ピアノロールの基本的な使い方

ピアノロールの基本的な使い方

Bitwig Studioにおいては、MIDIの演奏データはノートクリップとして扱われ、ノートクリップはノートイベントで編集します。
このノートイベントの編集を行うのが従来のDAWにおけるピアノロールに該当します。


ノートイベントの編集画面の表示方法

詳細編集パネルへの表示方法 (Arrangeモード)
Bitwigではピアノロールにあたるノートイベントの編集画面を「詳細編集パネル」と呼びます。

この画面を表示するには以下の方法が用意されています。
  • ノートクリップをクリックする (パネルが非表示の場合はダブルクリック)
  • 「詳細編集パネル」アイコンをクリックする
  • キーボードの "E" を押す

「詳細編集パネル」アイコンとは、以下のものです。

そして "Arrange" モードの場合、このウィンドウはデバイスと共有されます。
ピアノロールとデバイスパネルは頻繁に切り替えることになるので、
ショートカットキーである "E" キー (ピアノロール表示) と デバイス表示である "D" キーを覚えておくと便利です。
Editモードでの編集
詳細編集パネルでの編集は、ベースやパーカッションなどちょっとした確認や調整であれば問題ないですが、「ウィンドウが小さい」「デバイスを同時に表示できない」ということからメロディの打ち込みには不便な場合があります。
その場合は "EDIT" をクリックして Editモードにします。

するとピアノロール (正確にはクリップの編集画面) が広くなり、デバイスパネルと同時に編集ができるのでフレーズと音の調整がやりやすくなります。

"Arrange" モードと "Edit" モードは「SHIFT+TAB」キーで切り替えができるので、覚えておくと便利です。
エディターモードの切り替え
詳細編集パネル(ピアノロール)の左上には「ピアノロールエディター」アイコンと「ドラムエディター」アイコンがあります。

「ピアノロールエディター」モードでは鍵盤が表示されます。

「ドラムエディター」モードにすると、鍵盤が消えて「ノートが存在しない音階」が非表示となります。

ドラムエディターモードは、ドラムの入力やベースなど、あまり多くの音階を使わない場合に便利です。
エディターモード切り替えのショートカットキーは「F」キーです

ノートの編集

ノートの入力ツール
ノートの入力ツールはシークバーの左隣から選択できます。

5つの入力ツールが用意されています。
画像 ツール名 数字キー 概要 ノートの選択 ノートの配置 配置 (長さ指定) 連続配置 ノートの削除 ノートの削除 (連続) ノートの切断
ポインター 1 操作全般、
ノートの選択
左ドラッグ 左ダブル
クリック
- - 左ダブル
クリック
- -
時間選択 2 区間の選択 左ドラッグ - - - - - -
ペン 3 ノートの編集 - 左クリック 左ドラッグ [ALT+左ドラッグ] 左ダブル
クリック。
右クリック
右ドラッグ -
消しゴム 4 ノートの削除 - - - - 左クリック 左ドラッグ -
ナイフ 5 ノートの切断 左ドラッグ - - - - ノートを左クリック
推奨する基本方針
  • 基本的には「ペン」を使って、部分的に「ポインター」「ナイフ」を使います
    • あまりノートを配置しないのであれば「ポインター」基準で、部分的に「ペン」「ナイフ」を使っても良いです
  • 「時間選択」「消しゴム」基本的に他のツールで代用できます
    • 例えば 区間選択は「ポインターで何もないところをドラッグ」、消しゴムは「ペンツールで右ドラッグ」といった操作です
ツールの持ち替えは「数字キー長押し」で一時的な切り替えが可能
  • 例えば「ペン」から「ナイフ」を一時的に使いたい場合、「5キー」長押しでナイフに持ち替えて左クリックで切断し、その後「5キー」を離すと「ペン」に戻ります

ノート編集に関するショートカットキー
カスタマイズ可能ですが、初期設定のショートカットキーをまとめます。
[CTRL+Z]
  • 取り消し
[CTRL+Y]
  • やり直し
[CTRL+X]
  • カット
[CTRL+C]
  • コピー
[CTRL+V]
  • 貼り付け
ALT+ノートを左ドラッグ (ポインターツール)
  • 選択したノートをドロップした位置に複製
SHIFT+ノートを左ドラッグ (ポインターツール)
  • グリッドスナップを無視してノートを移動・配置
[CTRL+A]
  • すべてのノートを選択
[CTRL+D]
  • 選択したノートを、選択した範囲 (ドラッグ範囲) の後ろに複製
[CTRL+ALT+SHIFT+L]
  • レガート ※あらかじめ [CTRL+A] などでノートを選択する必要があります
なぜかかなり押しにくいキーとなっているので、「Wキー」(クオンタイズの "Q" の隣) などに割り当てておくと良いです
, (カンマ)
  • Beatグリッドを細かくする
. (ピリオド)
  • Beatグリッドを大きくする
S
  • グリッド吸着の有効・無効を切り替え
Q
  • クォンタイズ (簡易) ※あらかじめ [CTRL+A] などでノートを選択する必要があります
[ALT+Q]
  • 詳細なクオンタイズ ※あらかじめ [CTRL+A] などでノートを選択する必要があります

3連符の入力
以下のような3連符を打ち込むには右下のGRIDオプションをクリック。

グリッドの細分化を「straight」から「triole」に変更、グリッドの細分化を必要に応じて変更します(画像では "1/8")。
ノートエクスプレッションの編集について
ピアノロールの左下には「ノートエクスプレッション」を編集するアイコンがあります。

これをクリックするとノートエクスプレッション編集パネルが表示されます。

6つのパラメータの説明は以下のとおりです。
パラメータ名 説明 初期値
Velocity (ベロシティ) 音の強さ 78.7%
Chance (チャンス) 音を再生する確率 100% (常に再生)
Timbre (ティンバー) デバイスが自由に割り当てる
モジュレーションの値
0%
Pressure (プレッシャー) 0%
Gain (ゲイン) ゲインレベルの変化 0 dB
Pan (パン) ステレオ定位 0%
これらのパラメータを編集する場合は「ペン」ツールに持ち替えると、パラメータをまとめて編集が簡単にできて便利です。

もし特定のノートのエクスプレッションパラメータだけ編集したい場合は、編集したいノートを選択状態にすると、選択状態のノートのみ編集できるようになります。

これはメロディ部分だけ編集したりするのに便利です。
マイクロピッチエクスプレッション編集について
Bitwigはノートごとにピッチを変更可能な「マイクロピッチエクスプレッション」の編集が可能です。
これを行うには、ピアノロールの左下にある「音叉アイコン」をクリック。

各ノートの中心に黒い線が表示され、この線を動かすことでピッチを変更可能です。

手順としては黒い線をクリックすると「黒い丸 (制御点)」が追加されます。
これをドラッグしてピッチを変更します。

なお、他のカーブと同様に [ALT+ドラッグ] 操作で曲線にできます。

ノートごとにピッチが変えられるので、以下のようなピッチ変化をつけることもできます。
注意点:マイクロピッチエクスプレッション編集がデフォルトで使用可能なのは「標準デバイス」「CLAP対応プラグイン」のみ
「マイクロピッチエクスプレッション編集」がデフォルトで有効なのはFM-4Polymerなどの標準デバイス、またはCLAP対応プラグインのみです。
外部プラグイン、例えば "Serum" や "Vital" などでは初期状態は無効です。
MPEは対応しているプラグインのみ使用可能です。
例えば "Analog Lab V" や "Sylenth1" などは MPEに対応していません。
これを外部プラグインでも仕えるようにするには、外部プラグインを選択してインスペクタから "MPE" を有効化します。

Serumであれば、「MENU」から「MPE Enabled」を選ぶと MPEを有効化できます。

外部プラグインでMPEを有効化する設定項目の場所
なお、MPEに対応していないプラグインでピッチベンドをするにはオートメーションでピッチを変化させます。
ノートの移動
ノートを移動するときは、基本的に「ポインターツール」でノートを選択し、ドラッグ操作で移動します。

移動に関しては、カーソルキーでの移動も可能です。
左右キーで再生位置を移動したり、上下キーで音程を移動できます。

オクターブ移動したい場合には [SHIFT+上下キー] で移動できます。
ノートの比率を保ったまま長さを変える
ノートを選択して、選択範囲の外枠の線を [ALT+左ドラッグ] すると、音の長さの比率を保ったままスケーリングできます。

範囲選択した際、外側に白い線があるので、そこにマウスを移動させて [ALT] を押しながらドラッグするのがコツです。

ズームとスクロール

「パン&ズーム」モード:ズームとスクロールのショートカットキー
すべての画面に共通する操作ですが、詳細編集パネルでは以下のショートカットキーでズームやスクロールができます。
機能 ショートカットキー 詳細
選択範囲ズーム [Zキー] 選択範囲が全体に収まるようにズーム
全体ズーム [CTRL+0 (ゼロ)] ノート全体が画面に収まるようにズーム
左右ズーム [ホイールクリック長押し]+[上下ドラッグ] 上にドラッグするとズームイン。下にドラッグでズームアウト。
ただし、ズームアウトは一定の範囲でストップし、
さらに下方向に大きくドラッグすると一気に縮む挙動となっています
上下ズーム [CTRL]+[ホイールを回す] (※1)
縦スクロール ホイールを回す
横スクロール [SHIFT]+[ホイールを回す 左右のスクロール。[ALT] + [ホイールを回す] でも可能
[ホイールクリック長押し]+[左右ドラッグ] 左右のスクロール。
上下に動かすと左右ズームになるので注意
  • (※1) macOSでのみ確認。macOSの[CTRL]に当たるものが Windows版に存在するかどうかは未確認
  • 他にもテンキー操作や「+」や「-」を使ったショートカットキーが用意されています
  • 詳しくは「FILE > 設定」から「ショートカットキー」から "ズーム" で検索
  • ズームであれば、上記以外にもショートカットキーはカスタマイズできるようになっているので、好みの設定に置き換えるのがおすすめです
  • ただしスクロールにはショートカットキーを設定できないようです…

また詳細編集パネルのスクロールとズームに関しては、ピアノ鍵盤の左側のこの部分のドラッグ操作でも行えます。(マウスカーソルが🔍️[虫眼鏡]アイコンとなります)

やや玄人向けな操作ですが、上下ドラッグで「上下スクロール」、左右ドラッグで「垂直方向のズーム」という操作です。

それと同様に小節数が表示されているシークバー付近でも左右方向のスクロールとズームができます。(ここでもマウスカーソルが🔍️[虫眼鏡]アイコンとなります)

ここでは左右ドラッグで「左右スクロール」、上下ドラッグで「水平方向のズーム」という操作で、ちょうど「ホイールボタン長押し+ドラッグ」と同様の動きとなります。
さらに下部にあるスクロールバーでも「左右スクロール」と「水平方向のズーム」操作ができます。
【推奨】「パン」モード
マウス操作を改善する方法として「パン」モードへの変更を推奨します。
「設定 > ユーザーインターフェース > ミドルボタンナビゲーション」から「パン」を選択

このモードに変更する理由として、デフォルト設定の「パン&ズーム」モードは、ホイールボタン長押し時に「パンとズーム」が同時に行われるため誤動作が発生しやすいからです。
この設定にすると、以下のように操作方法が変化します。
機能 ショートカットキー 詳細
スクロール (パン) ホイールボタン長押し + マウス移動 上下左右のスクロール
左右ズーム ホイール回転
上下ズーム ALT+ホイール回転
「パン」モードは、スクロール(パン)とズームの操作が分離されるので、使い方次第で操作性がかなり向上します。

複数のクリップイベントを表示する方法

他のパートを確認しながらノートを入力する場合には、複数のクリップイベントを表示して編集すると、他の音に合わやすくなります。

手順としては、まず表示したいクリップをまとめて選んでおきます。

次に詳細編集パネルの左下にある「レイヤー編集モード」アイコンをクリックします。

レイヤー設定が表示されるので「TRACK」「トラック」を選びます。

左側は「CLIP」を選んでも良いですが、各クリップの表示・非表示を「ピン留め」で切り替えられるというメリットがあります。

そしてピン留めとカギの設定をします。

ピン留めをするとクリップが表示され、カギをロックするとそのクリップは編集できなくなります。

もとの編集モードに戻すには「レイヤー編集」アイコンをクリックして、レイヤー編集モードを解除します。

その他Tips

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最終更新:2025年07月06日 14:52