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「それにしても少年、告白ってちょっと気が早すぎだよ。そんなに舞ちゃんと親しくなってたの?」

桃子さんがもっともな事を尋ねてきた。それは、当の僕自身でさえそう思ってること。
でも、その理由は明白なんだ。

「だってそれは、雅さんが・・・」

その名前を出した瞬間、りーちゃんの表情が変わった。
僕の言い訳めいたその発言に、梨沙子ちゃんががっつりと食いついてきたのだ。

「夏焼先輩が? それ、どういうこと?」
「舞ちゃんが僕の前を去ろうとしたとき、あのライブの雅さんの歌声を思い出して」
「あのライブって、学園祭のBuono!ライブのこと?」
「はい、そうです。消失点、あの曲です。あのときの雅さんの歌に涙が出るほど感動したんです」
「うんうん」
「だから、ここで勇気を出したら運命を変えられるのかもしれないと思って・・・」


「わかるゆ!!」


パッチリとしたお目目をキラキラと輝せて身を乗り出してくるりーちゃん。
さっきまで他の2人と同じように面白がってた梨沙子ちゃん、その彼女の僕に対する態度が明らかに変化した。

その一方、終始全く同じテンションの熊井ちゃん。

「でも、何も変わらなかったんだね。せっかく勇気を出したのにね、かわいそー。あははは」

本当に楽しそうだ。
言葉とはうらはらに全く同情なんかしていないということがありありと分かる。

「みやの声だけ思い出したんだってさー、ももどう思う? あっ、そうか! あの曲ももは歌ってなかったもんね、あはは」

「まぁ元気だしなよ、少年。この世の終わりみたいな顔してないでさ」

桃子さんが優しいお姉さんのような柔らかい微笑みを僕に向けてくれた。
でも僕は騙されない。
桃子さんの、その優しい顔は絶対に罠なのだ。

「そんなの何度でもやり直せるじゃん。ことわざにもあるでしょ。七転び八起き!」
「もも、さりげなくひどいこと言ってるーw それってつまり七回も失恋するってことじゃん。それを言うなら七転八倒でしょー」
「くまいちょー、それじゃ倒れっぱなしw そんなこと言ったらかわいそうだよ。ねー、少年」

案の定、おかしさをこらえきれなくなった様子の桃子さん。
やりとりをする熊井ちゃんと桃子さんは心底楽しそうだ。

「もういいんです。僕はこれから残りの人生を心穏やかにして、静かに余生を過ごして行こうと思ってます」
「ぶはっw そんなにショック受けてるんだ。ごめんごめん、本当に好きなんだね舞ちゃんのこと。ぷっ」
「ももの方がよっぽどひどいじゃん。落ち込んでる人をそんなに楽しそうに笑うなんてさー。あはははは」

桃子さんも熊井ちゃんも(笑とかpgrという反応で面白がっている。本当にひどい人達だ。

そんな人達のなか、りーちゃんだけはまじめに同情してくれた。

「そんな笑ったりするなんておかしいよ。人を好きになるってことはさ、それは本当に真剣な気持ちなんだから」
「おー! 16歳になったばかりの梨沙子さん、大人の発言!」
「梨沙子は恋する人の気持ちがよくわかるみたいだね。いま恋でもしてるのかな?」
「ちっ、違うもん!」
「梨沙子はさー、自分に重ねて考えてるんでしょー。その想いはあれでしょ、みやb

りーちゃんがクロワッサンサンドを熊井ちゃんの口に突っ込む。


ありがとう、梨沙子ちゃん。この場にあなたがいることだけが救いです。
今後ももぉ軍団の良心として頑張ってください。陰ながら応援しています。

「今がどうであっても、この先がどうなのかなんて分からないでしょ。舞ちゃんだって・・・」
「梨沙子ちゃん、ありがとう。でもいいんです。たとえ舞ちゃんに振り向いてもらえなくても僕の想いは永遠に変わら(ry」
「でもさー、舞ちゃんのちさとへの想いは強烈だからねー。時間が経ってもそれは変わりそうにないんじゃない。ウフフフ」

梨沙子ちゃんも本当は分かってるんだろう。
桃子さんが今言ったことがたぶん正解だってことに。


もぉ軍団の人達が舞ちゃん舞ちゃん言うのを聞いていると、さすがにつらくなってきた。
失恋するのがこんなにつらいなんて。
もう恋なんて絶対にしない。


でも、梨沙子ちゃんみたいな優しい子を見ていると、まだ僕には希望のようなものも見える。
あー、梨沙子ちゃん、もっと前に知り合いたかったよ。
こんな今じゃなければ、もし君のことを好きになったとしても、きっとコトは単純だっただろうに。

でも、今は違う。
もし新しい恋をしようとしたら、そのためには乗り越えなきゃならないことがあるんだ。
そして、それを乗り越えることは、今の僕にはたぶん出来ない。

舞ちゃん・・・・・ 舞ちゃんのこと、忘れるなんて無理だよ。

って、あれ? なんでいま舞ちゃんのことが?
梨沙子ちゃんのこと考ようとしたのに。

やっぱり、舞ちゃんのことを思いっきり引きずってるみたい。

自分でも意味不明だ。
もう、何がなんだかわからなくなってきた。混乱の極地だ。


「いえ、もういいんです。桃子さん、梨沙子ちゃん。僕のことは放っておいて下さい」


その時、ちょうどクロワッサンを咀嚼し終えた熊井ちゃん、僕の方を向いて急に真面目な顔になった。

な、なんだよ・・・
美人なだけに真顔になられるとちょっと怖いんだよ、熊井ちゃん。


「ふーん、それであきらめちゃうんだ」
「・・・・・」
「そんな軽い気持ちだったの?」
「そんなわけないじゃん・・・」

思わずちょっとふてくされた言い方で返事してしまう。
何が言いたいんだ、熊井ちゃん?

「さっきからももがあんなに励ましてくれてるのに、全然なにも感じないんだ」
「・・・・・」

いったいどこで桃子さんが僕を励ましてくれてたんだろう・・・


「だいたいさ、舞ちゃんは別に嫌ってなんかいないと思うよ」


・・・・・え!?


「熊井ちゃん、今なんと?」
「だからー、舞ちゃんから嫌われたって訳でも無いのに下を向くなって言ってるの!」
「嫌われてないって、それ本当に!? 熊井ちゃん!!」
「うん、たぶん」
「どうして、どうしてそう思うの? その根拠は?」

ひょっとして希望の光が見えてきた?
すがるような僕の問いかけに、熊井ちゃんが答えてくれる。

「根拠なんか無いよ。うん、直感だね。何となくそう思うだけ。あははは」
「ソッカー」


「でも、間違いないと思うよ」


ニカッとした笑顔を僕に向けてくれる熊井ちゃんがキッパリと言う。
それを聞いたとき、僕の気持ちの中で何かがはっきりと変わった。

熊井ちゃんが間違いないって言ってるんだ。ならば、それは間違いないことなんだ。例えそれが何の根拠もないことであったとしても。
そしてそれは、今の僕に凄い力を与えてくれる。


僕は舞ちゃんから嫌われてなんかいないんだ!


まだ終わりじゃない。顔を上げて前を向こう。
一気に視界が開けた気がする。こんなに心が軽くなったのは何日ぶりだろう。


「熊井ちゃんのたったひとことで復活しちゃったゆ」
「ウフフフ面白いね、この2人。でも、これでまたいろいろ楽しませてもらえるのかな」
「すっかり自分の世界に入っちゃって、もう何も聞こえてないみたい。男の人って面白いね」
「男ってやつはね梨沙子、戦い続けることを義務づけられている生き物なんだよ」
「何だかカッコいいね熊井ちゃん」
「青春はエンドレス♪ 直感も大切 晴れも雨も どんよーりーもあーーるさー♪」
「くまいちょー、なんだかんだで胸熱になってたんだね」
「告白して玉砕しちゃったとかやっぱり熊井ちゃんのツボだったんだねー。好きそうだもん、そういう青春っぽいこと」
「青春大通りだねえ。そういう梨沙子もこの一年間を大切にね。みやと一緒にいられるのは、あと一年だけだよ」



こうして僕は救われたのだった。
舞ちゃんに会おうという気持ちを再び持つことが出来た。

今日この場に来て良かった。
新しい学年を前向きに過ごしていく気力が復活したよ。
ありがとう。桃子さん、梨沙子ちゃん、そして熊井ちゃん。

一人の男子生徒に希望をもたらしたこの3人組。
もぉ軍団って、ひょっとしてすごいポテンシャルを持ってるのかもしれない。
そうだ、今度なかさきちゃんに会ったら是非それを教えてあげよう、そう思ったんだ。



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最終更新:2013年11月24日 11:17