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先日、舞ちゃんと会ったお屋敷のそばのあの公園。
あの公園に行くのは久し振りだったんだが、そのとき思い出したことがあるんだ。

あぁ、そういえば、この公園でお嬢様とサッカー談義をしたことあったっけな、と。

思い出すと、急にまたサッカーボールを蹴りたくなった。
だから、いま僕はその公園に向かっている。
そこに行けば、またお嬢様に会えたりもするかな。
なーんて、そんな下心もちょっとはあったりしたのは内緒だが。


そんなことを思いながら公園のサッカーグラウンドへとやってきたのだが、今日はそこには先客がいた。

そこは既に一人の男の子によって場所を取られていたのだ。
ありゃ、先客がいたか。

そこにはボールを蹴っている一人の少年。

少年、だよな。
中学生ぐらいのこの子、男の子で間違い無いと思う。だけど・・・

その子は、なんというか、とても可愛らしい顔立ちをしていた。
女の子と言われても不思議ではないような、本当にそんな可愛らしい顔をしてるんだ。
思わず見とれてしまう。


かわいい子だな・・・ 


なんて、そんなこと思っている自分にちょっと引いてしまう。
男の子にそんな感情を抱いてしまうなんて、僕はひょっとしてそっちの気があるのだろうか。

前にテレビで見た学園ドラマを思い出した。

男子校の学生寮。
そこに入寮してきた転校生に好意を抱いてしまい、自分が変態ではないかと苦悩する男子生徒。
実はその転校生はなんと女の子だったんだけど、というお話し。
まぁ、テレビのドラマだけに非現実的な設定だ。

でも、いま僕はその男子生徒の気持ちがよくわかる。
男の子に好意を抱いてしまうと、こんな気持ちになるんだな。


男の子相手にそんな想いを抱くなんて、僕はおかしくなっちゃったのか。
いや、でもそれはちょっと違う。何かが違う。

僕の気を引きつけたのは・・・

そうか、そのドラマの設定と同じ状況なのかもしれない。

この子、本当は女の子なんじゃないか?
だって、いくらなんでもこの子かわいすぎるだろ。
女の子が男の子の格好をしているんじゃ・・・
でも、そんなこと本当にあるんだな。ドラマの世界でもないのに。


なんて、そんな妄想をしてしまうぐらい、この子の外見は女の子のようにかわいらしかった。

ま、そんなわけはないのだろう。確かに本物の男の子なんだろうけど。
でも、でも。
はっきりいって、そこら辺の女子なんかよりよっぽどかわいい。
こういうの、なんて言ったっけ、男の娘??

そんな混乱した思いを抱きながら、僕はしばらくの間その子の姿を目で追っていた。

その男の子はシュート練習をしているようだ。
何回も何回もシュートを蹴りこんで、ゴールネットを揺らしている。
僕はそれをタッチライン側で見ていたのだが、そのときだった。
その男の子が、シュートを打つと見せかけて、いきなりノールックで僕に強烈なボールを蹴り込んで来たのだ。

真っ直ぐに僕へと向かってくる強烈なボール。

おっと!!

いきなり飛んできたそのボールをインサイドでピタリと止めてやった。見事なトラップが決まった。我ながらカッコイイな!
・・・というイメージを思い描いていたのだが、そのライナーの威力は意外と強烈で、あわててトラップしたその跳ね返りを思いっきり顎にくらう。

痛いっつうの・・

顎を押さえていると、その男の子が僕に近づいてきた。
近くで見ると、本当に可愛らしいお顔だとますます感じてしまう。
どこか子犬っぽさを感じるその顔。その頭をナデナデしたい衝動にかられる。

その美少年は僕に向かって、こう言った。

「さっきから、なに見てるんだよ」

その声は確かに男の子のそれだ。やっぱり男の子で間違いない。
続けて僕の耳に入ってきたのは、そのかわいらしい顔には全く似つかわしくない言葉だった。

「キメーんだよ。全く、男からじっと見られることほど嫌なものは無いね」

その上から見下すような、人を小馬鹿にした口調。
かわいい子だな、なんて思ったことを後悔した。


な、なんなんだ、こいつは。


「君、見かけない顔だけど、近所の子?」
「関係ないだろ。お前こそ、どこの奴だよ」


口を開くまでは、その女の子みたいな風貌も相まって、とても素直そうな可愛らしい子だったのに。
この子に抱いていたイメージが音を立てて崩れていく。
ま、僕が勝手に思い抱いてたイメージなんだけど。

この子、全っ然かわいくないじゃないか。

見た目と中身のギャップが大きすぎる。
これには頭が混乱した。僕に向けられている言葉遣いも相まって、軽くパニックに陥りそう。

しかし、すごいデカい態度をとってくるな、この子は。
かわいい顔してるくせに、なんて口の悪いガキなんだ。
初対面の人間に対して、そのとてつもなく偉そうな態度は何なんだ。
どうすればいきなりこんな態度を取ってくるような人間になるんだろう。

・・・なってないな、礼儀が。

僕は体育会育ちだから、こういう上下関係のディシプリンに欠けているやつは基本的に嫌いだ。

まぁいい。
相手はまだガキなんだ。
おいおい教育していってやろう。

ふん、全く。
僕が優しい人間で良かったな。


「君、名前は?」
「バカだろお前。人の名前を聞くときは、まず自分から名乗るんだよ」

とことん偉そうなその態度。
あくまでも、その態度を崩さないつもりなんだな。

まぁ、でも彼の言うことはその通りなので、僕は自らの名前を彼に告げた。

「オレはツバサ。空に翼って書くんだ」

へぇ、カッコいい名前だな。
その字面のイメージ、“千聖”と書いて“ちさと”と読むお嬢様を連想した。

「空翼、か。カッコいい名前だね。その読み方も」
「なに呼び捨てしてんだよ。お前さぁ、自分の立場を考えてモノ言えよ?」

何だ、その口のききかたは。
全く、減らず口ばかり叩きやがって、このガキ。
温厚な僕も、そろそろ顔が引きつってきたのを自覚する。

このクソガキ、もとい、つばさ君は中学1年生だそうだ。
黙っているときはもっと幼く見えたんだけど。
いま憎たらしい口をきき始めた彼は、歳相応に見える。ふん、厨房のクソガキが。

つばさ君、この春からこの辺に引っ越して来たそうだ。
ってことは、この辺の中学校の生徒? どこの中学なんだろ。


「見てたけど、つばさ君けっこう上手いじゃん」
「お前に褒められても全然嬉しくねーし」
「サッカーはどこでやってたの」
「どこってことはないね。オヤジの仕事の関係で転校が多かったから、あちこちの学校でやってた」
「ふーん。つばさ君なのに岬君なんだね」
「は?何言ってんの?意味わかんねーよ、お前」
「お前とは何だよ。僕の方が年上なんだから敬語使えよ」
「何でオレがお前なんかに敬語を使わなきゃなんねーの? どっちの方が偉いと思ってるんだよ」

彼のその表情。
自分の方が偉いのは当然と言わんばかりの、人を見下すようなとてもいやーな表情をしている。
こういう表情、つい最近もどっかで見たことあるな、と思った。

すぐに思い出しました。
あれだ。つい先日お会いしたもぉ軍団自称リーダーさんの表情と全く同じなんだ。



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最終更新:2013年11月24日 11:38