【太多法師(ダイダラボッチ)】

ダイダラボッチは、各地で伝承される巨人。大きな山や湖をつくりあげたとする言い伝えが広く残されている。大太郎坊(ダイダラボウ)とも呼ばれる。

富士山や琵琶湖*1をつくりあげたと語られる。全国各地の山や島、湖などに形成者としてダイダラボッチなどの巨人が語られている。湖や池は、ダイダラボッチが座った尻の跡、放った尿で出来た窪みなどと言い伝えられている事が多い。

「ダイダラ」は「大太郎」(ダイタロ)が語源だと言われている*2。「大太郎」という人名が「大きな男」を意味する例は『宇治拾遺物語』などに見る事が可能で、中世頃に発生した名称であると考えられる。「ボッチ」(ボツチ)については「法師」とするのはあくまでも当て字で、野槌(ノヅチ)のように「霊」を意味する。火山との関わり合いから「ほつち」(火の霊)であるとも言える。ダイドウボシに「大道星」という字が当てられることがあるのも「火霊」(ホチ)に通じ、共通性がうかがえる。

いっぽうで「ボッチ」は、山や丘陵の隆起した様子を示す「ポッチ」から来ているとも考えられている。*3

巨霊

『仏神感応録』には「巨霊」と書いて「ダイダラボウシ」と読ませている。

大人(オオヒト)

九州地方では「オオヒト」とも呼ばれる。火山と結びついていると考えられており、ダイダラボッチたちのような巨人と火山との関係が考えられている。
オオヒトの「大きい」という特徴は、山姥や山男に受け継がれて広く残されている。

大男(オオオトコ)

石川県にはオオオトコというものが大昔に住んでおり、その手のツメの跡とされる坂道などが残されている。毎年、オオオトコは川で鮭を捕っていたが、聖によって退けられ北の海へと去って行ったとされる。

大道法師(ダイドウホウシ)、大道星(ダイドウホシ、ダダボシ)

近畿地方や四国地方には、ダイドウホウシ、ダイドウホシ、ダダボシという巨人が山や湖をつくったという話が言い伝えられている。*4
広沢池の南東の方角に存在する池は「大道法師の足跡」であると語られている。(京都府)*5

【巨人】

ダイダラボッチのような巨人要素は、どれも大地を形成したとする内容にとどまっているものが多く、人間と直接に交流関係を持つ話というものはほとんど無いが、後には「手長足長」や山姥、鬼、天狗などの妖怪に受け継がれて言い伝えの中に残存している。

ダイダラボッチと地名

太田、代田などの地名はダイダラボッチに関係する言い伝えが残されている土地につけられている事が多い。

ダイダラボッチと建築技術

大型の建築物とダイダラボッチが結び付けられている例はほとんど無いが、人工的につくられたとしか考えられない三角形の山などについては、ダイダラボッチと結び付けられた特殊能力を持った人々の存在を考える事も可能である。時代が下るほど、巨人の存在は見られなくなるが、その要素は「巨人」から「大力」に移り鬼や天狗などに移り、建築技術と重なって行った。

最終更新:2021年05月19日 15:05

*1 『日本書紀』では富士山と琵琶湖の出現を自然現象としておりダイダラボッチは登場しない

*2 柳田國男『増補山東民譚集』平凡社、1969年

*3 大場磐雄『大場磐雄著作集6』雄山閣出版、1975年

*4 柳田國男『増補山東民譚集』平凡社、1969年

*5 『都名所図会』