登録日:2026/06/27 Sat 18:05:20
更新日:2026/08/23 Sun 14:10:11
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軍とは。軍隊とは。
ある日突然何処かへと、魔法のように出現するものではない。断じてそうではない。
『オルクセン王国史~野蛮なオークの国は、如何にして平和なエルフの国を焼き払うに至ったか~』とは、樽見京一郎による日本の
ライトノベル作品、およびそれを原作とするメディアミックス作品である。
◎あらすじ
科学技術が発展を遂げ、「剣と魔法」から「銃と魔法」の時代へと移り変わった世界。
産業革命を経た星欧大陸では、人ならざる魔種族たちの連合国家・オルクセンが列強の一角に名を連ねていた。
ある日、オルクセン国王にしてオーク族の牡たるグスタフ・ファルケンハインは、狩猟の最中、銃で撃たれ倒れていた一人のダークエルフを見つけ、救助する。
目を覚ました彼女――ダークエルフ族氏族長ディネルース・アンダリエル――の口から語られたのは、隣国エルフィンドにて白エルフがダークエルフを殺戮する「民族浄化」が行われているという凄惨な事実だった。
白エルフへの復讐に燃えるディネルースに対し、グスタフは「ダークエルフ族を連れてオルクセンへ移住し、将来の捲土重来を図ること」を提案。
ディネルースもこれを受け入れ、オルクセン軍の支援の下、祖国に取り残された同胞およそ1万2千人を脱出させてオルクセンへ亡命を果たす。
そして、自身と同胞の命を救ったグスタフへの恩義を果たすため、そして憎き祖国への復讐を遂げるため、ディネルースはかつての故国との戦争に身を投じていくことになる。
◎概要
元々は小説投稿サイト「
小説家になろう」および「カクヨム」にて2021年7月から連載が開始されたWeb小説。
書籍版はサーガフォレスト(一二三書房)より2023年12月から刊行されており、イラストはTHORES柴本が担当している。
第2回一二三書房WEB小説大賞にて金賞、「次にくるライトノベル大賞2024」単行本部門3位、『
このライトノベルがすごい!』2026年版の単行本・ノベルス部門で10位を獲得するなど評価は高い。
2025年11月時点でシリーズ累計部数は100万部を突破している。
2024年1月からは野上武志によるコミカライズ(ノヴァコミックス/一二三書房)も連載中。
こちらは原作小説に忠実な構成と、ド迫力の戦闘描写・重厚なドラマが好評を博している。
内容を端的にまとめると
差別・迫害・虐殺・搾取その他もろもろを国家ぐるみで行い、全方位からヘイトを買ったエルフ族の国
「エルフィンド王国」が、オークを筆頭とする多民族国家
「オルクセン王国」に戦争を仕掛けられ、滅ぶまでの過程を描いた物語。
言ってしまえば「
本格戦争ものナイズされた『平和なエルフの村に攻め入るオーク』ネタ」であり、実際作者はある種のネットミームとして存在していた「エルフの森を焼くオーク」を下敷きにしていると語っている。
一つの戦争を描いた作品として、広義での
仮想戦記と見られることもある。
いわばオチが見えているタイプの作品なのだが、本作の見どころは戦争そのものではなく、その手前にある
「輜重」と
「兵站」。
すなわち、
「後方の見えざる戦場」こそが本作の真の舞台となる。
- 兵隊をただ突撃させるだけでは無用な犠牲を生む。そうならないための戦略・戦術はどうすべきか?
- エルフィンド王国をどう偵察し、そしてどのような戦いを挑むべきか?
- 戦略・戦術を考えたとて、兵がその通りに動いてくれなければ意味がない。兵への情報伝達手段はどうするのか?
- 戦略を立て、連絡手段も確立した。だが、兵にその戦略・戦術を理解し遂行できる能力がなければ意味がない。兵たちにどのような訓練を施すのか?
- 兵隊をエルフィンド王国に送り込む移動手段はどうすべきか?馬?列車?徒歩?それぞれの所要時間と必要コストは成果に見合うか?
- 出征した兵隊も生きている以上衣食住が必要であり、指揮官には彼らを食わせる義務がある。食料にも鮮度があるし、大人数であるから量も必要だ。それらを遅滞なく、満遍なく行き渡らせるにはどうすべきか?
- 様々な種族が集うオルクセン王国において、同じ兵隊であってもただ同じ食料を配ればいいわけではない。食べる量は種族で違うし、ネギを食すると中毒を起こすコボルトのような種族もいる。トラブルを起こさないためにどのような工夫が必要か?
- 船のような大掛かりなものはそうそうすぐに準備できないので、民間から徴発しなければ入手できない。だが、その過程でオルクセン国民から略奪したり死者を出すようなことがあれば反感を買い、以降非協力的になってしまうだろう。そうならないために何をすべきか?
- 戦場にトラブルはつきもの。物資が足りなくなり作戦行動ができなくなった兵が食料の徴発を必要とするかもしれない。そうした状況下での兵の動きは定めてあるか?万が一、現地人から略奪をしてしまった兵の扱いはどうすべきか?
- 戦争に前後して新兵器が発明されたはいいが、その為に古い技術に合わせて訓練してきた専門技術者の仕事がなくなってしまった。彼らを傷つけない為に国家はどう立ち回るべきか?また新しい仕事として何を当てがうべきか?
- エルフィンド王国に加勢する第三国がいては困るので、エルフィンド王国には事前に孤立していてもらわねばならない。周りの国への根回しはどうするのか?
- 戦争には「言いがかり」が必要になる。正当な理由なく戦争を仕掛ければ、他の国や民族が「次は自分たちが突然弾圧されるのでは」と怯え、今後の外交に支障をきたしてしまうためだ。エルフィンド王国以外を攻撃しないことを示せる真っ当な口実をどのように用意するか?
- 戦争特需は仕事が増えるが、戦争が終われば仕事もろとも潰れてしまう。例えば兵器工場は戦争が終わったら人員を削減しなければならないだろう。余った彼等にはどのような仕事をあてがうべきか?
- エルフィンド王国にもとあった役所などの設備は、戦後どう扱えば混乱を起こさずに済むか?
- 敗北したエルフィンド王国のエルフたちの扱いはどうすべきか?
- 突然、国から大量の兵器生産の注文を受けた民間の鉄鋼業者たちは何を思うのか?
- 戦後にどのような経済変動が起こるか?利益を得るために何ができるか?
などなど。
通常の活劇ものならスポットライトも当たらないような所謂「モブキャラ」たちがそれぞれの場面でそれぞれの活躍をする様を次々と描く「お仕事マンガ」あるいは「モキュメンタリー」的な色の強い作品である。
裏を返せば「戦争」という題材は本来描くべきテーマがこれだけあるジャンルでもあるということ。
その過程を徹底的に掘り下げ、戦争前後の人々の悲喜交々を描ききるところに本作の醍醐味がある。
また本作はいわゆる転生物、人生2周目物語の一種でもあるのだが、立場の違う主人公格が複数いること、転生者が裏方かつ「体制をほぼ程度固めた状態」から物語が始まるため、前世能力での無双といった場面はあまり見られない。
小説版挿画のTHORES柴本氏の描くダークエルフは蝙蝠を思わせる異形な風貌だが、コミカライズを担当する野上氏のエルフは喜怒哀楽豊かでどこか愛らしい。
片方の印象で固まった状態でもう一方を見るとギャップに驚くかもしれない。
◎主要な登場人物
この作品は国単位で物語が動くため長く物語に登場するキャラはあまりいない。
登場人物のほとんどは数話だけメインを張っては消えていくモブキャラで、名称について触れられないまま物語からフェードアウトした者も多い。
以下では、出番が比較的多めな人物を紹介する。
【オルクセン王国】
本作の主人公その1。スコルという村を拠点としていたダークエルフ族の氏族長で、口許の黒子が特徴。
酒精の強い火酒を好む酒豪で葉巻も嗜む。射撃の名手であり、敵指揮官を狙撃する手法で戦果を重ねてきた猛者。
かつてはエルフィンドの軍人として「白エルフだったら大将まで上り詰めていた」と評されるほど優秀な指揮官で、120年前のロザリンドの会戦にも参加していた。
物語序盤は彼女の視点で語られ、彼女が「民族浄化」に遭い仲間を大勢殺されながらオルクセン王国に逃げ延びてくるところから物語は始まる。
白エルフの急襲で故国を追われた末にグスタフに救われ、亡命後は亡命ダークエルフたちの実質的なトップになると共に、オルクセン陸軍少将に任官。エルフの技術であった「魔力を用いた三角測量法」などをもたらした功績で出世し、ダークエルフ族で編成されたアンファングリア旅団の旅団長を務める。
なお旅団名「アンファングリア」とは、エルフィンド神話においてエルフの女王を喰い殺した巨狼族の始祖の名であり、白エルフにとっては最悪の忌み名である。
本作の主人公その2にして、オルクセン国王。オーク族の牡。
「野蛮」と揶揄されるオーク族でありながら理性的かつ博識。
パイプを好む愛煙家で美食家でもあり、市場に自ら顔を出すなど気さくで民衆にも慕われる明君。
共食いの禁止、輪栽式農法の奨励、鉄道整備といった文明開化を推進した傑物であり、外交手腕にも長ける。
作中で齢150を数えるが、オークは長寿種のため人間換算ではまだ20代半ば程度。
珍しく昼寝の習慣を持たず、即位以来妻妾を持たない独身を通している。
空いた時間では新聞を読んだり、読書にふけるなど、非常に知的。
王でありながら見回りを欠かさず、指揮官から一兵卒、兵士ですらない路線作業員に至るまで「褒めて伸ばす」態度をとるため、民衆からの人気は非常に高い。
呪文を唱えることで気象・天候を操作する能力を持つ。
その気になれば嵐を起こすこともできる強大な力である反面、細かい制御は難しい。
また、グスタフ自身あまりこの力に依存したがらないような描写があり、基本的にオルクセン王国はグスタフ自身の人徳と政治的手腕で切り盛りされている。
天候操作を見たディネルースは驚いていたが、魔術のある世界であることを思えば超常現象を起こせること自体はそう不思議ではないと考えることもできる。
しかし気象操作の呪文が「日本語のわらべ歌」であり…?
中盤で明かされるが、グスタフは「転生者」、すなわち
魔術や魔物の存在しない異世界から転生してオークとなった元日本人
である。
前世は国の経済統計に関わる仕事をしており、趣味として家庭菜園や文学(漫画版では司馬遼太郎の「坂の上の雲」が例示されている)を嗜みつつ、天寿を全うした上でこの世界に来た。
劇中で「ごくごく平凡な一般人だった(のに一国の王になって戦争を起こすまでになった)」と自嘲しているが、生前の職種といいどう見ても平均よりは上の知的インテリ層である。
まあ「前世では責任のない身軽な立場で各地の産業視察に行っていた」とあるので出世欲はなかったようで、それが所変わって一国の長になったのだから一般人と言いたくもなるか。
転生者であるグスタフの真にチート能力と言えるのは天候操作能力ではなく、
19世紀程度の文明世界に、21世紀水準の教育・インフラ整備・経済学・軍事学を、ほぼ理想的な形で再現できるまで、自らの学習と周囲の説得を続けて成し遂げた
忍耐強く継続する行動力
にあると言ってもいい。
前世の職種からして社会経済面の基礎知識はありそうだが「軍事に関してはガチの素人スタート。兵器については分かっていないことも多い。」と作者から明言されている。
なお、元人間であるため、性的嗜好対象もヒトの女性。
妻や妾を持たないのも、ただ単に「オーク(豚)相手に性欲など抱けない」というごくごく当たり前の理由であった。
ディネルースは彼との対話を重ねるうちにこの正体を看破し、そして襲った。
陸軍上級大将・国軍参謀本部参謀総長。オークの牡。
調整や兵站管理を得意とする一方、作戦立案は苦手と自覚しており、それはグレーベンに任せている。
大の酒好きで秘蔵のワインコレクションを持ち、シュヴェーリンにたびたびワインをたかられる仲。
陸軍上級大将・北部軍司令官。オークの牡。エルフィンドとの国境を守る闘将。
右目元の古傷がチャームポイントで、グスタフが一兵卒だった頃からの付き合い。彼からは親愛を込めて「悪党」「我が牙」と呼ばれている。
軍内部でも「会いたいならば最前線へ」と言われる豪傑で、敵国でも「タイマンは絶対に回避」「遭遇戦は逃げるべし」と恐れられた古強者。
私人としては知性的で勉強家。100年を超えて軍の重鎮でいられるのも彼の勤勉さが故。
ただし、イメージ戦略として親しい者以外には知性派な側面を隠し、豪放磊落な武闘派として振舞っている。
陸軍上級大将・騎兵監。オークの牡。シュヴェーリンと同じく先王の代から仕える古株の将軍。
オルクセンにおける騎兵運用の第一人者。デカくてゴツくて重いオークは騎兵に向かず、あまり活発とは言えない中で育成に勤しんできた。
アンファングリア旅団が早期に軍馬を揃えることができたのはツィーテン将軍のおかげ。
また、シュヴェーリンが戦線を、ツィーテンが後背を支え、両将の間には信頼関係が培われている。
なお、本人はリウマチを患っており、杖が手放せない身の上。
陸軍少将・国軍参謀本部次長兼作戦局長。オークの牡でシュヴェーリンの娘婿。
傲岸不遜な自信家だが、それに見合う才覚の持ち主で、作戦立案に長ける俊英。
一方で、頭の良さと横紙破りも辞さない性格故に孤立しがちな問題児でもあった。
能力を見込んだゼーベックが抜擢すると同時に陰に日向にフォローし、グレーベンもゼーベックを「もう一人の父」「彼のためならば死ねる」と言うほどに慕っている。
グスタフ王に対しても単に「国王だから」ではなく、その才能を認め上に立つに相応しい上司として忠誠心と敬意を抱いている。
陸軍少将・参謀本部兵站局長。ドワーフの牡。
オルクセンの軍事鉄道輸送の研究責任者を務めた経歴を持ち、ダイヤグラムや通票を導入した実績がある。
国軍少将・大鷲軍団団長。大鷲族。
飛行が可能な種族の特性から、上空からの偵察や弾着観測射撃を研究している。
なお、ディネルースとは浅からぬ縁がある。
グスタフの護衛を務める巨狼族(フェンリル)。
ロザリンドからの敗走時、崖から滑落したグスタフを救って以来の付き合い。
また巨狼族の長でもあり、ディネルースは師団名を名付ける際に彼から直接使用許可を取っている。
オルクセン最大の財閥「ファーレンス商会」会長。ボルゾイ系のコボルト・牝。
見た目は優雅なマダム風の美ケモだが、一代で大企業を築き上げた女傑。
事業で得た富と人脈を用い、関係のあるキャメロットの企業や商人を経由することで得たエルフィンドの情報を条件付きで国軍に提供している。
元エルフィンド住民。夫婦で小さな店を営んでいた。
しかし、エルフィンドがコボルト排斥運動を始めたがために、愛する夫は白エルフに殺され、自身も命からがらオルクセンに亡命。
かつての故国を仇と見定めた彼女はシュヴェーリン率いる北部軍の酒保商人として再起し、財貨を以て報仇すべく活動、現在に至る。
このほか、外務大臣クレメンス・ビューロー、通信局長ヘルムート・シュタウピッツ、輜重兵から航空兵となるフロリアン・タウベルトなど、軍・政・財にわたる多彩な顔ぶれが物語を彩る。
なお作中の人名・国家像には、ファルケンハインやツィーテン、ビューローなど実在のプロイセン/ドイツの軍人・政治家から採られた名前が多い。
◎世界観
あらすじの項にある通り、『銃と魔法』の世となった世界。
地理等はおおよそ現実世界のそれと似通ったものとなっており、現実世界の西洋に相当する『星欧』、東洋に相当する『道洋』といった地域区分となっている。
現実とは異なり、知的生命体として人間族以外にも魔種族(現存するのはオーク、コボルト、ドワーフ、巨狼、大鷲、白エルフ、ダークエルフ)が生息している。
魔種族はいずれも人間族よりも遥かに寿命が長いほか、個体差はあるものの魔力を持っている場合が多い。
なお、魔種族も大半は雄と雌が番い、子を産むという人間族やその他一般的な生物と同じような繁殖方法であるが、
エルフ族のみ何らかの理由で雌しか存在せず、『白銀樹』という特殊な樹木の根本に赤子が出現する、という非常に独特な繁殖方法となっている。
◇星欧大陸(せいおうたいりく)
オルクセンを始めとする諸国家が位置する大陸。
現実世界のヨーロッパ(=西洋)におおよそ相当する地形だが、スカンディナヴィア半島にあたる地が存在しないなどの差異も見られる。
時代設定は19世紀後半の近代ヨーロッパを思わせ、鉄道・電信・銃砲といった近代兵器と魔術とが入り混じった独特の世界観が築かれている。
なお紀年法は「星歴」なるものを採用している。ちなみに物語開始時点は星歴875年。
ちなみに、星欧大陸を超えた東側の世界は「道洋(どうよう)」と呼ばれ、現実世界のアジア地域に相当する。
道洋の諸国は直接劇中には登場しないが、道洋から星欧に美術品などが輸入されている描写がある。
◇オルクセン王国
本作の主役となる、星欧大陸中央部に位置する
魔種族連合国家
。グスタフを王に戴く。
オーク族(豚頭族)を筆頭に、コボルト族・ドワーフ族・大鷲族・巨狼族といった複数の魔種族が共存しており、エルフ族の国家であるエルフィンドを除けば星欧で唯一魔種族の暮らす国家である。首都はヴィルトシュヴァイン(オルクセン公用語である低地オルク語で『猪』の意)。
かつては「飢えれば同族さえも喰らう野蛮なオークの国」と恐れられていたが、グスタフが他種族食(共食い)を固く禁じたことで多種族の共存を実現。
さらに輪栽式農法の奨励や鉄道の整備など、グスタフ手ずから行われた数々の近代化政策により、経済的・軍事的に大きく発展。今となっては星欧列商(史実で言う所の西洋列強に相当)に名を連ねる大国となった。
参謀本部の設置や訓令戦術の導入といった軍制も含め、その国家像はモデルとなった近世プロイセン~ドイツ帝国を強く彷彿とさせる。
グスタフの采配のおかげか、軍規における信賞必罰が徹底されているだけでなく、将校から下士官まで意見を具申しやすい環境も整えられており、作中屈指のホワイト企業ならぬホワイト国家とも呼ぶべき国。
軍事訓練においても兵士一人一人に気を配った気遣いがなされており、兵士から民衆に至るまでグスタフへの忠誠心は高い。特に戦場であっても食へのこだわりは異常で、コミカライズ版では食事の紹介でグルメ漫画みたいになっていることも。
また、エルフィンド王国に迫害され故郷や家族を奪われた者たちの寄り合い所としての側面もあり、「エルフィンド憎し」という意味でも団結している。
ちなみに通貨単位は『ラング』。補助通貨は『レニ』。
◇エルフィンド王国
オルクセン北部、ベレリアント半島を領域とするエルフの国家。首都はティリアン。
「人間族からさえ、もっとも歴史古く清楚な存在」と思われている、いわゆる「平和で美しいエルフの国」……のはずだった。
長らく鎖国政策を採っており諸外国との交流は僅か。国土拡大の過程で他の魔種族を迫害・虐殺してきた歴史を持ち、それ故にオルクセンとは歴史的な対立関係にある。
そして作中現在、国民の九割九分以上を占める白エルフ(光のエルフ)が、少数派であるダークエルフ族を一方的に虐殺するという民族浄化を進行させており、これが戦争の起爆剤の一つとなる。
なお、白エルフはダークエルフを伝統的に蔑視してはいるものの、外敵には共に立ち向かい、少数ながら国家の中枢に携わるダークエルフも存在していたなど、本編開始の少し前まではエルフィンド国民として認められてはいた。
そのため民族浄化の開始はダークエルフにとって完全なる不意打ちであり、種族の実に8割以上が碌な抵抗もできないまま犠牲となっている。
王国の名の通り女王を頂点とする王政を敷いているが、作中の描写からすると現在の女王にはあまり権限や発言力が無いようで、実際には有力氏族らによる寡頭制に近い。
索敵能力と遠距離攻撃手段に長けているため、いくら技術革新を進めたオルクセンといえども無策で挑めば沈むこと必至の難敵。
さらにかつての海軍司令官が辣腕を振るい海軍と海兵隊を一気に近代化させており、(元々オルクセン海軍が小所帯ではあるとはいえ)オルクセン海軍よりも強大な海軍を保有。特にキャメロットから購入した巨艦『リョースタ』『スヴァルタ』に至っては「たとえオルクセン海軍が全滅を賭しても沈めることは出来ないであろう」と他国の海軍士官から評されるほど。
――ではあるのだが、オルクセンとは逆にその内実はガタガタで、特に「後方の見えざる戦場」は酷い。
部隊同士でのもめ事は茶飯事で連携は取れず、内政はお役所仕事で重要な情報が伝わらず、兵士の士気もバラバラ、外交では反感を買う真似をして孤立……と戦い以外のところでは死ぬほどやらかしまくっており、それが原因で滅びへのカウントダウンを進めることとなる。
中でも長い鎖国政策が祟って外交における基本のキである「礼儀」を忘却してしまっているのが最大の痛手。主にこの非礼を働く振る舞いで墓穴を掘るシーンが多い。
一応白エルフの中にもまともな軍人は少数いるのだが、部隊の混乱を鎮静できる程優れた将はおらず(というか混乱している兵の数が多すぎる)、大抵碌な末路を迎えていない。
優秀な者ほど軍事的にも外交的にも祖国が詰んでいることを理解しているが、それでも愛国心と軍人としての責務を果たさんとする気概は持ち合わせており、少しでもマシな敗北を迎えるためにオルクセン軍に立ちはだかる。
実のところ、エルフィンド軍は決して陳腐ではなく、近代化の度合いでいえば星欧列国に比べてまったくひけをとるものではないことが作者から言及されている。オルクセン軍が突出してチートなのだ。
なおオルクセンと同様、エルフィンドにもかつて「女王」なる異世界転生者がいたこと、それによって大きく発展、覇権国家となったことを匂わせる描写がある。
両者の違いを挙げるなら、エルフィンドでは転生者の特殊能力に頼り切りだったのに対し、オルクセンの転生者は自分(とその能力)なしでも運営できる国家体制を構築したことだろうか。
◇その他の国家・地理
上記2ヶ国が魔種族国家である事から魔種族がクローズアップされがちだが、その他の国々は人間の国家である。
- キャメロット王国……星欧大陸北西部の島国。立憲君主制を採る人間族の国で、モデルはイギリス。
エルフィンドと正式な外交関係を持つほぼ唯一の国であり、オルクセンとエルフィンド間の外交の橋渡し役を担う。かつてオルクセンと共にグロワールと戦った事が縁となり、オルクセンと最初に正式な外交関係を結んだ国家でもある。
- グロワール帝国……正式名称グロワール第二帝政国。モデルは(帝政期の)フランス。
60年前のデュートネ戦争(ナポレオン・ボナパルトをモデルにしたアルベール・デュートネが起こした戦争)にて、キャメロット・オルクセン連合との決戦で敗北した。現在の国家元首はデュートネ三世。
- ロヴァルナ帝国……広大な領域を支配する帝国。モデルはロシア。
- アスカニア王国……オルクセンの隣国のひとつ。史実のバイエルン王国やバーデン大公国等に相当。
-
▼ ※Web版ネタバレ
後日談では、悪魔を産み、世界大戦の火種となったことが語られている。グスタフ王は前世の知識から「悪魔」誕生の危険性を周辺国に説いたが顧みられず、以後急速に衰え死期を迎えた。
- オスタリッチ帝国……オルクセンの隣国のひとつ。史実のオーストリアに相当。
- アルビニー王国……オルクセンの隣国のひとつ。史実のベルギーに相当。
- エトルリア王国……オルクセンの近隣国のひとつ。史実のイタリアに相当。
- センチュリースター合衆国……新大陸(史実の北米大陸)の国家。史実のアメリカ合衆国(北軍)に相当。
- センチュリースター南部連合……新大陸の国家。史実のアメリカ連合国(南軍)に相当。
- この世界においては史実の南北戦争にあたる戦争が泥沼化した末、南北が分裂したままになっている。
以上の星欧列商諸国は、オルクセン・エルフィンド間の戦争については軒並み中立を宣言した(観戦武官は派遣)。
-
ベレリアント半島
……オルクセン北方に突き出る半島であり、全域がエルフィンド領。現実のユトランド半島に相当する。
作品の都合上、半島の根っこは現実よりもかなり太い。
-
シルヴァン川
……半島と大陸を隔てる川。
ディネルースらはこの川を夜間に渡河して亡命した。
流域の大半はエルフィンド領だが一部はオルクセン領であり、その帰属が開戦理由に大きく影響する。- コミック版では「流域」の意味が十分に伝わらず、対岸の一部がオルクセン領となるかたちで描写されてしまった(つまり実は作画ミス)が、この方が読者に伝わりやすいということでそのまま通した。
- 荒海……星欧大陸北に広がる大海。
古代に隕石の落下で現実のスカンジナビア半島が吹っ飛び、何もない海となっている。
◇ロザリンドの会戦
作中年代より
120年前
、シルヴァン川流域のロザリンド渓谷で行われたオルクセンとエルフィンドの戦い。
飢饉に瀕したオルクセンがドワーフの国へ穀倉地帯を求めて攻め入ったことをエルフィンドが脅威と捉え、出兵したことに端を発する。
「オークの津波」と恐れられた密集陣形のオルクセン軍に対し、散兵戦術を駆使したエルフィンド軍が大勝を収めた。
オルクセンはこの戦いで、多数の兵や有力氏族の他、親征を行なっていた前王まで討ち取られるなど、文字通りの国家存亡の危機に陥った。
(なお、オーク種族の文明化・近代化は前王の代から進められており、決して前時代的な野蛮な愚王ではなかった。何なら作者がXにてピョートル大帝とフリードリヒ大王を足して2で割らないとまで言い切る程の英雄王ですらあった)
対してエルフィンドの方はと言うと、この戦役で轡を並べていたドワーフの国と作戦方針で仲違いし、会戦の趨勢が決まった後でドワーフの王を暗殺。
返す刀でドワーフの国を攻め滅ぼしてサクッと併合している。うーんこの……
若きグスタフも一兵卒として参戦しており、敗走中に天候を操る魔術で同胞の渇きと追撃を凌いだことから、後に新王に推挙されることとなる。
なお、この戦いでエルフィンド側を勝利に導いた指揮官の一人こそ、後の主役・ディネルースである。
◎余談
作者の酒樽蔵之介氏は物流業を本職としており、本作の発想元の一つに「いすゞのエルフ」vs「とんとんとんとんヒノノニトン」があったことを明かしている。
なお氏の職場ではいすゞ車ばかりで、しかもweb連載当時にエルフは使っていなかったと(webでの連載が終わった後に少し入ってきたとのこと)。この他にも車ネタが仕込まれているらしい。
漫画版の作画を担当する野上武志は、
はるかリセットを除いてミリタリー描写に定評のある漫画家。
萌えミリタリー雑誌「MC☆あくしず」での連載経験もあり、本作の硬派な軍事描写との相性の良さが指摘されている。
原作の緻密な軍事考証を、漫画ならではの迫力ある画面で表現している点が高く評価されている。
そんな野上氏は
書籍化される前のWEB連載時代の作品を見てハマり、まだ書籍化すら決まっていない頃に同人誌を制作し販売。
後に書籍化、コミック化が決定した際にコミック担当編集が「何かもう既に同人誌があるんだけど……
せや! このままこの人に漫画版やって貰おう!」とオファーをかけた事が判明している。
コミカライズ版は毎話必ず豪勢な食事シーンが差し込まれており、ファンの間では「オルクセン飯」として有名。SNSでは登場するメニューを逐一再現してみせる猛者も現れている。
その時のハッシュタグは「#オルクセン飯」を付けると作者がリポストしてくれる。
オルクセン飯のアップだけでなく、同人制作も大歓迎で、こちらは「#野生のオルクセン」の共通ハッシュタグが使われている。
ただしネタバレに配慮し「どこまで読んだ後なら楽しめるか(書籍版◯巻読了済みや、WEB版読了済み等)」というのを冒頭もしくはあらすじに記入し、その後行を開けてブラウザバックする余裕は設けるというローカルルールがある。
追記・修正は、適切な体調管理のもとお願いします。
- この作品項目まだだったか、乙 マインケーニヒが優秀すぎるきらいはあるけどいいキャラだよね -- 名無しさん (2026-06-27 18:44:41)
- コミカライズ版だけ追ってるけど、SNSで解説流れてきて「これに近い惨劇が現実にあったのかよ…」が度々あるのが悲しいね。戦争かつ復讐戦とはいえ敵味方双方で惨いことやってるのがなおさら。 -- 名無しさん (2026-06-27 18:50:49)
- ヴルスト(ソーセージ)がたくさん出てくる作品、きっとオルクセンのヴルスト屋さんは日夜フル稼働なのだ -- 名無しさん (2026-06-27 20:16:01)
- もちづきさんに摂取カロリーで敗れた模様 -- 名無しさん (2026-06-27 20:32:04)
- ↑3 想像よりもっと凄惨なことをやってのけるのが人間 極限の状況は聖人すら獣に変える -- 名無しさん (2026-06-27 20:50:21)
- ここまでガチガチに兵站を固めても侵攻戦だと追いつかねーよ!ってなってるのが厳しさを感じるというか。陥落させた都市の住民と捕虜にしたエルフ軍の食事と衛生も面倒見ないといけないし…という人道を保ちつつ戦争をすることの厳しさよ。それをエルフィンドに逆手にとられてるしね -- 名無しさん (2026-06-27 20:55:47)
- 食事の描写が一々丁寧で読むと腹の減る作品よね -- 名無しさん (2026-06-27 23:04:23)
- 個人というより組織の大局で話が動く印象なので、三国志演義ではなく正史三国志を笑顔で読める人向けという気がする -- 名無しさん (2026-06-27 23:33:32)
- 漫画版もそろそろエルフィンドの反撃が始まる頃だな。カスなだけじゃないというところを見せてくれる -- 名無しさん (2026-06-27 23:43:52)
- Twitterでオルクセンの事を呟くと作者が反応してくれてリアル我が王になる作品 -- 名無しさん (2026-06-27 23:55:35)
- 白エルフ連中が忍極の極道すぎる連中だけど、ある意味では黒エルフが米軍(ヤンキー)と -- 名無しさん (2026-06-28 06:54:57)
- ↑続き -- 名無しさん (2026-06-28 06:55:25)
- 手を組んだ極道に近いとも取れる -- 名無しさん (2026-06-28 06:56:56)
- いくつか明らかに間違っている部分とぼかしているからか不正確な部分があるな。イギリス相当の国はキャメロットで、アルビオンは幼女戦記におけるイギリス相当だろう。 -- 名無しさん (2026-06-28 12:46:20)
- こうしてみると、「ただ国家を壊すだけ」の作品がいかにラクかがよく分かる -- 名無しさん (2026-06-28 13:05:54)
- [ディネルース・アンダリエル]で検索すると第六猟兵って作品に同名の白エロフがいるみたいだけど、たまたま?共通の元ネタ有り? -- 名無しさん (2026-06-28 13:33:37)
- ↑それは多分名前をパクっただけ。オリキャラ活躍させられるのがPBWの醍醐味なんだから名前パクなんて損しかないと思うんだけどねえ……。 -- 名無しさん (2026-06-28 16:00:33)
- エルフィンドはまぁ滅びるべくして滅んだけど何とも哀れな国でもあるんだよね白エルフ含めて 碌でもない神の寵愛を受けたばっかりに… -- 名無しさん (2026-06-28 16:03:24)
- 外来種によって変えられた生態系のようにも思える 良くも悪くも異世界人が与える影響は大きい -- 名無しさん (2026-06-28 20:10:44)
- ↑3そゆことねぇ~。名前は同じだけど見た目、設定が真逆みたいなよのね。 -- 名無しさん (2026-06-28 20:32:13)
- これはたぶんどちらもトールキン系だから被ったんだな -- 名無しさん (2026-06-29 02:59:13)
- エルフィンドは500年前に400年チートした結果、そこで止まってしまい今は100年遅れ、みたいなところがある。実際のところはそこまで遅れてないし、特に軍はズタボロに見えて諸外国と比べるとキャッチアップしてる部分だし。5年10年の差が決定的になる近代戦に於いて50年チートしてるオルクセンのせいでボロボロだが… -- 名無しさん (2026-06-29 20:23:14)
- 実はエルフィンド陸軍は、同じ人数でよーいドンで戦闘したら世界2位である。ボコボコにされているのは、世界1位に奇襲決められたから。 -- 名無しさん (2026-06-29 21:16:01)
- 「軍とは…軍隊とは…ある日突然どこかへと魔法のように出現するものではない。」か。良い言葉だ。 -- 名無しさん (2026-06-30 03:53:56)
- 1食あたりのカロリー摂取量、コボルト兵士<<オークの兵士<<もちづき -- 名無しさん (2026-06-30 21:45:22)
- 飯テロのシーンだけ知ってたけどそんな内容だったのかこれ…パラドゲーみたいな歴史SLG好きなら楽しめそうだな -- 名無しさん (2026-06-30 22:04:06)
- 銀英伝のファンタジー版みたいだ・・・ -- 名無しさん (2026-06-30 22:19:42)
- 銀英伝で例えるなら、キャゼルヌや国防委員長の仕事内容に焦点を当てた作品とも(戦場も書くけど)。作者も銀英伝は把握済で、田中さんのところに本作書籍が届いたと聞いたときは驚き喜んでた。 -- 名無しさん (2026-07-01 08:24:18)
- コミックに秋津洲国が登場する日は来るだろうか -- 名無しさん (2026-07-01 08:51:00)
- 運営にキレられるレベルでエルフに悪行を唆した辺り、やはり転生者は悪 -- 名無しさん (2026-07-02 06:18:26)
- 1部のヴィラールにとっては『現実』ではなかったのかもしれない -- 名無しさん (2026-07-02 06:50:36)
- WEB版は実はSFなのが -- 名無しさん (2026-07-04 01:00:09)
- ゼーベックにワインをたかってるのは、グスタフではなくシュヴェーリンだな -- 名無しさん (2026-07-10 15:28:00)
- Kindleのセールでまとめ買いしてからドハマりしてしまった。登場人物がいちいち魅力的で食事シーンが幸せそうな顔が多いのもポイント高い -- 名無しさん (2026-07-11 19:45:32)
- 漫画の7巻の表紙が完全に飯テロで笑ってしまった。並べると落差凄いよね -- 名無しさん (2026-07-28 19:22:32)
最終更新:2026年08月23日 14:10