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「りーちゃん。」
千聖の唇が、私の名前を刻む。

もう、だめかもしれない。

せめて、愛理が戻ってくるまでは・・・そう思っていたら、千聖は急に頭を私の肩に乗せてきた。

「わあっ!どうしたの?」
「ちょっ・・・と、待って、ごめん」

大きなため息をついて、千聖はそれっきり黙りこんでしまった。

「千聖も、調子悪くなっちゃったの?」
「んー・・・」


困ったな。大人を呼びに行ったほうがいいのかな。
でも私もまだちょっとおなかチクチクしてるし、あんまり動きたくない感じだ。

「千聖。ベッド半分こしよう。」

とりあえず私は体をずらして、千聖を隣に寝かせてみた。
せまいベッドだけれど、横向きになれば十分一緒にお布団の中に入れた。

「ありがとう、梨沙子さん。」
あ、お嬢様の時の喋り方になってる。
ボーッとした顔してるから、無意識なのかも。

何度かめんどくさそうに瞬きを繰り返したあと、千聖の唇から寝息が聞こえてきた。

どうしたんだろう、急に。疲れちゃった?

特にすることもないから、何となく千聖の顔や体をぺたぺた触ったり、クンクンしたりして暇をつぶした。
千聖はおなかはぺったんこだけれど、腕や足には適度におにくが付いてて女の子っぽい。
ぷくぷくした感触が気持ちよくてつっついて遊んでいたら、眠ったままの千聖が何か呟き出した。

「んん?」
そういえば愛理が、千聖はよく寝言を言うんだよといっていた気がした。これか。

「・・・・い。・・・ぃ。」

「えっ?何?」
耳を近づける。



「こわい・・・」



「怖、い?千聖、怖いの?何が怖い?」
「わか・・・ない。怖い・・・・」

千聖はギュッとみけんに皺をよせて、ちっちゃい体を震わせている。
「千聖、大丈夫だよ。梨沙子がそばにいるから。怖くない、怖くない・・・・」

寝言を言ってる人に話しかけちゃいけないって誰かが言ってた気がするんだけど、大丈夫だよね?

「りさ・・・こ」
「うん、そうだよ。梨沙子が守ってあげるからね。なんにも怖くないよ。」


「・・・・だ、れ?」
「ん、だから、りさこ」


「・・・たし、・・・・・私・・・だれ・・・・・?」



――ああ。


千聖はきっとこんな風になっちゃって、自分がどんな人だったのわからなくなって、夢の中でまで悩んでいるんだ。

「ちさとぉ・・・」

おさまりかけていた涙が、ボロボロ落ちていく。嫌だ、こんなのは可哀想すぎる。



「ただいまー。遅くなっちゃった・・・・あれ?どうしたの?」

その時、愛理がペットボトルを何個か持って戻ってきた。

「梨沙子、泣いてるの?」
「愛理ぃ・・・・」



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最終更新:2011年02月08日 06:57