アットウィキロゴ

推理ゲーム(電子ゲーム)

登録日:2026/05/21 (Thu) 21:17:01
更新日:2026/08/05 Wed 21:17:43
所要時間:約 24 分で読めます




【概要】

推理ゲームとは「情報の収集・分析」や「それらを根拠にした推論の構築」といった、
プレイヤー自身の知的能力や判断力を以て作品内の問題を解決していくゲームの形態を差す。
例えばそれの作品が殺人事件を扱うものであるなら、

「どこに手がかりがあるかを考えて効率的な捜索を行い」
「得た情報や証拠品などを吟味して状況を把握し容疑者を絞り」
「十分な理論武装を施して真犯人を暴き、舌戦で追い詰める。」

といった感じになる。
なお、本来「推理」というのは論理学で「前提から結論を導き出すこと」という意味なので事件とは無関係で
Q.白と黒のボールが2つづつあり、A「Bは自分と違う色のボールを持っている」B「Cは自分と同じ色のボールを持っている」C「誰も取らなかったボールの色は黒」各自のボールの色は?
という問題*1もれっきとした推理ゲームである。(もっともこういうのは「いや、そこまで前提がわかっているなら推理以前に回答が見えているだろ。」という不自然なものも多いが。)
推理小説やミステリードラマなどと違い、ゲームである以上(多少例外はあるが)プレイヤーに明確な回答を求める形式が一般的であり、
「正答できなければ物語を前に進めることが出来ない」という枷を背負う事が多い。
そしてRPGの様に「キャラクターを鍛えてクリアのハードルを下げる」様な真似もできず、
攻略はあくまで自身の知性に頼んだモノとなる。
故に、数あるゲームジャンルの中でも比較的難易度が高い部類に入ると言えるだろう。

制作側もその辺りは承知しているのか、解決までの道程を全てプレイヤーに任せる様な負担の掛け方をする作品は決して多くない。大抵は

「行動の選択肢が最初からだいぶ絞られている、或いはほぼ自動で進行する」
「犯人の名前だけ答えさせてトリックや動機の解説等はゲーム内の主人公が担当する」

という具合に、ある程度はシナリオ側がゲーム進捗に干渉してくることがほとんど。
ただこれはある意味「プレイヤーの推理の自由度を狭める行為」にも成りうる為、匙加減を間違えると
プレイヤーの思惑とプレイヤーキャラクターの行動に大きな剥離が生じたり、*2
プレイヤーが推理する余地が殆ど残っていないゲームに仕上がってしまったりといった結果を招きかねない。
君たちも「本格ミステリ」を謳っておいて殆ど推理させてくれないゲームを掴まされて憤慨した経験があるだろう?
そういった意味では"プレイだけではなく制作自体の難易度も比較的高いジャンル"と言えるかもしれない。ただ、これは裏を返せば

「プレイヤーの思考・判断をどういった形で、どれだけシナリオに介入させるか」

がクリエイターの腕の見せ所であり、その作品の個性となる。以下に具体的な例を挙げるので順番に見ていこう。



Scene Investigators

シナリオ(事件)毎に当てがわれた3Dマップを探索して現場の状況を把握し、
与えられた設問に答える形でそこで一体何が起きたのかを明らかにする推理ゲーム。

本作は
「情報集めはプレイヤー自身が行う点」
「集めた情報の中で"何が有効な手掛かりか"の判断もプレイヤーに委ねられている点」そして
「(冒頭でもらう)資料と現場で手に入る手がかりは、"それらだけ"では真相にたどり着けない量に絞り込まれている点
に特徴がある。

その為、ゲーム攻略には
「ただでさえ不足している手がかりを決して見逃さない緻密な探索」
「手に入れた情報の取捨選択と"正しい"解釈」そして何より
足りない部分を補えるだけの十分な推理力」が要求される。*3
先述の様に解決までの過程をプレイヤーにここまで委ねてくれる作品はかなり珍しく、
「ストイックでストロングスタイルな推理ゲーム」としてコアなユーザーからは一定の評価を獲得している。

……が、やはりというべきか、そのあまりにもストロングすぎるスタンスが本作の評価を貶める要因にもなった
と言うのも、最大の売りである上記の特徴は一部のシナリオでは
「最早必要なのは推理力ではなく"想像力"」
と揶揄される位難しくなってしまうからだ。
一回の回答で正解にたどり着けれる内は問題ないのだが、誤答が嵩んでくるとプレイヤーは
「推理が間違っているのか、情報の扱い方が違うのか、或いはそもそも探索が足りていないのか」
と、すべてが"疑わしき"になる地獄のループに延々とハマりこむ羽目になってしまう。
一応高難易度のシナリオでも結論を2択、或いは3択位まで絞り込むことは十分にできる。
しかし択が減るだけは十分な確信を以て一発で解決したいという欲求を持った推理ファンにとっては、
最早総当たりのごり押しとなんら変わりがない
結果本作はユーザーによって賛否がかなり分かれる一品となってしまった。

この辺りの不評を受けてか、後のアップデートで
「まだ見つけてない手がかりの数がわかる情報リスト」と
「複数ある設問のうちどれが間違っているのかを教えてくれる機能」
が追加されたアシストモードが実装された。
現在は少なくとも、探索が足りてるかどうかでやきもきする事だけは避けられる様になっている。




TRICK×LOGIC

本職の推理小説家が執筆した解答編の存在しない推理小説を読み解き、真相に至るための「調書」を完成させるという本格推理ゲーム。
「色々あって意識不明の重体となり魂だけ死後の世界にやってきてしまった主人公が、
現世に戻るために閻魔大王の助手として現世で起こった事件の記録を読み解く」という設定だが、
メインはあくまで推理小説の問題編に相当する各々の事件であり、バックストーリーとしての主張は控えめ。
問題編の執筆を担当したのは綾辻行人、有栖川有栖、我孫子武丸、竹本健治、大山誠一郎、麻耶雄嵩、黒田研二の7人であり、
推理小説ファンであれば誰か一人は名前を聞いたことがあるであろう豪華な面々が揃っている。

本文中には赤い文字で示された無数の「キーワード」があり、
その「キーワード」を適切に組み合わせることで疑問点や矛盾点を提起する「ナゾ」が生まれ、
更にその「ナゾ」に他の「キーワード」や「ナゾ」を組み合わせることで、
「調書」の設問に対する回答となる「ヒラメキ」を得ることができる。

「ナゾ」や「ヒラメキ」の中には真相に繋がらないダミーも数多く存在しており、
ある程度は自力で論理や仮説を組み立てなければ相当な困難を強いられることとなる。
推理小説に不慣れなプレイヤーでもとっつきやすくするための救済措置も用意されてはいるが、
一方で「キーワード」を組み合わせて「ナゾ」を導き出すプロセスが単調気味で、
プレイヤー自身がトリックや犯人に辿り着いているのにそれを「調書」に当て嵌めるための「ヒラメキ」が見つからない
という本末転倒な事態も発生しがち。

一応、最終手段としてギブアップして解答を見てしまうことも可能(オートセーブがない関係で実質的にはペナルティもなし)ではあるし、
ただの推理小説として見てもボリュームはそれなり(短編推理小説10作+α)なので、
推理小説ファンであればゲームシステムが合わなくても電子書籍的な楽しみ方をすることは可能だろう。




逆転裁判

後のADVゲーム業界に「法廷バトル」という新たな雛形を生み出した革命児。
裁判で出廷してくる証人の発言に対して尋問を行い、そこに潜む「矛盾」を暴く形で事件にアプローチしていく推理ゲーム。
真相に至るまでに扱う証言は複数回にわたり、プレイヤーはその都度"指摘できる矛盾に対してのみ"フォーカスすれば良い為、
構成要素が多くなりがちな複雑なシナリオであっても推理する側の負担が増えにくい、という利点がある。これが特徴の一つ。

だが、本作の真価は寧ろそのシステムが齎すシナリオのギミックにある。
上記の目の前の矛盾さえ指摘できるだけの材料が見つかれば良い、というのはプレイヤー側の視点だが、
これを"発想を逆転させて"シナリオ側の都合で捉えると、

プレイヤーには(その時点で)必要以上の情報を与えなくて良い

という事にもなる。
事実本作ではコマンド選択式の探偵パートで多少の捜査は行うものの、
肝心な所は全く分からないまま推理パートである法廷バトルに突入するパターンが圧倒的に多く、
重要な証拠品に限って法廷開始前には手に入らない。結果、
「証言から飛び出した新たな手掛かりによって今までの前提が一気にひっくり返る*4
「頑張って証言の矛盾を指摘したら返ってこちら側が不利になる結果を招いてしまった」
といった不測の事態が当たり前の様に発生する。(シリーズ初代である本作は特にその傾向が顕著)
そしてこの様な情報が後出しされるが故に常に状況が二転三転する破天荒なストーリー展開が本作のお家芸である

進退窮まった崖っぷちギリギリからの奇跡の逆転劇

を支える土台となっている。
タイトルに「逆転」の二文字を冠した制作者のセンスは計り知れない物があるだろう。

世界観にオカルト要素が多分に含まれている点や、この"後出しじゃんけん"の様なやり口に眉を顰めるユーザーもそれなりにいるが、
「多くの導線でプレイヤーを都合よく誘導しつつ、彼らに推理する機会も気前よく与えて、"自力で攻略している"という実感も奪わない」
このバランス感覚は素晴らしく、上記のストーリー展開の派手さも相まって、
後に多くのナンバリングと外伝作品が次々生み出されるほどの人気タイトルとなった。




ダンガンロンパ

上記『逆転裁判』のフォロワーとも言うべき作品。
アナログゲームの人狼をベースに「クローズドサークル」「デスゲーム」の要素を組み合わせ、「閉鎖空間で次々起こる殺人事件を話し合いの中で解決していく」というゲームに仕上がっている。

証言の矛盾に手元の証拠をぶつけて"論破"するという流れは『逆転裁判』同様だが、アドベンチャーゲームやノベルゲームに不足しがちなミニゲーム要素を多数盛り込むことでゲーム性を補っているのが特徴。
例えばこの"論破"に関しても、ニコニコ動画のごとくテロップとして流れてくる発言にこちらの証拠「コトダマ」をタイミングよく発射するというシューティング要素が求められ、単に謎を解いて終わるだけのゲームになることは避けられており*5、人によってはパズルゲームに近いと感じるかもしれない。

こうしたアクション性以外にも、メフィスト系ラノベを彷彿とさせる軽妙な文章センス、登場人物全員が何らかのエキスパートで容姿や性格面でも曲者揃いなキャラクター性、敗者を面白おかしく悪趣味に処刑する「オシオキ」を始めとするホラー演出、謎だらけの舞台設定に隠された壮大な世界観、それらに非常にマッチした画風など独特の空気感が大きな特徴。
シナリオライターはコナンと金田一少年のコラボゲーを成功させた実績があり、推理ものとしてのクオリティも保証されている。

デスゲームであるが故に、すべての犯人と被害者はゲーム開始当初から見知ったクラスメイトであるという点も大きな特徴。
話の都合上、どうしても犯人や被害者はその場限りのゲストキャラとなりがちで、メインキャラからそれを出すのはインパクトを出すための節目でないと困難な普通の推理ゲームに対し、そういった点を大きく覆す本作はそれぞれの事件に対しての重要性、思い入れを大きく強めることになった。
ゲーム側でもそれを意識して、事件のないタイミングでは各キャラと仲を深めその人となりを知れる交流時間のイベントを設けるなど、思い入れを強めさせその後の絶望へと繋げる小憎らしい構成となっている。
序盤から大量のキャラが登場して覚えづらい弊害はあるが、逆に言えばそれ以降の追加はほぼ無く、前述の通り容姿や性格面がいずれも特徴的、全員が「超高校級の〇〇」という分かりやすい肩書きを持っていることもあってフォローは万全で、「キャラが覚えられない」という声は全く聞かない。

推理の流れこそ『逆転裁判』ベースだが、全体的なゲーム内容は大きな差別化が測られ、最終的に今作は口コミで大きな支持を集めていった。
結果、今作は開発陣すら予期しなかった大ヒットへ繋がり、メディアミックスが多数展開されるメジャーコンテンツへと成長していった。




Tyrion Cuthbert: Attorney of the Arcane

先述の「法廷バトル」に属する作品で、一言で表すなら「異世界逆転裁判」
この時点で「は?」と首を傾げた方は多いだろう。そう、この作品あろうことか人外と魔法が跋扈する世界がその舞台なのである。
元ネタでさえオカルト要素には一定の批判があったのに現実離れしたチート満載のファンタジーに逆裁を放り込むなんて、
普通に考えれば嫌な予感しかしないだろう。しかし実際に蓋を開けてみると…

「この世界の魔法は申告制で、使用者は自分が使える魔法のリストの提出が義務付けられている」
「魔法を使用するとその魔法が属している系統の残滓が必ず残る→上記と併せて犯行に魔法が使用された事自体が犯人を絞り込む重要な手がかりの一つとなる」
「なので例えば"死体発見現場=殺人現場ではないかもしれない"みたいな推論にも"死霊術の残滓があるので、死体は実は自ら移動できたのでは?"といった合理的な根拠を持つことが出来る」
「元ネタにもあった動物等の人外を証言台に立たせる様な非常識な行為もファンタジーなら違和感がほとんどない。」
「"悪魔は人を欺くが嘘をつくことが出来ない→悪魔を証言台に立たせて上手く誘導すれば重要な情報を引き出せる"、と考え解決の糸口を掴む、みたいなのも成り立つ」
「主人公は他人の感情の機微を色彩としてとらえる特殊能力を持っているが、これもファンタジーなら以下略」

と、言った具合に推理ゲームにとって大事な合理的思考という要素は損なわずに、

非現実的な世界観を敢えて前面に押し出す事によって非現実性の不自然さを消し去ることに成功している

これが本作の一番の長所。
この辺りの巧みさがウケたのか、Steam等のレビューも概ね好評。
ほぼクローンといっても差し支えないシステム面に関しても
「ファンにとって不足しがちな逆裁要素を摂取させてくれるから寧ろありがたい」
と好意的に受けとめられているようだ。
ただ日本語には対応していない為、日本人が本作から逆裁要素を余すことなく摂取するには、ひじょ~~~に膨大な量の英文とにらめっこしなくてはいけない。
ファンタジーなんだから異言語を即座に理解できるチートくらい用意しておいてほしいものである。




Return of the Obra Dinn

後のADVゲーム業界に「Obra Dinn型」という新たな雛形を以下略。
乗員60名すべてが行方不明となってしまった商船「Obra Dinn号」内を探索して彼ら全員の身元とその安否を確定させるのが目的のゲーム。

その具体的な方法だが、主人公は物語冒頭で「生物の死の瞬間を追体験できる不思議な懐中時計」を与えられる。
これで船内のあらゆるスポットからそれぞれの死の瞬間を観察し、そこから得られる手がかりを根拠として、
手持ちの乗客リスト内にある「スケッチ内の人物」の「名前」と「安否(死亡の場合はその死因も)」を一致させる。
これを繰り返すことで進行していく。

チュートリアルで「直接的な情報が出る事は稀だ」と念を押されるように、それぞれの人物を特定するにはその死の瞬間は元より、
その前後の行動、発言の内容、周辺の状況、スケッチ内の立ち位置、着ている服や持ち物、リストにある名前・国籍・その綴り、果てはリストの番号
等々、あらゆるモノを駆使して手がかりをかき集めなくてはいけない。
なのでクリアまでの道のりは決して楽なものではないが、その分
「自らの力で困難を打開している実感」と「やり遂げた時に得られる達成感」は相当なモノ

攻略上の大きな特徴として、三人分の正しい身元と安否を入力するとその内容が確定情報として固定される点が挙げられる。
これが本作における"小目標"となる。
乗員は総勢60名で固定なので、確定情報が増える度に未確定者の候補は減っていく形になるわけだ。
加えて個々の人物にはそれぞれ"身元特定の難易度"が表示されているので、本作は
「とりあえず難易度が低い者の特定から始めて、候補が絞られた後に特定が難しい人物に着手する」
といった導線が予め引かれている形になる。
ユーザーに対しスムーズな攻略を促す配慮も欠かしていないのもポイントが高い。

…因みに、本当になりふり構わず"あらゆるモノを駆使する"事を徹底すれば
「3人分正答した時点で確定する」事を悪用して、明らかに材料が揃っていない人物の身元を無理やり確定させるごり押し気味なプレイも可能。
これを"脇が甘い"と見るか、"攻略の自由度が高い"と見るかはその人次第。実際そういった方法で切り抜けたプレイヤーも沢山いるだろうし…




The Roottrees are Dead

「とある大富豪の家系図を完成しろ」
という依頼の下、候補者の顔と名前、職業及び他者との血縁関係を明らかにしていく推理ゲーム。
Obra dinn型の傍流の一つで、基本的な流れ自体は上記とほとんど同じ。

一つ違うのは情報収集の方法で、本作は必要となるほぼ全ての手がかりを(作中の)ネットサーフィンによって手に入れる。
例えば調べたい人物が
作家なら「著書のタイトル」
ミュージシャンなら「アーティスト名や曲名」
モデルなら「ファッション雑誌のバックナンバー」
女優なら「出演タイトルやゴシップ・スキャンダル」
等々、ネットでひっかりそうなワードを片っ端から検索にかけて出てきた内容を把握し、
自分が知らない、或いは気になるワードが新たに出てきたら更にそれらを検索にかけてどんどん深堀りしていく。
この繰り返しでゲームは進行する。ぶっちゃけやっている事は現実世界の特定班である。

この
「公開された情報から気になるワードを抜き出して新しい情報を手に入れる」
ゲームデザインは実は本作がオリジナルではなく、後述する名作ゲーム『Her Story』が先駆けてこの方式を採用している。
そういう意味ではある意味本作は名作同士を掛け合わせた推理ゲームのサラブレッドと言ってやれなくもない。
例によって日本語ローカライズがされていないので、これも膨大な量の英文章を読み解く必要がある。
が、本作はゲーム内に出てくるテキストをコピペできるという神機能があるので、
現実のネットと併せれば翻訳のハードルはかなり低い。
英語に拒絶反応を示す人でもそれなりに遊ぶことが出来るので安心してほしい。
但し、機械翻訳に頼りすぎると只のBrotherやSisterを勝手に兄とか姉とかと訳されて調査が混乱するぞ!気をつけろ!(家系図作成に於いて兄弟姉妹は年齢順に並べないといけないというルールがある)




かまいたちの夜(ミステリー編)

チュンソフトが誇るサウンドノベルシリーズの第二弾。
"ノベル"の名の通り本作は基本的に自動で物語が進行し、
節目節目で与えられる選択肢によって物語が分岐していくという方式になっている。

そのメインシナリオは
「クローズドサークルになってしまった真冬のペンションで起きる連続殺人をくい止めるべく、真犯人を突き止める」
という推理物仕立てのストーリー。
各ポイントで提示される選択肢は2択、多くても3択とかなりすっきりしており*6、犯人を暴く機会も一度限りではない。
こう書くとかなり簡単そうに見えるかもしれないが、実際に遊んだ事があるプレイヤーからは決して"易しいゲーム"という感想は出てこないだろう。
その根拠の一つとなるのが、「選択肢の内容」
(以下ネタバレ注意)実は本シナリオ、
真相に至る為に選ぶ選択肢の中に「明らかにハズレの選択肢の様に偽装している」モノが紛れており、
その内容も"犯人が使ったトリックをきちんと看破していないとその文章が意図するものがわからない"かなり捻った表現が用いられている。

これは
「実はよくわかってないけど、取り敢えずもっともらしい選択をしていけばクリアできるんじゃ?」
という甘いプレイングを振るい落とすための巧妙なギミックとして機能しているのだが、
このおかげで犯人はわかっているのに主人公を真相まで導けずに苦労した、
あるいは一度はこれに引っかかって「ちょっとひねくれすぎじゃね?」
と憤慨したプレイヤーは多いのではないだろうか?

また、犯人を暴く機会は複数回あるとは言ったが、これは寧ろ
「犯人を挙げない限り殺人が止まらない」
ネガティブな意味合いが強い。
仮に真相を暴けたとしても、それがかなり早期でない限りは後味の悪い終わり方を迎えるし、
いつまでもグズグズしていたら本当に悲惨な結末を迎える羽目となる。
疑心暗鬼になったガールフレンドに刺し殺されるトラウマ級のエンドを迎えて、攻略する勇気が萎んでしまった方も沢山いたはずだ。
そして一度こういった仕打ちを受けてしまうと、初回ではお気楽に選んでいたであろう行動の一つ一つが、
次回以降のプレイでは「また酷い目に会うかもしれない」という恐怖を孕んだ非常に重たいものに変化する。
この様なプレイヤーの恐怖を最大限煽るストーリー構成も本作の攻略が決して"優しくない"事の証明になるだろう。



野々村病院の人々

かつてアダルトゲーム業界の東の雄と謳われた「エルフ」のブランドであるシルキーズが世に送り出したADV。
エロゲというこれまたニッチなジャンルからの出自ではあるが、
本作は珍しく家庭用コンシューマにも移植された一品なので、当時プレイする機会を得た人はそれなりにいた模様。

ひょんな事から黒い噂が絶えない病院に入院する羽目になった変態天才探偵が、その病院の院長夫人から引き受けた
「院長が自殺ではない事を証明してほしい」
という奇妙な依頼を解決する為に活躍する、というのが物語のあらすじ。
ゲームの形態は上記のかまいたちの夜と似た様な感じだが、本作はストーリー展開が単純に選択肢で枝分かれするのではなく、

「真相に至る(正確には犯人当ての選択肢に至る)までに必要なフラグの幾つかは、それを立てるチャンスが複数回ある」
「それとは別に各ヒロイン個別のエンディングに至るフラグ(正確には好感度)も独立して計算されている」

この二点が大きな特徴として挙げられる。
実際「クリアに近づくか、或いはヒロインの好感度を優先するか」という二者択一に迫られるシチュエーションも存在する。
よってプレイヤーにとっては最後の犯人当てとは別に、
いつどこでどのフラグを立ててどのエンディングを目指すか
といった、主人公の誘導プラン組み立てが大きな仕事の一つとなる。
そういう意味では推理ゲームというよりはフラグ管理ゲームという側面の方が強いかもしれない。

「でもそんなのどれがフラグがわからなければプランの立てようがなくね?」
と思われるかもしれないが、少なくともクリアに必要なフラグに関しては、
「バッドエンドを迎えた際に各登場人物が"一体何がダメだったのか"をそれとなく仄めかしてくれるヒントコーナー」
というのが設けられているので、何度かプレイすればそのうち分かるようになる。
え?好感度の方はどうなのかって?乙女心を勉強するんだな。

因みにシナリオライターのなせる技なのか、本作のテキストは物凄くアクが強いものの、
かなり「読ませる」独特のリズムと味わい深さがあり、純粋な読み物としても高い評価をつけるファンも多い。
原作自体は1990年代の代物だが2025年にリメイクもされているので、
滅茶苦茶強気な値段設定が気にならなければ手に取ってみるのもいいかもしれない。




Her Story

警察内のデータベース内にある「一人の女性に対する事情聴取を収めたムービークリップ」を眺めて、
彼女が語るとある殺人事件の詳細を探るゲーム。
データの引き出しはワード検索で行う方式で、最初は「殺人」のワードで出てきた3つのクリップしか解放されていない。
それらを閲覧した後気になった言葉があれば自分で検索してみて、新しいクリップが引っかかれば又それらをチェックする。
これの繰り返しでゲームは進行する。
但し、警察のシステムがポンコツな為検索で出力したクリップは上位5件までしか閲覧できないという縛りが存在し、
例えば"主要人物の名前だけを入れる"様な素直なやり方ではヒット数が多すぎて中々新しいクリップに辿り着くことが出来ない。
なので検索ワードを上手に組み合わせて閲覧可能範囲に上手く収まる様、条件を絞りこむ工夫がプレイヤーには求められる。

一つ一つのクリップは十秒程度から長くて一分(例外はあるが)と短く得られる情報は非常に断片的、且つ「ワード検索」なので時系列もバラバラ。
最初の内は話の内容が殆ど理解できず「なんのこっちゃ?」と首を傾げること受けあい。
だが、それにめげずに根気よく手がかりの断片を拾い集めていけば、
ある時を境に意味不明だった"彼女の物語"を突然理解出来る様になる決定的瞬間が必ず訪れる。この

「バラバラだった事件のピースの全てが一気に繋がり、一つの像を形成する事で得られるカタルシス」

は正しく推理ゲームファンが日頃飢えて止まない栄養素そのものであり、
構造上必ずそれを摂取できる用様仕組まれたゲームデザインはお見事の一言。

そしてこれに関してはもう一つ、忘れてはいけないスパイスがある。それは
ゲームの幕を引くタイミングがプレイヤー自身に委ねられている点だ。
なんとこのゲーム、シナリオ側からはプレイヤーに一切具体的な回答を求めない。
あくまで真実のタネであるクリップを提供するだけである。*7
当然の6~7割程の閲覧を終えた時点で察しが付く人もいれば、ほぼすべてのクリップを洗ってみるまでは結論を控える人もいるだろう。この
「あくまで自分の歩調で真相を追い求め、自分が納得する形で物語に終止符を打つ」
という特徴も、「材料がそろったぞ、さあ解け!」と言わんばかりにシナリオ側の都合で解決のタイミングを押し付けて来る典型的な推理ゲームには持てない、大きな持ち味である。



未解決事件は終わらせないといけないから

未解決で終わってしまった少女の失踪事件が切っ掛けで精神を病んでしまった老婆の記憶を整理し、その心の奥底に閉じ込めてしまった真実を見つけ出して過去に決着をつけるのが目的のゲーム。
当人は当時についての記憶が混濁しており、関係者の証言の内容こそ正確なものの、その発言者と時系列の相関は全てバラバラ。
これをプレイヤーが正しく整えてやることで、徐々に事件の全貌が明らかになっていく構成となっている。具体的には

「証言内にある#つきのタグを"消費"することで新たな証言や、その証言を収める関係者のスロット・その名前等がアンロックされる」
「そうして得た複数の証言を適切な発言者のスロットに収め、正しい順番に入れ替えてやるとそれらが確定情報として固定される」
「一部の証言には錠前が掛けられており、そのアンロックには↑の作業の過程で手に入る鍵の消費や、事件に関する設問に対しての正答が求められる」
「これを(ほぼ)全ての証言が正しく収められるまで繰り返す。」

こんな感じ。え?全然わからんって?実際この作品、ゲーム操作に関する説明が少々不足気味で
システムを理解するのが最大の壁と言われる位だからしょうがない。
ただ一度理解してしまえば内容自体はかなり素直な論理パズルであり、不慣れな人でも2~3時間、この手のゲームに慣れている人なら1時間位でサクッと終わらせることが出来る。
また、ややビターな後味を残しつつもホロリとさせてくれる物語の結末も評価が高く、プレイ時間の短さは寧ろ単位時間当たりの満足度の高さとして好意的に受け止められている。
お値段もボリューム相応なので手を出しやすい。熟練者は当然の事、推理ゲー初心者にもおススメできる良作である。
また、本作は韓国のゲームではあるが、登場人物の名前を含め、ほとんど違和感の無いレベルでローカライズされている点も評価されている。



Unheard 罪の代弁

「推理ゲームは文字を読むもの」という常識に挑戦した意欲作。本作は
「マップである現場の俯瞰図」
「丸型に簡略化された各人物を示すアイコン」
「タイムライン」
の三つで構成されており、再生ボタンを押すと各人物は現場でその時間軸に沿った行動を起こす。
プレイヤーは自身のアイコンでそのマップ上を移動し、その周囲で発生する「音」(大体は台詞)を聞く形で手がかりを集める。これが大まかな流れ。

一度に聞ける音の範囲(正確には視界も)には限界があり、複数の人物が同時間軸上で一斉に行動する為、
プレイヤーはタイムラインを行ったり来たりして地道に各人物の行動を追わなければならず、
そうして得た全員分の情報を統合することでようやく真相が見えてくる。
そういう意味では「ザッピングシステム」*8に近い物があり、
「一人の人物にフォーカスするだけでは見えてこなかった側面が二人目・三人目と辿るごとに次々に明らかになっていく」
事で快感を得るゲームデザインとなっている。

「"聞く"のは"読む"のと比べてどうしても文章消化のペースが遅くなる」
「各人物をチェックするのに何度も同じ時間軸を往復する必要がある」
故に、短いシナリオであっても解決に時間がかかってしまうという難点を抱えてはいるが*9
ユーザーからは「面白いシステムだ」とかなり好評。
それでタガが外れた…かどうかは分からないがメーカーは後に
「タイムライン30分弱、登場人物数16人」
という滅茶苦茶めんどくさい非常にボリューミーなDLCシナリオを公開した。




探偵神宮寺三郎 謎の事件簿

単一タイトルにおけるリリース数においてはADV業界の中でもぶっちぎりである「神宮寺三郎シリーズ」。
それら各タイトルにおまけとして付属しているショートストーリー群で、
2.5等身位にデフォルメされた三郎・洋子・熊野らいつものメンバーが非常にゆる~いノリで様々な事件や謎に挑む。
「おまけ」と書いてしまってはいるが、実際にはシリーズのもう一つの屋台骨と言っていいほどその存在感は大きい。
その根拠として挙げられるのが「両者のコンセプトの対照性」にある。作品毎に多少の差異はあるものの、

本編は概ね「ハードボイルド・シリアス調」「長編シナリオ」「ストーリー重視」であるのに対し、
謎の事件簿は「ギャグ・コメディ調」「短編シナリオ」「推理重視」という具合となっている。

これでわかって頂けただろう。この対照的な両者が一つのソフトとしてセットで販売される事で、
互いが互いに無い物を上手く補完し合う形を取っているのである。
特に謎の事件簿が推理重視のゲーム性になっている点が非常に大きく、
これが探偵モノなのにあんまり推理させてくれない長編シナリオが慢性的に抱えがちな欠点を上手くカバーしており、
一つのパッケージとしての完成度を押し上げている。この
「一皿で満足してもらえないなら二皿目を出せばいいじゃない」
というやり口はありそうでなかった中々斬新な発想であり、ある意味ADVにおける"掟破りの大技"とも言えるだろう。

ちなみ上記の説明でお察しだと思うが、こちら側の三人はその雰囲気に併せて本編と比べ多少ギャグ寄りにキャラ付けされている。
特筆すべきが助手の洋子で、本シリーズの彼女は一貫して頭に変な球体がついたポンコツロボットと化している。オプーナのルーツは彼女だった…?
なおかなり長い期間の間、あまり可愛げのないずんぐりむっくりした姿だったが、3DS『GHOST OF THE DUSK』からは美少女染みた容姿に大幅リファインされた。しかし、ガワだけ良くなっても
相変わらず本編の様な才色兼備さは遥か彼方に投げ捨てており

「自分の欲望を優先して二人をひっかきまわしたり」
「都合が悪い時に限って強制スリープに入ってごまかそうとしたり」
「三郎がしくじって依頼料がパーになったらキレて巨大化したり」

と、最早三郎の助手というよりは敵といっても差し支えないかなりはっちゃけた奴になっている。
謎の事件簿における真の主人公は彼女と言ってもいいかもしれない。そーいう意味でも三郎の以下略




ギルド探求団へようこそ!

冒険者ギルドが過去に発行したインタビューやニュースの記事などを元に、
20隊78人からなる冒険者パーティ名簿を復元するゲーム。
あらゆる記録の収拾・保存が生きがいだが足が不自由になり動けなくなってしまった通称「キオクシ」のおじさん(プレイヤー)が、
相棒である少女・通称「アシスタントちゃん」に適切な指示を出す事で新たな記事を棚から持ってきてもらうのが基本的な流れ。
アシスタントちゃんをナデナデすることもできる。

アシスタントちゃんは完全記憶能力を持っており膨大な記録の中から指定された記事をすぐに持ってくることができる。
しかし「文字を記号としか認識できない」という難儀な特性も抱えていて、彼女への指示は「1文字も間違いなく書き留められた紙」によってのみ成立する。
「どの日に、どういう記事が発行されたのか?」をしっかりと推理し書いて伝えなければならない。

冒険者の特定は消去法で候補を減らしていく論理性のみで全て解けるように作られているが、
「見た目的にこの人が◯◯っぽい!」「この人がそうでしょ悪人ヅラだし」
「これあの作品のパロディじゃね?」のような先入観による近道的解法もある程度想定されている。
ただしそういった先入観に頼ると確実にドツボにハマってしまうような「ひっかけ」も意図的にいくつか仕組まれている。

上述のオブラディン号を強くオマージュしているゲームであるが、
「冒険者の死因や命日はどうでもいい」というのが特徴的。
冒険者へのインタビュー記事が主な情報源なので
「どういう人物で、どういう集まりのパーティか?」
「どんな戦い方をしているか?」などは細かく語られておりパーティの初期構成を特定するのはかなり簡単。
だが脱落者の情報は他の記事の文脈で示唆されるだけだったりニュース記事による無機的なものだったりが多く、
必要なのは「現在時点のパーティ構成と各人の生死」のみな事もあり深堀りされることは殆どない。
その情報を整理し時系列に当てはめ次の手がかりとしなければならない。
故にプレイヤーは推理の過程で自然と…その行間に思いを馳せる。
「その死に、どういう対応がされただろうか」と……

「これで正解にならないってことは……このパーティもっとんで…いやもしや全滅してる…?」
「微笑ましい奴らだなぁ…でも最低一人はこっから人出てるらしいんだよなぁ…」
「久しぶりにこいつらの記事出てきたけど、なんか頭数合わないよ!?!??」
論理パズルを解く上で当然に突き当たる「」が無機質な「事実」としてぶん殴ってくるゲームである。
かわいいアシスタントちゃんをいつでもナデナデできるのが本当に救いである。

プレイ時間目安は5~10時間ほど、お値段は470円と大変リーズナブル。
Steamレビューでは500件以上かつ95%以上のレビューが好評価という「圧倒的に好評」を獲得している。
また作者自らがSteamガイドでヒントを提供しており、「どういう順番で解くべきか」「どの情報で解けるか」「具体的にどこが根拠になるか」「解答」の順で区切りを付けつつ細かく書かれている。
クリア後に解法の答え合わせとして見に行くのも一興。裏設定も少しだけ明かされている。

ちなみに本作を制作しているぱるそに工房は、過去には当wikiにも記事のあるフリーゲーム『鏡のマジョリティア』も制作している。
こちらも、カードゲームと推理ゲームの混合と言えるゲームである。



おススメの推理ゲームがあれば是非追記・修正をお願いします。
この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2026年08月05日 21:17

*1 A.正解は「A黒・B白・C白」、前程より同色は2個づつなのでBの証言からBとCが同色のため残っているボールはAと同色、Cの証言より「残っているボールの色(=Aのボールの色)は黒」なので、BとCは逆の白。

*2 例えば"明らかにココが怪しい!"といった所があるのにシナリオの都合上それを調べさせてくれない、ゲーム側が与えた行動選択の意図するものがプレイヤーに伝わりにくく、そのせいでキャラクターを思い通りに誘導できない、等々

*3 結果的にそうなっているのではなく、ゲーム開始時に「そういったケースがあります」と明確に宣言される。

*4 例えば、証人が提出してなかった写真の存在が明らかになる→真の殺害場所が想定されていた場所と全く違う事が判明する→これにより容疑者が一新される、といった具合

*5 ちなみにリアルタイムで証言を指摘するシステムは『逆転裁判』も開発段階の構想として行われていて、上層部の要望で廃止されたものであり、『ダンガンロンパ』は代わりにそれを拾った形となる。実際に『逆転裁判』1作目は「ゆさぶる」で聞けるメッセージの一部に途中で証言をさえぎっているかのような会話が多々みられており、これは開発段階の名残と見られる。

*6 但し、一か所だけ選択式ではなく直接入力式の回答が求められる場面がある。

*7 一応ある程度の量(或いは特定の)クリップを閲覧済みにすると「どうだ?真実は分かったか?」と問われ、肯定の返事をするとエンディングに移行する。

*8 一つの物語を複数人の異なる視線で描写し、その多角的な側面を以て全体像を浮き彫りにする方式の事。

*9 例えばシナリオの登場人物が10人以上いる場合は10分そこそこのシナリオでも軽く2~3時間かかる。