ヴァンフリート戦役とは宇宙歴794年2月~5月の帝国軍の一大攻勢に対する防衛戦をさす。主な戦場が恒星ヴァンフリートの周辺宙域であったことから自由惑星同盟では「ヴァンフリート戦役」と呼ばれる。

1 戦いの背景

 宇宙歴794年、銀河帝国は内部抗争で揺れていた。一説によるとそれは和平論と主戦論によるものであり、また別の説によると改革派と保守派によるものである。いずれにせよ、対外戦争の勝利によって優位に立とうという目論見があったものと思われる。
 今回、帝国軍攻勢の中心となったのは保守派の急先鋒として知られる宇宙艦隊司令長官グレゴール・フォン・ミュッケンベルガー元帥であった。おそらくは和平論を唱えるカストロプ公爵または改革派の中心人物ルートヴィヒ皇太子との対立が背景にあったようである。

2 両軍の指導者・指揮官


自由惑星同盟 銀河帝国
ラザール・ロボス宇宙軍元帥
ドワイト・グリーンヒル宇宙軍大将
ヨハネス・ヴィテルマンス宇宙軍中将
ジルベール・シャフラン宇宙軍中将
マッシモ・ファルツォーネ宇宙軍中将
ウラディミール・ボロディン宇宙軍中将
シンクレア・セレブレッゼ宇宙軍中将


エリヤ・フィリプス宇宙軍少佐
グレゴール・フォン・ミュッケンベルガー元帥
不明(第二猟騎兵艦隊司令官)
不明(第一竜騎兵艦隊司令官)
リヒャルト・フォン・グリンメルスハウゼン中将
不明(不明艦隊司令官)
不明(不明艦隊司令官)

3 戦いの経過

 宇宙歴794年2月上旬、帝国軍宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥は五個艦隊を動員した。この動きに対して自由惑星同盟最高評議会議長エステル・ヘーグリンドは大胆な賭けに出た。宇宙艦隊司令長官ラザール・ロボス元帥に四個艦隊を委ね、迎撃の任務に当たらせた。支持率低下に悩むヘーグリンドは戦勝による支持率回復に望みを託して、国民平和会議(NPC)と進歩党との「一度に動員する宇宙部隊は三個艦隊を限度とする」との協定を破ったのである。
 その結果、タンムーズ戦役を大勝利に導いたロボス元帥とグリーンヒル大将のコンビの下にヴィテルマンス中将の第四艦隊シャフラン中将の第六艦隊ファルツォーネ中将の第一一艦隊ボロディン中将の第一二艦隊の四個艦隊からなる迎撃軍が編成された。

 同年3月21日、同盟軍と帝国軍の宇宙艦隊主力は、恒星ヴァンフリートの周辺宙域で戦闘状態に入り、ヴァンフリート星域会戦始まる。恒星活動の影響で大規模な電磁波障害が発生し、各拠点同士の通信がほぼ不可能となる。

 同月27日、帝国軍白色騎兵艦隊がヴァンフリート四=二に侵攻、ヴァンフリート四=二基地攻防戦始まる。

 同年4月6日、ライオネル・モートン少将を指揮官とするヴァンフリート四=二救援部隊がヴァンフリート四=二攻略中のグリンメルスハウゼン中将率いる白色槍騎兵艦隊を撤退に追い込む。

 同年5月上旬、同盟軍も帝国軍も地上基地の大半を失い、戦闘継続が困難となった。
 5月10日、迎撃軍総司令官ロボス宇宙軍元帥は、総旗艦「アイアース」で記者会見を開き、勝利宣言を行った。

4 結果及びその影響

 三月二一日から五月一日までの四一日間における戦いは痛み分け同然の結果に終わった。
 銀河帝国でははっきりとした戦勝がもたらされなかったことにより、国内の不安材料は解消されぬままに終わった。一方の自由惑星同盟でも昨年の第三次タンムーズ星域会戦のような快勝を期待していた市民は、痛み分け同然の結果に失望した。出征前まで「リン・パオ提督の再来」と持ち上げられていたロボス元帥に非難が集中した。また、賭けに失敗したヘーグリンド議長は与党第一党・NPC内での求心力を失い、与党第二党・進歩党からも協定違反を責められた。こうしてヘーグリンド政権の退陣は不可避の状況となる。
最終更新:2020年06月15日 23:24