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もぉ軍団御用達のカフェ。
今日もいつものように角のテーブルを確保する。

いつもこの時間に席を取っておくように熊井ちゃんに言われている。
それが僕の役目なのだそうだ(当たり前のようにそう指示された)。

だが、こうやって毎回テーブルを押さえておいても、結局もぉ軍団の人は誰もやってこないということもある。
というかむしろ、いくら待ってても誰も来ないという日の方がずっと多い。

最初は、人に席を取らせておいて誰も来ないとはなんて軍団だ! と憤ったりもしたけれど。
熊井ちゃん曰く、そういうものなんだそうだ(全く悪びれることなくそう言われた)。


だが、それにも慣れた。

もぉ軍団の人たちが来ない日、僕はそれなりにこのカフェで有意義な時間を過ごしているのだ。
学校帰りにこのカフェで過ごすこの時間は、今では僕の生活パターンの中で結構楽しみな時間になっている。
評判の美味しいカフェラテを飲みながら、落ち着いて読書をしたり勉強をしたりすることのできるこの時間。

ひょっとしたら、むしろ軍団の人たちが来ない方が素敵な時間の過ごし方が出来ているのではないかとry

時間が経っても熊井ちゃんたちはやって来なかった。

今日も誰も来ないみたいだな。よしよし、落ち着いて読書できる。
よけいな邪魔も入らず優雅な時間を過ごすことが出来そうだ。


そう思ってくつろいでいたら、今日は珍しく軍団の人がやってきた。
ドアを開けて入ってきた小柄なその人は、店内を一瞥すると迷わず僕の取っていたテーブルに歩いてきた。

やってきたのは、なんと軍団長様じゃないですか。
いつも来る人といえば熊井ちゃんばかりだったので、桃子さん一人で来るのは初めてだ。

そういえば、もぉ軍団の人たちって言っても軍団の人が勢揃いしたことって無いんだな。
梨沙子ちゃん。彼女が全然来ないから。
いちばん彼女に来て欲しいのになあ。というか、来て欲しいと僕が積極的に思ってるのは彼女だけry

それに比べて熊井ちゃんのよく来ること。よっぽどヒマなんだろうな。


閑話休題。
やって来たのは、桃子さんだった。

「よっ!少年」

僕の前に座ると、ココアを注文した桃子さん。

「桃子さん、おひとりなんですか?」
「うん、大学の帰りだから」

「大学の? ひょっとして合格発表・・・」

合格発表のその帰り?
暗い顔をしてるわけじゃないから、いい結果だったんだろうけど、何となくストレートに聞きづらい。
そんなことを脳裏に思い浮かべながら緊張気味に言いかけた僕に、桃子さんは噴き出しそうになりながら答えてくれた。

「あはは、違うよ。わたしは推薦入学だから。学園の系列大学のね、今日はガイダンスだったんだ」

あの学園の系列大学に推薦で進学なんて、薄々感じていたけど桃子さんって本当に優秀なんだ。

「春から大学生なんですね。おめでとうございます!!」
「ありがと」

見事大学生になれるっていうのに、桃子さんは飄々としてるなあ。
桃子さんのその雰囲気からは、“大学とは、入ることが目的なのではない。入ってから何をするかが大事なんだ”って感じが漂っている。
かっこいいなあ。急に桃子さんが大人っぽく見えた。
桃子さん、大学生かあ。

大学か。
僕もそろそろ進路のことも考えないといけないのかなあ。


「桃子さんは大学では何を専攻なさるんですか」
「教職課程を取るつもり。教育学部だからね。小学校の先生になりたいなと思ってぇ」


桃子さんが学校の先生・・・

ただでさえ少子化が問題になってるのに、日本の未来は大丈夫なんだろうか・・・
なんて一瞬思ってしまったけれど、決してそれを顔には出さなかった。


未来の日本というテーマに思いをめぐらせていた僕。
桃子さんの言葉で我に返った。

「少年、なに読んでるの?」

僕の読んでいた本に桃子さんが興味を示されたようです。

「これですか。“こころ”です」
「なーんだ、真面目な本だったか。つまんないの。ふーん、夏目漱石なんて読むんだ」
「日本文学の名作はひととおり読んでおこうと思って。勉強にもなるし」
「意外と勉強熱心なんだね。そっちの本はなに?」

桃子さんがテーブルに積んである文庫本を手にとって表紙を一瞥する。

「舞姫、ねえ・・・」

桃子さんの顔が苦笑いになる。何がおかしいんだろう。

「少年、これ題名だけでこの本を選んだでしょ」
「えっ? なんで分かったんですか?」
「そりゃ、わかるっつーの」

少年が期待しているような物語じゃないと思うけど、なんて桃子さんはつぶやきながら更に文庫本を手に取った。

「こっちは何? 源氏物語? 古典も読んでるんだ」

「何か参考になるかなと思って。千年も前の話ですけどね」
「参考にするって、何を?」
「光源氏の、、、いや、別に何でもないです」

源氏物語を読んでそのストーリー(次々と現れる美女!)を参考に妄想するのに最近ちょっとハマってるのは内緒。

そんな僕をニヤニヤとした顔で見る桃子さん。全てを見透かしているようなその眼差し。
舞ちゃんや栞菜ちゃんとはまた違う、桃子さんのやり方で心の底まで読み取られそう。
何て言うか桃子さん、この人はまあ何ともカンの鋭い人だな、って感じがするもん。

「いやその、今度映画化されるんで面白そうだから見に行こうと思ってるんです。その前に原作もしっかり読んでおこうかなあと」

「源氏物語、映画化するんだ」
「えぇ、キャストが何とも豪華なんですよ。これは絶対見に行きたいなと」
「映画見るの好きなの?」
「はい、映画見るのは大好きです。初めてのデートではまず映画を一緒に見に行こうと決めt
「そっか、源氏物語ね。チェックしておくよウフフフ」

ちょっと・・・最後まで言わせてください。僕の舞ちゃんとの初デート大作戦を最後まd

「この文庫本の表紙が光源氏役の人?」
「そうです。カッコイイですよねー、この役者さん」
「そっかぁ。こういう男性が好みなんだ、少年は」

好みって・・・ちょっと使う言葉がおかしくないですか?

「くまいちょーの言ってた通りだねウフフフ」

??
なんだろ?また熊井ちゃんが何か変なこと言ってたのか。
もういちいち気にしていたらキリがないから、彼女が何て言ったのかは気にしないけどさ。


「そっか。少年そんなに映画好きなら、じゃあ今度もぉ軍団でも映画見に行くけど一緒に行く? ホラー映画だけど」
「いや・・その・・・みなさんの邪魔をしたら悪いので遠慮しておきますね」
「なんでさー? 遠慮なんかしなくていいのに」

女の子と映画を見に行くのって僕の夢なんです。きっといつかは舞ちゃんと・・・
それなのに、初めて映画を一緒に見に行くその相手がもぉ軍団の人達って。何かトラウマになる出来事でも起きたらどうしてくれるんだ。

「わかった! ホラー映画、苦手なんでしょ」
「違いますよ(本当はそれも図星なんだけど)。ホラーならゾン○デオは見に行こうと思ってますけど。これもキャストが魅力的だから。みなさんは何を見に行くんですか?」
「王様○ーム。面白そうでしょ。ゴメ○ナサイも見たかったんだけど」

カバンから映画のパンフレットを取り出して見せてくれる桃子さん。
このタイトル聞いたことある。携帯小説で有名なやつか。

あんまり興味なかったんだけど、パンフレットを見たら主演の子がとてもかわいい。あ、このメガネの子もいいなあ。
この手の映画は出演している役者さん目当てで見に行っても面白いのかも。
カワイイ子がたくさん出てるみたいだし、見に行ってみようかな。

でも、見に行くなら一人で見に行こうっと。
ホラー映画見てビビってるところをもぉ軍団の人達に見られたら確実に笑いものにされるだろうから。

そう、一緒に見に行ったら、桃子さんにはビビってるのを見抜かれて、さんざんからかわれるだろう。そして熊井ちゃんからはトドメの一撃をry 
そんな展開になるのがはっきりと目に見えるよ。



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最終更新:2011年11月24日 21:41