第二次宇宙大戦・スラーン戦線は、1785年2月2日、
全シルア労働者連盟による対ギールラング宣戦布告を起点に拡大した。開戦に至るまでの経緯としては、かねてからスラーン方面への拡大を志向するゴルヴェドーラ遠征艦隊の海賊行動に対抗したものであり、スラーン、タシュトヘムと2つの宙圏を跨ぐ複数国家間の総力戦となった。スラーン戦線と呼称される理由は、諸説あるものの、スラーン宙圏に属する諸星系での紛争から全面戦争に至った経緯と、第三次オラべべ戦役をもって休戦し、そのまま終戦を迎えたことに由来する。
世界背景
スラーン宙圏におけるギールラングの台頭
1740年代初頭。ギールラングは接触して間もない宇宙連合諸国の併呑を模索しており、その第一歩として新秩序同盟における具体的共闘路線の確保が急務とされた。この時、平定対象として戦火を交えたツォラフィーナ文明統一機構本土(ラノルーナ星系)への侵攻も計画され、亜人盟約の動向を見据えつつ、ウビウリ方面から挟撃することを兼ねていたのである。1762年X月X日。未開拓航路における仮設基地の建設を終えると、ゴルヴェドーラ遠征司令部はウビウリ政府と接触し、二国間交渉の末、軍事通行権協定の締結を迎えた。この局面に至って、ツォラフィーナ政府は独力での抵抗を断念。自主的にファルトクノア政府の保護下に入り、その間、時を稼ぐことによって崩壊しつつあった主戦力の復旧に目処を付けた。
ゴルヴェドーラ・スカリア事変
そのような情勢の中、1767年X月X日。ギールラングは次なる標的をスカリア領アルシェイン星系に定め、複数の遠征艦隊からなる大規模な実力をもって侵攻した。当然スカリア政府は、このような事態を想定しており、事前に合意されたシナリオに沿って当該星系からの撤収を決断する。実際の交渉はヴァルエルクを含む近隣諸国の動向に左右され、それらの団結を懸念したギールラングは必要な物資と引き換えにスカリア政府に対する不可侵を約束。ファルトクノア宙軍の動向が懸念される中、アルシェイン星系における完全な軍事通行権を保障させることによって当面の征服を見送る構えを取った。
ゴルヴェドーラ・エリナテー海賊戦争
1768年8月11日。
第一次スラーン宙域戦争が勃発すると、ギールラング政府はこれを最大の好機としてアポラ侵攻を決断する。続いて、ファルトクノア政府に交渉の用意があることを通達。接触当初の段階では、P.J.C.Q.Dを含むエリナテー星系内諸国を人質とし、ツォラフィーナに対する宗主権を破棄するよう迫った。アルシェイン星系から出航した複数の遠征艦隊がエリナテー星系に迫る中、妥結された条件はギールラングによる当該惑星での略奪を承認すること。つまり、宗主国としての立場から非公式にゴルヴェドーラ遠征艦隊の通行を黙認することを意味し、現地の抵抗軍には如何なる増援も送らず、交渉結果を通達しないことも確認された。
また、ツォラフィーナ政府にジェルビア星系の領有権を放棄させることも含まれ、619との連携を前提とした水面下の調整が進められる。残るラノルーナ星系の平定に関しては引き続き交渉を継続するものとし、それらの条件と引き換えにギールラングはアポラの併合を諦めること。また、スラーン宙圏におけるファルトクノア宙軍の活動を支援することに合意した。このようにして、後顧の憂いを断ったギールラングはラペア連合軍を含む現地の防衛戦力を過小評価しており、異次元から大挙して押し寄せる
WHLS(航宙爆雷)を始め、僅か2隻のファルトクノア艦を前に苦戦を強いられるなど当初の予想を遥かに超えた犠牲を出してしまう。更に現地諸国の抵抗も激しく、一定の略奪成果をもって早々に撤退する流れとなった。
闘争同盟の成立
以上の経緯により、ファイクレオネ世界の実力を高く評価するに至ったギールラング政府は、ファルトクノア政府が提唱する新世界構想(経済圏の確立)を受け入れ、ポルアウム使節の合流をもって惑星スラーンにおける新たな軍事条約に調印したのである。この段階に至って、ベリオン以上にスラーン市場の将来性を見出したギールラング政府は、新秩序同盟からの脱退を模索し始め、宇宙連合会議に対し、新たな闘争秩序の宣伝に踏み切った。その内容は、遅かれ早かれ闘争同盟による無限の搾取と戦争行動を予期させるもので、多くの国から具体的制裁を伴う苛烈な非難を招くことになる。
アルシェイン星系の封鎖と対シルア通商破壊
1780年代。
全シルア労働者連盟は刻々と迫るギールラングの脅威に対抗するため、ウズル級ゴーウェヴ・エザーゼフを始めとする新兵器の開発に力を注いでいた。また、安全保障を名目(実際には革命の輸出を目的)にノーフィスケートへ大量の軍需物資を移送していることが懸念され、闘争同盟への対決姿勢を先鋭化させたのである。結果的には、
亜人盟約による離反工作もあってノーフィスケートの外交方針を転換させる様相となり、後の三国同盟が形成される最大の原動力となった。この流れを見たギールラングは、1785年1月27日。重要航路とされるアルシェイン星系の封鎖に踏み切り、周辺空域において大規模な通商破壊作戦を決行する。これにより、『生命線を断たれた』と主張するシルアはギールラングに対し、宣戦を布告。同年2月2日、ゴルヴェドーラ遠征艦隊主力によるシルア領ヴァルート星系への侵攻をもって以後3年の長きにわたる総力戦の火蓋が切られた。
闘争主義新世界構想軍事条約同盟(通称、闘争同盟)
その他の闘争同盟協力国
スラーン宙圏東域防衛機構(通称、三国同盟)
1700年代前半、対アクース使節団の襲撃を皮切りにシルア世論はギールラングへの不信や恐怖が渦巻き、
"サルーシャ"マーヴァの派遣に代表されるシルアの親アクース、親ロフィルナ外交はさらにギールラングの脅威をシルアに感じさせることとなる。
シルアは安全保障の一環として、大規模な軍拡と同時に
亜人盟約のノーフィスケート離反工作への支援の一環として大規模な武器輸出を開始。同時に戦時動員・戦争準備を進める。武器輸出に対抗しギールラングがアルシェインの封鎖・通商破壊に踏み切ると、シルア世論は反ギールラング一色に染め上げられ、
第二次宇宙大戦の勃発及びタシュトヘム諸国の参戦に伴いルクルシルアはギールラングに宣戦布告した。
タシュトヘム宙圏安全保障条約機構(通称、亜人盟約)
その他の亜人盟約関係国
戦いの経緯
ギールラング領内・ジェルビア戦役
中継領域・アルシェイン星系の虐殺
ルクルシルア領内・第一次ヴァルート戦役
宣戦布告から30時間後、ルクルシルア領ヴァルートにギールラング航宙海軍・ゴルヴェドーラ艦隊が侵入。
シルア宇宙執行部隊(以後、シルア宇宙軍)は本国の強気の姿勢とは裏腹に再編成の真っ最中であり、ヴァルートにはキリナヴ5隻ヤバーゼフ42隻を筆頭に2個艦隊169隻の戦力であり十分に強力でこそあったものの、ギールラングの戦母32隻巡洋戦艦17隻を筆頭とする4個艦隊と比較すると完全に見劣りした。
当初、シルア宇宙軍は宇宙採掘プラントを転用した急造要塞やホロ・デコイ艦隊、大量の
自動宇宙機雷などを配備し持久戦の構えであったが、いつまで経っても仕掛けてこないことに苛立ったギールラング参謀
ケラン・ヴィ・トナデールにデコイが見破られると、シルア艦隊はギールラング艦隊に押しまくられ壊滅。31隻轟沈、12隻大破と多大な損害を出したシルア艦隊はアトゥルズ星系に撤退し、ギールラング艦隊はそのまま前進することとなる。
ルクルシルア領内・アトゥルズ戦役
シルア地上戦も参照。
第一次ヴァルート戦役で敗北したシルア宇宙軍は宇宙戦を避け、首都惑星シルアでの地上戦を決意。
シルア艦隊はハルハ星系やナースァ星系、ラムペア星系に撤退し、シルア地上執行部隊(以後、シルア地上軍)は主力部隊20個軍及び民兵組織40個軍総120万人をシルアで組織、防衛体制の強化を進めた。
ギールラング地上軍は物量の圧殺・効率的戦闘のためミュータント兵の投入に踏み切り、42個軍84万人(策定中)を降下させることとなる。
当初、戦況はギールラング有利に進み占領地を拡大し、シルア地上軍は後退戦術・パルチザン作戦で時間を稼いでいたものの、ジェルビア星系にニーネン艦隊が進攻したことで補給が遅れ始めると、次第に進撃は停滞するようになった。
その隙を突いてシルアはギールラング地上軍司令部への斬首作戦を決行。アパ小隊による強襲でギールラング司令部を奇襲、指揮系統が麻痺したギールラング軍はしだいに士気が乱れ、ゴルヴェドーラ艦隊の一部の引き抜きも相まって撤退に追い込まれることとなる。
また、ギールラング軍は撤退時にTバイオロジカル・スフィアと総称される化学ZHL兵器を投入。シルア側の追撃を封じ撤退の時間を稼ぐことに成功している。このZHL兵器投入はシルア側に大きな衝撃と畏怖、
ルイルーシャの発生などの損害を与え、1788年の休戦や
進む軍艦政策にも影響を与えている。
ルクルシルア領内・第二次ヴァルート戦役
シルア艦隊は1787年になると
ウズル級ゴーウェヴ・エザーゼフなどの新式艦艇や大量の艦載衛星・ミサイルが揃い、ハルハ星系クラニアスリアにて集結しつつあった。ギールラング軍・ゴルヴェドーラ艦隊が惑星シルアより撤退するとシルア艦隊は出撃の兆候を見せたが、惑星シルアのZHL兵器透過による汚染やパニックの対応のために多数の病院船や兵士が駆り出されたため追撃は遅れに遅れ、ギールラング艦隊のウビウリ領内への撤退を許してしまっている。
シルアは戦局打開のためウビウリへの侵攻計画を策定するも、戦前よりウビウリとは関係があることやあらぬ戦乱を招くことへの負担の大きさから計画は机上の空論のままであった。
最終的にシルアはウビウリへ多額の賄賂を積むことでウビウリ領内の軍事通行権を取得し、怒り狂ったギールラングがオラべべにて駐屯していた第7遠征艦隊、中央遊撃艦隊へ攻撃命令を出した。
ウビウリは国防の観点からシルア、ノーフィスケートと
三国同盟の設立にこぎつけ、実質的に政府側で参戦することとなる。
また、この際にシルアが国家ぐるみで賄賂を行ったことで組織の他緩が進み、多額の出費も相まって社会の腐敗が進むことになる。
ウビウリ領内・第一次オラべべ戦役
ウビウリがシルア・ノーフィと三国同盟を締結すると、オラべべに駐屯していたギールラング艦隊が同星系を占拠。現地ウビウリ艦隊が遅滞戦闘を繰り広げる中、救援としてノーフィ艦隊が出撃。激戦を繰り広げた。
ギールラング艦隊は練度で勝り最初は優位を保っていたものの、現地ウビウリ艦隊とノーフィ艦隊は積極戦闘を避けて時間稼ぎを繰り返した。また、その時間の中で世界中に出払っていたウビウリ傭兵艦隊と遅れていたシルア艦隊が増援として駆けつけるとギールラング艦隊は押されるようになり、さらに同時期にギールラング領ザルトーラム星系にシルア艦隊、エメラドリス星系にアクース連合艦隊が侵攻したことを契機にギールラングは劣勢に立たされることになる。
ウビウリ領内・ヘンネべべ戦役
ギールラング領内・ザルトーラム戦役
三国同盟軍がオラべべ星系を制圧して数日後。アクース艦隊がエメラドリス星系に進出した報を受けたイト将軍は"アクース作戦"を立案。
本国から旧式含むワープ艦をかき集め、ザルトーラム星系に向けて長駆した。
ザルトーラム星系は戦線から遠く離れていたため少数部隊しか存在せず、彼らの奮戦も虚しくシルア艦隊によって占拠されることとなる。
が、占領直後にオラべべに闘争同盟艦隊が攻撃中であることが報告され、攻勢開始地点まで彼らは撤退することとなった。
結果としてギールラング本国艦隊のアクースへの対応の注力が可能となり、エメラドリス星系の失陥につかながっている。
ウビウリ領内・第二次オラべべ戦役
オラべべからの艦隊撤退に激怒したギールラング軍上層部は作戦の転換を決定。オラべべ方面艦隊司令を処刑して体制を一新しつつ、第6遠征艦隊をオラべべに向かわせる。また、本国では防衛に専念するとともに、条件付き講和を模索し始めるようになった。
また、同時期にファルトクノア軍・ポルアウム軍も攻勢に参加。ギールラング攻撃にかかりきりになっていた三国同盟、得にシルアは背後を突かれた形となり、ギールラング本国侵攻を取りやめ撤退する羽目になった。
オラべべ星系では戦艦イェスカ含む主力部隊に三国同盟軍は大苦戦。惑星の制空権もおぼつかなくなるが、連絡線と補給路の維持をかろうじて成功。戦線は停滞するようになっていった。
ギールラング領内・エメラドリス戦役
ギールラング本国・バジタルーナ戦役
ウビウリ領内・第三次オラべべ戦役
影響
シルアはギールラングへ賠償金・謝罪を請求したものの、ギールラングに戦前の敵視政策・宣戦布告を追求され一切の賠償を得られず、軍拡やZHL投下による戦乱や経済疲弊によって長期にわたる低迷期を迎えることとなった。
また、ZHL兵器投下によって惑星シルアの生態系は乱れに乱れ、数十万のシルアーシャ含む生物がミュータントに変化、長い掃討戦とルイルーシャ(知的ミュータント)の人権運動で国内は混乱することになった。
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最終更新:2021年12月31日 02:10