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「まぁいい。その辺りはおいおい考えるとして、それよりもう注文はしてある? さあ、目一杯頼むかんな!」

そう言いながらメニューを手に取った栞菜ちゃん。


そうだった。
彼女が僕を連れ出したのは、それが目的なのだった。

でもまぁ、今日は彼女のお陰で僕はこうやってえりかさんに会うことができたのだ。
それだけは彼女に対して感謝の気持ちがある。本当、僕って誠実な人間だ。
だから今日は僕が奢ってあげることにするよ、栞菜ちゃん。

そんな爽やかな気持ちでいる僕の前にいるのは、血走った目でメニューを見ている栞菜ちゃん。
その雰囲気はまるでハイエナのようだった。


(大丈夫だよね、僕の財布・・・)なんて思いながら彼女を見ている僕の横で、
えりかさんはそんな栞菜ちゃんのことを、妹を見守るような優しい視線で見つめていた。


・・・・へぇ、この2人、なかなかいい感じの仲なんだな。


ちょっと意外な感じもしたけど、さっきえりかさんが話してくれたことを思い返していた。
この栞菜ちゃんのことを、あんなに理解しているえりかさんなんだ。
だから、まるで姉妹のようにも見えるのも自然なことなのかもしれない。

なんかいいな、この2人。

そんな穏かな気持ちになっている僕の耳に入ってきたのは、特徴的な彼女の声。

「えりかちゃんももっと頼みなよ! どうせこいつ持ちなんだから!!」
「ウチはもういいよ。栞菜が食べたいものを頼みなー」

えっ、もういいんですか、えりかさん?
たった一品パスタを頼んだだけじゃないですか!

えりかさん、遠慮深そうな人だもんな。
もっと頼んでもいいのに・・・
えりかさんになら喜んでご馳走しますよ!という気持ちなのだから。

それとも、この人のことだから節制しているのかもしれないな。
さすがスレンダーなえりかさん、そうやって努力をされてるんですね。



一方の有原さんはと言えば、さすが世界のアリカン。
メニューを見るそのお姿からは遠慮のかけらも感じられない。やる気マンマンなのがモロ分かりだ。
あなたは少しぐらい遠慮してくらさい・・・・

じっくりと肉料理のページを吟味されている栞菜ちゃん。

“軽く”食べに来たんじゃないのか・・・ガッツリ肉料理かよ。
まぁ、いかにも肉食系って感じだもんな有原はw・・・思わず笑いそうになる。
だが、危ない危ない。ここで噴き出したりしたら、直接的に危害を加えられかねないからな。


そんな僕の繊細な心遣いなんかお構いなしに、値段の高いやつから心ゆくまでの注文を終えた栞菜ちゃん。
何品頼んだんだよ・・・ そんなに食べるつもりなのか。

彼女に連れてこられた時点で覚悟はしていたけどさ。
でも、栞菜ちゃん、いいんですか? お肉をそんなに食べて?
えりかさんを見習ったほうが・・・栞菜ちゃん太るy


・・・つい調子に乗ってしまった。
僕が思ったそんな余計なことを見逃さず(?)、彼女が僕に向けた表情。
それはいつもの栞菜ちゃんだった。

「おいオメー、余計なこと考えてんなよ? それより、大丈夫なんだろうな。足りなかったら皿洗いさせるかんな!」

えりかさんに向けるときの表情とは全く異なるそのお顔。
僕に向けるその表情には、女の子らしい優しさなんか微塵も感じられない。やっぱり怖いよ、この人!!
本当の恐怖は有原さんにあり・・・・

栞菜ちゃんが来てからは、ずっと2人でお話しをされているえりかさん。
もっとえりかさんとお話ししたかったのに。もうちょっとお姉さんに甘えた気分に浸っていたかったよ。

ふたりの話しに加わることもできず、僕は一人手持ち無沙汰な状態に。


僕のことを放置して、楽しそうにずっとお話しをしているえりかさんと栞菜ちゃん。
そんな僕にかけてくれる声といえば、栞菜ちゃんのこの言葉だけ。

「おい、ドリンクバーおかわり! アイスロイヤルミルクティー、ミルク気持ち少なめでしっかりと抽出な」
「はい・・・・」

何杯目だよ、それ・・・・ そのたびに細かい指定で僕におかわりを作らせる有原さん。
その扱い、僕のことを完全に召使いか何かだと思ってるんだろうな、この人。

だが、そんな文句なんか言えるはずもなく、僕は彼女のカップを手にドリンクバーへ向かうのだった。
これで何回目だろう。サーバーの操作もすっかり手馴れてしまった。


「はい、有原さん」
「おう、ご苦労!」

ドリンクバーへのお使いを終えて席に着くと、再び僕のことは放置して話し込むおふたり。

やることもなくなった僕は、昨日の寝不足もあってだんだん眠くなってきた。
襲って来る睡魔に耐え切れず、ついうつらうつらとしてしまう。


2人の会話が断片的に聞こえてくるのだが、眠気で朦朧となっている僕には、もはやそれが夢か現か分からなかったのだ。


「・・・・栞菜はこの子が舞ちゃんに関わることに対しては別に構わないの?」
「萩原のことなんて別にどうでも・・・」
「ふーん・・・?」
「ま、まぁ、しばらくは泳がせてみようかなと思って。だって、その方が面白いでしょ」
「それは、まあ、確かにね。舞ちゃんの反応、面白いときもあるしムフフ」
「えりかちゃん、悪い顔してるーw」


「でもね、こいつ最近ちょっと調子こいてるから。たまに締め付けてやらないと」
「調子に乗ってる、って?」
「その辺のことは、なっきぃに聞いてみるといいかんな」
「なっきぃ? この子、なにか風紀委員長さんに目を付けられることでもしたのかな?」
「うん。その辺はなっきぃが詳しく教えてくれると思うから、聞いてみて」


「まったく、男ってやつは・・・ 執カスの愛理への行動といい・・・ どいつもこいつも要監視だかんな」
「栞菜のこの少年にする対応は、そうか、あの執事さんに対するのと同じ扱いなんだねー」
「そうなのかなー? でも、そうかもね。あの執カス、昨日も愛理のry


目を閉じた僕の耳にぼんやりと聞こえてくる。
愛理ちゃんの、なんだって・・・本格的に眠りに落ちてしまったので記憶が・・・・(なんとかカスがどうのって何それ?)
あと、なんか僕の事を話していたような気もする。
何を話しているのかよく分からないけど、僕の事を褒めている内容ではないようだ。
でも、別に構わないか。これは夢の中なんだ。夢の中の出来事。何も問題無い・・・ ムニャムニャ



「ちょっと頼みすぎちゃった。てへぺろ」
「もうテーブルに置けないよ。こんなに食べきれるの?」
「大丈夫、大丈夫。さぁ早く食べるかんな、えりかちゃんも一緒に。こいつが目を覚ます前に食べ終えて先に帰ろうよ




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最終更新:2014年01月05日 21:23