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アサガオ(植物)

登録日:2026/09/24 Thu 23:50:27
更新日:2026/09/25 Fri 07:11:35NEW!
所要時間:約 14 分で読めます




概要

アサガオとはヒルガオ科サツマイモ属の植物の一種である。
学名はIpomoea nil、英名はMorning glory。

日本には自生しておらず、奈良時代に薬草として渡来したとされている。
ネパールから中国にかけて自生していることから原産地はこの辺りと考えられていたが、近年のゲノム解析の結果、中南米~アフリカに自生しているアサガオとの遺伝的な関連が指摘されており「原産地である中南米からアフリカを経由してアジア大陸、最終的に日本へと伝わった」という説が有力視されるようになっている。

小学生の育てる植物として定番であり、幼少期に観察日記を描いたり苦労して家へ持ち帰ったりした記憶のある人も多いと思われる。
オーソドックスな品種は比較的丈夫で育てやすく、花や葉が大きくて観察もしやすいことから教育用としてうってつけな植物である。



(上)福岡県筑紫野市にてmakinomantaro撮影。(下)埼玉県所沢市にてmakinomantaro撮影。

形態

花

アサガオといえばラッパのような形の大きな花が最大の特徴である。
これは5枚の花弁が癒合した「合弁花*1」と呼ばれるものだが、後述の通り種類によっては癒合せずバラバラになっているものもある。
なお花を裏側から覗くと花弁に白いライン(曜とよばれる)が走っているのが分かるが、これが1枚の花弁に相当する。

花弁の色もメジャーな青や赤、紫、白に加え、珍しいものでは灰色、茶色など非常に多彩。
さらに色を濃くする、あるいは薄くするバリエーションも存在するためその総数は数え切れないほどである。

ちなみにアサガオの花の色素はpHによって変化することが知られている。
これは開花する時間になると色素をため込んでいる部分をアルカリ性に変化させることで色を変えるためである。
なので酸性雨が付着するとその部分だけ色が変わり、まだら模様になってしまうなどといったことが起こる。

またアサガオは「短日植物」と呼ばれるものであるため、花をつけるには約9時間以上の連続した暗い時間が必要。
そのため昼の時間が長い夏至以前の時期では成長するばかりで全く花を付けないので注意。
昼が短い時期であっても照明など強い人工の光が当たる場所に置いているとアサガオが昼と勘違いしてなかなか花を付けないといったこともある。
そのような場合に花を付けさせたい場合は暗所に一定時間放置する「短日処理」が必要となる。
逆に昼の時間が短くなったころに種を植えると蔓を伸ばさないまま花をつけて成長を止めてしまい*2、結果として花の数が減ってしまうといったことも起こる。
ある程度の数の花を付けさせたいならば先ほどとは逆に成長するまでライトなどで明るい時間を長く確保して花の形成を防ぎ、十分に成長した頃合いを見て暗い時間を伸ばすなどの工夫が必要。

本葉

アサガオの本葉は一般的に「三尖型」などと呼ばれる2か所にくびれがある形状をしている。
しかしこれも品種によって様々であり、近縁種であるサツマイモのようなハート型の葉をつけるものもある。
あるいは同じ株の中に三尖型とハート型が混在しているといった場合も。

このような形状の葉になった理由ははっきりと分かっていないが、考えられることとしては葉1枚あたりの製造コストを下げつつ葉の重なり合いを最小限に抑えて受ける日光の量を最大化するなどといったことが挙げられる。

なお、水が不足すると先端までしっかり張りを維持出来ずにシナシナになってしまう。
葉がしおれているのは水不足のサインなので早急に水をあげよう。

茎

アサガオの茎はものに巻き付くための蔓となっており、自力で植物体を支えることは出来ない。
そのため育てる際には蔓を巻き付かせる支柱が必ず必要となる。
植物に共通する習性として重力に逆らい上へ上へと伸びるため、支柱の上端まで昇りつめると蔓をゆっくりとグルグル回して巻き付くものを探す行動をとる。
この時に蔓が何かに当たると容赦なく巻き付いていくため、放置しているとそばにあったものがグルグル巻きにされていく。
特にアサガオの鉢同士を近くに置いていて互いに巻き付き合われると始末に負えなくなってしまうので、水やりなどの際には変なものに巻き付いていないか見張ることが大切。

また植物の特徴として先端の成長部が無事な間は側芽があまり伸びないが、何らかの理由で先端が失われると側芽が一気に成長し始める*3。
蔓をたくさん枝分かれさせたい場合は先端を敢えて切り取るのも良い。

ちなみに蔓は必ず反時計回りに巻いていくため、支柱に巻きなおしてやるときに方向を間違えると勝手にほどけてしまう。
蔓の側面には下向きに毛が生えており、蔓がずり落ちないようにしていると考えられる。

こちらも水が足りないと先端がしおれ、ブラブラと垂れ下がって枯れてしまう。
先端が枯れても側芽があるので死にはしないものの、葉のしおれより深刻な水不足状態なので水やりの頻度を見直した方が良いかもしれない。

子葉

アサガオの種子を植えた時に最初に出てくる2枚の葉。前述の本葉とは形が全く異なる。
種子内部で既に形が出来上がっており、本葉が形成されて機能し始めるまでの光合成を担う。
本葉が出てからは基本お役御免となるが、水が豊富にある環境だと結構大きく成長しても枯れずに残っていることも多い。

実はアサガオの系統によって形状が大きく異なるため、それらの鑑別のために非常に重要な要素でもある。
発芽直後に狙いの特徴を持っている株か否かを見分けられるのはアサガオの大きな長所。

種子

花が咲いて散った後、受粉が成功していれば結実して種子ができる。
一般的にアサガオの花は6つの胚珠を持つため最大6個の種子が作られる。
外側の皮が茶色に乾燥すると収穫期であり、軽く触るだけで簡単に種子がこぼれる。
放置しすぎると皮が自然に裂けて種子をばら撒くので要注意。

アサガオの種子は「硬実種子」と呼ばれる非常に硬い皮を持つものであり、防御力が高い代わりに水を透過しにくいためそのまま撒いても意外と発芽してくれない。
そのため水に長時間浸けておいてから撒くといった方法が良くとられる。
あるいはカッターナイフなどで一部に切れ目を入れてから撒くとより確実だが*4、小さい種子を1つ1つ切るのはなかなか大変な上に怪我をしやすいので仮にやる場合は細心の注意を払うこと。
種苗会社や研究機関など大量の種子を撒かなければならない場合は、皮だけを上手く貫通するように出力を調整したレーザービームを照射して焼き切るそうな。

観葉植物として

アサガオは前述のように元は薬草として渡来したが、次第に観賞用としての栽培がメインとなっていった。
当初のバリエーションは花の色くらいで然程個体差は無かったとされているが、江戸時代に「絞り咲き」と呼ばれる花弁の一部のみ色が変わっている株が発見される。
この株では休眠状態だったはずのトランスポゾン*5が何らかの理由で活性化したと考えられており、その珍しさから都市へと伝わった。

そして一度活性化したトランスポゾンはあちこちへ転移して様々な遺伝子の変異を引き起こし、多種多様なアサガオの変異体を生み出していった。
特に江戸~明治時代にかけて起こったアサガオ栽培ブームにより、全国の栽培家によって様々な変異株が見いだされ、系統として確立されていった。
当時刊行された「朝顔三十六花撰」などの文献には変化に富んだ多数のアサガオのイラストが収録されている。
現在の日本のアサガオは大まかにトランスポゾンが活性化していない「野生型系統」と活性化している「変異型系統」に分かれているが、変異型系統アサガオのほぼ全てはこの江戸時代に見つかった絞り咲きアサガオを先祖に持つと考えられている。

日本由来の観賞用アサガオ系統は主に「大輪咲きアサガオ」と「変化アサガオ」に分けられる。

大輪咲きアサガオ

読んで字のごとく大きな花をつけるアサガオ。
花を大きくする効果がある「蜻蛉」や「洲浜」などの変異が入っており、「蝉葉」というややずんぐりむっくりした形状の葉をつけるのが特徴。
変異の影響により花弁の数が増えているものが多いが、それ以外は比較的オーソドックスな形態を持つ。

上手く育てられれば直径20cmにも達する極めて大きく美しい花を咲かせることが出来る。
より素晴らしい花を咲かせるために株の植え方や世話の仕方が研究されている。

変化アサガオ

まずは「変化アサガオ」というワードで画像検索をしてみて頂きたい。
とてもアサガオとは思えないような奇怪な花々がヒットしたのではないだろうか?
こういった複雑怪奇な形態のアサガオを観賞するのが変化アサガオである。

変化アサガオは種子が作られる「正木」と種子が出来ない「出物」に分けられる。


また変化アサガオは蒸散に異常があるためか水をやり過ぎると弱ってしまったり、蔓がいびつに変形するため支柱に上手く巻き付けなかったりなど世話が難しいものも少なくない。

獅子咲牡丹

花弁や葉の裏側のアイデンティティを決定する遺伝子の変異である「獅子」をベースとして、それを強める種々の修飾変異を多数持った系統。
獅子変異単体では花弁の数が増えて切れ込みが入るのみでさして目ぼしい見た目とはならないが、修飾変異が加わることで花弁がチューブ状に変形し風鈴のような形となった非常に複雑な形態に変化する。その外見はさながら花火のよう。
幸いなことに修飾変異はホモ接合でも稔性*8に影響を及ぼさないため、獅子変異のみをヘテロ接合として維持を行う。

車咲牡丹

花弁と葉の横幅が狭くなる変異である「立田」に花の筒部分が途中で折れて段々になる「台咲」が合わさった系統。
立田変異によって切れ込みが入った花弁が風車のように見えるためこの名が付いたと言われている。
さらに牡丹変異が入ると、良個体では花の中央から獅子咲牡丹の花弁のような形状のものが飛び出した奇怪な形状になることがあり、観賞価値が非常に高い。

采咲牡丹

花弁と葉の幅が著しく細くなる変異「柳」にそれを強める「南天」や「笹」などが合わさった変異。
葉が著しく細くなり密集して付くことで毛むくじゃらの塊のような外見となり、花も細い花弁が放射状に広がった繊細なものとなる。
「柳+南天」は「針葉」、「柳+笹」は「糸柳」と呼ばれる。
南天および笹はホモ接合の場合は稔性が下がるものの種子を得ることが出来るが、柳ホモは確定で不稔となるため柳ヘテロで維持される。

しかしこの系統は短日処理後も花の形成に非常に時間を要することが多く、それを補うために花芽形成が早まる黄葉変異を入れることもある。
その場合には南天や笹の稔性が著しく低下するためにヘテロ維持が必要になることもあり、花の付きやすさか系統維持のしやすさでトレードオフすることとなる。

近縁種

ヨルガオ


埼玉県所沢市にてmakinomantaro撮影。
学名:Ipomoea alba。日本には自生しておらず熱帯北アメリカ原産。
その名の通り、夜に白い花を咲かせる。
視界の効かない夜間に虫を呼ぶために花には芳香があり、逆にカラフルな色彩は無意味なので白い花しか存在しない。
ユウガオと呼ばれることもあるが、ウリ科の別種と紛らわしいため区別には注意を要する。
なおヒルガオはサツマイモ属ではなくヒルガオ属であるため、アサガオおよびヨルガオとはやや離れた類縁関係にある。

ハリアサガオ


埼玉県所沢市にてmakinomantaro撮影。
学名:Ipomoea muricatum。
熱帯アメリカが原産のつる性一年草である。わが国には江戸時代初期に渡来し、現在は「赤花夕顔」という商品名で苗や鉢植えが出回るほか、こぼれ種で簡単に繁殖するため、路地裏などに野生することもある。
名前の通り、茎や葉柄には太い針状のトゲがあるが、先端が丸く、且つ柔らかいため触っても痛くない。夏から秋にかけて、葉腋から出る花柄の先に直径5㎝ほどの薄紫色の花を咲かせる。花はじょうご型で周囲は薄い赤紫色になり中心部は濃い紫色、夜から翌日の早朝にかけて花を咲かせる。花の後、蕚片の果柄の部分が先の方に向かって円錐形となり、果実が下向きに実り、独特の見た目になる。

ヨウサイ/クウシンサイ


東京薬科大学薬用植物園にてmakinomantaro撮影。
学名:Ipomoea aquatica。熱帯アジア原産とされるが広い地域で栽培される。
水辺に生え、中空の茎を水面に浮かべて繁茂していくが畑での栽培も可能。
大量の水を吸収するため水質浄化に利用される地域もある。
主に茎や葉を炒め物などで食し、カロテンやミネラルが豊富。
なおアサガオは薬草として渡来した歴史からも分かる通り、全体に猛烈な下痢を引き起こす毒成分を含むため絶対に食べてはならない。

サツマイモ



(上)板橋区立赤塚植物園にてmakinomantaro撮影(下)自宅にてmakinomantaro撮影
学名:Ipomoea batatas。広い地域で栽培される極めて重要な作物。
ちなみにサツマイモは日本ではほとんど開花しないためそのままでは品種改良が難しいのだが、
アサガオに接ぎ木して花成ホルモンを供給させることで安定して開花させ品種改良に利用する手法が存在する。
詳細は該当項目を参照のこと。

ノアサガオ


埼玉県所沢市にてmakinomantaro撮影。
学名:Ipomoea indica。
亜熱帯から熱帯でよく見られ、日本でも沖縄など暖かい地域で自生する他に観葉植物としても利用される。極めて頑健で蔓も強靭。
見た目はアサガオそっくりだが、自家不和合性を持っており自家受粉することが出来ないため結実することは非常に少ない。
アサガオは一年草であるために取り敢えず種子を作ることを優先し自家受粉するが、ノアサガオは多年草であるために種子の生産効率を大きく落としてでも他花受粉で遺伝的多様性を増やす戦略をとっているものと考えられる。

アメリカアサガオ



(上)マルバアサガオ。東京都千代田区四谷にてmakinomantaro撮影。(下)マルバアメリカアサガオ。埼玉県所沢市にてmakinomantaro撮影。
学名:Ipomoea hederacea。
原産地はその名の通りアメリカ…だが日本に帰化しているため割といろいろなところで見られる。
空き地などでアサガオっぽい植物を見かけたら恐らくこれ。
日本のアサガオと非常によく似ているが、花のガクが分厚くて反り返っていることや葉のくびれ部分が深く切れ込んでいることなどで区別出来る。
ノアサガオと違って簡単に結実するため着々と生息範囲を広げている。
変種に、葉が深く裂けず、ほぼ丸い形になるマルバアメリカアサガオ(Ipomoea hederacea var. integriuscula)が知られているが、独立した種とみなすこともある。

ルコウソウ


東京都薬用植物園にてmakinomantaro撮影。
学名:Ipomoea quamoclit。原産地はメキシコ。
本来は多年草であるが、日本では冬を越せないので一年草として扱われる。
深紅の小さな星型の花やレース状に細かく分岐した葉など割と似たような姿が多いサツマイモ属の中でも変わり種の見た目を持つ。
アサガオとはまた違った魅力のある非常に美しい植物であり、観葉植物として利用される。

マルバルコウ


埼玉県所沢市にてmakinomantaro撮影。
学名:Ipomoea coccinea。熱帯アメリカが原産。
ルコウソウの仲間だが、ルコウソウの葉が糸状に細かく裂けるのに対し、こちらはその名の通り丸みを帯びた葉を持つ。
小型の鮮やかな赤みの強いオレンジ色の花を多数咲かせるため観賞用にも栽培されるが、日本では各地に帰化している。
アサガオよりも花は小さいものの、同じサツマイモ属の植物である。

ハゴロモルコウ。埼玉県所沢市にてmakinomantaro撮影。
また、ルコウソウとの交雑によって「ハゴロモルコウ」という呼ばれる園芸植物が作出されている。これは学名がIpomoea × multifida とされる交雑植物で、両親の特徴を併せ持つ。

ソライロアサガオ


東京都薬用植物園にてmakinomantaro撮影。
学名:Ipomoea tricolor。
アメリカアサガオと同じくアメリカ原産だが、葉にはくびれが無くサツマイモに似たハート型。
その名の通り美しい青い花を咲かせるため観葉植物として植えられるが、無駄に頑丈なので繫茂しすぎて他の領域を侵略することもしばしば。
ちなみに種子には幻覚成分が含まれていることが知られており、原産地である南米の原住民が儀式に利用していたとされる。

コダチアサガオ


小石川植物園にてmakinomantaro撮影。
学名:Ipomoea carnea subsp. fistulosa。ブラジル原産の常緑低木。
「アサガオ」と名前に付いているが、普通のアサガオのような一年草のつる植物ではなく、木質化して高さ数mにもなる。淡紅色の漏斗状の花を咲かせる。花の中心部は赤紫色になり、若干ハリアサガオのそれに似ている。
日本では沖縄などの暖地を除いて屋外での栽培は難しいが、植物園などでは温室で見ることができる。


追記・修正はアサガオの観察日記を適当に誤魔化した経験がある人にお願いします。

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最終更新:2026年09月25日 07:11

*1 小中学校教育などで「合弁花類」「離弁花類」と分類のように呼称している例が見られるが、これはあくまでも花の形のみを指す用語であって分類学的には特に意味のない区別である。近い類縁関係であっても合弁花と離弁花が混在している植物は珍しくない

*2 アサガオのように1回きりの開花・結実で生涯を終える植物の場合、花を付け始めると成長が止まることが多い

*3 頂芽優勢と呼ばれる

*4 芽切りと呼ばれる

*5 生物本体のDNA複製などとは独立して自由に移動することが出来るDNA配列。挿入される場所によって遺伝子の破壊などを引き起こす場合がある

*6 AA、aaのように両方の遺伝子が同じ型になっているものをホモ接合、Aaのように異なる型の場合はヘテロ接合という

*7 子葉の段階で両方とも持っているかどうか区別できるならば試し撒きの数を増やすだけで済むが、ある程度成長しなければ分からない場合は非常に時間がかかる

*8 種子をつける能力