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院長中身◆zO7JlnSovkが運用している
グランギニョル神話のまとめとなっています。
これまでのイベントやロールの流れを纏めていますので、是非ご覧下さい。
(最終更新2019/02/09)
■CONTENTS
■出来事ログ一覧
≫【ログ001】<harmony/group>、スナークを生成する▶Play
≫【ログ002】"魔女"、夕月の脚にシャーデンフロイデを仕組む▶Play
≫【ログ003】スナーク、白神 鈴音を籠絡する▶Play
旧市街にて、スナークは失踪した子供達を探しに来た
白神 鈴音と出会う。
レッド・ヘリングと化した工場の惨状にショックを受ける鈴音。
スナークはその心に付け込み、彼女のトラウマを刺激する事で、彼女という存在の信用を得る。
そうして鈴音を誘拐し、自分のパートナーに仕立て上げた。
≫【ログ004】スナーク、クズノハとジルベールに会う▶Play
アルターリの跡地にて、スナークはその周囲を探索していた
クズノハと会う。数万人の怨嗟を結晶にし、それを材料に
ジルベールと取引するスナーク。
けれども水と油、二つの存在は相容れず、交渉だけ済まし互いは別離に進む。
スナークは自分の理想の世界を語る。人外達の国
"フェイクワールドワンダーランド"その後クズノハから拘束具一式を手に入れ、不穏な雰囲気を携えて去っていく。
≫【ログ005】スナーク、ミラ・クラァケに会う▶Play
とある公園にて本を読んでいたミラにスナークが興味を持った。ミラがニンゲンでないと知っていたから
ミラはスナークが鈴音を監禁していると知り激昂、けれども鈴音の居場所である事も察し、渋々承諾する。
スナークは自身の試みが進んでいる事を示唆しながら、その場を去っていく。
≫【ログ006】ロールシャッハ、特区に出現する▶Play
水の国にある『特区』に、嵯峨野 鳴海の身体を借りてロールシャッハが脚を運ぶ。そこにいたのは
"オーウェル社"のアンドロイド
ゾーイ
<harmony/group>の存在として、また公安の
"調停官"として、オーウェル社の持つ
"NTD"の技術が必要であった。
それ故に公安の立場から手助けすることを約束する。
≫【ログ007】スナーク、アリスから忌書を渡される▶Play
アリスが誑かした廃村にて、スナークは彼女と交錯する。
悪魔達の密会の中でアリスを誘うが拒否され、代わりに忌書と呼ばれる怨念の籠もった書物を渡された。
自分達の世界を作ることを約束し、その場を去っていく。
≫【ログ008】ロールシャッハ、鈴音とブラスフェミアに会う▶Play
旧市街にて、ロールシャッハはブラスフェミアと鈴音と邂逅する。
スナークと暮らしているという鈴音に対し、辛辣な言葉をかけながら尋問するロールシャッハ
結局、途中で横槍が入り十分な情報を得るには至らなかった。
≫【ログ009】インシデント:"信仰の工場"▶Play
旧市街にある『工場』にて
レッド・ヘリングと
スナークが能力者達と交戦。
スナークは鈴音を餌に能力者達をおびき寄せたが、その際使用した鈴音は
ミィが化けたものであった。
結果としてレッド・ヘリングは消滅、スナークは
"Lethe"という言葉を残し去っていく。
≫【ログ010】スナーク、白神 鈴音とケッコンする▶Play
スナークの住処に鈴音をよく知る存在が来訪して、奇妙な謎かけを与えられる。
「白神 鈴音は加護/籠/過誤/訛語の無い蛇だよ」────スナークはそう言い切って
憔悴しきった鈴音を抱きかかえ、彼女にケッコンを申し込んだ。
旧市街にある『レテ・ビーチ』にて
アナンタシェーシャ、
スナーク並びに
ロールシャッハ、そして白神 鈴音が能力者達と交戦。
アナンタシェーシャが優位に戦闘を進めていたが、
鵺の乱入により状況が一変。
最終的にアナンタシェーシャは消滅、白神 鈴音の精神と肉体が分離し、鈴音は暫し夢の中を彷徨う運びとなった。
≫【ログ012】スナーク、ワームシンガーと出会う▶Play
アルターリの安息所にて、スナークは
ワームシンガーと出会う、その用件とは拘束状態で連れてきた
ファラーシャという少女にあった。
彼女には、"Conductor"と
シャーデンフロイデが同居しており、非常に不安定な状態であった。
ワームシンガーの呼び声により"Conductor"が顕現、結果として状態は大分安定するようになる。
≫【ログ013】ジャ=ロ、蜜姫かえでに禁術を託す▶Play
ケバルライを名乗るジャ=ロは
サーペント・カルトのオフィウクスとして、ムリフェンこと蜜姫かえでに接触する。
その目論見は一つ、彼女に禁術である
"Itzamna"と
"Kukulucan"を託すこと。
凄惨な儀式の果てに試みは成し遂げられる、深い企みを持って。
≫【ログ014】スナーク、ドープと出会う▶Play
ラサルハグェを名乗るスナーク、サーペント・カルトのサーバントである
ドープ・ラブ・ライクと出会う。
ドープの言動に苛立ちを露わにしながら、
ウヌクアルハイの受肉の為の生け贄を求める。
あれだけニンゲンを毛嫌いしていた彼女、にもかかわらず、ニンゲンを利用する。
≫【ログ015】ジャ=ロ、タルコフに禁術を託す▶Play
ジャ=ロはサーペント・カルトの本部にて、オフィウクスである
アレクサンデル・タルコフに接触する。
凄惨な儀式で四肢を失ったタルコフの儀式を再現することで、禁術の一つである
"Crom Cruach"を託す。
因果を逆流する術、人の身を遙か越えた力を託し、去っていく。
≫【ログ016】シャーデンフロイデ、アリアと交戦する▶Play
路地裏でプリオルことシャーデンフロイデは、
アリア・ケーニギン=デァナハトと交戦する。
互いに一歩も揺るがず、異能と銃弾とを数多ぶつけ合った。
痛み分けの形で撤退し、互いの強さを確認し合う。
≫【ログ017】スナーク、蜜姫かえでと出会う▶Play
スナークはサーペント・カルトの本部にて、オフィウクス、ムリフェンこと蜜姫かえでと出会う。
儀式の準備が進まない苛立ちをぶつける。八つ当たりの様な言いがかりをつけ
そしてもやもやを残したままその場を後にしていく。
≫【ログ018】ジャ=ロ、エーリカと出会う▶Play
ジャ=ロはサーペント・カルトの本部にてエイリスと名乗る、潜入工作員
エーリカと会話する。
そして彼女を連れて談話室に行く最中、
ウヌクアルハイの片鱗に触れる。
ジャ=ロは豹変し、エーリカを連れて退散、その神の恐怖を伝えた。
≫【ログ019】スナーク、コープスリバイバーと戦う▶Play
スナークは町中でコープスリバイバーと交戦する。
力と力のぶつかり合い、互いに持つのは強力な異能同士。
結果は痛み分け、再戦を近いその場を去っていく。
≫【ログ020】インシデント:新世界より▶Play
≫【ログ021】ゴーストライター、後藤と結託する▶Play
サクリレイジに属するゴーストライターはインシデント『新世界より』の結果を受け、
外務八課の
リョウジ・ゴトウにコンタクトを取る。
異なる現実に生きた二人の人間が企む一手、虚神達への反撃の手段。
生まれるカウンターミーム、鍵となるのは────
"蜜姫かえで"
≫【ログ022】スナーク、白神 鈴音と再会する▶Play
スナークはロールシャッハの力を借りた"Dream Theater"にて鈴音と再会した。
沢山の言葉を交わして、それでも足りないって言いたげに。
受け取るのは氾濫の宝玉、キミを取り戻すと誓った。
≫【ログ023】ジャ=ロ、蜜姫かえでに伝える▶Play
ジャ=ロは病室に出現、蜜姫かえでに儀式の顛末とウヌクアルハイの状態を伝える。
そして、正しい信仰を取り戻すために、白神 鈴音を知る者と、儀式の邪魔をした者
それらの抹殺を伝え、その場を後にした。
≫【ログ024】ゴーストライター、ボスと邂逅する▶Play
ゴーストライターは電車内でサクリレイジのボスと邂逅する。
後藤との交渉を終えて、彼は"虚構現実"へとジャ=ロの報告書を手に入れる為に向かう。
その旅路を止めることは、誰にもできない。
≫【ログ025】ジャ=ロ、蜜姫かえでと共謀する。▶Play
ジャ=ロは軟禁状態であった蜜姫かえでに"蛇念"を用いてコンタクトを取る。
ゴーストライターの構築したモダンタイムスを流用し、彼女に虚構現実へと渡る事を求めて。
様々な思惑を胸に、進む道筋を確かめた。
≫【ログ026】ゴーストライター、ボスに伝える。▶Play
ゴーストライターは再び、サクリレイジのボスにコンタクトを取る。
情報のすりあわせと、間近に迫った虚構現実への渡航について。
そこに希望など本当はなくても、彼らは進むしかなかった。
インシデントログ
『巡礼の年』も参照。ジャ=ロと
シャーデンフロイデが登場、能力者と交戦する。
激しい戦いの結果、シャーデンフロイデとゴーストライターが消滅した。
ゴーストライターの遺筆により、能力者達は『INF-005』と『INF-007』の報告書を手に入れる。
≫【ログ028】リーイェン、ボスと議論する▶Play
リーイェンは『モダンタイムス』の要請を受け、ボスと邂逅する。
そこで議論されるのは"虚神"の本質について。かつて起きた二つのインシデント"Der Tod und das Mädchen"と"スナーク狩り"
虚構現実の意義について、二人は問いただす。
≫【ログ029】"魔女"、ブラスフェミアに種明かしをする▶Play
"魔女"はカフェに
"ブラスフェミア"を呼び出し
夕月に仕込んだシャーデンフロイデを伝える。
それはせめてもの慈悲であった。同時に、意識させる事でより強固なものにせんと。
袂を分かつ二人の科学者、否────魔女もまた、INFオブジェクトの一つであった。
≫【ログ030】ロールシャッハ、七篠と会う▶Play
ロールシャッハは旧市街にて七篠と会う。
そうして語るのはその街の歴史、かつて起こった≪大災厄≫の過去。
彼らは何故そこに巣食うのか、そこまでは伺えないが。
≫【ログ031】ロールシャッハ、夕月を誘拐する▶Play
ロールシャッハはブラスフェミアの根城に出現、ミレーユ、ブラスフェミア、夕月に確認され
恐るべき能力を持って能力者達の手から夕月を誘拐、そのまま連れ去っていく。
後に残すのは冒涜、不定形の恐怖が世界を壊す。
≫【ログ032】リーイェン、後藤と結託する▶Play
リーイェンは『外務八課』の後藤とコンタクトを取り、情報を照らし合わせる。
その中で明らかになる真実、虚神達の行動理念についての推察。
夕月を取り戻す、その一点で、三つの組織が重なり合う。
≫【ログ033】ファラーシャ、ブラスフェミアと出会う▶Play
シャーデンフロイデの依代であったファラーシャは、偶然町中でブラスフェミアと出会う。
そこで虚神と依代の関係性について知る、それは何処か不思議な関係性で
ブラスフェミアにとっての夕月を知り、二人は別れる。
≫【ログ034】リーイェン、ボスと真相を探す▶Play
後藤との会談を終えて、リーイェンとボスは真実を探す。
無数の逡巡の先に、辿り着くのは希望か、絶望か────。
漸く見つけたのは恐るべき可能性、仕組まれた、罠。
≫【ログ035】ロールシャッハ、イーレイに接触する▶Play
路地裏にてロールシャッハはイーレイに接触する、稀代の鍼師への敬意を込めて。
示唆するのは秘密、彼らがひた隠しにしてきた事実を、イーレイに指し示した。
それは如何なる理由か、明かされない事実は存在していない。
≫【ログ036】ジャ=ロ、つがると接触する▶Play
ジャ=ロは路地裏で一人の少女(つがる)と出会う。彼女の行いを窘め、会話をする。
自身の名を偽り語る彼は、ただのニンゲンの様に振る舞うが
結局信用されることは無く、その場を後にした。
≫【ログ038】ジャ=ロ、蜜姫かえでを誑かす▶Play
ジャ=ロは再び軟禁状態の蜜姫かえでの元へと現れる。そして、彼女の信仰の乱れを感じ取って。
それ故に先んじて彼は楔を打つ、言葉という名の呪縛で絞め殺すために。
────神様は救わない、壊れた玩具なんて。
≫【ログ039】イスラフィール、マリアベルと出会う▶Play
地の国にある地方都市へフィールドワークに出ていた
マリアベルは奇妙な人物に声を掛けられる。
瀟洒な雰囲気を携えつつ、何処か幼い好奇心に満ちた女性。
その名は
イスラフィール水の国最高議会の議員────。
≫【ログ040】ロールシャッハ、ボスと対話する▶Play
リーイェンを媒介にして、ロールシャッハはボスと対話する機会を得た。
幾つかの逡巡を通じて、彼らはジャ=ロの目論見に対する対抗策を考えつく。
「死に至る病とは絶望だよ」────ロールシャッハはそう言った。
≫【ログ041】リーイェン、後藤と計劃する▶Play
リーイェンは再び後藤とコンタクトを取る。電波通信の振り返りと、残った脅威について。
エカチェリーナへの思索を通じて、二人は攻勢に出ることを決意する。
ミッション内容はサルベージ、<harmony/group>本社ビルへ、再び魍魎の箱へと、私達は戻る。
≫【ログ042】イスラフィール、ラベンダァイスを勧誘する▶Play
イスラフィールはアルクの墓前で泣き崩れる
ラベンダァイスと邂逅する。
そして告げるは"Justice"の音律。かつて存在した正義組織を再建するという試み。
ラベンダァイスはその誘いを受け入れる。最期の戦いとして。
≫【ログ043】イスラフィール、カニバディールを勧誘する▶Play
イスラフィールは新楼市に於いて
カニバディールと邂逅する。
持ち前の誑かしを持って彼の記憶を読み、彼の知識を取り込んだ。
加えて誘い入れる"Justice"の手招き、新たな正義を胸に。
■これまでの流れ
≫<harmony/group>がスナークを作成する【ログ001】参照
特に遺伝子工学に秀でており、スナーク作成には"hymn"なる新しい遺伝子を用いたと言う。
"虚神"であるスナークと"病魔"イル=ナイトウィッシュ、その他に何人かのニンゲンの遺伝子を用いている。
姿形、及び性格は"イル"に主格があり、この時点では<harmony/group>に協力するような姿勢を見せていた。
しかし内面はほぼ全てイルが主導権を握っており、その手を離れ独り歩きするのも時間の問題であった。
≫スナークが白神 鈴音を拐かす【ログ003】【ログ008】【ログ010】参照
旧市街で暇を持てあましていたスナークは失踪した子供達を探す
白神 鈴音と出会う。
真剣な様子の鈴音を見てスナークは、旧市街にある
"工場"へ彼女を案内する。
其処は身よりのない子供達が不当に働かされており、用済みになった子供達は処分される悪魔の場所であった。
ショックを受けた鈴音は、精神に変調を来す。"公安"関係の出来事や、自身の過去に纏わるいざこざで
既に精神は限界に近かった。そんな鈴音を籠絡し、彼女の身柄を自身の住処に軟禁する。
余談であるが、スナークが去った後"工場"は炎上し、中に居た子供達は全滅したとされている。
鈴音を拐かしたスナークは言葉巧み彼女を誘惑していく、ニンゲンを嫌うスナークと、ニンゲンに裏切られた鈴音と。
長く濃密な時間を過ごすに当たって、互いの間に奇妙な連帯感が生まれていく。歪んでいても愛の作用には変わらず、
やがてスナークは鈴音に惹かれて、最終的に彼女へケッコンを申し込んだ。
この時点で既に
レッド・ヘリングが取って代わっていた。
"虚構現実"でも工場であったレッド・ヘリングにとって、旧市街の工場は親和/神話性が高く
依代としても、信仰を集める対象としても丁度良かった。
加えて、『魔制法』や『特区』、『カミスシティ』の存在により、親に棄てられた能力者の子供が急増
身寄りを無くした子供達が工場に集められる事で、"信仰の工場"としての認識が増していった。
故にレッド・ヘリングが転移し、同じ虚神であるスナークも、それを認知していた。
最後の炎上は、レッド・ヘリングの転移と共に転移してきた
INF財団のエージェントによるものであった。
【ログ】で確認できるように、互いの関係は非常に歪である。通常の恋愛関係にある存在の接し方ではなく
イルは苛烈に鈴音の身体を求め、虐待とも言える負荷を加えていた。
けれども鈴音は、歪みながらも自分と愛を貪るイルを"イルちゃん"と呼び親しく接する。
変則的なストックホルム症候群の作用にも似て、イルもまた、そんな鈴音に依存していく。
最初イルは人外による楽園"フェイクワールドワンダーランド"を目指し、大量の人外に声を掛けていた(【ログ004】【ログ005】ログ【007】参照)
しかし、鈴音との関係性が深くなるにつれ、イルは鈴音以外の存在を必要としなくなり
最終的にケッコンを申し込むまでに至った。
≫インシデント:信仰の工場【ログ004】【ログ009】参照
鈴音を奪還しようとする能力者達の排除を目的に、スナークはレッド・ヘリングを活用する。
クズノハから受け取った発信器入り拘束具を、レッド・ヘリングの内部に設置する他、
"工場"に関する怪しげなミームや情報を拡散し、其処に来る能力者達を一網打尽にしようとした。
偶然転移していたエージェントの遺した報告書等も手伝い、結果としてスナークの試みは失敗
レッド・ヘリングは能力者達の手によって消滅し、スナークは惨めな敗走を余儀なくされた。
信仰の工場に於いて、スナークは能力者達に『拘束された鈴音が死亡する場面』を認識させた。
之は
ブランル、
"ブラスフェミア"、
"魔女"の共同作品である
ミィの作用であった。
どういう伝手で手に入れたのかは分からないが、仮に<harmony/group>の手引きであったとすれば
スナークは<harmony/group>から離反しながらも、その支援を受けていた事になる。
スナークと違いレッド・ヘリングは"貪欲な虚飾の化物"であり、知性に類するものは持っていなかった。
それ故に野生動物の如く、虐め殺された子供達の魂を反芻し、自分自身への信仰を高める他
自身に関する情報を伝搬させ、新たな犠牲者を呼び寄せていたのである。
他の知性を持つ虚神と違うのは神性の低さが為か、その分単純な存在の強度は随一である。
逆説的に言えば実体を持つが故に、能力者達の攻撃を受けてしまうのだが。
レッド・ヘリングの項にもあるが、レッド・ヘリングを倒した大きな要素は二つ。
一つは内部に取り込んだ子供達、能力の因子を持つが故に、ループする責め苦の中でも、力を蓄積させていた。
その為能力者達の力に呼応し、レッド・ヘリングへの信仰を弱めるに至った。
もう一つは転移してきてから時間が殆ど経っていなかったため、神性が低く、信仰も低かった点である。
レッド・ヘリングは一度稼働し始めたなら半永久的に自分の内部で信仰を積み重ねる事ができる。
その意味でも能力者達の勝利は決定的であったが、偶発的でもあった。
≫インシデント:破水【ログ011】参照
鈴音の存在を絶対的なものにするため、スナークは鈴音の持つ
"信仰"を依代に
アナンタシェーシャを顕現させる。
これは鈴音の信仰する
"へびさま"と同一化する形で出現し、レテ・ビーチにて能力者を迎え撃った。
また、内部には鈴音を内包しており、彼女が無自覚に持つ神性を高める役割も果たしていた。
事象の否定と時間のループ。輪廻の蛇を打ち破ったのは能力者達の強力な精神の作用である。
結果としてアナンタシェーシャが消滅する際の余波と、高い負荷を受けた鈴音は
精神と肉体が分離し、実体を持たない神として、彼女を知る存在の夢に顕現する存在となった。
スナークは激しくショックを受け、鈴音を再び取り戻す事を誓った。
"虚構現実"にいた輪廻を司るアナンタシェーシャと、鈴音の信仰する"へびさま"は非常に親和/神話性が高かった。
殆ど同一といっても言い存在であった為、それを媒介にして出現する事はそう難しい事ではなかった様だ。
その分、存在やサイズ、能力もまたへびさまのそれに従うため、虚構現実での出鱈目さは無い。
内部に鈴音を取り込んでいた事により、"Lethe"の作用も
『鈴音の持つ、深い痛苦の記憶をまき散らす』
という作用になっていた。
直前の「ケッコンしよう」という台詞から、更に高い次元での鈴音との関わりをイルは求めていた。
加えて、現在の鈴音の身体は出鱈目な魔術式で汚染されており、精神の不安定さもあった。
アナンタシェーシャは虚神でも高い神性を持つ、鈴音の意志の下で同一化できたならば
身体の不安も精神の不安も取り除かれ、より高度な次元で一緒になれると考えていた。
加えて、圧倒的な力を武器に能力者達を蹂躙し、ニンゲンを滅ぼす足がかりにしようとしていた。
けれども結果は全てを裏切って、これ以降彼女の行動はより苛烈になっていく。
≫サーペント・カルトの勃興【ログ013】から【ログ019】参照
一方でシャーデンフロイデは"手"としての役割が主であり、命令に準じ破壊行動を主にしていた。
スナークはニンゲンを使役することに慣れず、同じオフィウクスやサーバントに当たり散らす姿が見受けられた。
何れにせよ信奉する
ウヌクアルハイの受肉を目的に、全ての信者は活動していた。
その歴史は古く、"虚神"達が表舞台に立つ以前より活動はしていた。
カルト教団として地位を持っていたが、旧市街で起きた≪大災厄≫を契機に一変
激しい弾圧を受け、同じく旧市街に位置する"マルタ"へと信者達は避難する。
しかし、そこもまた安住の地ではなく、激しい異端弾圧の結果、信者の多くが処刑され
それ以後は歴史の裏舞台でひっそりと活動していた。
再興の切っ掛けは"ジャ=ロ"であった。かつての唯一神"ウヌクアルハイ"を再定義した他
その巧みな話術と行動力により人民を煽動、幹部階級を制定し、効率的な支配システムを構築した。
スナークはその盲目的な信者達の信仰を都合良いと感じ、蛇教へと参加したが……
無数の主格を持つ歪な神としてのウヌクアルハイであった。
それ故に圧倒的な力を持ちながらも、制御できない不安定さを兼ね備えていた。
ジャ=ロが戦慄しその場を逃走したのも、過干渉を起こすことへの危惧であるとも言える。
足音を増やす作用はある種子供じみていた。
それはウヌクアルハイの内部に、少女の主格が存在する事を意味している。
ジャ=ロは「ウヌクアルハイ様の力の一つ」と言っていたが、これは全くの嘘。
"蛇術"に関しては
INF財団にて用いられていた、魔力による高次魔術式の応用であり
"禁術"に関してはジャ=ロの持つ"死"の能力の応用である。
しかし、それらの術の名前に"Itzamna"や"Kukulucan"、"Crom Cruach"といった蛇神の名前を使う事で
使用者の意図せざる所で蛇への信仰を強め、全てを"ウヌクアルハイ"へと還元させていたのである。
≫インシデント:新世界より【ログ020】参照
結果的にサーペント・カルトは壊滅し、カルト教団の恐怖から新世界は解放された、が……。
"生け贄達を生きて還した"事により、儀式は
"成功"────
ウヌクアルハイが顕現する事になる。
しかし、儀式の成立を早めた
パグロームやスナークの裏切りにより、その主格を
"白神 鈴音"が握った。
之により、破滅的な力を持ちながらも、その使い方を知らない
"盲目たる白痴の神"が出現し、世界は紙一重で守られた。
ジャ=ロの口から語られた通りであるが、ジャ=ロが最初から狙っていたのは新世界に住む人間の"集合的無意識"である。
蛇の名を借りたり、蛇をモチーフにしたアイコンを用いたりすることで、一般人の蛇に対する恐怖を煽動
総括として、インシデント:新世界よりを起こすことで、破滅的にその恐怖を加速させる。
そして、儀式の目撃者である生け贄達が無事に社会に戻る事で計画は完遂。
新世界に住む人間達が、無意識で蛇を恐れるようになり、蛇に対する"信仰心"を掻き集める。
それによって、神話を持たない神であるウヌクアルハイに、"新世界の人間達の心/深世界"という神話を作り上げたのである。
本来ならば破滅的な力を持つ神として、顕現と同時に世界を破滅に導く筈であった。
しかし、誰よりも強くウヌクアルハイを白神 鈴音であると信仰するスナークの力により認識が上書きされた。
結果として、白神 鈴音がウヌクアルハイの主格を握る。
また、儀式の副産物としてウヌクアルハイは、自身を信仰する人間の身体を乗っ取る事ができるようになった。
白神 鈴音は、その慈悲から滅多にその行動を取らないらしいが……
サーペント・カルトは壊滅し、一部のサーバントが残党として残っているだけとなった。
蜜姫かえでの身柄を拘束した『外務八課』は、ウヌクアルハイの神性を善性へと変質させる事を考える。【ログ021】参照
その為には白神 鈴音と交渉し、自分自身を善なる神であると自覚させ認識させる必要があった。
故にこの難題をこなせる人間として、蛇の第一の信奉者でありながら未だ存命の、蜜姫かえでに交渉役を任せるという結論になっている。
一方サクリレイジは、ウヌクアルハイの神性をジャ=ロ達にとって都合の良い様に変容させると看破。【ログ024】参照
ジャ=ロが蜜姫かえでとコンタクトを取る想定までし、その対策を求めた。
加えて、ジャ=ロを消滅させるには、ジャ=ロ自身を記した報告書が不可欠であるとし、虚構現実へ渡航する事を決定する。【ログ026】参照
≫インシデント:巡礼の年【ログ027】参照
インシデントレポート『
巡礼の年』も参照。
ゴーストライターが主導となり、ジャ=ロの報告書を手に入れる為、"虚構現実"へと渡る。
INF財団の研究所を探索する最中、
シャーデンフロイデと遭遇、戦闘状態に移行する。
"世界線移動"という大規模な能力を行使するシャーデンフロイデ、しかし能力者達はその弱点を看破。
シャーデンフロイデを消滅させ、探索を再開しようとした刹那、ゴーストライターの内部からジャ=ロが出現。
能力者達をあざ笑うと共に、強制的に"虚構現実"から"基底現実"へと能力者達を送り返す。
世界が断絶する瞬間、記憶と名前を取り戻したゴーストライターが、能力を用いて報告書を記す。
こうしてゴーストライターの犠牲を乗り越えて、能力者達はジャ=ロの正体を掴む。
インシデント:新世界よりに於いて大きな傷を負ったシャーデンフロイデは、依代であるファラーシャから分離し、虚構現実へと戻っていた。
その状態で能力者達と邂逅、半ば巻き込まれる形での戦闘となった。まるで導かれる様な流れであったが、
ジャ=ロがこの時点でゴーストライターを乗っ取っており、無意識にそのタイミングを選択させたとすれば、筋は通る。
シャーデンフロイデは歪んだ感情の持ち主であったが、同時に無知な存在でもあった。
その為、思いこんだ感情を正しいとしており、それ故に彼女は悪を成していた。
もっと早く、向き合う事ができていたならば、結果は違ったのかも知れない。
報告書にある様に、ジャ=ロの出現そのものが限りなくゼロに近い可能性の上にある事象であった。
シャーデンフロイデの収容違反が起こる世界線でのみ、ジャ=ロはその存在を実証できた。
故に、能力者達を利用し、シャーデンフロイデの収容に用いられる"Le mal du pays"を破壊する事で、その世界線でのシャーデンフロイデの収容違反が確定する。
加えて、シャーデンフロイデ単体をも消滅させる事で、これ以降の世界線変動も起こりえないようにする。
仮定された未来の為に、確定した過去を変える。これにより、ジャ=ロは双方の現実でその存在を強固なものにした。
インシデント:新世界よりにある様に、ジャ=ロは"基底現実"に干渉する際、実体化しなければならなかった。
試みを果たした結果として全ての因果を越え、更に圧倒的な存在となった。
その正体は"INF財団"のエージェントが一人"ルイージ"であった。
シャーデンフロイデの収容を担当していた研究員"ジョルジェッタ"の恋人であり
彼女が"Le mal du pays"に人間の脳を用いる事に最後まで反対していた。
その後"ジャ=ロ"が"虚構現実"を滅ぼす際に能力を開花させ、文献に逃れる形で逃走。
一部の報告書を"正しく"改竄し、虚神達を滅ぼす事を目標としサクリレイジに協力していた。
以前"虚構現実"に強引に渡ろうとして失敗、その顔と記憶の大部分を失う。
虚神に関する知識を失った他、自身の本名を■■としか認識できなくなった。
死ぬ間際に全てを思い出し、能力者へと託し死んでいった。
インシデントの終幕でジャ=ロが蜜姫かえでを拐かし、一時的に『外務八課』の手から離れた。
ゴーストライターの意志を継いだリーイェンは後藤にコンタクトを取り、情報のすりあわせを行う。【ログ032】参照
互いの推察の結果、行き着く結論。────それは、虚神達の目的は、全て別であるという事実。
一方サクリレイジでも動きが起きていた。リーイェンの持ち込んだ情報は、ボスに推理を促す。【ログ028】参照
辿り着いた結論、それは<harmony/group>という会社。彼らが全ての原因という帰結。
直ぐさまサクリレイジは、<harmony/group>と、嵯峨野 鳴海の捜索を始めたが……
≫ロールシャッハ、夕月を誘拐する【ログ002】【ログ029】【ログ031】参照
シャーデンフロイデの消滅を確認したロールシャッハは、秘めた企みを稼働させる。
奇しくもインシデント:巡礼の年の裏側でブラスフェミアが察していた。夕月の脚に仕組まれたシャーデンフロイデの遺伝子。
凄惨なスナッフムービーがネット上に存在している夕月は、その意味でも格好の餌であった。
魔女の種明かしがブラスフェミアの行動を支配する、夕月は四肢を取り上げられ、ブラスフェミアの根城に隔離される。
そして顕現するロールシャッハ、ミレーユとブラスフェミアを冒涜しながら、誘拐を成功させる。
しかし、彼には誤算があった。この二人は、目的のためには手段を選ばない二人であった。
────絶対に怒らせてはいけない、人間達であった。
ジャ=ロが用済みとなったシャーデンフロイデを切り捨てる事、ロールシャッハの思考はそこまで及んでいた。
それ故に、高いシャーデンフロイデの感情を持たれるであろう夕月に、予めその遺伝子を仕込んでおく。
不必要に超したことはない、けれども万が一を考えるほどに、ロールシャッハは狡猾であった。
そして、ロールシャッハはジャ=ロの思惑を全て把握しているかの如く振る舞う、まるでそれが目的の様に
ロールシャッハは魔女に命じて、ブラスフェミアに夕月に蒔いた種のネタ晴らしをさせる。
之によりブラスフェミアが夕月を手元に置く事を期待し、加えて、誘拐される事に恐怖を持たせる。
恐怖を持つことがロールシャッハの最も望む点であった。
恐怖があればロールシャッハは顕現できる。恐怖があれば、恐れた事象を再現できる。
結果ロールシャッハは思惑通り、夕月の誘拐に成功する。
ロールシャッハが冒涜した二人は、何処までも苛烈な人間達であった。
直ぐさま『外務八課』とサクリレイジは共謀する。リーイェンが仲介し"公安三課"すらも手を貸す運びとなる。【ログ032】参照
チーム"三頭政治"は、武力、知力、情報力の点で、ロールシャッハへと強襲を仕掛ける。
また、サクリレイジのボスも、真実へと辿り着きつつあった。【ログ034】参照
ロールシャッハ=嵯峨野 鳴海という符号も、<harmony/group>という特異点も、全てが一つの事象を示していた。
人間の知性とは斯くも、恐ろしいということを、ロールシャッハは知らない。
≫インシデント:電波通信【ログ037】参照
インシデントレポート『
電波通信』も参照。
誘拐された夕月を取り戻すために能力者達が<harmony/group>の本社へと強襲、そのまま内部に居た社長
フランツ、主任研究員
"魔女"実験体
トゥイーギと戦闘に入る。
三名の死亡を確認の後、ロールシャッハが出現、拘束された夕月と共に、彼が行った非道を説明する。
このまま電波ジャックを敢行し、夕月が残酷な処置を受ける映像を全世界に公開する、筈であった。
しかし、そこに誤算があった。ブラスフェミアは勝ち誇る、夕月の心がもう持たない、と。
事実、いじめ抜かれた夕月は神になれる状態では無かった。鈴音の名も、むなしく響くだけで
ロールシャッハは詰みとなる、安全に安全を重ねた結果、思わぬ所に落とし穴があった。
────故に切り札を切った。ロールシャッハの持つ、ハートのクイーン。
『INF-004』"エカチェリーナ"────
カチューシャとして、彼女もまた能力者と交戦していた。
エカチェリーナの能力、不完全なモノを完全に導く、夕月を強引にシャーデンフロイデにする方法が残っていた。
ロールシャッハは退散する、今はまだ、時期ではないとして。
■最新の情勢について
≫世間の認知
◇一般的な人間には"虚神"の名は認知されていない
これは
外務八課や
サクリレイジの手腕によるものであり、
"虚神"達は、認識される事で強さを増すという性質を考慮してのものである。
それ故に、その情報を知っている一般人は皆無であり、時にはサクリレイジの手による記憶処理もまた、行われている。
例外として能力者や、それに準ずる力を持つ無能力者達の一部は知っている。逆説的に言えば、彼らこそが"虚構現実"からの侵略を防ぐ最終防衛線である。
彼らは時に傷つき、時に迷いながらも、自らの力と知能と認知とを使い、虚なる神々に抗う、今までも、そして之からも。
現状、人手不足な状況である。それ故に、強者が情勢に関わることを、彼らは強く望んでいる。
また、"円卓"の王である
ジルベール・デュポンや、"黒幕"の一派である
ミチカ・ソネーヴェも"虚神"について認知している。
世界を牛耳る二つの勢力も、目障りな神々についてどう対応していくのだろうか。
◇蜜姫かえでを現在支配下に置いている
インシデント:巡礼の年の後、一端はその手から離れた彼女であったが、
アリア・ケーニギン=デァナハトの再三の交渉により決着が着く。
蜜姫かえでを通じ、ウヌクアルハイの主格である白神 鈴音にアクセスし、ウヌクアルハイを善性の神に変質させるプロトコルを提案中である。
成功したならば、これ以上ない最高の
"対抗神話"として、虚神に対抗できる。
◇ジャ=ロ、ロールシャッハの消滅を目標にしている
前者はアリア、後者は
ミレーユにとって大事な人に深く関わりを持った神々である。
それ故に二人の憎悪は深い。二人のみならず、課員全てが、彼らの消滅を第一目標に動いているだろう。
他の虚神も例外ではないが、この二柱に関しては特にと言った状況か。
しかし、ジャ=ロの報告書が現存する反面、ロールシャッハのそれがないという点に於いて不安が残る。
それ故に大規模な作戦が展開できないという点で、現状は静観している。
情報収集並びに新たな動きを待っているだろう、ブレーンたる
後藤に全ては託された。
◇INFオブジェクトの破壊が第一目標である
サクリレイジの根本的な存在意義は変わらない。日夜INFオブジェクトを破壊するために尽力している。
蜜姫かえでが外務八課の手にある以上、此方側の取る手段は攻勢に回ることである。
その点で、外務八課並びに後述する"公安三課"と協力関係にあるが────
結局の所各々の人員が、自分の手で虚神を殺すと思っているため、完全に足並みを揃えてはできない。
◇虚神達の謎を解く
サクリレイジの頭脳であるボス。彼はその掟破りな能力を武器に、出鱈目な虚神達を存在から丸裸にしていく。
それは彼らの存在の根源を知ることであり、力の源を明かし尽くす試みに似ている。
既に明かされた事実も多い、ボスの力無くしては、全ての解明は不可能だろう。
◇カルトの再建
幹部であるオフィウクスの殆どが離反もしくは死亡しており、現在殆ど活動が出来ていない状態である。
遺されたメンバーは残党狩りに怯えながら、ウヌクアルハイの救いを求めている。
■虚神達のデータ
◇『INF-009』『Aiyatsbus(認識する不条理の病魔)』イル=ナイトウィッシュとしての名も持つ
その存在が公に確認されたのは
"2013年"当時のマフィア組織
D.R.U.G.S.が起こしたテロ
Der Tod und das Mädchenにて出現した。
この際は
"IL=Nightwish"となり、展示されていた世界最古の病
"Amy Syndrome"を奪取していった。
その後は消息が確認されず数年が経つ。次に、スナークの名が確認されたのが
"2015年"である。
夜の国で起きた奇妙な失踪事件、その際にキーワードとなったのが、スナークであった。
この事件は
スナーク狩りと名付けられ、しばし、奇妙な事件として一部の者の間で話題となっていた。
ここで注目したい点として、此処で出現したスナークはイルとは似てもにつかない、男性であるという点だろうか。
彼は今際の際に"Boo"と言った。直前の言葉からも分かるように、本物のスナークの身代わりとして活動していた証拠である。
また、2015年にスナークが"基底現実"に居た点も興味深い。次の出現は、<harmony/group>による作成を待たなければならない。
二つの時間軸に於いて登場しているイルとスナークを結びつけるには、全く別の場所で捕まえた二つを強引に組み合わせる他ない。
それが<harmony/group>と仮定しても尚、2013年からイルの動きは急激に沈静化した点が腑に落ちない。
"Amy Syndrome"────そこにあった世界最古の病とは何だったのであろうか。
スナークとしてのイルの活動は、大きく前半と後半に分けられる。
前半は人外だけの国を作るという目標。その為、
クズノハや
ミラ・クラァケ、
アリスらに声を掛けているログが見られる。
その際には自分の作る国を
"フェイクワールドワンダーランド"と呼称し、
"グランギニョル"の名も出していた。
この事から、彼女の最初の目標としては、虚神も合わせた、人外の国を作り、ニンゲンは労働力として一部を遺すというものと纏められる。
それが大きく変容したのは、白神 鈴音との仲が深くなるに連れてである事を、疑う人間は居ない。
World's End Girlfriend──── イルの記した思い出の中に、鈴音の記述が確実に増えていく。
反比例して、他の存在はどんどん卑下される。彼女にとって、最早鈴音以外の存在は重要ではなく、それは同胞である虚神もまた然りであった。
インシデント
新世界よりの後、徹底的に他の虚神から距離を置いている。また、表舞台に立つ事も殆ど無くなった。
◇目的に関して
しかし、彼女の目的が白神 鈴音に在ることは決定的に明らかであり、彼女を再び手に入れる為に能力者達の前に立つことは容易に想像できる。
これはイル=ナイトウィッシュとしての大きな存在意義と同義であり、彼女が主格を握っている以上、スナークもこれに準ずる。
イル=ナイトウィッシュの出自は"病魔"であり、本質的には人間の恐れる病の具現化と言える。
その点で言えば"虚神"との性質は非常に近いと推察できるが、彼女の出身地は"魔界"とされていた。
それ故に悪魔達と同じ生活圏に居たが、どうやら上手くは行っていなかった様だ。
人間社会に干渉する姿は見受けられたが、大きな目的を持っての活動ではなかったと断定できる。
だからこそ、スナークと同一化し、鈴音という重要なファクターを手に入れた事が彼女の大きな目的意識の発生源となる。
一貫しているのは人間への嫌悪、他の動物たちは皆"病"を来るべきものとして受け入れ、それに従う。
しかし、人間だけが病を忌避し、それを根治しようと努力する。その作用に深い軽蔑を示して。
鈴音に関わるインシデント:破水の後はより顕著になり、人間を滅ぼすとまで発言している。
"イル=ナイトウィッシュは白神 鈴音を手に入れ、人間社会を滅ぼす"
その大いなる目標の為に活動していると断言できる。
現在は"ウヌクアルハイとして精神上の存在"となっている鈴音の為に、彼女の身体を取り戻す。
そして、その身体と精神とを融合させ、再び元の鈴音を顕現させる事を目的としている。
ウヌクアルハイとして、集合的無意識から現実社会へアクセスできる鈴音ではあるが、此処に一つ大きな問題がある。
現在
ミラ・クラァケの元に鈴音の身体は存在しており、意識を持っていない状態である。
つまり、イルが目的を果たすには、意識のない鈴音の身体にウヌクアルハイを認知させなければならない。
けれども、ウヌクアルハイは精神上の存在である鈴音そのものであり、自身で自身を認知するという自己矛盾を孕んでいる。
鈴音の身体にウヌクアルハイを認知させようにも、その身体に精神は無く、ウヌクアルハイ自身が鈴音の精神だからである。
故に、八方塞がりであった。イルにとってのゴールは、あまりにも厳しい。
◇能力に関して
まず、イル=ナイトウィッシュの大きな性質は"病魔"である。病の具現化であり、その能力は大きく病に関連している。
"KIllers Like Candy"────能力の本質は、病であり、彼女独自に練り上げた病を内包している。
彼女自身の呼気に"Toxic"という特殊な成分を混ぜる事で、彼女の周囲の空気を病に感染させる。
加えて、"Toxic"には病の概念が含まれており、この時点で彼女は、彼女の思う病を発生し、使役する事ができる。
故に彼女と近接戦闘をする場合、少しずつ身体は病に蝕まれる状態であり、長期戦になればなるほど不利になるのだ。
また、鎌の形や斬撃の形に病を具現化することも可能であり、攻撃を受けた相手に特殊な作用を及ぼす事ができる。
更に病の種類も千差万別であり、その点に於いて非常に高い応用性を有している。
此処で着目したい点が、彼女の"病"とは実際に感染する"病"とは違うという点である。
端的に言えば彼女の能力は"心気症を誘発させる認識災害"と表現される。
つまり、彼女の能力によって実際に身体が病に冒されるのではなく、病に冒されていると脳に誤認させる性質が主であるのだ。
戦闘中は余程の事が無い限り解ける事は無い。けれども、戦闘が終了した場合、急激に病の影響から解放されていく。
戦闘中に視力や聴覚を失ったとしても、イルの能力範囲から逃れた場合回復する。脳が病に冒されていると勘違いしているだけである。
しかし、人の身体は思いこみで十分死に至る。奇術のネタ晴らしは時に、遅すぎる帰結を産みかねない。
加えて、スナークの大きな性質は"不条理"である。『Aiyatsbus(認識する不条理の病魔)』の名にも記されている通りになる。
これは、病がその人間性に関わりなく時として不条理にやってくる点を端的に示した作用であろう。
スナークという存在そのものが『スナーク狩り』という"不条理詩でしか記載できない存在であり、その本質を掴む事ができない。"存在である。
それ故に、"虚神"という不条理さと、病という理不尽さが重なり合い、スナークという存在はできている。
スナークに関する信仰とは、不条理に関する信仰と同義であり、後述する"不条理"に惹かれる人間の精神がその大きな拠所となる。
けれども、合理主義者や物質主義者にとっては忌むべき存在であり、それ故に神格も"虚神"の中では非常に低い。
それを知ってか知らずか、スナーク自身も自分の事を"不完全"と評している点も見受けられる。
一貫性のない"不条理詩"が、理由もなく私達の心を掴む様に、スナークとしての能力は"固執"という一言で示される。
"Mors Principium Est"────彼女がそう呼ぶ能力は、私達の認識や行動を、何かに固執させる点で脅威なのだ。
スナーク狩りのインシデントの際は、死者の魂を現世に固執させ操っていた他、程度の低い
"INFオブジェクト"達も使役していた。
更に、このインシデントに於ける
"スナーク"すらも、自身をスナークであると固執させられた別人であったのだ。
精神的な観念と、肉体的な実体に影響する非常に悪質な能力であり、イルはこれを時に
"誘惑"と表現する。
"虚神"関連のインシデントではミサイルやバイクの軌道を変化させ、回避やカウンターに用いる等応用性は非常に高い。
スナークという存在の大きな弱点は、不条理詩が元になっている都合上、実体が必ず存在している点である。
彼女の存在は概念ではなく、明確な文字列に示されているため、他の虚神の様に実体を曖昧にできない。
それ故に彼女は、物理的に殺す事が可能である。その点で、虚神の中でも神格は最低限にできている。
◇『INF-005』『Akzeriyyuth(残酷なる幸福の死)』
先ず彼という存在を語る上で知っておかなければならないのが、今現在彼が依代として使っている身体についてである。
その持ち主の名は
"Cypress"────
"死"の名前を冠する
D.R.U.G.S.の首領であった。
しかし、その後表舞台に現れる事はなく、5年の月日が流れた。
D.R.U.G.S.の活動が沈静化したのもこの時期であり、首領である彼が行方を眩ませたからであった。
次に能力者達の前に現れた際、彼は"ケバルライ"と名乗り、サーペント・カルトの実質的な指導者となっていた。
この空白の期間に何があったかは明らかにされていない。しかし、"Cypress"の用いていた能力は"Die Young"と呼ばれる老化を司る能力である。
故に2013年当時の"Cypress"はジャ=ロの依代になっていないと推察できる。
では何時依代になったのか。リーイェンとボスの会話から(【ログ032】参照)その鍵となるのは"Amy Syndrome"世界最古の病ではないかと推測された。
世界最古の病とは何か。ひどく抽象的な観念であったが、"死"であると仮定すれば辻褄は合う。
だとすればジャ=ロの企みとは何か。彼自身の行動理念とは何処にあるのか。
ジャ=ロの活動はサーペント・カルト時のものと、それ以後のもので二つに分かれる。
サーペント・カルト時は
"ケバルライ"と名乗り、実質的な指導者として活動していた。
オフィウクス達へ
"禁術"を託したり、サーバント達に演説をしたり、と誰よりも熱心に
"ウヌクアルハイ"を崇拝していた。
そして、インシデント『
新世界より』の顛末から、ジャ=ロの目的がウヌクアルハイの顕現にあり、その圧倒的な力で
"世界を滅ぼす"目論見があった事が推察できる。
此処で注目したいのは、サーペント・カルト自体についてである。Tipsで記した通り、サーペント・カルト自体の発生は古い。
『
旧市街』で起きた
"大災厄"の後は活動を大幅に縮小し、殆ど活動の記録は見られなかった。
この間にジャ=ロはケバルライとして取り入り、元々存在していたウヌクアルハイという主神を改めて定義し直したのである。
それ故に、信仰の対象としてのウヌクアルハイは、強い信仰に支えながらも、その性質に関しては非常に混沌としていた。
ありとあらゆる蛇の神格を詰め込んだ結果として、非常に高い神性を持ちつつも、善神でもあり邪神でもあった。
けれども、
エーリカの前にその片鱗を見せた際は、恐ろしい悪神の様相を見せている。
これはあらゆる信仰を集めながらも、根本の部分のベクトルをジャ=ロは負に向けていたのではないだろうか。
信仰の数はその大きさを指数関数的に増加させるが、行き着く先は破滅であるようにとの試みである。
それ故にジャ=ロは『新世界より』の終幕で勝ち誇っていた。結果は紙一重で救われたのだが。
それ以後の活動としては、ウヌクアルハイに纏わる企みが挙げられる。
生き残った唯一のオフィウクスである
蜜姫かえでとコンタクトを取り、ウヌクアルハイの主格を変化させようとしていた。
先述した様にジャ=ロにとっては、ウヌクアルハイが鈴音の管理下にある状況は好ましくなくそれ故の行動だろう。
加えて、"ゴーストライター"による"虚構現実"渡りも看破。その試みを利用し、自身の存在性を絶対的なものにした。
その過程でゴーストライターを消滅させ、一時的に蜜姫かえでの身柄をも手に入れた。
どのインシデントに於いても権謀術数を張り巡らせ、自分にとって都合の良い結果を導き出す、それが彼の本性である。
◇目的に関して
『
INF-005』の報告書にも記されている通り、ジャ=ロの発生は非常に特別であった。
『INF-005』とは元々ジャ=ロではなく別の
"虚神"を指しており、空白になった後、『INF-005-1』と呼ばれる少女が収容される。
この少女の持つ特異な力、
"願いを現実にする"能力によって、『INF-005』は
"死"という概念として作り上げられた。
この試みを"プロジェクト・ヴァニタス"と呼び、ジャ=ロとは元々"この概念"を指して呼ばれていた名称である。
より詳しい説明に移ろう。『INF-005-01』は本名を
"Neo"と呼び、彼女は
"願いを現実にする"能力を持っていた。
その為、
INF財団は彼女の力を活用する策を模索していた。けれども彼女の力は非常に強力であり、うかつな使用は
CK-クラス:世界再構築シナリオを意味する。
しかし、"虚構現実"に於いて発生したシャーデンフロイデの収容違反事件、通称"Butterfly Effect"によって、財団は選択を迫られた。
活性化したシャーデンフロイデを止める方法は無く、また、当時の状況から一刻も早い対応が求められたのである。
そこで『INF-005』をシャーデンフロイデの"対抗神話"として用いる事で、事態を収めようとした。そこで立案されたのが"プロジェクト・ヴァニタス"である。
インシデント:巡礼の年の以前と以後とで、この事件の内容は大きく変容している。
巡礼の年以前では無数にある世界線の内、ほんの僅かな可能性の先に存在している収容違反であった。
その為後述するジャ=ロの出現自体が限りなく低い可能性の上での出来事であり、特異点となる。
巡礼の年以後では、この収容違反が起こることが確定してしまった。
その為、どの世界線を辿ったとしても、シャーデンフロイデは収容違反し、"プロジェクト・ヴァニタス"は執行される。
それこそが、巡礼の年にてジャ=ロが目論んでいた大きな転換であった。
"プロジェクト・ヴァニタス"は『INF-005-1』に"死という概念が存在しない世界を願わせる"事が大きな土台となっている。
つまり、幼い少女であった『INF-005-1』にとって死は身近なものではなく、財団が徹底的に彼女の生活を管理する事により、死を知らない少女が生まれる。
彼女は徹底的に死から遠ざけられ、死という言葉を使う事すら忌避された。よって、『INF-005』を"ジャ=ロ"と命名した。
虚構を以て制御するファンクションとして収容手順は作り上げられ、"虚構現実"は死の恐怖から取り除かれた。
『INF-005-1』は死を知らない為に、肉体に大きな負荷をかけられる。例外があってはならないからであった。
呼吸が止まっても死なない、屋上から落下しても死なない、幾ら痛みを受けても死なない、等を実現させるために、
少女は実際に呼吸を止められ、屋上から突き落とされ、痛苦を与えられる。自分の身で実証する事で、現実が様変わりするのである。
────しかし、財団は満足しなかった。不安は何時の世界も付きまとう。
『INF-005-1』は人間である。人間である以上、必ず死を知ってしまう可能性はあった。加えて、少女が大人になるにつれ、その不安は高くなる。
それ故に財団は、"少女の身体を焼却処分"した。肉体が無ければ少女が死を知ることは無いと、そういう論理であった。
肉体を失った少女は苦しんだ。彼女は死を知らない。それ故に、肉体を失っても尚死ねず、知性だけの存在として世界を彷徨う。
身体を無くしても尚苦痛は残っていた。身を焼かれる苦しみを、永遠に感じ続けるのだろう。
少女は願う、この苦しみから解放される事を。けれども彼女は死を知らない。矛盾する円環の中、一つの歪んだ死の認知が生まれた。
────それが、"ジャ=ロ"であった。死を知らない少女を殺す為の存在。
ジャ=ロはその力を圧倒的なものにする為、"虚構現実"の人間を殺戮し尽くした。けれども、彼らは死なない、否、死ねないのである。
『INF-005-1』と同様に肉体を失い、その苦しみを永遠に受け続ける。やがて"虚構現実"から肉体は居なくなり、滅亡した。
それでも少女に死を教えるには不十分であった。少女は諦念と共に、その現実を後にした。此処に最早、彼女の死は無いから。
ジャ=ロは現実を越えて、我々の世界へと浸食してくる。その目的は一つ、少女に死を与える為に。
近いうちにウヌクアルハイへ彼はコンタクトを取る、その手段として蜜姫かえでを用いるかは不明であるが、
彼にとって世界を滅ぼすとは手段に過ぎず、目的のためならば、正しく手段を選ばないのである。
◇能力に関して
正しき意味での"死"そのものである。"虚構現実"と"基底現実"とで、その存在性が大きく変容している。
前者では知的存在が全て死を願っている為、ジャ=ロの存在性は圧倒的なものになり、能力も最大限行使される。
ゴーストライターを乗っ取る事ができたのも、虚構現実に居たからであり、この状態のジャ=ロに抵抗する事は難しい。
一方"基底現実"では、死に対する信仰が希薄な上、存在が偶然性に引っ張られる以上、圧倒的な力は持ち得なかった。
しかし、インシデント:巡礼の年以降ではその存在性が確立、基底現実でもその能力を大幅に行使できる状態となっている。
インシデント:新世界よりで確認された際は、その能力の大部分は
Triumphus Serpentis Magniで定義される蛇術に依るものであった。
この魔術系統はインシデント:巡礼の年にて蜜姫かえでが発見したように、元々は
INF財団が用いていた術式であった。
そこに彼の能力に端を発する
"禁術"を付け加える事で、魔術師としての戦闘スタイルを露わにする。
加えて、信仰の拠所が"虚構現実"にある為、依代を強制的に傷つける事は難しい。信仰の元が違う現実にある所以である。
その為単純な攻撃ではダメージを与えることも難しい。
能力名は"Death Unlimited"────その名の通り際限なく死を用いる能力である。
戦闘に於いては"禁術"の再現として用いられている、"Itzamna"に"Kukulucan"、蜜姫かえでの持つそれと同等の力を行使していた。
大きな性質として、死に纏わる万象に再現性を持つ。その為、対生物としては圧倒的な性能を誇っている。
現在まともな対抗神話も存在しておらず、どう対応するべきかも確立されていない。
そして何より、彼の手によって"虚構現実"は滅びた。最優先で対応すべき存在である。
◇『INF-006』『Kaitul(不定たる醜悪の仮面)』
その大きな存在は
嵯峨野 鳴海と同一である。<harmony/group>のスポンサーであり、『公安』に所属する調停官として
"黒幕"にも属している。
此処で一つ明らかになっているのは、嵯峨野 鳴海の身体と精神を乗っ取る形でロールシャッハは存在しているという点である。
<harmonyで示唆されている内容は、嵯峨野としての自我が現出している状態であり
ロールシャッハの口調や性質とは大きくかけ離れている点が指摘できるだろう。
つまり、ロールシャッハは何らかの理由を持ち嵯峨野 鳴海を乗っ取った。そして、自身の目的の為に活動している。
加えて、インシデント:電波通信の中、興味深い一つの発言を遺している。
嵯峨野 鳴海の提言は呼んだかい? <harmony/plan>とはどんな計画だった?
人間から罪の因子を取り除く試みだった筈だ、罪の因子とは、何か。
そんな漠然としたものをどうして取り除けるんだろうね、罪を何かに見立てなければならない
"Bacikal" "Iweleth" "Sheriruth" "Adyeshach" "Akzeriyyuth"
"Kaitul" "Shakah" "Chemdah" "Aiyatsbus" "Qimranut"
──── 彼は罪の因子にそれぞれ、性質と共にそう名付けた
分かって頂けたかな、順番が逆なんだよ
ジャ=ロを撃退するためとか、僕を選んで<harmony/group>が呼び寄せた訳じゃない
<harmony/group>が居たからこそ、僕達が生まれたのさ
此処から推察できる事は一つ、<harmony/plan>こそが、"虚神"達を作り上げた原因であるという事である。
なればこそ、ロールシャッハの目論見とは何処にあるのだろうか。今の時点では殆ど明らかになっていない。
しかし、
夕月を誘拐し、シャーデンフロイデを顕現させようとした裏には、ジャ=ロへの敵対心があった。
ジャ=ロに世界を滅ぼさせない為に、ロールシャッハは活動していると言う。
◇目的に関して
現在の所、ジャ=ロの目論見を阻止する為に活動している。夕月をシャーデンフロイデにし、その力を爆発的に増加させる事を狙っていた。
それはジャ=ロという圧倒的な存在に届きうる可能性を秘めている、と彼は考えていた。結果としては上手くいかなかったが、
彼はまだその試みを諦めておらず、エカチェリーナと共に次の機会を待っている。
またもう一つ、ウヌクアルハイへのアクセス手段を得ることにより、別の形ジャ=ロの狙いを阻止しようとも考えている。
ロールシャッハにとってそれは夕月を利用する事であった。此方もまた想定外の結果に終わってしまったが。
それ故にロールシャッハは次の手段を講じる。その全てはジャ=ロの敵対心であろうか。
加えて、公安の黒幕としての活動も幾つかのログから確認できる。
黒幕の一派として考えるのであれば、黒幕と敵対するジャ=ロと敵対している点も納得がいくだろう。
自身の手駒である
カチューシャを黒幕の先兵にしている点からも伺えるが……?
インシデント:電波通信を通じて、自身の協力者である
フランツ=フェアブレッヒェン、
"魔女"、
トゥイーギ=ラミレズらの死亡を確認した。
まるでその配置は、彼らが死ぬ事を想定していたかの様に。それもまた能力者達に疑問を投げかける。
"魔女"は死ぬ間際に納得していた様であるが、全ては闇の彼方へと消える。
彼の目的の一つは反ジャ=ロにあった。その点でスナークと協力している点も見受けられる。
◇能力に関して
その存在は"恐怖"として理解されている。報告書がないため確定ではないが、恐らくそれで正解であろう。
彼の言葉を借りるならば"恐怖の具現化"こそが彼の能力である。その作用として、人間の精神を覗く事も出来る。
この能力は非常に解釈が広い能力である。恐怖のみならず、不安もまた、彼にとっての媒介として存在している。
つまり、不安や恐怖が一縷でもあればロールシャッハは顕現できる、加えてその恐怖を実現できる。
それは時に悪夢の様な光景すらも再現できる。夕月を誘拐した際は、ミレーユやブラスフェミアにまざまざと見せつけた。
加えて誘拐した夕月のトラウマを、様々な形で再現して見せる。精神に強大な負荷をかける能力であった。
何よりロールシャッハの注意すべき点は、虚神とは思えないほどに人間の精神に精通している点である。
人間が忌避する事象や、恐怖する事象を容易く理解して見せ、それを見せつける、悪趣味という言葉が相応しい。
一方で、感情を介せていない。目的のためには手段を選ばないが、そこに感情の作用は微塵も無いのである。
サクリレイジのボスが指摘している様に、ロールシャッハとは本来思考や精神分析の手段である。
つまり、彼の能力の本質は、恐怖や不安のみならず、精神というより深く広い世界に分布しているのであろう。
彼を記した『禁書』────『偽書Psychosocial』そこには何が記されているのだろうか。
◇『INF-004』『Adyeshach(それは泡沫の絶頂に過ぎず)』
彼女という存在を語るには
カチューシャと
ソニアについての知識が必要である。
故に此処で記すのは、エカチェリーナという
"虚神"の断片的な情報でしかない。
<harmony/group>が何時から彼女を手中に置いていたのかは定かではない。偶然の産物か、はたまた必然か。
一つ確かな事はエカチェリーナはロールシャッハの命令に従っているという点である。
それ故に、インシデント:電波通信に至るまで、我々に存在を微塵も感じさせなかったのであった。
ロールシャッハは彼女をクイーンや女王様とも呼び、敬意を払っている様子もうかがえる。
それはまた、その存在が高い神格を持っていることを示していた。
◇目的に関して
現在はロールシャッハの目的を果たすために協力している。
インシデント:電波通信の後は、夕月の身体に仕込まれたシャーデンフロイデを容易に開花せしめる存在として顕現する。
しかし、その反面、その開花は非常にリスキーでもあった。その為、時期を考慮し、現在は伏せられている。
また、黒幕の一派としての活動も見受けられる。この点はカチューシャの項目が詳しい。
何れにせよ、彼女自身の目的に関しては、未だ謎のままである。
◇能力に関して
不完全な事象を完全に導く能力である。或いは完全な事象を不完全に戻す能力とも言える。
大規模な現実改変能力であり、その範囲は全ての因果律に影響する。
その為、彼女は実体を持ちながらも『INF-004』を冠し、絶対的な存在として君臨していた。
一方で、"それは泡沫の絶頂にすぎない"為、完全は一瞬であり、その後は二度と、その事象は完全にならない。
『財団職員へのオリエンテーション』にて、彼女の記述が欠けていたのがこの理由であった。
完成した報告書は、彼女の手によって未完成に戻され、永遠に完成することは無くなった。
■用語集
≫グランギニョル神話
"虚神"達を描いた神話体系。最高神である虚構神
"グランギニョル"の名を冠してこう名付けられている。
"虚構現実"に於いては一種の哲学的な神話体系として理解されており、一般的な宗教の立ち位置として存在していた。
しかし、その本質は、実際に存在する悪しき神々から目を逸らすための
"レッド・ヘリング"であった。
後述する様に"虚神"達は認識に従う為、一般人に虚構であると認識させる事で、その現実性を弱めていたのである。
≫虚神
グランギニョル神話に描かれる神々。そのどれもが恐るべき力を持っているとされている。
実際は実体を持った存在であり、"INF財団"の手によって管理されていた。
"虚構現実"の崩壊、"基底現実"への浸食。強大な神々が牙を剥いたとき世界はどうなるのか。
大きな特徴として"認識に従う"という性質を持つ。その為、彼らに対する信仰や認識がそのまま力になる。
例えばロールシャッハは"恐怖"という存在として認識されている。
人間の持つ恐怖の感情や恐れの作用、そのような精神の働きがそっくりそのままロールシャッハの力になる。
人間が"火"を"恐怖"として認識したならば、ロールシャッハの性質に"火"が付け加わる。
また、"恐怖"自体への認識も重要であり、恐怖することそれ自体が、ロールシャッハの糧となる。
加えて、恐怖が存在しないと認識することで、ロールシャッハという存在は急激に現実性を薄めていく。
何れにせよ、その性質はお伽噺や言い伝え、そして神話のそれに近い。
≫虚構現実
観測者である我々の認識している現実を
"基底現実"とした時、
"虚神"達が出現した現実をこう指し示す。
1■■■■年という単位や
"聖府"という名称が用いられており、どうやら宗教的中央集権体制が確立されている様だ。
"グランギニョル神話"も此処で生まれた。
"虚神"達を管理する
INF財団もまた、この現実に存在していた。
現在は全ての人間が肉体を失っており、滅亡している状態となっている。
≫INF財団
正式名称はINF(虚構現実:Imaginary Non-Fiction)財団。虚構現実に於いて、虚神達を初めとした
"INFオブジェクト"を管理していた。
特に虚神達を制御するために虚構制御ファンクション(Imaginary Normalized Function)を制定し、最新の技術を活用していた。
加えて、虚神には、それぞれに応じた"オブジェクトクラス"を割り振り、その性質を端的に示す。
"禁書目録"や"対抗神話"といった有効策を次々に打ち立てたが、最終的に
"ジャ=ロ"に関して大きなミスをしてしまう。
結果として現実世界を滅亡するという大惨事を招いてしまった。
サクリレイジにその技術の一部が流用されている。
≫INFオブジェクト
先述した"虚神"達も広義的にはこの分類に入る。"虚神"のみならず、"虚神の影響を受けた人、物、存在"も分類分けされる。
また、"秩序を崩壊しうる特別な力"を持った存在も分類分けされ、管理されていた様だ。
虚構現実の崩壊により、虚神以外のINFオブジェクトも現実に現れており、サクリレイジが対応に当たっている。
≫オブジェクトクラス
"虚神"達に個別に付けられる名称。たいていの場合に於いてその大まかな性質を示している。
"Bacikal" "Iweleth" "Sheriruth" "Adyeshach" "Akzeriyyuth"
"Kaitul" "Shakah" "Chemdah" "Aiyatsbus" "Qimranut" "Oreb Zaraq" 等が挙げられている。
而してその実態は、嵯峨野 鳴海が付けた罪の因子の名称に依るのだと言う。
≫報告書
『INF財団』の制作した"虚神"達の報告書、彼らの性質や実態、その対応策について書かれている。
これを深く理解することで虚神達への対抗策が見つかるほか、その大きな性質を把握する事に繋がる。
虚神達もそれを理解しており、彼らは自身の報告書を執拗に隠している。
≫禁書目録
聖府が成立し宗教的な神話体系が完成する以前に描かれた、グランギニョルの神々をモチーフとした書物。
それぞれ宗教的な偏見の入っていない貴重な情報源であり、正しく神々を描いた作品とされる。
宗教的世界である虚構現実では禁書とされており、エージェント達にも一部しか渡されない。
能力者達にとっては、虚神達に対応する際の指針となりうる貴重な書物である。
≫対抗神話
グランギニョルの神々に対抗する為の手段。主に禁書目録を基に定義される。
虚構制御ファンクションに組み入れられる事も多いが、その場合は多くの犠牲を払う結果となる。
主に虚神達への対抗策として示される。後述するミームやカウンターミームも広義では此処に入る。
この技術を元に練り上げられたのが、サクリレイジの用いる"疑似対抗神話"である。
≫ミーム
情報伝達の単位の一つであり、模倣子や意伝子とも理解されている。自己複製子を内包しており、情報的な自己複製子こそがミームの本質であろう。
具体的に説明すると長くなるので割愛するが、言葉や文字列、そのものが持つ意味合いの中にミームがあり、その言葉そのものと認識の合間を時に無くす。
認識に従う虚神達にとってミームは生命線の一つであり、自身の存在を強固にする為、時に大規模なミームを汚染する。
その代表例がジャ=ロの手による無意識の汚染である。蛇のミームを穢す事で、我々の認識を汚染する。
蛇=悪と認識させる事により、蛇に対する悪性の信仰を高めたのである。
≫カウンターミーム
悪性のミーム汚染に対して、善性のミーム汚染を加えることで、ミームの性質そのものを書き換える作用を持つ。
前述した対抗神話もカウンターミームの一つであり、外務八課がウヌクアルハイに用いようとしているのがこの手法である。
一種の認識災害でもあるため、使用には細心の注意が必要である。
≫hymn
"基底現実"に於いて
<harmony/group>が作り上げた概念。遺伝的現実と日本語で訳される。
これを数値化したものが
<hymn値>であり、厳密に言えば二つは異なっている。
まず<hymn>そのものは遺伝的現実性の事を示す。"魔女"はこれを指して「<hymn>という遺伝子」とも表現していた。
これはある事象が「どれだけ理論から現実に還元されているか」を考える際に必要となる概念である。
例えば遺伝子の双子である"クローン"この<hymn値>は1と表現され、「高い<hymn値>を持つ」とされる。
また、<hymn値>は高い値から低い値へとどんどん拡散されていく。低い値の存在からすれば希釈される作用に近い。
再び例を出すが、新品の服を買った時を想定して欲しい。この時、服と自身の間の<hymn値>は0である。
しかし、その服を身につけ、日々を過ごすにつれ、服と自身の間の<hymn値>は高まっていく。
これは認識の作用に大きく関わる。現実とは認識に従う都合上、その人物を示す際、装飾品はその人物の一部として認識されるからである。
そして、<hymn値>は当然のことながら、時間が経てば経つほど高くなる。馴染むという表現が近いか。
"虚神"という存在を考えるに当たって、この<hymn>という概念が非常に重要となる。
虚神達は皆須く高い<hymn値>を持つ。認識に従うというその性質と、理論から現実に還元されるという性質の親和性が非常に高いからである。
虚神自身が認識に左右されるため、理論をそのまま自身へと変質出来るという作用が働いている。
それ故に、虚神について記した書物や報告書、物体や概念は虚神達からの影響を受け<hymn値>を高めていく。
虚神達は依代を経て顕現している。その依代達は、虚神との<hymn値>が非常に高い数値を示しているのである。
此処で注目したいのは<hymn値>は高い数値から低い数値を浸食していく作用である。
つまり我々が虚神に関する書物や物品に触れるにつれ、我々の内部に無意識の内に虚神の因子が取り込まれいく事になる。
また、"基底現実"において<harmony/group>が虚神の遺伝子として用いたのが高い<hymn値>を持つ遺伝子である。
それは確かに彼らの本質的な遺伝子を意味するものではなく、虚神というミーム汚染をした遺伝子であれば良い。
これらを可能にしたのが"INFオブジェクト"である"魔女"の手腕と、遺伝子を操る"フランツ=フェアブレッヒェン"の能力であったのだ。
■関連ページ一覧
≫グランギニョル神話
一連のグランギニョル神話を概説したページ。虚神の一覧や、そこに至るまでの過程などが記されている。
また、この流れに参加したい方や、虚神を作りたい中の人に向けてのメッセージもあります。
グランギニョルの神話であり、グランギニョルな神話のお話です。
≫INF財団
かつて虚神達を管理していた虚構現実の財団、INF財団について説明したページ、財団の理念や概要について説明している。
その他用語集にある"対抗神話"についての説明もある。
≫アナンタシェーシャ
『INF-003』とも呼ばれる虚神の一柱。その特徴の他、インシデント:破水の簡単な纏めも載っている。
拒絶する輪廻の蛇の名の通り、輪廻円環に纏わる蛇であった。
◇『INF-003』
工場跡を探索していた
鵺が発見した、虚構現実での書物が一冊。
虚構現実でのアナンタシェーシャの説明が書かれており、その突破口の鍵が示されている。
ランドール博士は自らアナンタシェーシャの口に飲まれる事を選ぶ。それは深い絶望が故に。
◇『異聞創世記』
同じく鵺が発見した書物。
その内容は対話という形で伝えられるアナンタシェーシャの真実。それは新たなる絶望への序曲。
ランドール博士の最期に至るまでの説明が、静かに語られる。
ゴーストライターは真実の語り手として出現、アナンタシェーシャの正体について語った。
≫シャーデンフロイデ
『INF-007』とも呼ばれる虚神の一柱。その特徴の他、インシデント:巡礼の年の簡単な纏めも載っている。
世界線を渡る感情の蝶、どこか哀しげな存在でもあった。
◇『INF-007』
虚構現実を探索していた能力者が発見した、虚構現実での書物が一冊。
虚構現実でのシャーデンフロイデについて書かれている。
≫レッド・ヘリング
『INF-008』とも呼ばれる虚神の一柱。その特徴の他、インシデント:信仰の工場の簡単な纏めも載っている。
貪欲な工場を元にした化物。グロテスクな外見と、醜悪な内面を兼ね備えていた。
◇『INF-008』
レッド・ヘリングが基底現実に転移してきた際、同時に転移してきたINF財団のエージェントが保持していた文書の一つ。
虚構現実でのINF財団が作成した報告書であり、レッド・ヘリングの情報が記載されている。
終盤でエージェント本人による加筆がされており、エージェントはその後死亡したものと想像できる。
◇『燻製ニシンの虚偽』
前述したエージェントが保持していた文書の一つであり、レッド・ヘリングそのものを描いた文書。
INF財団に依れば、レッド・ヘリングが神話生物であると認識される以前の作品であり、偶像崇拝的脚色を排したものであるとされている。
つまり、レッド・ヘリングが描かれた情報源であり、彼らに対抗する唯一の手段が書かれた禁書でもある。
文書中に『外套の男』と呼ばれる存在が出現しており、彼は明確に読者たる我々を認識しているようだが……?
之はゴーストライターの能力によるものであった。
≫スナーク
『INF-009』とも呼ばれる虚神の一柱。イル=ナイトウィッシュの名でも活動している。
世界を混沌に導く病魔であり、その行いは時に苛烈である。
≫ウヌクアルハイ
『INF-010』とも呼ばれる虚神の一柱。新世界を神話に持つ、この現実で生まれた虚神。
その主格は肉体を失い精神だけの存在になった白神 鈴音が所有している。
≫巡礼の年
四つ目のインシデントを纏めたページ。
サクリレイジ並びに
"公安三課"のリーイェンによって描かれた。
無謀な任務の果てに、能力者達は『INF-005』の報告書を手に入れる。
◇『INF-005』
"虚神"が一柱、
"ジャ=ロ"について書かれた報告書。
ゴーストライターの外套が紙に触れた際、自動で転写される仕組みとなっている。
同時に、ある思念が報告書に宿っているという────。
≫サーペント・カルト
かつてジャ=ロ達が率いていたカルト教団。インシデント:新世界よりの後壊滅状態に陥る。
非常に強固な信仰に支えられていた組織でもあった。
≫<harmony/group>
スナークを作った嵯峨野 鳴海率いる製薬会社。遺伝子工学を用いて虚神達を顕現させた。
現在は壊滅状態であり、その人員の大部分は死んでいる。
≫フランツ=フェアブレッヒェン
<harmony/group>の社長。インシデント:電波通信に於いて死亡。
遺伝子に纏わる能力、
"Spiral Architect"を用いる。
≫"魔女"
<harmony/group>の主任研究員。インシデント:電波通信に於いて死亡。
人身御供に纏わる能力、"Freak Kitchen"を用いる。
その正体は
"人身御供"に関わる
"基底現実"で生まれた
"INFオブジェクト"
≫トゥイーギ=ラミレズ
<harmony/group>の実験体。インシデント:電波通信に於いて死亡。
悪夢に纏わる能力、"Never Ending Nightmare"を用いる。
米軍の脱走兵であり、旧世界に於いてイラク戦争等に参加していた。
最終更新:2019年02月09日 12:07