不規則な凹地 水の怪物
クレーター、黒斑 水の神、妖精、怪物
ケレス クレーター 豊穣神
エロス 地域、尾根 天文学者
クレーター 恋愛小説

〔船〕

かつて、日本の船は大半が「○○丸」という名前だったが、その由来は神道の海神阿曇磯良丸(あづみのいそらまる)とする説がある。
この説によれば、日本の船の大半はエポニムであると言えよう。

だがアニヲタ的には軍艦の方が思い浮かぶと思う。
特に西洋に多く、軍人や政治家、君主などが船名になりやすい。
半面、東洋では人物を船名にした例は韓国くらいしかない。
特に日本では明治天皇が人名を採用することに同意しなかったため、直接は使用しないこととなった。
明治天皇のこの決断がなければ、艦娘KAN-SENのみなさんは「西郷隆盛デース!」「無敵艨艟と讃えられる艦隊の武田信玄でございます」とか名乗っていた事だろう。危ういところだった。
もっとも、サーヴァントの女体化率とか考えるとそんなに影響しなかった可能性も大いにあり得るが…
あと海外艦だと人名由来もちらほらいるけどね。ビスマルクとか
ロシアではソ連崩壊とともに指導者由来の名前は変更となった。

〔学術的な図形〕

形や性質、生成方法から名づけられることも多いが、それでは限界があるので人名を添えての命名が主流。
例:メンガーのスポンジ【カール・メンガー:数学者 1902~1985】
クラインの壺【フェリックス・クライン:数学者 1849~1925】
ミュラー・リヤーの矢【フランツ・カール・ミュラー・リヤー:心理学者 1857~1916】

学術分野にエポニムが溢れる一方、一般的な図形にはエポニムは少なく、有名なのは市松模様【初代佐野川市松:歌舞伎役者 1722~1762】くらいである。

〔生物の種名〕

発見者及び同定者、あるいはそれらと関わりの深い人物の名前が献名されることも多い。
例えば標準和名だと「ミツクリザメ」は発見者が度々標本の提供を行い懇意にしていた東京大学三崎臨海実験所の初代所長だった【箕作佳吉】氏に由来する。

〔数学的・科学的な法則、定理、予想〕

提唱者の名前に由来する事が多い。

フェルマーの最終定理ピエール・ド・フェルマー:数学者 1607~1665】
ラプラス変換、ラプラス方程式、ラプラスの悪魔【ピエール=シモン・ラプラス:数学者、物理学者、天門学者 1740〜1827】
リーマン予想【ベルンハルト・リーマン:数学者 1826~1866】



【主な人名由来の言葉:一覧】(読み五十音順)

  • 赤の女王仮説【赤の女王:「鏡の国のアリス」の登場人物】
対立する生物は進化し続けない方が絶滅するという仮説。
生物が機会は減るが進化の可能性が高まる有性生殖を選ぶ理由になっている。
鏡の国のアリスに出てくる赤の女王の国が言った「その場にとどまるためには、全力で走り続けなければならない」に由来する。

  • Atlas(アトラス)【アトラス:ギリシャ神話の巨人】
地図帳を表す単語。
一般的にはゲラルドゥス・メルカトルが編纂した初期の地図帳に、天を背負う巨人アトラスの絵をあしらったものが由来とされている。
ただ、最初期には天球儀を発明したモーレタニア王アトラスの絵が描かれていたのでそっちとも言われる。
もっとも歴史家ディオドロスはモーレタニア王が巨人の伝承につながったと記しているので根は同じ可能性がある。
また、ゲラルドゥス・メルカトルがアトラスに使った投影法である正角円筒図法は今ではメルカトル図法と呼ばれている。

  • アルゴリズム【アル=フワーリズミー:数学者 9世紀】
アル=フワーリズミーはイスラム世界で代数学を成立させた数学者。
その著作「インドの数の計算法」がラテン語に翻訳されたとき「インドの数 byアル=フワーリズミー」的なな名前が付けられ、アル=フワーリズミーのラテン語読みであるアルゴリトミが計算法・解決法の意味を持つこととなった。

  • 特急アントニン・ドヴォルザーク【アントニン・レオポルド・ドヴォルザーク 音楽家 1841~1904】
日本では下記の「いざぶろう」「しんぺい」に加え、蝦夷の族長「アテルイ」や小野小町が由来の「こまち」、元大関の魁皇が由来の「かいおう」など少数派である「実在人物が由来の列車愛称」だが、
海外では「モーツァルト」「バッハ」「ピカソ」「エリザベザン(←エリザベス女王)」などごく当たり前のように定着しており、
「交響曲第9番『新世界より』」や「ユモレスク」で知られる音楽家・「アントニン・ドヴォルザーク」も、出身地のチェコ・プラハから音楽の都ことオーストリア・ウィーンを経由し、同国のグラーツまでを結ぶオーストリア国鉄の国際特急列車の名前に用いられている。

だが、実は彼には音楽家以外に別の顔がある。
なんと、アントニン・ドヴォルザークは少年時代からの鉄道オタクだったのだ。
それも「時刻表の暗記は当たり前」「アメリカに住んでいた頃は毎日駅に行って列車観察をするのが日課」「本物の蒸気機関車を欲しがる」「列車が遅れた時に何故か車掌と一緒に謝る」「弟子に機関車の製造番号記録を頼んだところ間違いが発覚しブチ切れる」などエピソードに事欠きない筋金ぶりである。

世界広しと言えども、列車の名前、それも国際特急に自分の名前が使われている鉄道オタクは彼ぐらいかもしれない。

  • アンモニアアンモナイト【アメン:太陽神 古代エジプト】
どちらもエジプトの太陽神アモン(アメン)にちなむ。
アンモニアはアメン神殿周辺でアンモニウム塩が大量にとれたことからきている。
アモンはギリシャに渡った時羊角をもつ神アンモーンになって、アンモナイトは殻が羊角に似ているのでそう名付けられた。

  • 特急いさぶろう・しんぺい【山縣伊三郎:政治家 1858~1927】【後藤新平:政治家 1857~1929】
「いさぶろう」「しんぺい」は、JR九州の肥薩線で運行されている観光列車。
同じ区間を走るが、下りが「いさぶろう」、上りが「しんぺい」である。

地元のゆるキャラの名前か何かかと思いきや、「いさぶろう」は肥薩線が人吉から吉松まで開通した時の逓信大臣山縣伊三郎(やまがた いさぶろう)。
「しんぺい」はその頃の鉄道院総裁・後藤新平(ごとう しんぺい)というガチに歴史的な由来を持つ。
同線の矢岳第一トンネルの出入口にはこの2人の揮毫による扁額が掲げられていることから、列車名となった。

  • イナバウアー【イナ・バウアー=ツェーネス:フィギュアスケーター 1941~2014】
足を前後に開き、つま先を180度開いて真横に滑る技。上体をそらすことは関係ない。
フィギュアスケートで最初に達成したイナ・バウアーの名が冠された。
稲葉さんがうわーってやってるわけじゃねえんだよ

  • ウラシマ効果浦島太郎:漁師 むかしむかし】
  • リップ・ヴァン・ウィンクル・エフェクト【リップ・ヴァン・ウィンクル:狩人 18世紀】
特殊相対性理論で計算されGPSなどで観測された、超加速の環境下では時間の進みが非常に遅くなる現象。
日本では浦島太郎に例えられるが、アメリカでは山奥で酒盛りしたら20年たっていた狩人リップ・ヴァン・ウィンクルに例えられる。
ちなみに浦島太郎は悲劇だが、リップは20年の間にアメリカは独立し鬼嫁は死んでいたというハッピーなお話である。意外や意外。

  • エース【エイサ・ブレイナード:プロ野球選手 1839~1888】
野球においてチーム内で最も優秀な投手、特に先発投手を指す言葉。
由来はトランプのA(エース)ではなく、19世紀末に実在したエイサ・ブレイナード(Asahel "Asa"Brainard)という投手のニックネーム"Ace"である。
ちなみにこの元祖エースことブレイナード投手、1869年に発足した第1次シンシナティ・レッドストッキングス*2において、非公式ながら65勝(諸説あり)を挙げている。
先発ローテの概念がなかった時代ゆえの数値だが、まさに原点にして頂点といった怪物ぶりである。

  • エコー【エコー:ギリシャ神話のニンフ】
エコーは、神の怒りによって誰かの声を繰り返すことしかできなくなったニンフだが、そのいきさつについては
  • 牧神パーンの告白を断り、配下に肉体を破壊された
  • 浮気したゼウスを匿うために妻ヘラを長話で足止めしたため、ヘラに呪われた
という2つの話がある。どっちもとばっちりじゃねえか
なおパーンはパニックの語源になっている。

  • オナニーオナン:旧約聖書の人物】
旧約聖書に登場する、性交時に外出ししたら神の怒りを買って死んでしまったという理不尽極まる人物。
背景をちょっと説明すると、オナンは兄が死んでしまった(これも天罰。神のワガママさがヤバい)ので、その未亡人を妻とした。
しかし、この妻が産んだ子は当時の風習上兄の子とされるため、兄の遺産を継承する権利を得てしまう。
遺産独り占めを目論んだオナンは避妊のため中出ししなかった…というのがその経緯である。*3
転じて子孫繁栄に関係ない射精代表の自慰の意味となった。
オナン氏もこんなヒワイな形で名前が後世に残るとは思いもよらなかっただろう。

  • カウパー【ウィリアム・カウパー:解剖学者 1666~1709】
英国の解剖学者ウィリアム・カウパーが尿道球腺の解剖図を初めて描いたため、
尿道球腺がカウパー腺、そこで作られる液をカウパー液と呼ぶようになった。
カウパー氏もこんなにヒワイな文脈でばかり名前が呼ばれることになろうとは思いもよらなかったであろう。

  • 川崎病【川崎富作:医学博士 1925~】
1961年に小児急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群を発見した川崎富作博士にちなんで名付けられた。
神奈川県川崎市が最初の発見地だからというわけではなく、岡山県倉敷市にある川崎医科大学で発見されたからというわけでもない。
ちなみに川崎博士は2013年まで現役の小児外科医として活躍していた。

  • ギロチン【ジョゼフ・ギヨタン:医者・政治家 1738~1814】
フランスの死刑に断頭台を導入することを提言した議員。
あくまでギヨタンは断頭台の採用を提言しただけでギロチンを開発したわけでもギロチンにかけられた訳でもないのだが、
なぜか「ギロチンの開発者ギヨタンはフランス革命のさなか自分もギロチンで死刑になった」というデマがいつまでたっても消えない難儀な人である。

  • 巨無覇【巨無覇:中国の巨人 1世紀】
中国において超巨大を表す形容詞。ビッグマックもこの名前で売り出されている。
王莽(新の王 在位期間8~23年)の時代に実在したとされる身長3m級の巨人、巨無覇に由来する。

  • クジベローサ・テルユキイ【香川照之:俳優 1965~】
ベローサマギアのモチーフとなったカマキリモドキの絶滅昆虫。
博物館長佐々木和久が2006年に発見し、2018年に新種と分かったことで、昆虫の好感度に貢献した俳優香川照之の了承を得て命名した。
偶然にも香川照之は「香川照之の昆虫すごいぜ!」で2016年からカマキリの着ぐるみを着ている。

  • 虞美人草【虞美人:項羽の愛人 ?~前202】
ひなげしの異名。虞美人の墓にひなげしが咲き誇ったことから。

  • クレメンス【ロジャー・クレメンス:野球選手 1962~】
  • ンゴ【ドミンゴ・グスマン:野球選手 1975~】
どちらもなんJ由来のネットスラング的語尾。
クレメンスは~してくれの意味だが、クレメンスはラテン語で慈悲深いを表す'clemens'からきているので「許してクレメンス」だと地味に意味が合う。
ンゴは楽天の投手ドミンゴ・グスマンが2008年の開幕戦にたった7球で大逆転敗北という凄まじい負け方をしたことから、大失点した投手の名前に「ンゴ」をつけて「○○ンゴwww」と揶揄するのが流行り、
いつのまにか失敗、やらかしなど全般につけられる語尾に変わり、
次第に「〜したいンゴねぇ」等人物に全く関係ない語尾としても用いられるようになり、
その後どういう訳か2017年に女子高生の間で流行するころにはただの語尾になった。

  • 玄能(げんのう)源翁心昭(げんのうしんしょう):僧侶 1329~1400】
両方が平らな金槌を指す。
源翁心昭がこれで九尾の狐が化けた殺生石を破壊したとの逸話からきている。

  • 洪水【共工:水神 中国神話】
共工は民話上では治水工事を失敗した程度の存在だが、
神話では祝融との勝負で天を支える柱を破壊し、大水をおこして最終的には天地を破壊した。
洪の字のつくりは神話の共工からきているといわれる。

  • 小町算【小野小町:歌人 9世紀ごろ】
123456789の順番を崩さず100か99を作るパズル。
小野小町は百人一首にも歌が残る平安時代の美女である。
彼女に恋した深草少将に対して小野小町は100夜通ったら付き合う約束をしたが、深草少将は99夜目にして雪の中息絶えた…という伝説に由来する。
もっとも、小野小町の生涯は残した歌以外ほとんど何も分かっておらず、上記の話も能の演目として作られた創作である。
小野小町は正体不明な事で却って扱いやすいのか、米のあきたこまちや秋田新幹線こまちなど、やたらエポニムになりやすい人物である。

  • ゴルディロックスの原理【ゴルディロックス:19世紀ごろ?】
イギリスの民話「3匹の熊」に出てくる少女ゴルディロックスはクマの家に潜り込んで
熱すぎないスープを飲み、硬すぎない椅子に座り、デカすぎない枕で寝た。
そこから、赤ん坊は中程度の複雑さを好み、うな重の松竹梅では竹が買われ 、生物は中程度の軌道にある星で生まれることをひっくるめてゴルディロックスの原理という。

大阪大学教授の松野健治はショウジョウバエを使った研究で内臓逆位を引き起こす遺伝子を発見し、内臓逆位である北斗の拳のサウザーにちなんでサウザー遺伝子と名付けた。
ALGERNON【アルジャーノン】、ピカチュリンピカチュウ】、ソニック・ヘッジホッグソニック・ザ・ヘッジホッグ】など現代の作品のキャラクターを冠した生物学の物質は多いが、作品内での描写から名付けられたものはこれくらいしかない。

  • 薩摩守(さつまのかみ)平忠度(たいらのただのり):武将 1144~1184】
近年はほとんど言われなくなったが、かつては電車などに不正にタダ乗りする事を俗に「薩摩守」と言った。
その由来は、源平合戦で討ち死にした平家の武将・平忠度の官職が薩摩守だったから。忠度とタダ乗りを掛けたダジャレである。
元ネタは、旅の僧侶がダジャレ好きな船頭を上記のネタで笑わせて船にタダ乗りしようとする狂言「薩摩守」で、僧侶は肝心の名前を「青のり」と間違え大恥をかいて終わる。

由来を知らずに名前を呼ばれているオナンやカウパーも酷い風評被害だが、
こちらは「薩摩守=平忠度」である事を知っている事を前提に使われていたという点で風評被害レベルは負けず劣らず高い。

  • サンドイッチ【第4代サンドウィッチ伯爵ジョン・モンタギュー イングランド貴族の伯爵 1718~1792】
パンにおかずを挟んだ食べ物。昔からこの地で行われていた食べ方だが、
食事の時間も惜しんでトランプに熱中した4代伯ジョン・モンタギューが好んだと言われている。
ただ、この4代目サンドウィッチ伯爵は七年戦争&アメリカ独立運動&本人の交友関係というトリプルパンチや
ハワイを発見した探検を支援*4したりと仕事が多かったため、
食事の時間も惜しんだというよりむしろ食事の時間しか息抜きがなかったのではと言う説や、
そもそも前述のトリプルパンチで悪かった海軍卿としての評判から広まったネガキャンとか
イギリス料理は貴族の食卓でもパンしか食えたもんじゃない」というジョークの類ではないのかとも。
…が、 「元祖サンドイッチ」を名乗って商売をした子孫がいたりする。

  • シーザー・サラダ【シーザー・カルディーニ:料理人 1896~1956】
よく勘違いされるが由来はジュリアス・シーザー(ユリウス・カエサル)ではない。
イタリア系アメリカ人のシェフ、シーザー・カルディーニがありあわせの食材で作ったサラダが起源である。

  • シュヴァルツシルト半径【カール・シュヴァルツシルト:天文学者 1873~1916】
ドイツの天体物理学者カール・シュヴァルツシルトが導き出したブラックホールの半径。
シュヴァルツはドイツ語で黒なので名は体を表すエポニムである。

  • ショタコン【金田正太郎(太陽の使者版):探偵、ロボット操縦士】
小中学生の男子を愛の対象としてみる言葉であるショタコンはサブカル雑誌『ファンロード』の読者投稿コーナーで誕生した言葉である。
その語源は、アニメ太陽の使者 鉄人28号の主人公・金田正太郎。
最初は自分で考えておいてなんとなく語呂が悪いとしていたものの、後に「ショタコン」特集を表紙に打つなど内外を問わず定着した。
少年探偵団説、ショートアイズ説も囁かれていたものの、今では完全に否定されている。

  • シライ【白井健三:体操選手 1996~】
器械体操では、新たな技にはその技を初めて主要な国際大会で成功させた選手の名前をつけるのが慣例である。
この結果、白井健三に由来する「シライ」の名を持つ技はゆかと跳馬にそれぞれ3つずつ、合計6種類も存在する。
自身の名を冠する技を6種類も持つ選手は他におらず、世界最多である。

  • 砕氷船しらせ【白瀬(のぶ):南極探検家 1861~1946】
日本では船名に人名を使用しないと前述したが、「じゃあ砕氷船しらせはどうなんだ」と思われた方も居るかも知れない。
海上自衛隊は砕氷船に日本初の南極探検家白瀬矗の名前をつけようとしたが、当時防衛庁の自衛艦には「名所旧跡のうち主として山の名」をつけるとされていた。
そこでまず上記の通達を「名所旧跡のうち主として山または氷河の名」と改定し、白瀬矗本人ではなく白瀬矗を由来とする白瀬氷河が由来なのでセーフ!セーフです!と言い張り無事この名前となった。

このほか、間接的に人名由来となった船名としては、
摩耶山【麻耶夫人:釈迦の母 前6世紀】を由来とする砲艦・重巡・護衛艦摩耶
間宮海峡【間宮林蔵:樺太探検家 1780~1844】を由来とする給糧艦間宮()がある。
日系人が船名になった例なら米海軍の駆逐艦ダニエル・イノウエ【ダニエル・ケン・イノウエ:上院議員 1924~2012】が存在する。

  • シルエット【エティエンヌ・ド・シルエット:仏ブルボン朝の貴族 1709~1767】
18世紀、ルイ14世の浪費により財政が傾いたフランス王国ブルボン朝の財務大臣を務めた人物。
彼はぶっちゃけ無能であり、節約を説く以外に何ら有効な政策を持たなかったが、緊縮財政の一環として輪郭だけの肖像画を推奨し、これが「シルエット」の語源となった。
大臣としては影が薄いが、結果的に影が濃くなったと言える。

  • 杜撰(ずさん)杜黙(ともく):中国宋代の詩人】
杜撰はもともと杜黙詩撰(ともくしせん)(撰は詩を作るの意)の略であり、杜黙が漢詩のルールである「律」を破った詩ばかり作っていたことに由来する。
そこから誤りの多い文章を杜撰と呼ぶようになり、現在の中国ではでっち上げ、日本ではでたらめという意味を持つようになった。

小説『白鯨』に出てくる副船長スターバックからとられている。
元々は船名のピークォドになる予定だったが、ピーはオシッコの意味を持つので取りやめになった。

  • スライ(MtG)【ポール=スライ:カードゲームプレイヤー】
カードゲーム「マジック・ザ・ギャザリング」の戦術の1つで、赤のカードを用いた軽量速攻デッキを指す。
ポール=スライが使用し、プロツアー予選を突破した事でこの名が定着した。
このデッキの本来の開発者はジェイ=シュナイダーだが、後に黒のコントロールデッキシュナイダーポックス(MtG)に名を残している。

  • セントジョーンズウォート【聖ヨハネ:キリスト教の聖人 1世紀】
セイヨウオトギリの英名。
薬草として有用な一面、小さな斑点が至る所にあることで血なまぐさい伝承が各地にあるオトギリソウ。
日本では無名の弟が切られた血飛沫だが、キリスト圏では聖ヨハネ*5の血とされている。

  • テディベア【セオドア・ルーズベルト:アメリカ大統領 1858~1919】
狩りで成果の出なかったルーズベルトは付き人コリアーがボコボコにした熊を撃つよう勧められたが拒否した。最終的にはナイフでとどめを刺したので撃ってはいない。
この話を大統領の好感度を上げるために手負いの熊から子熊、ナイフでとどめから生け捕りに変えた話が評判となった。
これに乗じてお菓子屋モリス・ミッチタムがセオドアの愛称テディをつけたクマのぬいぐるみを売り出した。

  • 台風【テュポン:ギリシャ神話の巨人】
台風は英語の「タイフーン」に当て字したものだが、そのタイフーンはテュポンから直接来たか、広東語の大風(たいふん)とテュポンを合わせた説がある。

  • ダウン症【ジョン・ラングドン・ダウン:医師 1828~1896】
胎児の染色体の異常で発生する病気。
発見者ダウンは「優れた白人が劣った黄色人種の特徴を持つ病気」というなんともアレな考えでMongolism(蒙古症)と名付けたが、
1960年代から差別的として学者やモンゴル政府が抗議、ダウンの名前をとってダウン症という呼称に変更された経歴がある。

  • 高安動脈炎【高安右人:医学者 1860~1938】
脈なし病とも言われる大動脈に炎症が発生する自己免疫疾患。
2012年に国際的な正式名として高安動脈炎が定められた。

  • ディーゼルエンジン【ルドルフ・ディーゼル:発明家 1853~1913】
燃料の霧を圧縮することで着火させるエンジン。
ルドルフ・ディーゼルが蒸気機関の欠点である熱効率を改善するために開発したもの。

上半身を∞の軌道で振り、反動で左右のフックをたたきこむラッシュ。
デンプシーがこの技でジャイアントシリングしたところから広まり、日本に伝わったころにデンプシー・ロールの名が定着した。

  • ドーベルマン【フリードリッヒ・ルイス・ドーベルマン:収税人 1834~1891】
ドイツの収税人ドーベルマン氏は仕事柄多くの金を持ち歩くことから、優秀な警備犬を求め新たな品種を生み出した。
この犬は20世紀には警備などに広く採用され、1948年にドーベルマンの名がつけられた。

  • 土左衛門【成瀬川土左衛門:力士 ?~1748】
江戸時代に活躍した成瀬川土左衛門という力士は色白で締まりのない体型で、水を吸ってブヨブヨになり体内に溜まった腐敗ガスによって膨れ上がった水死体にそっくりなことから、
彼にとっては不名誉ながら、水死体に土左衛門という俗称がついてしまった。
そのせいもあってか、土左衛門という四股名は現在に至るまで誰も名乗っていない。

  • Dvorak配列【オーガスト・ドヴォラック:教育心理学者 1894~1975】
  • Colemak配列【シャイ・コールマン】
キーボード配列を人間工学的に改良したもの。
一番有名なDvorak配列はオーガスト・ドヴォラックが開発したもので、左手に母音を固めたもの。
Colemak配列はホームポジションによく使う字が来るようにシャイ・コールマンがQwerty配列から改良したもの。

  • トマソン【ゲーリー・トマソン:野球選手 1951~】
使用不能または不要でありながら有用なものと同じ扱いを受ける建造物を芸術的なものとしてみる言葉。
巨人の助っ人に呼ばれ4番打者となったものの、大型扇風機とも呼ばれるほどに三振し続けたゲーリー・トマソンの扱いになぞらえてライターの赤瀬川原平が命名した。

  • ハンセン病【アルマウェル・ハンセン:医師 1841~1912】
感染症の一つ。かつては(らい)病と呼ばれ、国による強制隔離政策が取られるなど、極めて差別的な扱いを受けていた。
旧称には差別的な意味合いが定着し拭えないことから、原因となる菌の発見者であるアルマウェル・ハンセンの名前からハンセン病という呼称へ変更された。

  • パンドラウイルス【パンドラ:ギリシャ神話の女性】
パンドラはギリシャ神話に登場する人類最初の女性。「パンドラの箱」を開けて世界に災厄を振りまいてしまった。
ウイルスの中で唯一マイクロメートル単位の大きさを誇り、「こいつ細菌じゃね?」と生物学会を混乱させたためパンドラの名がつけられた。

  • 比羅夫(ひらふ)阿倍比羅夫(あべのひらふ):武将 7世紀】
北海道倶知安町の地名。隣接するニセコ地区とともに北海道有数のリゾート地として有名。
日本書紀によれば、東北の蝦夷征伐を行った飛鳥時代の武将・阿倍比羅夫が北海道に渡った際に「後志羊蹄(しりべし)」という所に政庁を置いたという。
この後志羊蹄の場所はよくわかっていないがまあこの辺ではないかという割とふわっとした理由で命名された。

  • ブッダブロ【ブッダ:宗教家 前5世紀】+【ブノワ・マンデルブロ:数学者 1924~2010】
マンデルブロ集合はブノワ・マンデルブロがコンピューターで書き出したフラクタル図形で、エイドリアン・ドゥアディによって名付けられた。
簡単な定義から生まれる神秘的な形から多くの派生が作られていて、
発散すると確定したときまでの点をすべてプロットしたものは瞑想するブッダに見えたことからブッダブロと名付けられている。
2人の名前からなる合成語という珍しい例。

  • ブルマ【アメリア・ジェンクス・ブルーマー:女性解放運動家 1818~1894】
ご存知女性用の体操服。
女権活動家アメリア・ジェンクス・ブルーマーが服装による女性の解放を目指して作ったスタイルに由来する。
身体を制限する"女性らしい"服装に抵抗するためブルーマーはゆったりとしたズボンを着て自身の新聞で発表した。

なおブルーマーが提唱したのはもんぺのようなズボンであり、現代の我々が考えるアレとは全く異なる。
現代のブルマは90年代に露出度が高すぎるとの批判を受け絶滅してしまったが、ブルーマーも自身の名前を冠する衣服が女性の敵のような扱いを受けるのはさぞ不本意だったであろう。

  • ボイコット【チャールズ・ボイコット:軍人・地主 1832~1897】
「特定企業の商品を買わない」「投票に参加しない」など、何らかの行為を「しない」ことで抗議を行う運動。
英国の軍人チャールズ・ボイコット大尉はアイルランドに土地を持っていたが、
小作人からの小作料25%引き下げ要求を突っぱねたため「非暴力だがインフラの供給を断つ」という新手の抗議活動を受け、食べ物も通信も何も入ってこなくなってしまった。

  • 包丁【庖丁:料理人 古代中国】
紀元前3世紀の書物「荘子」の「庖丁解牛(ほうていかいぎゅう)」というエピソードに登場する料理人に由来する。
牛を心眼で把握し、牛刀を19年も骨に当ててない伝説の料理人であり、転じて牛刀が庖丁と呼ばれ、やがて包丁となった。
ちなみに「庖」は料理人という意味なので、人名は「丁」だけである。

  • ポンジ・スキーム【チャールズ・ポンジ 詐欺師 1882~1949】
「あなたのお金を○○に投資して○倍にして返します!」と言って投資を募り、
実際には何の投資もせず新たな出資者からの出資金を前の出資者の配当として右から左に流すだけという単純な詐欺。
ポンジはこの手法で数百万ドルを集めたが、当然の帰結として破綻し逮捕された。
今日でも世界中(日本含む)でポンジ・スキームは元気に行われている。

  • マカダミアナッツ【ジョン・マカダム:化学者 1827~1865 オーストラリア】
ハワイ土産の定番のチョコレートや、或いはおつまみでおなじみのアレ。
本種を「発見」した、ジョン・マカダムが名の由来である。

  • 孫の手麻姑(まこ):中国神話の仙女】
仙女麻姑は鳥のような爪を持っていて、背中を掻かれるとかなり気持ちいいとされる。
その機能を持った道具を麻姑手と呼ぶようになり麻姑の名が訛って孫となった。

  • マリガン【デイビッド・マリガン:ホテル経営者? 20世紀前半】
アニヲタ的には「カードゲームで初手が極端に悪い場合に引き直しができる制度」としての印象が強いが、元々はゴルフの非公式ルール。
ティーショットが上手く行かなかった際に打ち直すことができる事を指す。
由来には諸説あるが、ホテル経営者だか医師だかのマリガンさんがティーショットをミスることは共通している。

  • 元の木阿弥【木阿弥:僧侶 16世紀】
良くなっていたものが元通りになってしまうことを意味することわざ。
戦国武将筒井順昭が死んだことを隠すために建てた影武者木阿弥に由来する。
3年後に跡継ぎが十分成長して死も公開されたため木阿弥は一般人に戻ってしまった。

  • ラッダイト運動【ネッド・ラッド:活動家 18世紀後半】
「産業革命とやらで工場が機械化されたらオレ達労働者は食いっぱぐれだ! なので機械をぶっ壊して産業革命を中止に追い込むぜ!」という運動。
嚆矢となったネッド・ラッドによる自動織機の破壊活動が由来とされる。

  • リーマン予想【ベルンハルト・リーマン:数学者 1826~1866】
リーマンゼータ関数 ζ(s) の非自明な零点 s は全て、実部が 1/2 の直線上に存在する。
という数学上の予想。
ドイツの数学者ベルンハルト・リーマンが1859年に自身の著書に発表した予想で、160年経った現在でも証明に至っていない超難問。
アメリカのクレイ数学研究所によって証明に100万ドルもの懸賞金が掛けられた「ミレニアム懸賞問題」と呼ばれる未解決問題の一つである。
ちなみにミレニアム懸賞問題はP≠NP予想以外すべて人名由来である。

  • リンチ【ウィリアム・リンチ 治安判事 1742~1820】
法によらない私的な制裁のこと。私刑。
よく言われる語源は南北戦争時代の治安判事ウイリアム・リンチだが、
他にもチャールズ・リンチ大佐、炭鉱経営者トーマス・リンチといった説もある。
そもそもリンチがよくある姓なので散発したとしてもおかしくない。

  • 老黄忠黄忠:蜀の将軍 ?~220】
年老いてなお元気な老人を示す中国の言葉。
小説「三国志演義」における黄忠が老人でありながら非常に活発で多くの戦果を上げた人物として描写されていたため、このような言葉が誕生した。
なお黄忠は実在の人物だが、上記の通り生年不詳でありどの程度老人だったのかは定かではない。

  • 八重洲【ヤン・ヨーステン・ファン・ローデンステイン 航海士 1556?~1623】
東京都の地名。東京駅の東側一帯を指す。
日本に漂着したオランダの航海士ヤン・ヨーステンは徳川家康から耶楊子(やようす)の名を授かり、日蘭貿易と通訳の仕事を任された。
やがて住んでいた屋敷は八代洲と呼ばれるようになり、明治5年に一帯の町が八重洲と名付けられた。


〔現実→架空での例〕

  • パブロ【パブロ・ピカソ:画家 1881~1973】
  • ホクサイ【葛飾北斎:浮世絵師 1760~1849】
Splatoonに出てくるフデ武器。どちらも芸術家由来。

  • Euclid【エウクリデス:数学者 前3世紀】
SCP Foundationの基本となるオブジェクトクラス。おそらくエウクリデスが公理を定めたことに由来する。
そのほか独自のクラスではTiamat【ティアマト】などの神性、アノマリー分類システムではAmida【阿弥陀如来】、
現実改変関係ではヒューム値【デイヴィッド・ヒューム】などの哲学者*6がエポニムである。

〔エポニムである事が架空である例〕

  • ゴルフ【呉竜府:格闘家?】
ゴルフはかつて英国発祥とされていたが、後の研究で辵(チャク)家棍法術奥義「纏劾狙振弾(てんがいそしんだん)」が起源と判明。
名前もこの技の創始者「呉竜府(ご りゅうふ)」から取られているという説が支配的である。(民明書房刊「スポーツ起源異聞」より)

……といった感じで、漫画魁!!男塾にはこの手のトンデモ起源説が頻発する。
ヘンテコな技を使う新たな敵が登場すると、毎回のように
「○○の起源は実は中国(またはモンゴル)拳法の技■■であり、○○という言葉は■■の達人△△(適当な当て字)の名に由来する(民明書房刊「○○の意外な歴史」より)」
といったいかにもそれらしい解説が挿入されて信憑性を与えるのがお約束であり、当時の小学生達に広く信じられた。
ルックス呂空雛(るうくうすう)】だのホッピング宝浜具(ほうぴんぐ)】だの、男塾のトンデモエポニムには枚挙に暇がない。

  • (リットル)【クロード・リットル:科学者 1716~1778】
先述の通り、国際単位系では人名に由来する単位しか頭文字を大文字にできないとされているが、1つだけ例外がある。大文字「L」で表すリットルだ。
リットルの語源はフランスの単位「リトロン」で、人名ではない。
これは小文字のl(エル)I(アイ)と紛らわしいための措置である。

これに目をつけた科学者ケネス・ウールナーは1978年、「リットルの語源は科学者クロード・リットル(1716~1778)である」とのエイプリルフール記事をそれらしい来歴とともに教師向けのニュースレターに掲載。
ところが1980年、国際純正・応用化学連合*7という化合物の命名法を世界的に統一するなどの功績を持つガチすぎる学会の雑誌が「リットルの語源はクロード・リットルである」との記事を本気で載せてしまうという事態に発展してしまった。


名祖になった人に追記修正をお願いします。


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