カツオノエボシ

登録日:2010/09/19 Sun 08:31:58
更新日:2023/02/11 Sat 14:40:01
所要時間:約 4 分で読めます




大変危険な毒性を持っているので、見かけても絶対に触れないように!


概要


カツオノエボシは、ヒドロ虫綱クダクラゲ目カツオノエボシ科に属する刺胞動物。
漢字表記は鰹之烏帽子。
英名はPortuguese Man O' War。*1

電気クラゲの異名を持ち毒クラゲの代表格として知られている。
全長10cm程の青く透き通った浮き袋に、非常に長い触手を持つ。この触手は平均10m程だが、長ければ50mにも達する。
その姿形からブルー・バブル、ブルー・ボトルとも呼ばれる。

生物学的に


ヒドロ虫の仲間であり一般にジェリーフィッシュと呼ばれているミズクラゲ・エチゼンクラゲ等とは種類が異なる。
英名にクラゲを示す jelly fish と言う単語が入っていないのはこの為。
とはいえ、分類的にクラゲは刺胞動物門*2の中の4つの綱*3に属する生物の総称なので、クラゲには間違いない。

厳密に言えば一個体のクラゲではなく、個体に見えるのは多数のヒドロ虫が集まって構成された群体である。
といっても海中の無数のヒドロ虫が集まっているというわけではなく、1つの受精卵が成長・分化したもの。
つまり『カツオノエボシ』と言う名はヒドロ虫の群体を示す群生名と言ってもいい。
TYPE-MOONのファンの方ならば、某教授を思い出す事だろう。

生態


成長・分化についてだが、前提として外洋に生息し、毒性、脆いという特徴から捕獲が難しいカツオノエボシの成長過程は詳しく分かっていない。

まず受精卵から生まれたプラヌラと呼ばれる幼体は、海中を漂い気胞体と原始的な摂食器官を発達させる。
成長につれ、パルポンと呼ばれる触手を司る器官を分化・発達させ、その過程の中で海面に浮上する。
その後、生殖器官や触手部分を生成し、知られている姿になっていく。*4


餌は主に魚やカニ等の甲殻類、動物プランクトン。
これらを触手の毒針で仕留めてから捕食する。

天敵としてはウミガメやマンボウ、一部のウミウシやタコ、巻貝。
後述の強力な毒性の為、天敵は少ない。

普段は浮き袋内に溜めた気体で海面を漂っているが、浮き袋は必要に応じて縮ませて沈降する事も可能。
また浮き袋には船の帆のような役割をする膜が備わっており、これに風を受ける事で移動を行う。
沖合にいる事が多く、遊泳力はほとんどないが、風に乗って海岸近くまで来ることが度々あり、この時に刺傷事故が起きやすい。

危険性


長い触手には強烈な毒を持ち、刺されると電流が走ったかのような激しい痛みに襲われる。これが電気クラゲと呼ばれる所以。
刺された痕はミミズ張れのようになり、痛みはジワジワと長時間続く。

毒自体で死に至るのは稀だが、免疫力が低い幼児や老人が刺されると死亡する危険もある。
更に免疫力が充分な成人でも、刺されたショックでパニックに陥り、そのまま溺れてドザえもんと言うパターンもあるので、まず落ち着いて岸まで戻る事に専念しよう。
2度刺されるとアナフィラキシーショックを引き起こす場合もある。

また、触手の毒針は外的接触による刺激で発射される為、海岸に打ち上げられたカツオノエボシにも触れない方がいい。
物理的な刺激に反応しているだけなので、本体の生死に関わらず毒針は発射されるからである。

そもそも近づかないのが一番の対抗策だが、唯一の目印である浮き袋は透明でやや青み掛かっている為上手く海の色に溶け込んでおり、遠距離から発見する事は難しい。
海面下に伸びる触手も同じような物であり、前述の通り最低でも半径10m以内が危険域なので、刺される前の発見はやはり難しい。


半径10mを索敵する触手

弐撃決殺の毒針

死後機雷化

ステルス迷彩持ち

正に海のギャング。
夏場の旅行先(山海)では、縞々模様のバーサーカーと並んで注意しなければならない危険な生物である。
太平洋側の海水浴場では、カツオノエボシに関する注意を掲載している所もあるのでよくチェックしておこう。

刺された場合


通常のクラゲ刺傷には酢や真水が有効な場合*5もあるが、カツオノエボシは同じ処置をすると却って症状を悪化させてしまうので注意。
海水で絡みついた触手・毒針を除去し、冷水や氷で冷やす、または45℃程度の熱湯に浸けて消毒した後、医療機関の診察を受けるのが安全且つ確実な治療法である。


と言われているが、定かではない。


2017年のハワイとアイルランドの学者による研究は酢が有効的な治療法である可能性を指摘している*6
その研究では
  • 多くの酢酸溶液に有意な効果が認められたが、これは一般的に禁忌とされる対処法に反する。*7
  • 海水で洗い流すことも受傷範囲を広げる可能性があるとして推奨されていない。
  • 患部を冷やすことも推奨されておらず、冷やした場合は温めた場合に比べて100倍以上悪化する。

等、一般に推奨されている応急処置と真逆な結果も見られる。


しかし、カツオノエボシに刺されたからといって、やはり酢を傷口にかけることはおすすめしない。


前述のとおり、カツオノエボシの毒は研究が進んでおらず、はっきりとしたことは分かっていない。
仮に酢がカツオノエボシの傷に効果的だとしても、他のクラゲの傷には逆効果な可能性もあるし、地域種・亜種に効果があるかも不明。

そもそも、どれだけの人が刺したクラゲの種類を即座にそして正確に把握できるだろうか?


結局のところ、毒性も詳しく解明されていない以上、対処法としては対症療法しかないのだ。
各自治体が勧める応急処置法も、患部を温めるべきか冷やすべきか分かれているくらいよく分かっていない。*8
一般的に求められる応急処置としては、決して素手で触れずに、強い刺激を加えずにタオル等を用いて触手を除去することのみである。
その後医療機関で専門家に治療を受けるべきで、素人が半端な知識で行ってはならないのだ。

クラゲが怖いという人は、Tシャツを着るなど素肌をあまり出さない工夫をしてみてはどうだろうか?



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最終更新:2023年02月11日 14:40

*1 強力な軍艦を意味するMan-of-warと姿が帆を張ったキャラベル船というポルトガルの軍艦に似ていることに掛けられたもの

*2 分類学上の階級の1つで一部を抜き出すと門-綱-目-科になる

*3 ヒドロ虫綱、十文字クラゲ綱、箱虫綱、鉢虫綱で総じて水母亜門とも

*4 https://www.nature.com/articles/s41598-019-51842-1#Fig5

*5 ハブクラゲ等

*6 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5450697/

*7 ちなみにコーラ等他の酸性溶液では効果を認められていない

*8 政府機関の進める応急処置もこんな感じであるhttp://www.nilim.go.jp/lab/ddg/seibutsuhigai/family_31.html