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「そうですか。有原さんが御一緒でしたか。お一人での下校じゃなければ結構です」

一呼吸おいて、村上さんが話しを続ける。

「でも、千聖お嬢様、今日のお帰りは萩原さんと一緒じゃないんですか?」
「舞? どうしていきなり舞のことを?」
「いつもお嬢様と一緒の萩原さんはどうしているのかと思いまして」

出てきたその名前を聞いて、きっと僕の目は輝いていたはずだ。
そんな僕のことを、いま村上さんがチラッと見たような気がした。


「舞は生徒会のお仕事があるそうなの。大きな熊さんと一緒だったわ」
「そうでしたか。萩原さんはまだ学校ですか。どうりで萩原さんと一緒じゃないわけですね。萩原さんと」

萩原さん萩原さん、と連呼する村上さん。
そのたびに僕のことをチラチラ見てくるのはどうしてなんだろ。

村上さんが殊更に名前を挙げるものだからか、それを受けて話しを繋ぐお嬢様。

「舞ね、このところ忙しいの。生徒会の活動を頑張っていらっしゃるのよ」

お嬢様が僕に向かって、そう言って微笑んで下さった。
僕に向かって言ってくれたこと、僕のテンションはぐっと高まる。

「そうですか。萩原さん、ここのところ本当に忙しそうにしていらっしゃいますものね。萩原さん」

村上さんが続けたのは、さらに舞ちゃんの話題だった。
なんで舞ちゃんの話しをこんなにするんだろう? 僕は嬉しいけどさ。
そして、その話しは今度はつばさ君に向けられた。

「つばさ様は昨日も萩原さんとじゃれあっていらっしゃいましたね」
「じゃれあってなんかねーよ! 一方的に絡まれたんだ!!」
「本当に仲のいいことで」
「だから、仲良くなんかねーよ! はぐれry連中は本当に苦手なんだから! 大体なんでオレがあんなデコッぱち女に」
「あら、そんなこと言って。いいんですか? 萩原さんに伝えておきますね」
「オレを殺す気か・・・やめろよ、バカ! いえ、すみません、やめて下さい。村上さん」


なんだろう・・・
今のやりとりを聞いた僕は何だか落ち着かない気分だった。

舞ちゃんと仲がいい? こいつが?
昨日“も”ってことは、しょっちゅうそんな感じなのか?
じゃれあってたって何だよ。
まさか身体的接触を伴っていたんじゃないだろうな。


なんだか、胸の中にモヤモヤとした黒い霧が広がって、息が苦しくなった。


なんだ、この気持ちは。
こんな気持ちは初めてだ。

いてもたってもいられないような焦燥感と、無性に腹立たしい思いが混ざり合い、冷静さを保てない。
呼吸が乱れる。胸が苦しい。頭のなかもどんよりと重くなる。

これはひょっとして、僕はつばさに嫉妬しているのかもしれない。
っていうか、間違いなくそうなんだろう。

これが嫉妬という感情なのか。


しかも、今こいつは舞ちゃんのことを何とほざきやがった?


ゆ、許さん!!


「おい、つばさ・・」
「何だよ、オレを呼び捨てにするとか、自分の立場ってものを
「うるさい・・・ おまえ、舞ちゃんのことをバカにするようなことを言ったりしたら、この僕が許さないぞ」
「は? 何だよ、いきなり」

中学生相手についムキになってしまう。
だって、舞ちゃんに関することなんだ。それは当然だ。
だが、目の前のクソガキは、事の重大さが理解できていない様子。これだからガキは嫌いだ。

そんな僕を、つばさくんがじっと見つめた。

「ふーん。今のその反応。まるで萩原さんがお前にとって特別な人みたいな言い方じゃん」
「そうだよ。悪いかよ」
「なに、お前。萩原さんが好きなのかよ!」


「まじで!!?? プギャーwww すげー!そんなやついるんだww 真性の℃Mだな、お前!!」


このガキ・・・
千聖お嬢様の目がなければ、こいつこの場でシメ上げてるところだ。



「今この人、村上さんが言ってたこと本当なのか・・・? 舞ちゃんと会ったり・・・」
「そうだよ? 一緒の敷地に住んでるんだから」」
「も、もしかして、お屋敷にある寮生の人たちにはしょっちゅう会えるのか、君は」
「しょっちゅうどころか毎日さ。別に会いたくもないけど、ずーっと一緒なんだもん」
「ま、毎日、毎晩!?」
「そうだけど?」


・・・・ハーレムだ。

まさに夢のような環境じゃないか。
自分の家の敷地内にそんな素晴らしい世界が実在するなんて。そんな想像を絶する環境。

でも、目の前のこの美少年は、自分の置かれている境遇を大して有難いとも思っていない口ぶりだった。

「一緒に住んでるなんて・・・ 毎日が楽しすぎて仕方がないだろ、それじゃ」
「えー、別に。だって、寮生の人達はクセがありすぎなんだよ。もっとオレ好みの女の子だったら良かったのに」

こいつ、なんて贅沢な・・・ 殴ってやろうか。


「じゃあ、つばさくんはどういう女の子が好みだって言うんだよ」
「オレはもちろん、女の子は可愛らしくてお淑やかで控えめで、だけどしっかりと自分を持っているような子だな」
「贅沢な奴だな。ふーん、それじゃあ梨沙子ちゃんみたいな子かな」
「なんで分かったdtrくぁsdfrgthyj!!!!!11」


・・・分かりやすいやつだな。


なるほど、それでさっきお嬢様の言葉にその名前が出てきたから顔を赤らめていたのか。


梨沙子ちゃん、か。
ガキのくせに、なんという贅沢な男だ。
身の程をわきまえろって言うんだ、、全く。

でも、あれか、この子はお坊ちゃまなんだっけ。
お金持ちの家のご子息。
こういう奴は性格も悪いから、自分の欲望を果たすために平気で親の財力を利用してくるんだ。


そうだよ。
その財力にモノを言わせて、彼女に言い寄ることだってしてくるかもしれない。

な、な、何てことを!
嫌がる梨沙子ちゃんをカネの力で無理やり自分のものにしようだなんて。

最低だな、つばさ!
そんなの、僕が絶対に許さないからな。もぉ軍団の仲間として(僕は舎弟部門だけど)!


しかし、驚いた。
このクソガキ、生意気にも梨沙子ちゃんに好意を寄せてるなんて。
そんなの、おまえ、10年早いだろ。


でも、つばさ君、僕は忘れていないからね。
さっきは僕のことをよくも散々笑ってくれたな。
ふっふっふっ。形勢逆転ですな、お坊ちゃま。

「そっかー!梨沙子ちゃんが好きなんだー!!」
「大きい声で言うな!!」

「梨沙子ちゃん、ね。そうか、梨沙子ちゃんか。うんうん」
「なに気安く名前を呼んでるんだよ。梨沙子さんのこと知ってるとでもいうのかよ」
「え?もちろん知り合いだけど? 僕らは同じ軍団の仲間だからね(僕は舎弟部門だけど)」
「なんだよ、軍団って?」
「それはだね、もぉ軍団っていうのがあってね・・・」


「ひょっとして、それって、あのももちとかいう人の・・・」
「そっか、桃子さんのことも知ってるんだっけ。それなら話しが早い。その彼女が率いるもぉ軍団の・・・」
「梨沙子さんを変な方に誘うようなことはやめろよ!」
「は?」
「そんな悪の道からは、いつかオレがやめさせてやるからな。彼女にはもっと彼女に合った全うな道を歩いてもらいたいんだ」


悪の道って・・・
何かえらい言われ方してますよ、もぉ軍団。
(でも、当たらずといえど遠かry)


これは報告する必要があるな。
誰に報告すればいいんだろう。
軍団長だろうか。それとも自称リーダーかな。

つばさ君、世の中ってのはね、いろいろな人がいるんだよ。
将来は偉くなってしまうだろう君に、それを分からせてあげよう。嫌ってほどね!!
若いうちの今からそれを知ることが出来るということ、僕に対して大いに感謝するがいい。



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最終更新:2013年11月24日 11:40