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ブロークン・アロー(映画)

登録日:2026/03/24 Tue 18:33:10
更新日:2026/06/19 Fri 11:12:12
所要時間:約 5 分で読めます




核弾頭、紛失
誰が世界の危機を救うのか



『ブロークン・アロー』は1996年公開のアメリカ映画。
核弾頭を強奪した空軍少佐とそれを追う大尉の息詰まる攻防戦を描くノンストップアクション大作である。
監督は『男たちの挽歌』シリーズで有名な香港ノワールの巨匠ジョン・ウー、脚本に『スピード』のグレアム・ヨスト。
主演のクリスチャン・スレーターとジョン・トラボルタは後の同監督作にも出演し、特に後者は翌年の『フェイス/オフ』で本作の演技をさらに発展させたような悪役を怪演することとなる。



【あらすじ】


アメリカ空軍のパイロット、ヘイル大尉とディーキンス少佐は核弾頭を二基搭載したステルス爆撃機で模擬演習を行っていた。
その帰路で突如ヘイルに銃を向けるディーキンス。彼の目的は核弾頭の強奪だった。
ヘイルの激しい抵抗で機体は墜落。しかし現場からパイロットの遺体と弾頭は発見されず、核紛失を意味する緊急事態『ブロークン・アロー』が発令される。

事前に脱出していたディーキンスは仲間たちと合流、広大な国立公園に不発モードで投下した弾頭の捜索と回収に乗り出す。
同じ頃、ヘイルもまた成り行きで知り合ったパークレンジャーのテリーと共に、元上官の計画を阻止するため動き出す。

雄大な自然を舞台に、男たちの意地とプライドを賭けた壮絶な追跡劇が幕を開けた!



【主要人物】


  • ヴィック・ディーキンス(演:ジョン・トラボルタ)
米空軍少佐。勤続20年のベテランパイロット。
能力は優秀だが後述の本質を見抜かれていたのか昇進を見送られ続けていた。
そのことに辟易した彼は核弾頭強奪を計画、政府を脅迫し身代金の獲得を目論む。

カネ目当ての犯行だと嘯きながらも、根底には自分を認めなかった軍への反逆心があり、精緻な計画を立てるキレ者でありながら、その障害となるものは旧友でも躊躇わず切り捨てる、初めての殺人に何の感慨も覚えないなどサイコパス気味な性格。
一方で格下だと見做していたヘイルが自らを追い詰めた際には笑みを浮かべるなど、単一的な悪役像に留まらない面も覗かせる。

演じるトラボルタの妖しい魅力も相まって、本作の真の主役はコイツじゃないかという意見も。
タバコの吸い方がセクシー。

「ボルボの株を5パーセント買うんだ」


  • ライリー・ヘイル(演:クリスチャン・スレーター)
米空軍大尉。本作の一応の主人公。
作中でもアクの弱さを指摘され、上官でパートナーのディーキンスとのボクシング勝負ではいつも負かされていた。
それでも彼を兄貴分として慕っていたが、弱腰の自分は強奪計画に不要と判断され殺されかけたことから、軍人としての使命と自らの意地に賭けて彼をどこまでも追う決意をする。

パイロットながら射撃の腕前や白兵戦闘力、即席武器の作成などサバイバル能力全般がミョーに高い。
長年の付き合いから、軍すら翻弄する元上官の策略にも一人先回りして喰らい付いていく。
諦めの早ささえなければ自分にも勝てる逸材とディーキンスにも見込まれていた。
本作は彼の成長物語でもある。

「20ドル賭けてもいいぜ」


  • テリー・カーマイケル(演:サマンサ・マシス)
本作のヒロイン。実写マリオのデイジー。
ユタ州の国立公園に勤務するパークレンジャーで、不審車両の通報を受けて立ち入った園内でヘイルと出会ったことから一連の騒動に巻き込まれることとなる。
如何にも田舎のネーチャン然とした笑顔がチャーミングな女性だが、土地勘とプロの軍人にも引けを取らない機転とガッツで終始ヘイルをサポートする女傑。

ヘイルとは自己紹介する間もなかったせいで互いの名を呼び合わずロマンスに発展しそうな場面もほぼなしと、ヒロインながら戦友のような扱いなのが実にジョン・ウー節。
ずっとレンジャーの制服姿なのも高ポイント。

「あなたはまだ逮捕中なのよ、大尉」


  • マックス・ウィルキンス(演:デルロイ・リンドー)
米空軍大佐でヘイル達とは見知った仲。
弾頭が紛失した模擬演習の場に居合わせ、その後の捜索の指揮を執ることとなる。
終盤では自らを取り、ヘイルと共にヘリでディーキンスを追撃する役割の多い

「大丈夫、地下爆発です。地上なら我々は今頃消し炭だ」


  • ジャイルズ・プレンティス(演:フランク・ホエーリー)
大統領補佐官。
ロボコップのクラレンス国防長官の命により、ウィルキンス大佐と共に現地で事態の収拾にあたる。
若手ながら高い分析力を有し、本件が単なる事故でない金銭目的の犯行だといち早く見抜くが、状況証拠から首謀者はヘイルだと判じるなど、ディーキンスのトリックに翻弄される場面も。

「恐ろしいことです。核が紛失したことも、それを意味する暗号が用意されていたことも」


  • ケリー上等兵(演:ハウィー・ロング)
弾頭捜索に派遣された部隊の一員。
目的を同じくするディーキンスの仲間たちと鉢合わせ、絶体絶命のピンチに陥ったように思われたが…

「お前、軍人じゃなく役者になればよかったのに」*1


  • プリチェット(演:ボブ・ガントン)
ディーキンスのスポンサーの一人。
後ろ暗いことで儲けてるらしい小金持ちのオッサンで、素人ながら計画の成功を見届けるため現地まで赴く度胸の持ち主だが、ディーキンス達には実戦を知らないくせに口やかましいジジイと煙たがられている。*2
前世ではショーシャンク刑務所の所長を務めていたとか。

「ハッシュ! ハッシュ!」



【余談】


ジョン・トラボルタは当初ヘイル役でオファーが来たが、本人の希望でディーキンスを演じることに。
彼と『パルプ・フィクション』で組んだタランティーノ監督はボルタの起用を熱心に推薦し、逆にボルタにもウー作品に出るよう勧めていた。
推しを推しの作品に出したいオタクの鑑的ロビー活動*3により見事出演と相成ったボルタだが、当人はコネ起用かと気に病んだという。

主役バディのクリスチャン・スレーターとサマンサ・マシスはリアルでも元恋人の間柄。
またサマンサは脚本家の前作『スピード』でヒロインを務めたサンドラ・ブロックの親友で、同作に彼女が抜擢されるきっかけとなった作品では主演を務めている。
ハリウッドが意外と狭い世界で人材を回している好例。

そんな『スピード』の脚本家だけあって、本作も特異なシチュエーションでのタイムリミットサスペンス、目まぐるしく変わる戦いの舞台、小技の利いた展開に小気味よい伏線の配置、組織に恨みを持つ元同僚のサイコパス犯等の共通項が多く見られる。

一方で爆破アクション中心の本編では、ジョン・ウー監督お得意の銃撃戦は控えめで、彼の作品のお約束二挺拳銃、メキシカン・スタンドオフ、鳩etc)*4もほとんど出番がないなど、ファンには辛めの評価を付ける者も多い。*5

そんな中でもヒロインそっちのけで繰り広げられる男たちの愛憎的対立や単純な悪役に留まらない敵の造形など、監督の持ち味は随所に刻印されており、何より本作の興業的な成功が次作『フェイス/オフ』の撮影現場での全権限獲得*6に繋がった、同監督にとってまぎれもないターニングポイントとなった一作でもある。

音楽はご存知ハンス・ジマー御大。
舞台となる大自然の雄大さと繰り広げられるドラマのエモーション、そして追跡劇の激しさを体現したハード&メロウなスコアは必聴である。


「あなたはまだ追記・修正中なのよ大尉?」
「そうかい。君にされるのなら大歓迎だ」

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最終更新:2026年06月19日 11:12

*1 ちなみに演者の本業はアメフト選手。

*2 なお演者はベトナム戦争で青銅星章を授与されたこともあるガチの元軍人だったりする。

*3 頼んでもないのに試写室を用意し、両者に互いの作品をビデオでなく35ミリフィルムで観せた。

*4 二挺拳銃は1シーンのみ、メキシカン・スタンドオフは銃とナイフという変則的な形、鳩に至っては登場しない。

*5 元々別監督の企画だった影響か、スタジオの激しい干渉を受けた撮影現場は自分の色が出せず身投げしたくなるような環境だったと監督自身も回顧している。

*6 キャスティングから編集まで要は何でも監督の自由に出来る権利。ジョン・ウーの拘りとハリウッドの英知が奇跡の融合を果たした同作は周知の通り大傑作となった。