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フカフカのシート。静かで空調の効いた車内。高級車はやっぱり造りが違うな。
深く腰掛けてくつろいでいると、すっかりラグジュアリーな気分に包まれてしまう。
お嬢様のような上流階級の方が普段感じているのは、こういう感覚なのかな、なんてのんきに考えていた。

しかもいま同じ車内には、とてつもなく美人の3人が一緒なのだ。
この状況で、幸せ一杯胸一杯にならない方がどうかしている。


起きてしまったことはもう仕方が無い。
悪い事ばかり思っていては気分が下がるだけだ。

だから、今お嬢様方が一緒に来てくださるのは嬉しかった。
この状況で気持ちが高まらないわけがないから。これは有難かった。落ち込んでちゃいられないだろ。

もともと楽天家の僕は、すでに気持ちを切り替えることが出来つつあった。


でも、僕以外の方は表情も固く、みんな黙りこんでいる。
そんなクルマの中は、何とも重い空気だった。静まり返ってしまっている。

そんな空気のなか、僕は今もう一つ嬉しい思いがこみ上げてきていたんだ。


だって、さっきのことだけど、あれ、熊井ちゃんは僕を守ってくれようとしたんじゃないか。

迫ってきた危機から僕を守ってくれようとしたっていうのか、熊井ちゃんが・・・・


ちょっと感激しながら、そんなことを考えていた。

隣に座る熊井ちゃんが、ふいに僕の顔をじっと見つめてきた。
思わず緊張が走る。な、なんでしょう?

何故か悲壮感が漂っている彼女のその表情。
そして、いつになく真面目な声でこう言ってきた。


「何も心配しないで」
「え?」


「こうなった以上、うちが責任とってあげるから・・・・」



・・・・・・


それ、どういう意味なんだろう・・・

その言い方ってさ、それってまるで・・・



なーんてw

そんなこと言ってくるから妄想をさせられてしまうじゃないか。
もちろん彼女は僕が妄想したような意味でその言葉を言ったのではないんだろう。当たり前のことだけど。
それでもその言い方は・・・

さっきからジェットコースターに乗っているかのように僕の心は揺さぶられっぱなしだ。
まさか今日がこんなに刺激に満ちている一日になるとは。


「傷物にしちゃった責任があるし、うちはリーダーなんだから・・・ちゃんと最後まで面倒は見てあげる」

面倒を見るって、僕のことをペットか何かとでも思ってるんじゃないだろうか。
そこも含めて、その最初の所から全面的に突っ込み所満載の熊井ちゃんの今の言葉。
ジョークを言ってるんだよねそれ、と思うほどだけど、この人はもちろんいつだって大真面目です。


「いや、だから違うから。責任取るなんて考えなくていいから」


僕の言ったことに再び加勢してきたのは、その後ろ姿も美しいこの人だった。

「そうだよ。熊井ちゃんは悪くないよ。私のことを止めようとしたんだから。悪いのは私なんだから、責任は私が取るから・・・」


なんということでしょう! お姉ちゃんまで僕にプr(ryしてきた!!!!
凛々しいお顔のお姉ちゃんにそんなこと言われて、僕は爆発しそうになった。
一瞬にして、僕の脳内では、その言葉を端緒にここから始まる僕ら2人の幸せなストーリーが紡がれていく。

だが、さすがに空気も読まずそんな能天気な妄想をしている場合ではない。


「ですから、皆さんそんなに重く考えないで・・」
「舞美のせいじゃないよ。こいつのことはうちに責任があるから。だから責任はうちが取る!」
「あの、熊井ちゃん?・・・・聞いてる? あと、お嬢様もそんな顔をなさらないで下さい」
「でも、これはうちの敷地での出来事ですから、申し訳なくて」

お嬢様がそのかわいいお顔を俯かせてしまう。
いや、お嬢様、あれは門の前だから境界的には敷地の外のことですし、ってそこは引っ張らなくてもいいか。


あぁ、もう・・・ みなさん、本当にやめて・・・・



「あの、本当にみなさんが責任とか感じなくていいですよ。これはもともと痛めてたところで、いつかはこういうことが起こるだろうと思ってたので」

それでも、そう言った僕のことを皆さん真面目な顔のまま見つめている。

そんな光景が目の前にあるんだから、この状況は僕にとって美味しすぎるだろ。
熊井ちゃんにお嬢様にお姉ちゃん。そんな美しい人達がみんな僕を見ているんだ。これを美味しいと言わずして何と言う。
この状況でそんなこと考えているぐらいだったりしている僕。


このように、当事者の僕が一番楽観的なんだ。
だから、皆さん、本当に責任なんか感じる必要は無いのに。

ところで、いま熊井ちゃんはお姉ちゃんに向かって“マイミ”って言ったな。(よびすけかよ!)



そういえば、お姉ちゃんの名前を僕は今まで知らなかった。
つい、今聞いたその名前を口にしてしまう。

「マイミさん?」
「はい?」

お姉ちゃんが僕に振り向いてくる。


「あ、いや何でも無いです・・・」



マイミ、っていう名前だったのか。
姉が“マイミ”で、妹が“マイ”なのか。

またずいぶんと姉妹で似たような名前をつけたもんだな。

つい、その名前をもう一度繰り返してしまった。

「マイミさん?」
「はい?」

再びお姉ちゃんが振り向く。さっきと全く同じ表情・全く同じ動作で。
振り向いた彼女の顔を見つめたまま僕は固まってしまった。

思わず、そのまま見つめあってしまう。
お姉ちゃんは、意味も無く名前を呼んだ僕の事を訝しがることもなく、その善人オーラを全身から発しながら僕を見ていた。
そんな彼女から、どうしても視線を外すことができない。可能ならその美しい瞳をいつまででもずっと見ていたくなるぐらい。
この人を見たら、誰だってそうなってしまうだろう。見た人全てを引き付けてしまう、その絶対的な美貌。



こうして、彼女の名前を僕は初めて知ることになった。

マイミさん。
僕の義姉になる人。




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最終更新:2013年11月25日 22:44