「・・・あれは、つわりなのか。そうなのか」

テーブルの上に残されたご飯をじーっと見ながら、舞ちゃんはつぶやく。

「なんか、食べ物のにおいがダメになるっていうよね。お米とか、お味噌汁とか、お魚とか」

今日のメニュー・・・白いご飯、大根のお味噌汁、鯵の干物。


「ケッケッケ・・・フルコースだね」
「いや、いや、いや。でも、待ってね。落ち着いて、よーく考えてね。愛理も舞ちゃんも」

3人だけの℃-ute会議。
私物の赤フレームのめがねをキラリと光らせながら、なっきぃは動物園のシロクマさんのごとく、ホワイトボードの前を行ったり来たりしている。何往復目だ。落ち着いてといいながらも、一番挙動不審になっている。

「だってね、そもそも、みぃたんは女の子でしょ?まあね、ほら、早貴の友だちがインターネッツで見たらしいけど、そ、そそそそのごくたまぁに、男の子のそういったアレがついている女の子がいるって、早貴の友だちが言ってたけど」
「ふーん、友だちがねぇ・・・」

頬杖をついた舞ちゃんが、片眉を上げてハッと笑う。私も無意識にニヤニヤしていたらしく、なっきぃは顔を真っ赤にして声を荒げた。


「や、そ、そんなことより!大体、2人とも、みぃたんのそのア、アソコが今までそそそんなアレがソレだったことなんてないでしょ!?」
「でもさ、誰かとお風呂入った時さ、わざわざあんま・・・見なくない?そんなところ。胸はさ、目に入っちゃうから見ないこともないけど」
「え、舞は見るよ。相手にもよるけど。舞美ちゃんのは見ないかな」
「へ、へー・・・」

私の体が、若干2人から遠ざかったのは言うまでもない。

「・・・確かに舞美ちゃんって男っぽいよね。マッチョだし、運動できるし、髪切って男前度が増したし。
大体、舞がお風呂入ってたらめっちゃ撮影するくせに、一緒に入りたがらないっていうのもおかしな話だよね。何か理由でもあるの?って感じ」

――そういわれてみると、舞美ちゃんの独特のモサフリファッション・・・あれは、擬態なんじゃないかと思えてくる。過剰なまでに女性らしさを演出するための、そう、本当はあのカモシカのようなおみ足の間にソレがアレしていることを隠すための・・・

「ででで、でも、でもだよ。仮に舞美ちゃんがふたなりだとしても!」
「あ、言ったねなっちゃん」
「ギュフ!・・・もう、いいのそんなことは!だからね、万が一そうだったとしても、どどどどうして千聖とそんな関係になるわけ!?千聖は、あの、その、えりこちゃんのことが・・・」

舞ちゃんのことを考慮してか、はたまたデリケートな話題だからか、なっきぃの声がしぼむ。
私もチラッと舞ちゃんの方を見てみるけれど、意外なほど涼しい顔をしている。


「なっちゃん、甘いな。前のちしゃとならともかく、お嬢様。あいつは、やりましゅよ。なかなかのヤリ」
「わーっ!」

なっきぃと私、両側からあわてて止めに入ると、舞ちゃんはニヤッと笑った。

「愛理だって、何にも知らないわけじゃないくせに」
「さ・・・さぁ~?何の事だか私にはぁ~?あははぁ~」

カッパ踊りでごまかすも、なっきぃの視線が痛い。


「つ、つまり、私以外の全員でちちちさとをを弄んでいたのか!ああ、かわいそうな千聖!あの熟れ始めた水蜜桃の如くたおやかしなやかな肉体を、悪魔たちの毒牙に・・・」

――うん、なっきぃはエロ小説の読みすぎだね。


蒸気機関車のように湯気を出しまくってるなっきぃを尻目に、舞ちゃんは「舞美ちゃんてさ」と続ける。


「舞美ちゃんてさ、千聖に甘いよね。どっちの千聖にも」
「あー、まあね」

いや、舞ちゃんに対してだって大概・・・と思ったけれど、言いたいことはなんとなくわかる。

「お財布あげたりバッグあげたり、イヤフォンもだっけ。それだけじゃなくて、何か、甘いの。
普段ちしゃとは長女で、舞美ちゃんは妹だから、2人でいると逆転できて心地いいんだろうけどね」
「まあ、それはわかる」
「あと、どーせみんな知ってるだろうから言うけど、今までお嬢様の千聖は、寂しかったり自分の人格のことがわからなくて怖くてたまらないときに、えりかちゃんに触ってもらってたんだよね。つまり、エッチなことしてたってこと」
「やっぱり・・・」

なっきぃがガクッとうなだれる。
ま、そりゃそうだ。なっきぃとしては妹みたく可愛がってる千聖が、自分を頼らずに、“そういうこと”に走ってしまってるのは悲しいものがあるんだろう。


「・・・でさ、今はもう、えりかちゃんがいつも側にいるわけじゃないから、エッチっていう手段で千聖の心を癒してあげる人がいなくなってしまった。」
「そこで、千聖に甘えられた(ふたなりの)舞美ちゃんが、うっかりそういう関係を持ってしまった、と」


――ありえる・・・・。

舞美ちゃんは落ち着けば何事もフツウの判断がくだせるのに、慌てるととんでもない方向に物事を進めてしまうことが多々ある。

「可愛いもんね、お嬢様。なんかほっとけないし。わかるよ、舞ちゃんの言うこと」

私はいつぞや、千聖のおうちで、胸を触りあったことを思い出した。その前もあったな。トイレで・・・


「多分ね、お嬢様の千聖にとっては、そういうことするのはたいしたことじゃないんだと思う。単なるすっごく気持ちいいスキンシップってだけで。
だから愛理とだって触りっこするし、舞がお願いすれば舞にもそうしてくれる」
「お願いしたのかよ」
「んま、さすがに初体験を捧げちゃうとは思わなかったけど。舞美ちゃんも千聖も勢いで突っ走っちゃうからなあ」


――さすが、千聖ヲタ最強のマイマイさん。観察眼発達しすぎやろ。

だけど、何だか不思議な感じ。舞ちゃんは確実に、千聖に恋しちゃってるはずなのに、こんな冷静に分析する余裕があるなんて・・・


「・・・怒ってないの?」

恐る恐るたずねると、舞ちゃんはちょっと目を見開いて、首を振った。


「いや。むしろ、覚悟が出来たって感じ」
「覚悟って?」



――ガチャッ

その時、後ろのドアが大きな音を立てて開いた。・・・ご両人の登場だ。
舞ちゃんが静かに席を立った。


*****

そもそも、ふたなりというのは、生殖機能があるのかしら?ちゃんとインターネッツでヤフッておけばよかった。
それにしても・・・まさかみぃたんと千聖が。私はため息をついた。

えりこちゃんと千聖が、かなり進んだ関係を持っていることは知っていた。最後の最後までは誓ってやっていない!とえりこちゃんは言っていたから、まあ、触るぐらいまでだろうけど。

1億5千万歩譲って、千聖とみぃたんがエッチなことをするのは、まあ、2人の問題だからしかたない。でもね、でもね、だけど。赤ちゃん・・・が、できたというのは・・・すっごい、ダメでしょ。どう考えても。だから私みたいにおなっきぃにしておけば・・・

しかしきっと、あの2人の子なら、100メートルを8秒で走っちゃうような超人に育つんだろうな・・・なんてどうでもいいことが頭をよぎった。

まあ、でももう起こってしまったことは仕方がない。
とりあえず、次の講演は休ませて・・・あとは妊婦さんへの対応や出産までの対策をインターネッ


「みんな、遅くなってごめん!」

いきなり、ドアが開いたと思ったら、みぃたんが千聖の肩を抱いて現れた。若干顔色は冴えないものの、もう千聖は元気そうだった。


「千聖、だいじょう・・・」

立とうとしたら、ぐいっと謎の圧力がかかって、私は強制的に椅子に着地させられた。・・・舞ちゃんだった。


「舞ちゃん・・」

みぃたんには目もくれず、千聖の前に立つ舞ちゃん。不思議そうな顔をしている千聖と、真顔の舞ちゃん。ちょっと不思議な取り合わせだ。


「千聖、お腹は大丈夫?」
「え・・・っと、はい。お腹は大丈夫です。」
「そう。もう千聖1人の体じゃないんだから、体調には気をつけないとね」

舞ちゃんは優しい顔で笑った。嫉妬にかられて掴みかかったりしたらどうしようかと身構えたけど、そんな心配は無用のようだった。


「あの・・・?」
「ちしゃと。舞はね、もう、ちしゃとの浮気性は仕方がないってわかってるから。それでも惚れてる舞の負けなんだし」
「え、ま、舞?」

若干半笑いになってるみぃたんをキッと一睨みして、舞ちゃんは千聖を隣の椅子に座らせた。

「ちしゃと。今の舞はまだ甲斐性なしだし、社会的地位も不安定で、ちしゃとを十分幸せにしてあげられるかわかんない。
でも、これからもっと一生懸命働くし、もちろん毎日寄り道しないで家にも帰る。
他の人に目移りするなんてありえない。一生千聖と・・・その、子のために尽くすから。だから、

舞と、一緒になってください」


舞ちゃんの細い腕が、千聖の小さな体をしっかりと抱きしめた。



(ダーンッ)エンダーーイアーーイウィルォルウェーーーイ ラブユウウウウウゥゥゥウウウアアアア



私の頭の中に、2人を祝福する超ソウルフルな歌声が響き渡った。・・・何これ、泣けるんですけど・・・・これぞ、無償の愛!


一方、突然の告白に困惑した千聖は、しきりにまばたきをして、舞ちゃんの肩越し、何がなんだかわからないといった感じで私の方を見る。


「ウッウッ・・・よかったね、千聖。ヒック。これで、ヒック、千聖は、もういろんな人と、ヒック」
「えーっ!どうしたの、何泣いてんのなっきぃ?」
「だまらっしゃい!この種馬が!」

涙鼻水だくだくで凄む私にビビッた舞美ちゃんは、怖いよーなんていいながら、愛理に抱きついた。な、なんてこと!さっそく違う雌に鞍替えか!


「あ・・・あの・・・舞さん・・・?」

一方、少し落ち着いてきた千聖は、そっと舞ちゃんから体を離した。眉をへの字にして、困っているみたいだ。


「・・・」

舞ちゃんは、言いたいことは言ったとばかりに、腕を組んで千聖の返事を待っているようだった。沈黙に耐えられなくなった千聖が、口を開く。

「あの・・・えっと・・・ま、まずは、あの、ありがとうございます」
「うん」
「あの・・・でも、千聖・・・舞さんのおっしゃっていることが、よくわからなくて・・・その子、というのは、どちらのお子さんのことを?」
「だから、舞は、舞美ちゃんのことも大好きだから、舞美ちゃんの子でもちゃんと愛してあげられるって話」

そう言われて、千聖はしばらく考え込むような顔をしたあと、驚愕の表情でみぃたんの方を振り返った。


「ま・・舞美、さん・・・今、お腹にお子さんがいらっしゃるの・・・・・?」


「えっ!な、何言ってんのちっさー?何で何で?私?何で?」

当然ながら、舞美ちゃんにも動揺が走る。もう、千聖のにぶちん!いい加減わかるでしょうが!舞ちゃんもさすがに顔をしかめる。そして、ちょっと大きい声で言った。


「だから!いるんでしょ!千聖のおなかの中に!舞美ちゃんの子が!」
「・・・・・・・・・え?」


舞ちゃんが思いっきり指さす、自分のおなかをまじまじと見つめて、千聖はぽかーんと口を開けたまま固まってしまった。


「ちょ、ちょっとストレートすぎだよぅ」
「だって、ちしゃとが鈍いんだもん!舞がこんなに・・・」


「・・・ごめん、舞ちゃん。ちょっと何言ってるかわかんない」


「「「「あっ」」」」


再び顔を上げた千聖は、いわゆる“元の千聖”に戻っていた。
あまりのショックで入れ替わってしまったのか。お嬢様の時より気の強そうな眼差しで、訝しげに舞ちゃんを見ている。


「・・・千聖、何があったか覚えてる?」

さっそく、一歩引いて冷静だった愛理が、千聖に記憶の確認をする。
「んー。大丈夫。今日コンサートでしょ?リハのことも覚えてるし、バッチリデース。でも舞ちゃんの言ってることは本当にわかんない」


「はあ!?なにそれ!じゃあさっき洗面所で舞美ちゃんと話してたことはなんなの!」

さすがに、元の千聖に対しては容赦がないようで。舞ちゃんは千聖の肩をつかんで揺さぶる。


「そ、それは・・・てか痛い!やめてよ、もう!大体、さっきの何あれ!何で千聖が浮気性なわけ!?浮気性は舞ちゃんでしょ!千聖が、千聖がいるのにさ、田中さんとかさ、愛佳とかばっかりじゃん!千聖は舞ちゃんと一緒にいたいのにさ!」
「・・・舞はいいんだよっ!あれは浮気じゃないもん!いいじゃん最後には千聖のとこもどってるんだから。それに比べて、ちしゃとはいろんな人とエッ」
「はぁーいはいはいはいはい、もうそこまで!」


もう、痴話喧嘩はあとにしてちょうだい!私はたまらず、2人の間に割って入った。


「・・・とりあえずね、千聖。舞ちゃんも言ってたけど、私たち、さっき聞いちゃったんだ。洗面所で、舞美ちゃんと千聖が話してたこと」

そう言うと、千聖はゲッと小さくつぶやいた。そのまま、舞美ちゃんと目を合わせて気まずそうな顔になる。


「全部聞こえたわけじゃないけど・・・でも、あれは、千聖を身篭らせてしまった舞美ちゃんが、責任取るって言ってたんでしょ?」
「みごっ・・・違うよ、なっきぃ!え、だってさそもそもそんなわけなくない?何でそうなるの?」
「・・・じゃあ、なんの話してたの?」

舞ちゃんに問い詰められると、千聖は口を尖らせて「・・・言いたくない」とつぶやいた。

「何でよ、そんな隠すってことは、やっぱり本当に赤ちゃんできたんじゃん!つわりだったんじゃん!」
「つわり!?もう、わけわかんないよ舞ちゃん!あれはね、あれは・・・・」


一呼吸おいて、千聖はキッと目に力を込めた。



「あれは、魚の骨が引っかかったの!」



「さ、か、な・・・?」
「そう!ほら、それ!お昼の鯵の骨!だから千聖、苦しくなって洗面所に」
「・・・だったら、何で舞美ちゃんがあんなに謝ってたの?責任取るとか言ってたのも聞こえたんだけど」


みんないっせいに舞美ちゃんの方を向く。いきなり注目されて若干慌てたのか、「いやいや、アハハ・・」なんて胸の前で手をぶんぶん振ってから、ようやく喋りだした。


「もう、言っちゃうねちっさー。」
「うん・・・」
「あのね、私、いっつもお魚が出たとき、ちっさーのお魚の骨を取ってあげてたのね。」
「え・・・な、なんで?」

すると、ちっさーは小麦色のお肌を真っ赤に染めて、すっごくちっちゃい声でフガフガ言い出した。


「千聖、う・・・・うまく、取れないから、骨・・・。だから、いつも・・・舞美ちゃん、に・・・」


私の横で、舞ちゃんがス●ンジボブのような顔で、今にも千聖に飛び掛りそうになっていたから、愛理とともに無言で押さえつけさせていただいた。・・・舞様、℃Sとしてはものすごい興奮するシチュエーションなのはわかるけど、どうか落ち着いてください。


「そうそう。でね、今日も鯵って骨が多いでしょ?だから綺麗に取り除いてあげたつもりだったんだけど、太いのが残ってたみたいで、ちっさーの大事な喉傷つけちゃった!わたしのせいで」
「違うってば!千聖が考えなしに一気に食べたからこうなったの!舞美ちゃんは全然悪くないんだって!」


――アーハン。なるほど?太いのが?(喉の)奥まで刺さって?血が出たと?みぃたんが?何度も千聖の首筋や喉を触っていたのは?骨が引っかかってないか?辿っていただけだと?


「キュフフフフフフフフフ」
「ケッケッケッケッケッ」
「え、あいりん?なっきぃ?な、なんだよ、笑わないでよ・・・」


「「あっはっはっはっはっ!」」


あまりのバカらしい展開に、私と愛理は抱き合って笑い泣きしてしまった。ふふふふ、ふたなりちゃうわ!みぃたんとんだとばっちりだ!

「ちっさーが恥ずかしいって言うから、みんなにバレないようにこっそりお皿交換してたんだ。何かちっさーっていっつも私のことドジだ天然だっていじってくるでしょ?
なのに、そうやって頼ってくれるのが可愛くて嬉しくなっちゃった。」

みぃたん、デレデレ。なるほどこれは、甘いといわれても仕方のないリアクションだ。一方千聖は、相変わらず顔を真っ赤にしたまま、ちょっと泣き出しそうになっている。


「ちーさーとちゃんっ♪・・・いや、これからは鯵聖ちゃんと呼ばせていただこう。ねえねえ、今どんな気持ち?みんなに魚の骨取れないって知られちゃいまちたね?15歳にもなって?ぜひ、今のお気持ちを一言お願いします!」

そして、舞ちゃんは心底嬉しそうな顔で、千聖の周りを高速スキップしている。

あれだけ心配して、愛の告白までした反動で、舞ちゃんは本来の性癖が大噴火してしまったみたいだ。

「な、何だよ舞ちゃん。うるさいよ。しょうがないじゃん、だって、骨引っかかるのやだし・・・そ、それにね、さっき舞ちゃん言ってたじゃん。一生千聖に尽くすとかって。そんな態度でいいの?」
「はぁーん?そんな約束、もう忘れちゃいましたぁーん。さーて、愛佳たちんとこ行ってこよ!今日は話すことがいーっぱいできたし」
「やだやだやだ!絶対言わないで!もーマジ意地悪すぎ!待ってよ!」

千聖と舞ちゃんは追いかけっこしながら、外の方へ出て行ってしまった。


「はー、もう、どうなることかと思った・・・」

私は大げさに天を仰いで、椅子にぐったり座り込んだ。

「そりゃさ、みぃたんと千聖の赤ちゃんだったら、℃-uteみんなで育ててあげることはできるけどぉ・・・」
「・・・ねー、それってつまり、私が男の人なんじゃないかって疑ってたってこと!?しかも、ちっさーを妊娠させちゃったって思ってたってこと!?」
「もー、だからさっきからそう言ってるじゃーん・・・ケッケッケ」

愛理が口ずさむようにそういうと、舞美ちゃんは「ひどーい!」と汗をかきかき抗議してきた。

「私、ちゃんと女性だよ!見る?」
「いいです!ごめんごめん、わかってるから!」

ムキになって、モサフリワンピースを脱いでパンツを下ろそうとする舞美ちゃんを2人がかりで宥めた。


「でもね、みぃたん!なっきぃは安心したんだよ、本当に」
「ん?」
「だって、みぃたんは千聖とふしだらな関係を結んでないんでしょ?もー、本当それだけでも・・・」


「ははっ?」
「え・・・何その笑い」

みぃたんは、なぜか某夢の国に生息する二足歩行鼠のような笑いを漏らして、私から体を遠ざけた。

「み、みぃたん?」
「さ、私も桃子たちのとこ行ってこよっと!また後でねー!」
「ま、待ってみぃたん!みぃたんは千聖と何にもしてなギュフー!!」

慌てて後ろを追うも、思いっきり閉められた扉に顔をぶつけて、私はズルズルと床に崩れ落ちた。


――じょ、冗談だよね?みぃたんはたまにタチの悪いブラックジョーク的なものをかましてくることがあるし、そういうことだよね?いやそうに違いない。絶対そうだ。信じてるからね、みぃたん!


「ケッケッケ、前途多難だねぇ」

優しく私の顔をハンカチで拭きながら、愛理も可愛い八重歯を覗かせて不気味に笑った。こ、この悪魔どもめ!

「・・・今日からグループ内不純同性交友は禁止だから!いいねっ!」
「えー?なんのことですやら?ケッケッケッケ」


こうなったら、意地でも千聖と清い関係でい続けるケロ!と私は鼻息を荒くしたのだった。


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最終更新:2013年11月24日 09:55