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メモリーズオフ~T-wave~(後編)

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メモリーズオフ~T-wave~(後編) ◆LxH6hCs9JU


 気づいたら、私は夢の中にいました。
 いつからここにいたのか、ここにいる前はどこにいるのか、まるで思い出せなかったけど。
 私は、私がいるべき場所で、すやすやと眠っていたんです。

「……蘭堂。蘭堂りの。……書記の蘭堂りの! 起きんか!!」
「は、はにゃ!?」

 聞き覚えのある大きな声に驚いて、私は突っ伏していた机から顔を起こしました。
 口元の涎を拭いつつ、とろんとした瞳を周囲に向けてみれば、そこは極上生徒会生徒会室。
 私を合わせた十一人の生徒会役員のみんなが、会議中でした……って、私会議中に居眠りしちゃってたぁ~!?

「まったく、りのってばドベでペケでダメダメだね」
「れいんほど卑下する気はないが、さすがに今回ばかりは擁護できないな」
「バッド……」
「今は予算にも関わる大事な話をしているんだけど……」
「ここは一つ、お灸を据える必要がありそうですわね」
「さんせーい。りのに書記は任せておけませーん」
「申し開きくらいは聞くぞ、蘭堂?」

 大事な役員会議の場で居眠りをしてしまった私に、みんな容赦ない視線を浴びせてきます。
 うう……確かに寝ちゃってた私が悪いけど、誰も味方がいないぃぃ……。

「仕方ないじゃなーい。なんたって、りのなんだから」
「そうね。りのちゃんなんだから仕方がないわよねぇ」

 ぐはっ! みなもちゃんに聖奈さんまで……し、四面楚歌ってやつだよ、だよー……。
 意気消沈して、落ち込んで、猛烈に反省する私を、みんなはニヤニヤした目つきで攻め立てます。
 あ、でも……たった一人だけ、私に暖かい視線を投げかけてくれる人がいました。

「りの? 疲れているのなら、ゆっくり休んだほうがいいわ」

 たった一人、神宮司奏会長だけは、私の体のことを心配してくれます。
 そもそも私、どうしてこんなに眠いのかな……昨日は夜更かしした覚えもないのに。

「わからないのなら、なおのこと休みなさい。みんなも、そのほうが安心するから」

 そう、なのかな。……奏会長がそう言うんなら、そうなのかもしれない。
 みんなの……特に和泉さんの視線が痛いけど……ダメっ子なりのは、あとちょっと眠ることにします……。

 おやすみ、なさい…………。


 ………………あれ?


 ……なんだろう、声が、聞こえる…………?


 みんな…………じゃない。なんだか…………悲しそうな…………声…………。


 これも……ゆめ?


 小学生くらいのすごい格好した女の子が、空を睨んでる。
 なんだかすごくいい匂いのする女の子が、おたおたしてる。
 ジャージを着た男の子っぽい女の子が、空と私を交互に見比べてる。
 強そうなウェイトレスさんが、すごく悔しそうな涙を浮かべてる。

 それと……着物姿の綺麗な女の人が、私の頬に涙を零してる。

 わからない……この光景はなんなんだろう?
 夢……それとも、現実? じゃあ、極上生徒会のみんなは……?
 奏会長……プッチャン……お母さん。
 私は…………あれ。

 泣いてる……もう一人、月から、悲しい声が聞こえる……。
 月……宇宙……空? なんだろう、とても悲しそうな、声……。

 ……誠クンって、誰だろう?

 どうして、どうしてあなたは……そんなに悲しそうに泣いているの?
 他のみんなも、どうして……?
 一人だけ、笑っている人がいるような気がする。
 他のみんなが、なにより側にいる人が一番、悲しそうにしているのに。

 どうして。
 どうして、こんなことをするんだろう。

 わからない、わからないよ。
 わからないけど……わかりたいけど、わかれないよ。

 すごく眠たくて……声も全然出ないし……。

 けど、けど…………放っておけないよ。

 着物の女の人も、他のみんなも、空で泣いてるあの子も。

 こんなことしてちゃ、誰も幸せになんて、なれないから!

 どうしてみんな、それがわからないの!?

 伝えたい……伝えたいよ。

 届けたいの……!

 私の想いを、私の言葉を、みんなに――!


 ◇ ◇ ◇


「あ、アルちゃん! マギウス・スタイル!」
「無駄だ。あれほどの質量、マギウス・スタイル程度ではどうにもならん」
「愕天王……出せたとしても、相手が空じゃ、なぁ……はは」
「世界さん……どうして、どうしてこんなこと……ッ!」

 翼を持たない地上人たちが、嘆きの声を上げる。
 遥か上空を飛ぶF-15E戦闘機に対し、彼女たちが取れる策はなに一つとして残されていない。
 交戦は不可。空手も、魔術も、HiMEとしての力も、人間が生み出した兵器の前で無力だった。
 唯一の策があるとすれば、動かすのも危険な重傷人を置いて逃げることだが……それは誰もが思いはしても、口には出さない。
 ユメイに至ってはF-15Eへの反応も疎かに、他の仲間たちに対処を任せ、りのの治療を続けている。

「――あ?」

 絶望的な均衡は、しかし突如として壊れた。
 ユメイが、桂が、アルが、碧が、真が、言葉なく口を閉ざす。
 ある者は周囲に目配りし、ある者は虚空をいぶかしんだ。
 いずれも正体を掴めず、誰ともなしに声を漏らす。

「今の、は……?」

 不思議な力によって齎された達意の言を、空耳ではないかと胸に反芻する。
 それは、誰もが抱えていた疑念であり、確信だった。

「あっ……れ? 見て、みんな。あの戦闘機、どんどん遠ざかっていく」

 真が空を指差し、一同は疑念を抱えたまま、飛行する戦闘機を目でやった。
 月夜の映える空を、F-15E戦闘機は飛んでいく。ユメイたちとは反対の、まるで明後日の方向に。
 目視が可能なまで視線で追っていくが、戻ってくる気配はなく、やがて夜空に消えた。
 目を凝らして見ても、やはり変わらない。機影は、完全に闇の中へと没した。

「……危機は去った、のか?」

 アルでさえも、突然の事態がのみ込めず、疑問符を浮かべながら言葉を漏らした。
 一転して静けさを取り戻した空に、一抹の不安を覚えながら、一時の安寧に身を寄せる。
 誰もがしばらくの間呆然とし、ユメイのみが、即座にりのの治癒を再開した。

 りのの容態はやはり芳しくなく、どころか、先ほどよりも悪化しているように見えた。


 ◇ ◇ ◇


「桂さん!? ねえ、どうしたのよ桂さん! なんで、どうしてそっちに行くの!?」


 ――誠クン。


「あいつら、まだ生きてるじゃない! 殺さなきゃ、殺して、ギタギタにして、思い知らせてやるのよっ!」


 ――誠クン。誠クン。


「ほら、ミサイル! ミサイル撃って! 撃ちなさいよ! ああ、もう! そっちじゃないってば!!」


 ――誠クン。誠クン。誠クン。


「ちょっと桂さんってば! そっち海! いったいどこに――あ、あ~、そっか!」


 ――誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。


「このまま島の外に出ちゃえばいいんだ! あったまいい~。これで、この子と一緒に帰れるね!」


 ――誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。


「誠、どうしてるかな~。桂さんも会いたいよね。桂さん? かつ……あ、あれ」


 ――誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。


「なにこれ……ぴぴぴ、ぴぴぴぴぴ……って。ぴぴ、ぴ……ぴ……ぴ……なんか、鳴ってるんだけど」


 ――誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。


「こ、これ……! 首輪から鳴ってるじゃない! 戻って、戻ってよ桂さん! 首輪、爆発しちゃうよぉ!」


 ――誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。


「そうよ、そんな簡単に帰れるわけないじゃない! 桂さんのバカ! 戻れ! 戻れってば! 戻りなさいよぉぉぉ!!」


 ――誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。


「いや……嫌だ! いやああ、お願いだから、戻ってぇえぇぇえええ――」


 いま会いに行きますからね、誠クン――!


 ◇ ◇ ◇



 ゆらり、ゆられ、波は岸へと、一つの存在を打ち上げた。
 人と称すには歪で、残された自我さえ破綻済みの、人外なる怪異。
 鉄乙女のように、衝動に身を任せ、完全なるあやかしの者となれたらどんなに幸福か。

 ――許さない。

 少女の中で、なにかが呼応する。
 信頼していた友達にまで裏切られ、溜め込んでいた世界への恨みは増幅される。
 この世、全てが世界のためであるべきだと――燃える激情を、芽生えた感情に委ねた。
 慈愛の精神など持ち合わせていては、この先やっていけない。将来設計なぞクソくらえだ。

 ――桂さんまで、私を裏切った。許せない。

 黒光りする海面は、ある一部分だけ赤く照らされ、炎上している。
 親友だと思い続けていた、単なる恋敵ではないライバルは、裏切り者として海の藻屑になったのか。
 だが、己が立っているのは陸地だ。紛れもない島内、殺し合いを行う場である大地だ。
 間際のことはよく覚えていない。きっと緊急脱出装置かなにかを上手く作動させらたのだろう。

 ――こんな世界、間違ってる。許せない。

 この熱情の矛先は、もはや柚原このみだけでは納まらない。
 獲物を奪った四人の少女たちは元より、ここにいる人間全て、憎悪を持って食い千切ってやる。
 四肢をもぎ取り、内臓を引き摺りだし、脳を抉り――などという細かな悪趣味は、切って捨てる。
 殺す。とにかく殺す。会話の余地もない。全部殺す。黒須太一も、支倉曜子も、殺す。

 ――あんたたち全員、私に殺されろ。私の世界の、生け贄になれ。

 そうやって、憎悪は終着点の一歩先へと進む。
 あと一押しで、彼女は人間の形すら失うだろう。
 最高に熟成された素材を、調理するのは果たして誰か。

 疲労から来る眠気で倒れた世界が、次に起き上がる舞台は――



【E-8 海沿い/1日目 真夜中(放送直前)】

西園寺世界@SchoolDays】
【装備】:防刃チョッキ、ロングスリーブシャツとジーンズ
【所持品】:支給品一式×4、エクスカリバー@Fate/staynight[RealtaNua]、BLOCKDEMOLITIONM5A1COMPOSITIONC4(残り約0.60kg)@現実、
      時限信管@現実×2、89式小銃(28/30)、37mmスタンダード弾×5発、手榴弾1つ、妖蛆の秘密@機神咆哮デモンベイン、
      ICレコーダー、きんぴかパーカー@Fate/staynight[RealtaNua]、ゲーム用メダル400枚@ギャルゲロワ2ndオリジナル、
      贄の血入りの小瓶×1、天狗秘伝の塗り薬(残り90%)@あやかしびと-幻妖異聞録-、スペツナズナイフの柄、
      このみのリボン、アーチャーの騎士服@Fate/staynight[RealtaNua]
【状態】:気絶、疲労(大)、『この世、全ての悪』受胎、精神崩壊、思考回路破綻、腹部損傷(蛆虫治療)、空腹、悪鬼侵食率95%、水浸し
【思考・行動】
基本:この世界ごと、みんな殺す。
1:今は眠る。起きたら――
2:このみ、黒髪の女(烏月)、茶髪の男(フカヒレ)、真、正義の味方(碧)、ちっこいの(ちびアル)、ボディコンスーツの女(桂)を見つけたら今度こそ喰い殺す
【備考】
 ※侵食に伴い、五感が鋭くなっています。
 ※腹の中の胎児に、間桐桜の中に居た『この世、全ての悪』が受肉しています。

 ※島北東の中心街が、F-15E戦闘機の攻撃により一部崩壊しました。
 ※桂言葉の死体は、F-15E戦闘機と共に海面に叩きつけられ、海の藻屑と化しました。



 ◇ ◇ ◇


 ゆらり、ゆられ、私の体は海面を漂う。

 いつだったか、こんな約束をした覚えがある。

 夕暮れの夜の海を、お父さんのヨットで、誠くんと二人で……。

 あの約束は、どうなったんでしたっけ。

 西園寺さんの中には……誰かいたんでしたっけ。

 私は、二人の前に飛び降りて……。

 そういえば、如月さんと棗さんは、どこへ……。

 メールは、届いたのかな……。

 わからない。記憶が混乱している。

 ああ、けど。

 ……瑣末、ですね。


 私は、誠くんと二人で、こうやって海に出て……。


 そう、それが……それが、私と誠くんの正しい形……。


 私は誠くんの――誠くんの残り香を抱きながら、波に揺られて。


 濛々と燃える海上で、二人きりに幸せを覚えて。


 聞いてください。ここには、西園寺さんいないんですよ。


 ああ、そう……これが、幸せですね。


 これがきっと、二人の幸せなんですね。


 誰にも、邪魔をされない――二人だけの。


 ずぅぅぅぅぅぅぅぅっと…………イッショ、デスヨ、誠、クン……………………。


 ◇ ◇ ◇



 いくつもの時が費やされ、成果を得られぬ無為へと消えた。
 深淵の夜は刻々と、日付の変更線へと近づいて、盤上遊戯の節目を作る。
 それを頭の片隅に置きながら、誰もが忘却していた。
 労力の矛先は一人の少女を救いたいという気持ちに独占され、思うように動けない。

 菊地真は教会に向かいやよいを捜したかっただろう。
 アル・アジフは飛び去った戦闘機が気がかりだったろう。
 羽藤桂はようやく再会できたユメイと話したかっただろう。
 杉浦碧は自分にもできることを見つけたかっただろう。

 誰もが、想いを死に逝く蘭堂りのへと集約させた。
 しかしこの地では、人の想いが安易な奇跡を生むわけでもない。
 治癒の効果は衰えるばかり、希望は遠のくばかり、奈落だけが距離を近くした。

 諦めなければ――そんな夢物語を語っても、なにも始まらない。
 理解してはいた。全員が承知の上で、諦めることをしなかった。

 りのがこの世を去るその瞬間まで、懸命に、必死に、人として足掻き続ける。


 ◇ ◇ ◇



 神宮司の力、と呼ばれる異能がある。
 神宮司の血を引く者に代々授けられるという恩恵であり、その発揮は全世界に影響を及ぼす。
 種類も豊富で、全容も知れない謎の力ではあるが、一つだけ共通していることがある。
 それは、人の心に干渉できるということ。人心を操ったり、曝け出したり、導いたりすることが可能なのだ。

 例えば、亡くなった人間の魂を無機物に吹き込む――蘭堂ちえりの力。
 例えば、特定の人間と以心伝心を成す――神宮司奏の力。
 例えば、奏以上に強力な高周波無差別伝心のようなことができてしまう――蘭堂りのの力。

 謎多き異能を与えられた者は、力を自覚することによって、本来の恩恵を得る。
 また、りのや奏の伝心には強制力と呼ばれる概念があり、この強弱によっては他者の心を誘導することも可能である。
 自我なき人形の人心に訴え、激情を動かせたのも……魂に干渉できたちえりの娘であるりのだからこそ、なのかもしれない。

「……と、ここまでの話、理解できたか?」

 全然わかりませーん……と、私、蘭堂りのは手を上げて宣言します。

「ええい、このダメっ子がー!」

 ひゃう! ううぅ……プッチャンがぶったぁ。
 一向に覚める気配のない夢の中、私はプッチャンに難しい話を聞かされて、もう頭が熱暴走しそうです。

「ったく、大事な話だってのによぉ……ちっとはそのダメさ加減を自覚しろよな」

 えーん、そうだよねー。私、ダメダメだよねぇ……ぐすん。
 こんなダメダメなりのは、ドリルのドッチャンで穴掘って埋まってるね。
 りーののりぃはー、「理解できません!」のりぃー……。

「おーい、変な歌うたってんなって。大体りの、おまえ、いつまでもこんなとこにいていいのかよ」

 ふぇ?
 と、私は唐突に思い出すのです。

 私、蘭堂りのがいた……現実の世界。
 そこは宮神学園でも、極上生徒会でもない、紛れもない現実。
 人が人を傷つけて、たくさんの人が悲しんで、そんな、悲惨な現実。
 あの島に、私の体はまだ残っていて、今もみんなが周りにいてくれてる。

 でも、私はもう……。

「目を逸らすな」

 プッチャンに言われて、私は現世を注視する。
 そこには、たくさんの悲しむ人がいて。
 目の届かないところに、他にも一杯の悲しむ人がいて。
 悲しみの連鎖を止めようとしている人もいて。
 私はそこに取り残されるんだと知って、少し悲しくなりました。

 ……ユメイさんは、泣きながら私を助けようとしてくれている。
 ……千華留さんや理樹さん、九郎さんたちの姿はそこにはない。
 ……見知らぬ人も何人か、私のために涙をながしてくれている。

 どうして、こんな悲しいことになっちゃったんだろう。
 どうすれば、みんなが悲しまずに済むのかな。
 私、わからないよ。

「そんなの、誰だって同じさ。みんな、悲しみと闘ってる」

 夢の中のプッチャンは、私が知ってる普段のプッチャンよりも、少しだけ勇ましい。
 お母さんの纏っていた雰囲気にちょっとだけ似ていて、私は懐かしさを覚える。

「俺はプッチャン。それ以上でもそれ以下でもない。これ、よく言うけどな」

 うん。

「そりゃおまえだって同じなんだぜ。おまえはりのだ。それ以上でもそれ以下でもない」

 うん……わかってるよ。

「なら、りのにできること、したいと思うこと、やれるだけやってみろよ」

 そう、だね……うん。

「それが終わったら、ミスター・ポピットに手紙出そうぜ」

 うん。

「宮神学園に戻って、年頃の女の子に囲まれてウハウハだ!」

 うん……うん? それはちょっと。

「ちっ……ならあの教育実習生でもからかって遊ぶかー」

 先生からかっちゃダメだよ。

「んじゃ、幼稚園だな。りの先生の暗黒授業を……」

 放り捨てるよ、プッチャン?

「そのとき! 青春砲が発射されたぁー!!」

 うわぁ!?

「と、冗談はここまでだ。ほら」

 あっ……うん。

「俺の妹だろ。シャキッとしろい」

 そうだよね。私、プッチャンの……えぇ~!? 私、プッチャンの妹だったの~!?

「はははっ、最終回にして驚愕の事実ってやつさ」

 じゃ、じゃあ、プッチャンは実は蘭堂プッチャン!?

「おーい、もうおとぼけはいいから、用事済ませろよ」

 はーい。じゃあ……こほん。


 私、極上生徒会書記の蘭堂りのです――


 ◇ ◇ ◇


 その声は風にのって――


「あっ……」

 最初に異変に気づいたのは、りのの側で治癒を続けていたユメイだった。


 ――私、極上生徒会書記の蘭堂りのです――


「これ……りのちゃんの、声?」
「空耳……じゃないよね?」

 碧が、桂が、次いでその声を確認する。


 ――みなさんに、伝えたいことがあります――


「なんだろう……心に、直接響いてくる感じがする」
「テレパシー、か? 蘭堂りのは普通の人間と聞いていたが……」

 真が、アルが、この声は聴覚から伝達されたものではないと知る。


 ――えと、なんて言おうかな……あの、もう、やめません……か?――


「りのさん。意識が、あるの?」

 遠慮がちに響く、幼い声。
 ユメイは顔色に喜色を浮かべ、りのの容態を見極める。
 外見の変化はない。りのは変わらず、死に逝く間際だった。


 ――こんなことを続けても、みんなが悲しむだけだと思うんです。仕方ない、っていうのもあるんだろうけど――


「意識はない……けどこれ、間違いなくりのちゃんの声だよ!」
「あ、ああ。どのような力かは知らぬが、妾の心にもしかと響いてくる」

 直にりのの声を聞いたのことのある碧が、異能に理解の深いアルが、認める。
 この心に直接響きかけてくる声は……蘭堂りのの、メッセージだと。


 ――だからって、それじゃあ悲しみが続くだけだから。連鎖は、誰かが断ち切らなきゃダメだと思うから――


「そんな……これ……いやだよ、だって、これ……!」
「りのちゃん。ねぇ、起きてよ、りのちゃん!」

 メッセージには違いない。が……本人の容態を見れば、それが末期の言葉であるというのは容易に察しがついた。
 桂と真が泣きじゃくりながらも激励を飛ばすが、彼女らの声はりのには届かない。


 ――子供っぽい、調子いいこと言ってるかもしれないけど、私は、みんなに笑って欲しいんです――



「戻って……戻ってきて、りのさん!」

 ユメイの想いは、りのの救命には直結しない。
 希望を抱いた無情感が、眼前の命の灯火と共に、死んでしまう。


 ――みんなに、みんなにとっての、極上な日々を目指して欲しい。それだけが、私の望みです――


「りのちゃん……だめ、駄目だよ、戻ってきてよぉ……」
「みんな、ここにいるから。頑張って、りのちゃん……!」

 桂はサクヤとの死別を思い出しながら、真は残されたやよいを憂いながら、


 ――……あ、っと。それから……奏会長と、プッチャンと、千華留さんと、ユメイさんに――


「諦めるな。ユメイとて力の行使を続けている。妾だって……」
「……………………りのちゃん!」

 アルは援護としての治癒魔術を繰りながら、碧はりのの手をギュッと握り締めながら、



 ――ありがとう、でした。極上生徒会書記、蘭堂りの。終わります――


「りのさん――――」

 りのの伝心を聞き終え、同時に。
 蘭堂りのの命の光も、消えた。


 ◇ ◇ ◇


 血の流れ、命の鼓動、生命の息吹、ありとあらゆる輝きが確認できなくなってしまった。
 これが極自然な、命の終わりなのだと……元から知っていた者も、初めて知った者も、愕然と悟る。
 真っ赤に染まり、徐々に温かささえ失われていくりのの体を抱きながら、ユメイは泣きじゃくった。

「……碧よ」
「なに、アルちゃん」
「妾を除けば、汝が最年長者だ。だからこそ、酷な頼みをしたい」
「なにさ、もったいぶっちゃって」
「もう、あと数秒で……一日目が終わる」

 ユメイに釣られるように、桂と真が涙を流している。
 アルと碧だけは、せめて外面だけは気丈でいようと努めた。
 碧はアルの促すとおり時計へと目をやり、現在の時刻を確認する。
 零時。りのの命を繋ぎ止めようとするあまり、大きく時間を奪われてしまっていた。
 ともあれ、放送である。

「聞いとかなきゃ、ってことだよね……」

 若杉葛のときにもう二度と味わうまいと思っていた苦みを、また味わってしまった。
 だが今回ばかりは、後悔に溺れることはできない。
 それはユメイも、桂も、真も、アルとて同じはずだった。

 りのは、短い一生を終えるその瞬間まで……悲しみを否定し、他者にもそれを伝えようとしたのだから。



【B-6 中心街/一日目 真夜中(放送開始)】

【ユメイ@アカイイト】
【装備】:エクスカリバーの鞘@Fate/staynight[RealtaNua]
【所持品】:支給品一式×4、メガバズーカランチャー@リトルバスターズ!、光坂学園の制服@CLANNAD、
      木彫りのヒトデ4/64@CLANNAD、包丁@SchoolDaysL×H、ガイドブック(140ページのB4サイズ)、
      メルヘンメイド(やよいカラー)@THEIDOLM@STER、ドリルアーム@THEIDOLM@STER、
      ギルガメッシュ叙事詩、地方妖怪マグロのシーツ@つよきす-MightyHeart-、
      騎英の手綱@Fate/staynight[RealtaNua]、ドッジボール@つよきす-MightyHeart-、縄、
      木彫りのヒトデ1/64@CLANNAD
【状態】:霊力消耗(大)、肉体的疲労(大)
【思考・行動】
 基本方針:桂を最優先で保護する。他の仲間達も守る。
 0:りのさん……。
 1:烏月を捜索する。
 2:怖くても、守る為に戦う。
【備考】
 ※理樹たち、深優と情報を交換しました。深優からの情報は、電車を破壊した犯人(衛宮士郎)、神崎の性癖?についてのみです。
 ※エクスカリバーの鞘の治癒力は極端に落ちています。宝石などで魔力を注げば復活する可能性がありますが、幾つ使えばいいのかなどは不明です。

【羽藤桂@アカイイト】
【装備】:今虎徹@CROSS†CHANNEL~toallpeople~
【所持品】:支給品一式、アル・アジフの断片(アトラック=ナチャ)、魔除けの呪符×6@アカイイト、
      古河パン詰め合わせ27個@CLANNAD、誠の携帯電話(電池二個)@SchoolDaysL×H、情報の書かれた紙
【状態】:強い決意、全身に擦り傷、鬼、アル・アジフと契約、若干貧血気味、サクヤの血を摂取
【思考・行動】
 0:真についていく。教会へ。
 0:ユメイと話したい。
 1:高槻やよいを探し出して保護する。
 2:烏月を止める。
 3:首輪解除の有力候補であるドクター・ウェストを探す。
 4:一人でも多くの人間を仲間に引き入れれる。即座に同行出来ないようならば、第六回放送時にツインタワーに来るように促す。
 5:機会があれば、通り道にある施設を調べる。
 6:第六回放送頃、ツインタワーでクリス達と合流する。
 7:第四回放送までにカジノに戻れなかった場合は、恭介たちに別行動を取ると連絡する。
【備考】
 ※桂はサクヤEDからの参戦です。
 ※サクヤの血を摂取した影響で鬼になりました。身体能力が向上しています。
 ※桂の右腕はサクヤと遺体とともにG-6に埋められています。
 ※クリスの事を恭介達に話す気は今のところない。
 ※第四回放送の頃に、カジノで恭介たちと合流する約束をしています。
 ※『情報の書かれた紙』に記されている内容は、本作の本文参照

【アル・アジフ@機神咆哮デモンベイン】
【装備】:サバイバルナイフ
【所持品】:支給品一式、ランダムアイテム×1、情報の書かれた紙
【状態】:羽藤桂と契約、魔力消耗(小)
 0:真についていく。教会へ。
 0:放送を聞く。
 1:高槻やよいを探し出して保護する。
 2:首輪解除の有力候補であるドクター・ウェストを探す。
 3:一人でも多くの人間を仲間に引き入れれる。即座に同行出来ないようならば、第六回放送時にツインタワーに来るように促す。
 4:機会があれば、通り道にある施設を調べる。
 5:烏月を止める。
 6:第六回放送頃、ツインタワーでクリス達と合流する。
 7:九郎と再契約する。
 8:戦闘時は桂をマギウススタイルにして戦わせ、自身は援護。
 9:時間があれば桂に魔術の鍛錬を行いたい。
10:第四回放送までにカジノに戻れなかった場合は、恭介たちに別行動を取ると連絡する。
【備考】
 ※アルからはナイアルラトホテップに関する記述が削除されています。アルは削除されていることも気がついていません。
 ※クリスの幻覚は何かの呪いと判断
 ※クリスの事を恭介達に話す気は今のところないです。
 ※第四回放送の頃に、カジノで恭介たちと合流する約束をしています。
 ※『情報の書かれた紙』に記されている内容は、本作の本文参照

【菊地真@THEIDOLM@STER】
【装備】:電磁バリア@リトルバスターズ!、メリケンサック
【所持品】:支給品一式(水なし)、金羊の皮(アルゴンコイン)@Fate/staynight[RealtaNua]、
 レミントンM700(7.62mmNATO弾:4/4+1)、予備弾10発(7.62mmNATO弾)、情報の書かれた紙
【状態】:背中付近に軽度の火傷(皮膚移植の必要無し)、深い深い自責の念、精神疲労(極大)
【思考・行動】
 基本:何としてでもやよいを守る。
 1:やよいを守る。教会へ。
 2:やよいや、他の女性を守る王子様になる。
 3:西園寺世界を――?
【備考】
 ※元の世界では雪歩とユニットを組んでいました。一瞬このみに雪歩の面影を見ました。
 ※『空白の二時間』の間に、懺悔室の主になにかをされた可能性があります。
 ※『情報の書かれた紙』に記されている内容は、本作の本文参照

【杉浦碧@舞-HiME運命の系統樹】
【装備】:FNブローニングM1910(弾数7+1)、リンデンバウムの制服@舞-HiME運命の系統樹
【所持品】:黒いレインコート(だぶだぶ)支給品一式、FNブローニングM1910の予備マガジン×4、
      恭介の尺球(花火セット付き)@リトルバスターズ!、ダーク@Fate/staynight[RealtaNua]、
      拡声器、情報の書かれた紙
【状態】:健康、十七歳
【思考・行動】
 0:正義の味方として生きる。
 0:放送を聞く
 1:意志を貫く。
 2:美希のことが心配。合流したい。
 3:助けを必要とする者を助け、反主催として最後まで戦う。
 4:知り合いを探す。
 5:玖我なつきを捜しだし、葛のことを伝える。
 6:後々、媛星への対処を考える。仲間にも、媛星に関しては今は内緒にしておく。
【備考】
 ※葛の死体は温泉宿の付近に埋葬しました。
 ※理樹のミッションについて知りました。
 ※理樹と情報交換しました。
 ※遊園地で自分達を襲った襲撃者はトレンチコートの少女(支倉曜子)以外に少なくとも一人は居たと思っています。
 ※『情報の書かれた紙』に記されている内容は、本作の本文参照


【蘭堂りの@極上生徒会 死亡】


 ※放送直前、会場全域にりのの声が響き渡りました。意思持ち支給品含む全ての参加者の心に、声が直接伝わります。




 ※『情報の書かれた紙』の内容。以後、加筆修正がない場合は状態表に載せないでください。


 殺し合いに乗った人物(生存者のみ):腕に赤い外套を巻いた茶髪の男、椰子なごみ、支倉曜子、ドライ、ツヴァイ、鮫氷新一
 上下が白の学生服の剣士(死亡済みの一乃谷愁厳である可能性が高い)、黒い長髪に切れ長の目をした女剣士(千羽烏月である可能性が高い)、
 千羽烏月、西園寺世界


 要警戒人物(生存者のみ):源千華留(限り無く黒に近い灰色)、黒須太一、深優グーリア、柚原このみ、巨漢の男


 安全だと思われる人物(生存者のみ):高槻やよい、ファルシータ・フォーセット井ノ原真人、神宮司奏、
 アントニーナ・アントーノヴナ・ニキーチナ、九鬼耀鋼、来ヶ谷唯湖、トルティニタ・フィーネ、棗恭介、大十字九郎
 如月双七、杉浦碧、蘭堂りの、ユメイ、菊地真、玖我なつき、クリス・ヴェルティン、羽藤桂、アル・アジフ、ドクター・ウェスト、山辺美希


  • 劇場に、IDとパスワードが必要なパソコンがある。
  • H-6のボート乗り場に、クルーザーが止めてある。
  • 『本当の参加者』、もしくは『主催が探す特定の誰か』が存在するかも知れない。
  • 教会の懺悔室には、得体の知れぬ何者かが潜んでいる。恐らくは、企画主催側の人間。
  • 教会の懺悔室の主によって、真は島の北西から南東にまでワープさせられた。
  • 真は『空白の二時間』の間に、懺悔室の主に何かをされた可能性がある。
  • 並行世界が存在する可能性は高い。死者蘇生が存在する可能性も一応ある。
  • 首輪には盗聴機能や監視カメラが付いている。
  • 主催者による監視は、『上空』『重要施設』『首輪』の3つから、カメラと盗聴器によって行なわれている。これは、棗恭介による推測である。
  • 棗恭介の所有しているデジタルカメラには、『首輪の設計図―A』というデータが入っている。このデータの信憑性はかなり高い。またAと銘打ってある以上、BやC、D。少なくともAを含めて2枚以上が存在する事はほぼ確実。
  • カジノでコインを貯めれば、様々な景品を入手出来る。
  • ドクター・ウェストは大馬鹿だが本物の天才。独力で首輪を解除出来る可能性が高い。
  • アル・アジフは魔術に関して深い知識を持っている。
  • 西園寺世界は既に人ではない。主催側の息がかかっている可能性が高い。
  • 葛木宗一郎、伊藤誠、如月千早は西園寺世界によって殺された。
  • 桂言葉は動く死体として、世界に使役されている。


195:メモリーズオフ~T-wave~(中編) 投下順 196:I'm always close to you/棗恭介
時系列順 197:PERFECT COMMUNICATION
ユメイ 217:アカイロ/ロマンス
杉浦碧
アル・アジフ
羽藤桂
菊地真
西園寺世界 211:child player
蘭堂りの


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