登録日:2025/06/28 Sat 19:06:00
更新日:2025/07/16 Wed 20:32:14
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ここでは現実での銃について解説していく。


概要

機械的な力(主に火薬)を用いて球~円柱状のを発射する道具の総称。英語では「Gun(ガン)」。
14世紀付近に投石器に名付けられたGunnhildrを全般の名称として短縮したのが語源とされる。
との定義の差はあいまいで、一般に口径20mm未満を銃とする場合があるが例外もある*1
主に兵器として進化してきたが、狩猟や自衛とそれを模した競技、治安維持のために使用される。
刀剣類や弓などと比べても特に射程や威力に対する携行のしやすさといった面で危険性が高く、現状日本では狩猟と競技目的以外での所持は不可能。諸外国でも制限が設けられている。

歴史

中国の火槍が起源とされる。とくに19世紀~20世紀近辺の機械的な進歩が目覚ましい点が独特。
古式銃に関しては銃の発射形式一覧の方が詳しい。

火槍/マドファ/ハンドキャノン:1132年~

必須技術:黒色火薬の発明(7世紀)、金属の鋳造技術

それまでに存在したてつはう等の爆弾に指向性を付与したもの。
銃床などはないか槍状のものとなっており、肩付けまでは考慮されていない。
銃身は、火槍では竹を使用した使い捨てであったが、後の大砲等への改良やヨーロッパに伝わった際に青銅や皮製になり再使用に耐えるようになった。
弾は石や陶器、そして貨幣や食器などで幅を利かせていた鉛が使用されていたが、基本的には丸い弾である。
装填は特殊なものを除いて前から行い、後部に空けた穴から火を近づけて点火する。これは薬莢の発明まで変わらない。

余談だが、銃の起源がこの時代なら「銃」という漢字は何なのかと言えば元はの柄を差し込む穴の意味だったようだ。
旁の「充」の古代文字の形の中にあった「○」で穴を表現したという。

アーキバス(カリヴァ)/マスケット銃:15世紀~

必須技術:火のもとを比較的長期間保存する技術(ライター等)、金属精錬、金属と木材の加工、金属と木材の固定(ネジ)、これらの量産を実現する工場制手工業

ハンドキャノンなどでは手で直接点火していたが、それでは拭き戻された火薬でやけどしかねないし不確実ということでクロスボウなどで取り入れられていた引き金の概念が取り入れられた。
火縄の先をクリップで固定し、それをテコや仕掛け付きのバネ*2で押し付けるマッチロック式が主流。
合わせて1人で持ち狙いやすいようなアイアンサイトによる照準と折れ曲がった曲銃床が採用されたが、アジア圏では銃床がないものが多い。
短弓の代替えとして、当時の有効射程である50m程度での射撃で活用され始めた。
長弓など遠距離向けの弓矢も射手の訓練などの難しさにより置き換えられつつあったが、精度では遠く及ばず。ピューリタン革命が長期化した遠因とも(要出典)。

ライフルドマスケット:19世紀半

必須技術:ライフリングの切削とこれの量産を実現する工場制機械工業

ライフリング自体は1498年に直線式が、1520年に螺旋式が発明されていたが、当時としては製造技術が必要な点や弾を食い込ませる必要がある点から主流ではなかった。
しかし1849年に採用されたミニエー弾から大きく飛躍し始める。
底部の形状によって発射時のみ直径が広がり、前からの装填が用意かつ装薬の威力を十分以上に伝えることができるようになった。
これとライフリングを組み合わせることで螺旋式ライフリングの回転による安定効果とミニエー弾の装填のしやすさ、そしてシイの実状の形により命中精度が飛躍的に向上した。
ここから丸い弾を捨て300~1000m先まで攻撃できるようになり、ファランクスなどから始まる戦列という人類が3000年以上培ってきた概念が崩壊した(ファランクスと戦術歩兵とは直接関係するものではない点には留意)。
 またこの際に火打石式なども研究され、のちの雷管(パーカッション)式へとつながる。

雷管の発明:1806年頃

必須技術:雷酸水銀など敏感な爆発物質の生成
不要になった技術:火のもとを比較的長期間保存する技術

アレキサンダー・ジョン・フォーサイスが理論を発明しジョセフ・マントン/ジョシュア・ショウらがキャップ式として実現したもので、一定の力で叩くと火花が出るようになっており、雨天などでも火の管理をせずに運用できるようになった。
当初はライフルドマスケットの発火方式を置き換えるだけであったが薬莢の発明と同時に話が変わってくる。

薬莢の発明:1845年~

必須技術:簡易なプレス加工
不要になった機構:薬室の完全密閉

これまではずっと装薬、弾、発火装置を撃つたびに用意していた。しかし装填方法が前からに限定される点と装填時間が長くなる点が欠点であった。
フランキ砲など後装式のアプローチ自体はあったが、装薬のエネルギーが漏れて威力が下がったり事故が発生したりした。
紙製でひとまとめにしたものも存在したが雀の涙。そもそも一定の力で突き固めておかないと下に向けた際にポロリする。
そこで以下を満たす金属製のケースを用意した。
  • 1~2部品だけの装填で済む。
  • 薬室が完全密閉されていなくても問題ないように圧力を封じ込める*3
  • 弾を発射時まで保持し、下に向けてもポロリしないようにする。
ジャン・サミュエル・ポーリーが発明しルイ・ニコラ・フロベールらが雷管と組み合わせ1つにまとめた。
最初期はリム*4に雷管を仕込んだリムファイア式を採用。現在は底部中央に雷管を挿入するセンターファイアを採用する場合が多い。
これにより連続した射撃に耐えるようになり、後装式が主力になり、後の各種連発式へと進化することになる。
前装弾か廃れる都合ミニエー弾もここでお別れとなったが、彼が精度向上を実現した功罪は無駄ではなかった。有用な回り道だったといえる。

さらに、薬室の閉鎖機構などを複雑にできるようになった/せざるを得なくなった段階から大量生産には職人技では対応しきれなくなった。
戦間期や第二次大戦初期*5まで各国は部品の規格化、標準化に苦心することになる。というのも、それまでは撃鉄周りと銃身の口径以外では大きな縛りがなく差が大きくても問題ないものだった。
そこから閉鎖機構や下記の弾倉、果ては自動連発機構などが追加されると縛りが必要な個所がどんどん増えていくことに。
その為、ネジの寸法や鋼板の厚みなどよく使う材料一つ一つを統一することで、縛りを維持しつつ生産効率を上げようというわけである(縛り=規格、統一=標準化)。
プラスねじなどは最たる例であろう。回す軸を2つ統一するというのだけでも実はかなり高度な事なのだ。

無煙火薬の発明:1884年

必須技術:ハーバー・ボッシュ法
不要になった技術:黒色火薬の生成

ニトロセルロースなどを主原料とし、黒色火薬に対して無と言えるほど煙やカスの発生が抑えられ、尚且つ発火時の圧力等性能も大きく向上している。
ニトロセルロースの原料である硝酸の生成が同時期のハーバー・ボッシュ法によって大量生産可能かつ容易になった事も追い風となり、機関銃等への発展へとつながった。
同時に、装薬の性能向上に伴い鉛のままでは強度が足らなくなるため、強度が出る銅製のジャケットで覆うようになった。貫通力が高まったため、甲冑から派生した金属製ボディアーマーを駆逐した(戦後材質などを更新して再興したが)。

リボルバー:16世紀後半/1857年~

薬室を回転式として並べ、6発程度の連発を可能にしたもの。
ペッパーボックスと言われる銃身も並んだものを除けば、1836年にサミュエル・コルトが取得した特許から始まるパーカッションリボルバーが有名だろう。
薬莢式となってからは再装填時間も十分に短くなったが、フランキ砲同様の弱点であるシリンダーギャップも持ち合わせている。

ガトリング式(回転銃身連発式):1861年~

前述のペッパーボックスの発展と言えるもので、銃身の束を回転させ、その際の力を変換して機械的に排莢、装填を行う。
発明家で医師であるリチャード・ジョーダン・ガトリングによって開発されたガトリング砲に始まり、外部ソース化が容易なことから「バルカン砲」をはじめとする航空機関砲として活躍している。

ボルトアクション機構:1836年~

薬莢を薬室に閉鎖する機構の一つで、ボルトハンドルを回転させてロックを解除し薬室を開放する。
ドライゼ銃など単発式のものから採用され続けているが、現在の自動小銃(ターンロック式)も誤解を恐れずに言えば機械式ボルトアクションである。

リピーター 手動連発式:1860年前後

必須技術:一定の力で弾を送り出す機構

1つの薬室にとっかえひっかえ弾を装填、排莢する機構。ヴォルカニックライフルやスペンサー銃が初期の実用的な連発銃として有名。
レバーアクション機構から始まり、ボルトアクション方式の手動連発式へと発展した。
レバーアクションは内部的にはトグルアクションなどの自動連発式へ派生したが、現在ではマイナー。また、弾倉や弾帯などの弾の供給機構は比較的繊細さを要求される。
前述の規格化が進むまでは弾倉本体やバネの安定した量産が難しく、主力小銃では固定弾倉式で5発程度をまとめたクリップを用いる場合がほとんどだった。
現在では脱着式弾倉がメインとなり、事前に複数の弾倉に弾を装填するようになっている。

自動連発式:1884年~

必須技術:高度なプレス加工や切削、ロストワックス等の規格品を量産するための技術

マキシム機関銃などにはじまる、薬莢の装填排莢を発砲時の反動など弾自体のエネルギーを用いて自動化したもの*6
陸戦の在り方をライフリング以上に変化させ、塹壕戦へと移行する契機となった。追って騎兵や猟兵も駆逐されたりあり方を変えさせられていった。
弾のエネルギーとしては反動利用式とガス利用式がある。
反動利用式*7は弾に対して構造が簡易であり、初期の軽機関銃や拳銃など軽さを意識した銃に見られる。
ガス利用式*8は銃身の穴などからピストンへガスを流入させ、外からボルト操作を行う力を得る。弾薬の選択肢が比較的広く、反動を小さくできるため自動小銃などで用いられる*9

その他にもいろいろな機構や革新があったが、基本的な歴史は上記の流れである。

火薬以外の銃

火薬はメリットも大きい(無煙火薬の項のとおり、大量生成できてしまう)が熱や反動などの面で今後限界が見えてくるだろうと考えられている。そのため他の形式で弾を飛ばす方法が研究されている。

空気式

火薬以外で実現されている形式。殺傷力もある強力なもの。海外でエアガンというと遊戯銃で無くこちらをさす。
使い捨てのボンベやポンプ/コンプレッサーによる圧縮空気で弾を撃ちだす。
ライフル銃が所有可能になるまでのつなぎとして狩猟や競技で用いられる。

電磁式

電気を流した際に発生するローレンツ力や磁力を用いて加速する方式。
詳細はレールガンEMLの項目を参照。
火薬に対してはまだ効率面でかなわないが、より高弾速を期待できるなどメリットも明確である為、2025年現在も研究が継続されている。

光学式

マイクロ波、レーザー/メーサーなど。厳密には銃ではない。
マイクロ波は電子レンジの原理の下になったアレ。
2025年現在では直接的な加害力を持つものもあるにはあるが、航空機の照準器やドローンの制御系に影響を与える程度にとどまる。
非致死性のものも研究は進んでおり、一時的な不調を訴えさせるような運用を想定している模様。パイロットの目を潰すためにレーザーを用いることがあった*10

単なる光で判定を行うものが競技やその練習用で使用されており、光線銃やビームライフルと呼称される。


用語解説

本項目のみならず銃全般に関する資料の字引になれば幸いである。詳細や主な銃器は各銃器用語解説/銃タグのページにて。

弾薬


弾薬の種類


銃の部品



中枢部(発射に必要な部分)


機関部


弾倉


外部パーツ


周辺機器


銃器の動作



銃種



銃器操作 射撃以外


銃器操作 射撃


その他


その他 銃と名がつくもの



追記・修正は愛銃と共にお願いします。


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最終更新:2025年07月16日 20:32

*1 そもそも両方とも英語ではGunであり、キャノンなども砲の種別でしかない

*2 通称スナップマッチロック等。現在の撃鉄周りに近い構造

*3 必ずしも薬莢単体で封じ込める必要はない。薬室を重厚にし、隙間が空きやすい薬莢後端だけ厚めに作るのが主流。

*4 取り出すために少し大きくなった部分

*5 中盤以降の枢軸側は改良する余裕がなくなり、現状維持か新規開発に頼らざるを得なくなった。

*6 電動式やチェーンガンなど外部ソースを用いる単銃身のものもある

*7 ロングリコイル/ショートリコイル式など

*8 ロングストロークガスピストン/ショートストロークガスピストン/ガス直噴式など

*9 拳銃などでは反動を射手が逃がしてしまうと動作不良を起こすため反動を減らしにくい

*10 永久的な失明などを引き起こすレベルのものは国連の条約で禁止されている

*11 ガスブローバックのエアソフトハンドガンなどでは、ディスコネクタが摩耗や分解結合不良でうまく作動しないとフルオートになってしまう

*12 装薬でプライマー側にも圧がかかるので、圧が高まると撃針跡が押されて戻るようになってしまう。