アットウィキロゴ


村上さんというメイドさんがやって来たと思ったら、この時間またやって来る人がいた。
その人のふわふわとした上品な声が僕の耳に入ってくる。

「あら、こんなところで皆さん何をなさっているのかしら?」


振り向いた僕の視界に入ってきたのは、千聖お嬢様!
ここに来たら会えるかも、なんて思っていたんだが本当に会えた!

お嬢様が僕に微笑みを向けてくれる。

「ごきげんよう、ウフフフ」
「千聖お嬢様、こ、こんにちは!!」

現れた千聖お嬢様に対し、村上さんが一礼する。
品のいいこの人には、相手の品の良さも一目で見抜けるんだろう。さすがです。
その村上さんに、にっこりと微笑み返す千聖お嬢様。
その上品な立ち居振る舞い。僕は思わず見惚れてしまった。


どうだ、つばさ! 上流階級の人っていうのはこういう人のことを言うんだ。
お前も見習え!

そんなお嬢様を見たつばさ君、いきなり信じられない単語を口にした。



「ねーちゃん・・」


え!?


今こいつ、ねーちゃんって言った??


姉ちゃん!?


その言葉に、千聖お嬢様は上品な微笑を浮かべつつも、嗜めるような口調でつばさ君を諭す。


「姉ちゃん、じゃないでしょ。お姉様に向かって」


な、なんだってーー!?(AA略)


それは、ほ、本当なんですか千聖お嬢様?
お嬢様の弟君だっていうのか、このクソガキが?


「空翼、こんなところで遊んでいるのね。村上さんと一緒だったの?」

そうか、つばさ君の兄弟なんだもん。
家のメイドさんだというこちらの女性とも、当然のことながら面識があるんだよな。

「いえ。私もいま帰りがけにお会いしたところです」
「じゃあ、ももちゃんさんが空翼のお相手をして下さっていたのかしら?」

僕を見るお嬢様。その瞳の美しいこと。
いつものように、この瞳に見つめられると吸い込まれてしまいそうになる。
だから僕は、その問いに黙ったまま頷くのが精一杯だった。


「姉ちゃん、こいつのこと知ってるのかよ」
「ウフフ、この方はね、大きな熊さんのお友達なのよ」
「それも誰のことだよ。大きな熊さんとか言われても分かんねーし。ねーちゃんの説明は本当にうんこだな」
「あら、大きな熊さんとは、桃ちゃんやすぎゃさんと一緒にいらっしゃった時に、空翼だってお目にかかったことがあるのだから御存知でしょ」

その言葉に、ちょっと考え込んだ様子のつばさ君。
おや、今お嬢様の言ったことを聞いたつばさ君、少し顔が赤くなった?
なんだ、その反応は。

「あぁ、あの人のことか。なるほどね、大きな熊さんかw」

つばさ君、大きなryだけで誰のことかはすぐ分かったらしい。
そりゃそうだ。一目見ただけであれほど印象に残る人も珍しいだろ。

「“大きな”は分かったけど、なんで熊さんなんだよ」
「苗字が、熊井、だからだろ」
「お前には聞いてねーよ」

はいはい、すみませんでした。

「姉ちゃんはすぐ変な呼び方するんだから。菅谷さんのことだって・・・」

そう言ったあと、あわてて口を閉じたつばさ君。
一人でテンパって、挙動不審な動きを見せている。
なんなんだ、なに慌ててるんだ?
って、熊井ちゃんの名前は知らないのに、梨沙子ちゃんの名前は知ってるんだな。


つばさ君とのやりとりのあと、僕にその可愛らしいお顔を向けてくれた千聖お嬢様。


「姉ちゃん、って・・・ つばさ君は千聖お嬢様の弟君でしたか」
「えぇ」

そう言われても、まだ信じられない。
でも、並んだ2人を見ると、この2人が兄弟であることが間違いないということがよく分かる。


「空翼のお相手をして下さっていたのね。いつのまに空翼のお友達に?」

友達なんかじゃねーよ、なんて喚いているつばさ君。
それを聞いてもお嬢様は微笑みを崩したりはせず、僕の答えを聞いてくださった。

「お会いしたのはほんのつい先程のことです。お友達と認めて頂けたのかは分かりませんけど」
「つばさが何か失礼なこと言ったりしませんでしたか? 今この子、ご覧の通り反抗期なので」
「いいえ。失礼なことなんて全然。とても素直ないい子ですよ。な」
「おい、余計なこと言ったりはするなよ」

僕の耳を引っ張ってくるつばさ君。
そんな彼の反応を見ると、ついつい挑発したくなってしまう。

「ウフフフ。こんな弟ですけど、よかったら仲良くしてやって下さいね」
「えぇ、千 聖 お 嬢 様 の 弟さんでしたら、ぜひ可愛がってあげたいと思います」
「それは嬉しいわ。空翼のことよろしくお願いします」
「僕も嬉しいですよ、お嬢様。おまかせください」
「姉ちゃんに馴れ馴れしくするな!」

つばさ君が僕にグーパンチを入れてきた。

「まぁ、空翼も嬉しいのね。そんなに喜んだりして。珍しいわ。ウフフフ」

彼のこの反応、これ喜んでるってことなんですか、お嬢様?
つばさ君のこの反応に対してお嬢様の仰ったこと、ちょっとした認識の相違を感じないでもないけど。
でも、お嬢様が喜んでくださるなら、僕はこの小生意気なクソガキの相手だってしてあげようと思う。


話しがひと段落したところで、村上さんがお嬢様にお声をかける。

「ところで、お嬢様、お一人でお帰りなんですか?」
「いいえ。栞菜が一緒よ。あら?栞菜?どこに行ったのかしら」



TOP
最終更新:2013年11月13日 23:48