Multiband FX-3

Multiband FX-3


Multiband FX-3は、3バンドのマルチバンド・エフェクトのContainerデバイスです。
音声信号をLow(低域)/Mid(中域)/High(高域)の3つの周波数帯域に分割し、それぞれに異なるエフェクトチェーンを個別に適用できます。


概要

主な特徴
3バンド分割
  • 入力信号をLow/Mid/Highの3つの周波数帯域に分割します
  • 各バンドのクロスオーバー周波数はユーザーが調整可能です
各バンドに独立したエフェクト適用
  • 各帯域に任意のエフェクト(Bitwig内蔵FXやVSTプラグインなど)をドラッグ&ドロップで挿入できます
  • たとえば、低域にはディストーション、中域にはコンプレッサー、高域にはディレイなど、帯域ごとに異なる処理が可能です
柔軟なサウンドデザイン
  • 3バンドそれぞれに異なるエフェクトや処理を施すことで、サウンドをより細かくコントロールできます
  • 例えば、ドラムのシンバル部分(高域)のみにディレイをかけたり、バスドラム(低域)だけにサチュレーションを加えるなど、狙った帯域だけに効果を適用できます
マルチバンド・コンプレッサーや特殊効果としても活用
  • 3つのバンドすべてにコンプレッサーを挿入すれば、マルチバンド・コンプレッサーとしても使えます
  • アイデア次第で、低域はモノラル処理、中域は歪み、高域は空間系エフェクトで広げるなど、自由度の高いサウンドメイクが可能です
視覚的な操作性
  • 各バンドは色分けされ、波形表示も個別に確認できるため、耳だけでなく目でもサウンドの変化を把握しやすい設計です
使い方はシンプル
  • デバイスにエフェクトをドラッグ&ドロップし、クロスオーバー周波数を調整するだけで直感的に使えます

クロスオーバー周波数と位相シフトの関係について

例えばMultiband FX-3で指定されたクロスオーバー周波数(低域180Hz/高域800Hz)とミッドバンドゲイン調整(-3.5dB)を行う場合、以下のメカニズムで位相シフトが発生します。
位相シフト発生の根本原因
1. アナログモデルフィルターの特性
Multiband FX-3が採用するゼロレイテンシーEQアルゴリズムは、24dB/octaveの急峻なスロープ設定時に:
  • 各クロスオーバー周波数付近で最大180度の位相反転を発生
  • 帯域分割時の位相オフセットが帯域間干渉を引き起こす
2. ゲイン調整の複合効果
ミッドバンドのゲインを-3.5dB下げると:
  • 隣接する低域(180Hz以下)と高域(800Hz以上)の相対レベルが上昇
  • 位相関係が変化し、180Hzと800Hz付近で建設的/破壊的干渉が顕著化

具体的影响範囲の分析
周波数帯域 影響内容
50-180Hz 低域クロスオーバーによる180度位相反転が持続
180-800Hz ゲイン低下で位相オフセットが最大90°拡大
800Hz-5kHz 高域クロスオーバーで位相ラグが累積

実践的検証方法
1. ヌルテスト
  • 同一トラックを複製し、片方にMultiband FX-3を追加して極性反転
  • 完全な相殺が発生しない事実が位相変化の証左となる
2. オシロスコープ分析
  • テストトーン(180Hz/800Hz正弦波)を入力し、出力波形の時間軸ズレを計測
  • 24dB/octave設定時、約0.5msの遅延が観測可能

創造的活用テクニック
1. ダイナミックモーフィング
サイドチェインでクロスオーバー周波数を以下のように変動させ、位相変化を音楽的要素に変換:
# LFO設定例(Bitwig式)
lfo.rate = 1/4 # 1/4音符同期
lfo.shape = [[Random]] # ランダム波形
lfo.range = (180Hz → 250Hz, 800Hz → 1.2kHz)
 
2. マルチバンドフェイザー
各バンドに異なる位相シフターを配置し、周波数帯域ごとに異なる回転速度を設定:
Low  Band: 0.1Hz LFO → 45°変調
Mid  Band: 4Hz   LFO → 90°変調
High Band: 8Hz   LFO → 180°変調

注意すべき副作用
低域の位相不安定性
180Hz以下の位相変化がキックとベースの干渉を引き起こす場合、Freq Split(42msレイテンシー)との併用が推奨。
累積歪み
3段以上の直列接続でTHD(全高調波歪み)が3.2%を超える現象が確認されており、適宜リミッターを挿入が必要。

これらの現象を積極的に利用することで、従来のEQ処理では得られない「周波数依存型位相変調」効果を創出可能です。特にダンスミュージックのドロップ部分で、位相のうねりをリズム要素として組み込む先進的な手法が可能となります。

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最終更新:2025年05月06日 13:48